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記述式 商業登記の答案構成:議事録から登記事項を拾う手順

記述式 読了 約10分

司法書士試験の記述式・商業登記で、議事録を議案カードに分解し、登記事項か・決議は有効か・いつ効力が生じたかの3つの問いで登記すべき事項を拾う手順を解説。添付書面の拾い方と例題つき。議事録は読めるのに答案がずれる受験生向け。

記述式の商業登記で、議事録は読めているのに答案がずれる。その原因の多くは、議事録の議案を「登記すべき事項」に変換する手順が決まっていないことにあります。結論を先に言います。議事録は議案ごとにカードに分解し、各カードに「登記事項か」「決議は有効か」「いつ効力が生じたか」の3つの問いを当てる。添付書面は、その議案を誰が決め、誰が承諾したかから逆算して拾う。この2つを型にすれば、拾い漏れと書きすぎは大きく減ります。

この記事は、商業登記の記述式で答案の骨格が安定しない受験生向けに、答案構成の中でも「議事録から登記事項を拾う」工程だけを掘り下げます。別紙全体の読み方と時間配分は記述式(商業登記法)の対策にまとめてあるので、そちらを土台にしてください。

答案構成で決めるのは「登記事項」と「効力の日」

雛形は登記の事由が決まれば書ける

解答欄に書く登記の事由・登記すべき事項・添付書面・登録免許税は、どの登記を申請するかが決まれば、雛形どおりに書けます。答案の出来を左右するのは、その手前の判断です。どの議案が登記になるか、それはいつ効力を生じたか。ここを誤ると、欄をどれだけ丁寧に書いても点になりません。

不動産登記との違い

不動産登記の答案構成では、申請の件数と順番が主役でした。考え方は記述式 不動産登記の答案構成で扱っています。商業登記では、1つの会社の変更を1通の申請書にまとめることが多く、主役は「議案の取捨」に移ります。

観点 不動産登記 商業登記
素材 事実関係と登記記録 議事録・定款・登記記録
最初の変換 権利変動の一覧表 議案カード
主な判断 件数と申請の順番 登記事項か、決議は有効か、効力の日
検算 名義の鎖 登記記録との差分

答案構成の成果物は3枚のメモ

商業登記の答案構成で作るのは、次の3枚のメモです。

  1. 議案カード:議事録の議案を1枚ずつ書き出したもの
  2. 登記事項表:3つの問いを通過した議案を、効力の日の順に並べたもの
  3. 添付書面表:登記事項ごとに、決めた者と承諾した者の書面を並べたもの

3枚とも問題用紙の余白に書く略記で足ります。清書する必要はありません。

議事録を「議案カード」に分解する

冒頭の数字を先に拾う

株主総会議事録の冒頭に、議決権を行使することができる株主の議決権の数と、出席した株主の議決権の数が書かれていれば、真っ先に拾います。取締役会議事録なら、在任する取締役と出席した取締役・監査役です。

この数字は、すべての議案の有効性判断に使います。議案を読む前に余白の上に書き出してください。株主リストが別紙にあれば、自己株式などで議決権の数が変わらないかもここで照合します。

1議案1枚で5項目を書く

議案ごとに、次の5項目をカードにします。

項目 書く内容 使い道
決議機関 株主総会・取締役会・取締役の過半数など その機関に権限があるか
決議の種類 普通決議・特別決議・特殊決議 必要な賛成数の計算
賛成数 議事録に書かれた賛成の議決権数 要件を満たすかの判定
内容 何を決めたか 登記事項かの判定
効力の日 決議の日、効力発生日、承諾の日 登記すべき事項の年月日

議長が「可決」と宣言しているかどうかは、カードに書きません。書くのは賛成数だけです。宣言は結論であって、要件を満たした証明ではないからです。

議事録の外にある事実も同じカードへ

就任承諾書の日付、辞任届が会社に到達した日、定款の任期の定めといった事実は、関係する議案のカードに書き足します。取締役の選任議案なら、そのカードに「承諾の日」を加える。これで、選任の日と就任の日のずれを見落としません。

