司法書士試験に落ちたときの立て直し方:翌年に向けた分析手順
司法書士試験に不合格だった受験生向けに、翌年に向けた立て直しを手順で解説します。結果が出るまでの使い方、不合格を4つの型に分ける方法、失点原因の掘り方、残り9か月の計画の組み直しまで。
司法書士試験に落ちたとき、最初にやるべきことは勉強の再開ではありません。何が足りなかったのかを数字で特定することです。結論を先に言います。不合格は「どの基準点を割ったか」で4つの型に分かれ、型ごとに翌年の最初の一手が違います。型を決めずに「もっと勉強量を増やす」とだけ決めると、同じ場所でもう一度落ちます。この記事は、筆記試験で不合格だった、または不合格がほぼ確定した受験生向けです。結果が出るまでの時間の使い方、不合格の型の見分け方、失点の原因の掘り方、翌年までの計画の組み直し方を手順でまとめました。基準点と合格点の仕組みそのものは基準点と上乗せ点の仕組みで扱っています。
結果が出るまでの時間を分析に使う
公表の日程と、その時点で分かること
司法書士試験の結果は一度に出ません。段階的に公表されるので、それぞれの時点で何が分かるかを押さえておくと、翌年の準備を早く始められます。令和8年度の受験案内書に書かれた日程は次のとおりです。
| 時期 | 公表されるもの | その時点で分かること |
|---|---|---|
| 7月5日 | 筆記試験 | 問題冊子は持ち帰れる。自分の解答を控えておく |
| 8月12日 | 試験問題、択一式の正解と基準点 | 択一式2つの基準点を超えたかどうか |
| 10月1日 | 筆記試験の合格者 | 筆記の合否。記述式の基準点と合格点もこの時点で公表される |
| 10月1日の翌日 | 成績通知の郵送 | 希望者は3部門それぞれの得点 |
| 11月5日 | 最終合格者 | 口述試験を経た最終結果 |
日付は年度ごとに変わります。翌年度の日程は、その年の受験案内書で確認してください。試験全体の流れは司法書士試験の流れと日程にまとめています。
択一で基準点を割ったら8月から翌年が始まっている
択一式の正解と基準点が出た時点で、自分の解答の控えと突き合わせれば、午前と午後の択一式の点数はほぼ確定します。どちらかが基準点に届いていなければ、記述式の出来にかかわらず結果は決まっています。
この場合、10月の発表を待つ理由はありません。8月の時点で翌年の準備に入れます。本試験から3か月待つか、1か月で動き出すかで、翌年に使える時間が2か月変わります。逆に択一式の2つを超えていて記述式の結果待ちなら、10月までは記述式の自己採点を幅で持ちながら、択一の知識を落とさない程度に回しておくのが現実的です。
休む期間は決めて取る
本試験の直後に休むこと自体は問題ではありません。問題は、休む期間を決めずに休むことです。「気持ちが戻ったら再開する」と決めると、再開の日は来ません。
- 休む期間を最初に決める。1〜2週間程度が区切りになりやすい
- 再開の日にやることを1つだけ決めておく。この記事の分析作業がちょうどよい
- 再開初日は短時間で終える。いきなり元の学習量に戻そうとしない
学習が止まった状態からの再起動の方法は、合格ロードマップの「計画が崩れたときの立て直し方」でも扱っています。
不合格を4つの型に分ける
型の一覧
筆記試験の合否は、午前の択一式・午後の択一式・記述式の3つの基準点をすべて超え、かつ総合点が合格点に達することで決まります。この構造から、不合格は次の4つの型に分かれます。
| 型 | 状態 | 翌年の最初の一手 |
|---|---|---|
| 午前割れ型 | 午前の択一式が基準点未満 | 民法を中心に知識の精度を上げ直す |
| 午後割れ型 | 午後の択一式が基準点未満 | 登記法の択一とマイナー科目の穴を埋める。時間配分も疑う |
| 記述割れ型 | 記述式が基準点未満 | 答案構成の手順と雛形を見直す |
| 合格点不足型 | 3つとも超えたが総合点が合格点未満 | どこで上乗せを作るかを設計し直す |
