司法書士試験の2年合格スケジュール:働きながらの現実的な設計
1日2〜3時間で司法書士試験の合格を目指す社会人向けに、2年計画の組み方を示します。選ぶ基準、1年目と2年目の役割分担、季節ごとの到達目標、平日と休日の時間割、忘却対策と崩れたときの立て直しまで。

働きながら司法書士試験を目指すなら、2年計画を基本に考えるのが現実的です。結論を先に言います。1年目は主要4科目の択一を一周し、過去問を1周することに絞ります。2年目にマイナー科目と記述式の本格的な演習、直前期の仕上げを置きます。2年に収まるかどうかは、1週間に確保できる時間から逆算して決めます。
この記事は、社会人や子育て中で、平日は1日2〜3時間しか取れない人に向けて書いています。学習に専念できる人向けの12か月の計画は1年合格スケジュールで扱っています。ここでは期間を2年に延ばしたときに何が変わるか、季節ごとに何ができていればよいか、崩れたときにどう組み直すかに絞ります。
2年計画を選ぶ基準:週の時間から逆算する
総学習時間を週の時間に直す
学習時間の目安としてよく挙げられる3,000時間は、法務省が公表している数字ではありません。規模感をつかむための目安です。それでも計画の基準には使えます。3,000時間を2年で割ると、1年あたり1,500時間、1週間あたり約29時間になります。
| 学習期間 | 1年あたり | 1週間あたり | 1日あたり |
|---|---|---|---|
| 1年 | 3,000時間 | 約58時間 | 約8.2時間 |
| 2年 | 1,500時間 | 約29時間 | 約4.1時間 |
| 3年 | 1,000時間 | 約19時間 | 約2.7時間 |
1日あたりは365日で割った値です。社会人の場合、毎日同じ時間を取るのは難しいので、1週間の単位で考えるほうが実態に合います。3,000時間の内訳と、自分に必要な時間の見積もり方は司法書士試験に必要な勉強時間で扱っています。
平日2〜3時間で2年に届くか
平日に2〜3時間取れる人が、週29時間に届くかを確かめます。
| 平日 | 休日2日 | 1週間の合計 | 2年の合計の目安 |
|---|---|---|---|
| 3時間×5日 | 7時間×2日 | 29時間 | 約3,000時間 |
| 2.5時間×5日 | 6時間×2日 | 24.5時間 | 約2,500時間 |
| 2時間×5日 | 5時間×2日 | 20時間 | 約2,100時間 |
2年の合計は、1年を52週として計算しています。平日3時間と休日7時間を2年続けられれば、3,000時間に届きます。平日2時間と休日5時間では、2年で2,000時間ほどにとどまります。この場合は、2年半から3年の計画にするか、通勤や昼休みの時間を足して週の合計を引き上げるかを選びます。
まず2週間の実測から始める
計画を引く前に、2週間だけ実際の学習時間を記録してください。予定した時間ではなく、実際に机に向かった時間です。仕事の残業、子どもの寝かしつけ、家事の分担などで、思っていたより短くなることがよくあります。
実測した1週間の時間が25時間を超えていれば、2年計画で進めます。20時間前後なら、2年計画で始めつつ、1年目の終わりに到達度を見て期間を見直す前提にします。15時間を切るなら、最初から3年計画で引くほうが、途中で崩れにくくなります。

1年目と2年目の役割分担
1年目は主要4科目の択一に絞る
1年目の役割は、民法・不動産登記法・会社法・商業登記法の主要4科目を一周し、それぞれの過去問を1周することです。この4科目は、択一の出題数でも記述式の土台としても中心になります。1年目にここを固めておけば、2年目に何を足しても土台が崩れません。
1年目の進め方は、民法から始めて不動産登記法、会社法、商業登記法の順です。民法の理解が不動産登記法の前提になり、会社法の理解が商業登記法の前提になるからです。科目の順序と全体の道筋は合格ロードマップにまとめています。
1年目にマイナー科目へ手を広げないことが大事です。時間の限られた社会人が11科目を同時に回そうとすると、どの科目も一周目が終わらないまま1年が過ぎます。