各議案に3つの問いを当てる

問い1:登記事項か

最初に、その議案の内容が登記事項に当たるかを判定します。株式会社の登記事項は会社法911条3項に列挙されています。商号・本店・資本金の額・発行可能株式総数・取締役の氏名・代表取締役の氏名及び住所・取締役会設置会社である旨・監査役設置会社である旨などです。

逆に、議事録には登記事項でない議案も並びます。

議案 登記事項か 理由
計算書類の承認 当たらない 911条3項に列挙がない
役員の報酬の決定 当たらない 同上
定款の本店の所在地の変更のみ 当たらない 登記するのは本店の所在場所
商号の変更 当たる 911条3項2号
取締役の選任 当たる 911条3項13号

登記事項でない議案も、他の議案の前提として意味を持つことがあります。任期に関する定款変更は、それ自体を登記しなくても、役員の退任の日を変えます。カードを捨てる前に、他のカードに影響しないかだけ確認してください。

問い2:決議は有効か

次に、決議が有効に成立したかを判定します。見るのは、定足数、決議要件、決議機関の権限、選ばれた者の資格です。特別決議なら、議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が要ります(会社法309条2項)。

決議要件の一覧は株主総会の決議要件にあります。ここでの作業は、カードの賛成数と要件を突き合わせて、丸かバツを付けるだけです。バツが付いた議案は、登記できない事項の候補になります。理由の書き方は、前述の記述式対策の記事で型にしています。

問い3:いつ効力が生じたか

最後に、効力が生じた日を確定します。登記すべき事項に書く年月日は、この日です。

議案の型 効力の日 間違えやすい日
効力発生日を定めた定款変更 定めた効力発生日 決議の日
席上で承諾した取締役の選任 選任の日 なし
後日承諾した取締役の選任 承諾の日 選任の日
任期満了による退任 定時株主総会の終結の日 議事録の作成日

任期満了の日は、登記記録の就任の日と定款の任期から計算します。計算の手順は取締役の任期で確認してください。

登記すべき事項の書き方

登記記録に記録される文言で書く

登記すべき事項は、登記記録にそのまま記録される内容です。年月日、事由、対象の3つをそろえて書きます。役員の変更なら、たとえば次の形です。

  • 令和8年6月26日取締役A重任
  • 同日取締役C退任
  • 同日取締役D就任

退任の事由は、任期満了なら「退任」、ほかに「辞任」「解任」「死亡」「資格喪失」を書き分けます。代表取締役は住所も登記事項なので(会社法911条3項14号)、氏名と住所の両方を書きます。書式の細部は、注意事項の指示と、自分が使っている雛形の表記に合わせてください。

登記の事由と登録免許税の区分をそろえる

登記の事由は、登録免許税の区分と対応させて書くと、計算の漏れが減ります。

登記の事由 登録免許税法別表第一第24号(1) 税額
取締役・代表取締役の変更 カ 3万円。資本金1億円以下は1万円
商号変更・目的変更 ツ 3万円
取締役会設置会社の定めの設定など ワ 3万円
本店移転 ヲ 1箇所につき3万円

同じ区分に属する登記は1件として数えます。商号変更と目的変更を同時に申請しても、区分ツの3万円は1回です。区分が違えば合算します。本店移転の処理は本店移転登記で扱っています。

添付書面は「誰が決め、誰が承諾したか」から拾う

決めた者の書面

登記すべき事項につき株主総会や取締役会の決議を要するときは、その議事録を添付します(商業登記法46条2項)。株主総会の決議を要するときは、株主リストも添付します(商業登記規則61条3項)。

議案カードの「決議機関」の欄が、そのまま添付書面の候補になります。株主総会のカードが登記事項表に残れば株主総会議事録と株主リスト、取締役会のカードが残れば取締役会議事録です。

承諾した者と本人の書面

取締役・監査役・代表取締役の就任による変更の登記には、就任を承諾したことを証する書面を添付します(商業登記法54条1項)。退任による変更の登記には、退任を証する書面を添付します(同条4項)。