複数の基準点を割っている場合は、差が大きいほうから順に対処します。3つとも割っている場合は、型ではなく学習量と進度そのものが足りていない可能性が高いので、後で扱う学習記録の突き合わせを先に行ってください。
成績を基準点との差に直す
成績通知が届いたら、または自己採点が固まったら、3部門の得点をその年の基準点との差に直します。総合点だけを見ていると、どこで落ちたのかが見えません。
| 部門 | 自分の得点 | その年の基準点 | 差 |
|---|---|---|---|
| 午前の択一式 | 記入 | 記入 | 問題数でも書く |
| 午後の択一式 | 記入 | 記入 | 問題数でも書く |
| 記述式 | 記入 | 記入 | 点数で書く |
| 総合 | 記入 | 合格点 | 点数で書く |
択一式は1問3点なので、差は問題数に直してください。「午後が6点足りない」より「午後が2問足りない」のほうが、翌年に何問を上積みすればよいかが具体的になります。その年の基準点と合格点は法務省が公表しています。数字の読み方は基準点と上乗せ点の仕組みを参照してください。
型ごとに翌年の最初の一手が変わる
型を決める意味は、翌年の学習時間を最初にどこへ回すかを決めることにあります。
午前割れ型は、民法20問の精度が最大の原因であることが多い型です。午前は時間に余裕がある部なので、時間ではなく知識の精度を疑います。午後割れ型は、知識の穴と時間切れの両方がありえます。択一を解き終えたときに時間が残っていたかどうかで切り分けてください。記述割れ型は、知識よりも処理手順の問題であることが多く、択一の勉強を増やしても直りません。合格点不足型は、どの部門も基準点は超えているので、上乗せを作りやすい部門を選んで伸ばす設計の問題です。上乗せの配り方は直前期の基準点戦略で整理しています。
失点の原因を掘る:知識・処理・時間・学習量
問題冊子の控えから1問ずつ原因を付ける
型が決まったら、次は本試験の問題を1問ずつ見直します。持ち帰った問題冊子と公表された正解を並べ、間違えた問題に原因を1つずつ付けます。
| 原因 | 状態 | 翌年の対処 |
|---|---|---|
| 知識 | 肢の正誤を知らなかった、覚え違えていた | 肢別の周回に戻す |
| 処理 | 知識はあったが、問いの向きの取り違え・絞り込みの誤り・マークずれで落とした | 解く手順を見直す |
| 時間 | 時間切れで解けなかった、勘でマークした | 時間配分の型を作り直す |
| 未学習 | その分野をそもそも回していなかった | 学習計画の配分を見直す |
この作業は本試験の記憶が残っているうちにやるほど正確になります。「時間がなくて勘でマークした問題」は、時間がたつと「知識がなかった問題」と区別がつかなくなります。択一の処理手順の点検には択一の解き方の手順の3分類がそのまま使えます。
科目別に失点を集計する
原因を付けたら、科目ごとに集計します。見たいのは、どの科目のどの原因で何問落としたかです。
- 民法で知識の失点が多いなら、周回の間隔と×肢の管理を見直す
- 不動産登記法・商業登記法で知識の失点が多いなら、記述式にも同じ穴がある可能性が高い
- マイナー科目で未学習の失点があるなら、11問のうち何問を捨てていたかを数える
- 時間の失点が午後の特定の科目に集中しているなら、その科目の前で時間を使いすぎている
集計すると、失点の半分以上が1つか2つの原因に集まっていることがよくあります。翌年はそこから手を付けます。マイナー科目で点を落としていた場合はマイナー科目の戦略が参考になります。
記述式は出題の趣旨と照らす
記述式は正解が公表されないので、択一式と同じ方法では原因を付けられません。そのかわり法務省は、受験案内書のとおり記述式の出題の趣旨を後日公表しています。自分の答案の控えや記憶と出題の趣旨を照らし、問われていた論点を拾えていたかを確認してください。