さらに、就任する者によって印鑑証明書や本人確認証明書が加わります。

場面 書面 根拠
取締役会を置かない会社の取締役の就任。再任を除く 就任承諾書の印鑑の印鑑証明書 商業登記規則61条4項
取締役会設置会社の代表取締役の就任。再任を除く 就任承諾書の印鑑の印鑑証明書 商業登記規則61条5項
代表取締役を選定した取締役会議事録 出席取締役・監査役の印鑑証明書。変更前の代表取締役の届出印と同一なら不要 商業登記規則61条6項
取締役・監査役の就任で、上の印鑑証明書を付けない場合。再任を除く 本人確認証明書 商業登記規則61条7項

「再任を除く」が付いているかどうかで、重任の役員に書面が要るかが決まります。役員変更の添付書面の詳細は役員変更登記の添付書面で扱っています。

表にしてから数える

添付書面は、登記事項ごとに表にしてから、最後に重複をまとめます。同じ株主総会議事録が、商号変更の決議を証する書面と、取締役の選任を証する書面と、任期満了による退任を証する書面を兼ねることがあります。表を作らずに書き出すと、同じ書面を重ねて書いたり、兼ねていることに気づかず抜かしたりします。

例題で答案構成を通す

別紙の要旨

完全に架空の事例で、ここまでの手順を通します。

株式会社みどり製作所は、公開会社でない取締役会設置会社・監査役設置会社で、資本金の額は3000万円です。定款では、取締役の任期は選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで、事業年度は毎年4月1日から翌年3月31日までです。登記記録では、取締役A・B・Cが令和6年6月の定時株主総会で重任し、代表取締役はA、監査役はEです。

令和8年6月26日の定時株主総会の議事録の要旨は次のとおりです。議決権を行使することができる株主の議決権の数は1,000個、出席した株主の議決権の数は700個でした。

  • 第1号議案:計算書類の承認。賛成700個
  • 第2号議案:商号を「みどり精機株式会社」に変更する定款変更。効力発生日は令和8年7月1日。賛成520個
  • 第3号議案:取締役としてA・B・Dを選任。各賛成600個。3名とも出席し、席上で就任を承諾
  • 第4号議案:監査役Eの解任。賛成420個。議長は可決を宣言

同日、総会の終結後に開かれた取締役会で、取締役A・B・D全員と監査役Eが出席し、全員一致でAを代表取締役に選定しました。Aは席上で就任を承諾し、議事録には登記所に提出している印鑑を押しています。申請は令和8年7月3日に、1通の申請書でするものとします。

議案カードと3つの問い

議案 問い1 登記事項か 問い2 有効か 問い3 効力の日
第1号 計算書類 当たらない 判定不要 なし
第2号 商号変更 当たる 特別決議。520個は700個の3分の2以上 令和8年7月1日
第3号 取締役選任 当たる 普通決議。600個は過半数 令和8年6月26日
取締役Cの任期 当たる 決議ではなく任期満了。再選されていない 令和8年6月26日
第4号 監査役解任 当たる 特別決議が必要。420個は3分の2に届かない 不成立
取締役会 代表取締役選定 当たる 全員出席・全員一致 令和8年6月26日

第4号は、議長が可決を宣言していても成立していません。監査役の解任は特別決議事項です(会社法309条2項7号)。700個の3分の2は約467個なので、420個では足りません。取締役Cは、令和6年6月の選任から2年以内に終了する最終の事業年度、つまり令和8年3月31日に終了する事業年度に関する定時総会の終結で、任期が満了します。AとBは同じ総会で選任され席上で承諾しているので、重任です。

答案の骨格

登記事項表と添付書面表から、答案の骨格を組みます。

欄 内容
登記の事由 商号変更、取締役及び代表取締役の変更
登記すべき事項 令和8年6月26日取締役A・B重任、取締役C退任、取締役D就任、代表取締役A重任。令和8年7月1日商号変更
添付書面 株主総会議事録、株主リスト、取締役会議事録、就任承諾書、本人確認証明書、委任状
登録免許税 区分カ1万円と区分ツ3万円で合計4万円
登記できない事項 監査役Eの解任。特別決議の要件を満たさず決議が成立していない