確認するのは、前提登記の要否・申請の件数と順序・登記できない事項の判断といった答案の骨格です。骨格を外していれば、その後の枠がまとめて崩れます。失点の型は記述式でよくあるミスの4分類で記録すると、翌年の演習で同じ型を追えます。
学習記録と突き合わせる
最後に、1年間の学習記録を見直します。記録がなければ、月ごとにどの科目をどれだけやったかを思い出せる範囲で書き出してください。
見るのは、計画した時間と実際に使えた時間の差、そして科目ごとの配分です。「民法に時間を使いすぎて商業登記法の記述が本番まで2周しかしていなかった」「11月から2月まで仕事の繁忙期でほぼ止まっていた」といった事実が出てきます。問題単位の分析で見えた失点と、この学習記録を重ねると、失点の原因が「やり方」なのか「量」なのかが分かります。必要な学習時間の見積もり方は司法書士試験に必要な勉強時間で扱っています。
翌年の計画を組み直す
残り約9か月を3期に分ける
本試験が7月上旬なら、10月から数えて残りは約9か月です。この期間を3つに分けて、期ごとに目的を1つに絞ります。
| 期間 | 目的 | 主な作業 |
|---|---|---|
| 10月〜12月 | 型と原因で見えた穴を埋める | 失点が集中した科目の肢別周回、記述式の雛形の総点検 |
| 1月〜4月 | 全科目を得点力に変える | 全科目の肢別周回、記述式の定期演習、年度別過去問 |
| 5月〜本試験 | 本番の条件で点を取る | 模試と年度別過去問の通し演習、改正の確認 |
1年目との違いは、最初の3か月を「全科目を最初からやり直す」ことに使わない点です。1年目の学習で身についている部分は、周回の間隔を空けて維持するだけで足ります。空いた時間を、分析で特定した穴に集中して回します。
教材は増やさず、使い方を変える
不合格の直後は、教材を買い替えたくなります。しかし失点の原因が処理や時間にあるなら、教材を替えても直りません。知識の失点であっても、原因が「回しきれなかった」ことにあるなら、新しい教材はさらに回らない量を増やすだけです。
教材を替えるのは、分析の結果「この教材では試験に出る範囲が拾えていない」と具体的に言える場合に限ってください。それ以外は、使い方を変えます。周回の間隔、×肢の管理、年度別過去問を解く頻度などです。回し方の設計は肢別過去問の勉強法にまとめています。
翌年に施行される改正を確認する
1年目の知識で翌年を受けると、その間に施行された改正の分だけ知識が古くなります。受験案内書には、解答にあたり適用する法令の基準日が書かれています。令和8年度の受験案内書では令和8年4月1日現在で施行されている法令でした。前の年の基準日から翌年の基準日までの間に施行される改正は、1年目には出題の対象外だった論点です。拾い方は法改正への対応で扱っています。
模試の位置づけを決め直す
1年目に模試を受けていた場合は、模試の結果と本試験の結果を比べてください。模試で基準点を超えていたのに本試験で割ったなら、本番の条件での処理に問題がある可能性があります。模試でも割っていたなら、知識の不足が本番でもそのまま出たと考えられます。翌年の模試の受け方は模試の活用法を参照してください。
続けるかどうかを決める
判断材料は3つに絞る
もう1年受けるかどうかは、気持ちではなく材料で決めるほうが後悔が少なくなります。材料は次の3つです。
- 部門ごとの基準点との差が縮んでいるか:複数年受けているなら、差の推移を見ます。総合点ではなく部門ごとに見てください。
- 翌年に確保できる学習時間:仕事や家庭の状況で、1年目と同じかそれ以上の時間が取れるかを見積もります。
- 分析で特定した穴が具体的か:「何を直せばよいか」が言えるなら、翌年の学習は1年目より効率が上がります。
3つとも否定的な答えになる場合は、受験の間隔を空けることも選択肢に入ります。どちらを選ぶにしても、材料を書き出したうえで決めてください。
生活の条件を見直す