添付書面の中身を確かめます。株主総会議事録は、商号変更と取締役の選任とCの退任を兼ねます。就任承諾書は、A・B・Dの取締役と、Aの代表取締役の分です。席上で承諾した旨が議事録に書かれていれば、議事録の記載を援用する扱いがあります。本人確認証明書は新任のDの分だけで、再任のA・Bには要りません。Aは代表取締役の再任なので、就任承諾書の印鑑証明書は要りません。取締役会議事録にはAが届出印を押しているので、商業登記規則61条6項ただし書により、議事録の印鑑証明書も要りません。

最後に、登記記録との差分で検算します。登記記録の取締役はA・B・C、答案後はA・B・D。監査役Eは残る。商号は7月1日以降の新商号。この差分がすべて登記すべき事項に現れていれば、拾い漏れはありません。

試験での出題ポイント

択一式ではこう問われる

答案構成で使う知識は、商業登記法の択一でそのまま肢になります。

  • 取締役会設置会社において代表取締役でない取締役が新たに就任する場合、就任承諾書の印鑑につき印鑑証明書を添付しなければならない。誤りです。本人確認証明書を添付します(商業登記規則61条7項)
  • 登記すべき事項につき株主総会の決議を要する場合には、株主リストを添付しなければならない。正しいです(商業登記規則61条3項)
  • 代表取締役を再任する場合でも、取締役会議事録に押印した出席取締役の印鑑証明書は常に必要である。誤りです。変更前の代表取締役の届出印と同一なら不要です(商業登記規則61条6項ただし書)

記述式との接続

演習では、答案を書く前に3枚のメモだけを作る練習を繰り返すと効果的です。1問あたり15分程度で議案カード・登記事項表・添付書面表を作り、解答例と照らし合わせます。ずれた箇所が、問い1・2・3のどれで起きたかを記録してください。失点を型で記録する方法は記述式でよくあるミスで扱っています。

まとめ

  • 商業登記の答案構成の主役は、議案の取捨と効力の日の判定。雛形は登記の事由が決まれば書ける。
  • 議事録は冒頭の議決権数を先に拾い、議案ごとに決議機関・決議の種類・賛成数・内容・効力の日のカードにする。
  • 各カードに、登記事項か・決議は有効か・いつ効力が生じたかの3つの問いを当てる。議長の可決宣言は判定に使わない。
  • 登記すべき事項は、年月日・事由・対象をそろえて登記記録の文言で書く。登記の事由は登録免許税の区分と対応させる。
  • 添付書面は、決めた者の書面と承諾した者の書面に分けて表にし、最後に兼用をまとめる。
  • 答案後の登記記録を想像し、元の登記記録との差分で拾い漏れを検算する。

よくある質問

議案カードを作ると時間が足りなくなりませんか

カードは清書せず、議案番号・機関・賛成数・効力の日を略記するだけです。議事録を一度読むのと同じ速さで作れます。カードなしで答案を書き始めると、添付書面や登録免許税の欄で議事録を何度も読み返すことになり、結局は時間がかかります。午後の部全体の時間の配り方は午後の部の時間配分で扱っています。

登記事項でない議案は、読み飛ばしてよいですか

読み飛ばさず、カードは作ってください。計算書類の承認のように、それ自体は登記事項でなくても、その総会が定時株主総会であることを示し、役員の任期満了の日を決める手がかりになることがあります。任期に関する定款変更も、登記はしないが退任の日を変える議案です。問い1で登記事項に当たらないと判定した後に、他のカードへの影響だけを確認して閉じます。

議長が可決を宣言しているのに、登記できないと書いてよいのですか

書いてかまいません。決議が成立したかどうかは、会社法の要件を満たしたかで決まります。議長の宣言や議事録の「可決」という記載は、その判断を代わりにしてくれません。例題の第4号のように賛成数が要件に届いていなければ、議事録に可決と書かれていても、その議案に基づく登記は申請できません。理由は、要件と賛成数を示して簡潔に書きます。

読んだあとに、今日の1問を

過去問ベースの肢別演習で、読んだ内容をそのまま演習に移せます。

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