学習時間が足りなかったことが原因なら、学習の中身より先に生活の条件を見直します。通勤時間の使い方、朝と夜のどちらに学習を置くか、休日の配分などです。仕事と学習の両立の組み方は社会人の両立の方法で扱っています。
なお、筆記試験に合格したものの最終合格に至らなかった場合は、受験案内書のとおり、申請により翌年の筆記試験が免除されます。この場合は分析の対象が口述試験になり、この記事の手順とは別になります。口述試験については口述試験の内容と対策を参照してください。
試験での出題ポイント
択一式ではこう問われる
翌年の本試験でも、過去に問われた論点は形を変えて出題されます。1年目に落とした問題の論点は、翌年以降も問われる可能性が十分にあるということです。本試験の問題は、翌年の最良の教材の1つになります。
- 本試験で落とした問題は、その論点の肢を肢別の周回に加える
- 正解したが根拠が曖昧だった問題も同じ扱いにする。次に同じ論点が出れば落とす
- 本試験の問題を、翌年の5月以降にもう一度時間を計って解く。1年でどれだけ処理が変わったかを確認できる
記述式との接続
記述式で基準点を割った場合、択一の登記法の知識に穴があるのか、答案構成の手順に穴があるのかで対処が分かれます。登記法の択一で知識の失点が多ければ前者、択一は取れているのに記述で崩れていれば後者です。後者なら、雛形を覚え直すより、事実関係の読み方と申請の順番を決める手順を固めるほうが効きます。答案構成の手順は不動産登記の答案構成と商業登記の答案構成で扱っています。
まとめ
- 結果は段階的に公表される。択一式の基準点を割っていれば、8月の時点で翌年の準備に入れる。
- 休む期間は最初に決め、再開初日にやることを1つだけ決めておく。
- 不合格は、午前割れ・午後割れ・記述割れ・合格点不足の4つの型に分かれる。型ごとに最初の一手が違う。
- 3部門の得点を基準点との差に直し、択一は問題数で持つ。
- 本試験の問題に1問ずつ、知識・処理・時間・未学習の原因を付けて科目別に集計する。
- 残り約9か月を3期に分け、最初の3か月は分析で特定した穴に集中する。教材は増やさず使い方を変える。
- 続けるかどうかは、基準点との差の推移・確保できる学習時間・穴の具体性の3つで決める。
よくある質問
択一の基準点に1問足りませんでした。翌年は何を変えればよいですか
1問差で割った場合でも、原因の分析は省かないでください。法務省が公表する得点順位別員数累計表を見ると、令和7年度・令和8年度とも基準点の1問下に数百人が並んでいます。その1問は知識不足でも処理ミスでも起こります。本試験の問題に原因を付け、処理や時間による失点が1問以上あるなら、知識を増やすより解く手順の見直しが先です。知識の失点ばかりなら、その科目の肢別周回を厚くします。いずれにしても、翌年は1問の余裕ではなく、数問の余裕を持って基準点を超える設計にしてください。基準点は年度によって動きます。
成績通知を申し込んでいませんでした。どう分析すればよいですか
受験案内書では、成績通知は筆記試験の会場で配られる封筒に住所と氏名を書いた希望者に送るとされ、希望の有無の変更には応じないと明記されています。この場合は自己採点で分析します。択一式は正解が公表されるので、問題冊子に控えた解答から点数が出ます。記述式は採点基準が公表されないため、出題の趣旨と照らして、書けていた欄と書けていなかった欄を分けるところまでで十分です。翌年は必ず封筒に記入してください。
不合格だったら、教材や講座を変えるべきですか
分析の結果次第です。失点の原因が処理や時間、学習量の不足にあるなら、教材や講座を変えても直りません。変える判断をするのは、「この教材では本試験で問われた論点が拾えていない」と具体的に言える場合です。その場合も、全科目を替えるのではなく、穴が見つかった科目だけを補うほうが1年目の蓄積を活かせます。
過去問ベースの肢別演習で、読んだ内容をそのまま演習に移せます。