2年目はマイナー科目・記述式・直前期
2年目の役割は3つです。
| 役割 | 時期 | 中身 |
|---|---|---|
| マイナー科目と憲法・刑法の一周 | 2年目の夏から冬 | 民事訴訟法・民事執行法・民事保全法・供託法・司法書士法、憲法・刑法を頻出分野に絞って |
| 記述式の本格化 | 2年目の秋から | 不動産登記と商業登記の答案を、時間を計って白紙から書く |
| 直前期の仕上げ | 2年目の春 | 間違えた肢の潰し込み、雛形の総点検、本番の時間割での演習 |
2年目に入っても、主要4科目の肢別の周回は止めません。新しい科目に時間の半分、主要4科目の周回に3割、記述式に2割ほどが2年目前半の目安です。マイナー科目の進め方はマイナー科目の攻略法で扱っています。
記述式は1年目の冬に入口だけ作る
記述式の本格的な演習は2年目に置きますが、入口は1年目に作ります。目安は、不動産登記法の択一を一周した直後です。この計画では1年目の冬にあたります。
1年目にやるのは、主要な登記の雛形を書き写すことだけです。所有権移転、抵当権設定、抵当権抹消、相続による所有権移転など、基本的な申請書の形を手で覚えます。週に2〜3時間の枠で十分です。商業登記の雛形は、商業登記法の択一を一周した1年目の春から始めます。
入口を1年目に作っておく理由は、記述式が量稽古でしか伸びないからです。2年目の秋にゼロから始めると、白紙から時間を計って書く練習に使える期間が半年しかありません。演習の段階的な進め方は記述式・不動産登記法の対策を参照してください。
1年目の本試験を受けるかどうか
1年目の終わりの7月には、本試験があります。マイナー科目が未学習の状態でも、受けるかどうかは迷うところです。判断の材料を並べます。
| 観点 | 受ける | 見送る |
|---|---|---|
| 得られるもの | 本番の時間感覚、会場の雰囲気、3つの基準点のうちどこが遠いかの実感 | 受験準備と当日の時間を学習に回せる |
| 失うもの | 受験申請の手間、直前の数週間の学習計画の乱れ | 本番を一度も経験しないまま2年目の本試験を迎える |
| 向いている人 | 主要4科目の一周が終わっている人 | 主要4科目の一周が終わっていない人 |
受ける場合も、1年目の本試験のために直前期の特別な対策はしません。その時点の力のまま受け、本番の時間割で何が起きたかを記録することが目的です。受験申請の時期と手続は司法書士試験の流れと日程で確認してください。
季節ごとの到達目標
2年を8つの季節に分ける
本試験の翌月の7月に学習を始め、2年後の7月の本試験を本命にする計画で考えます。筆記試験は例年7月の日曜日に行われますが、正確な日程は、その年度の法務省の公告と受験案内書で確認してください。
| 時期 | 主に学ぶ範囲 | 季節の終わりの到達目標 |
|---|---|---|
| 1年目の夏 7〜9月 | 民法 | 民法を一周し、肢別を一通り解いた |
| 1年目の秋 10〜12月 | 不動産登記法、民法の二周目 | 不動産登記法の申請の構造と添付情報を説明できる |
| 1年目の冬 1〜3月 | 不動産登記法の残り、会社法、不動産登記の雛形 | 不動産登記法を一周し、主要な雛形を書き写した |
| 1年目の春 4〜6月 | 会社法の残り、商業登記法、商業登記の雛形 | 主要4科目を一周し、過去問を1周した |
| 2年目の夏 7〜9月 | 民事訴訟法・民事執行法・民事保全法 | 手続法の流れを説明でき、肢別で6割 |
| 2年目の秋 10〜12月 | 供託法・司法書士法、記述式の演習 | マイナー科目を一周し、記述式を見ながら組み立てられる |
| 2年目の冬 1〜3月 | 憲法・刑法、記述式の白紙演習、年度別過去問 | 全科目を一周し、記述式を時間内に書き切れる回が出てきた |
| 2年目の春 4〜6月 | 直前期 | 3つの基準点を本番形式の演習で安定して超える |
肢別の正答率は、過去問を一肢ずつ解いたときの割合です。一周目の6割は低く見えますが、周回を重ねて上げていくので、この時期はそれで足ります。
季節の終わりに確かめること
季節の終わりには、1時間ほど取って次の3つを確かめます。
- その季節の学習時間の合計が、計画にどれだけ届いたか
- 上の表の到達目標に達したか
- 前の季節までに一周した科目の肢別の正答率が、落ちていないか
3か月単位で確かめるのは、社会人の1か月は繁忙期や家庭の行事で大きくぶれるからです。1か月の遅れで計画を見直していては、毎月組み直すことになります。3か月で見れば、忙しい月と余裕のある月がならされ、本当の遅れだけが見えます。
1年目の春が最初の分かれ目
2年計画の中で一番大事な確認は、1年目の春の終わりです。この時点で主要4科目の一周が終わっていれば、計画は順調です。理解が浅くても構いません。
一周が終わっていない科目があれば、2年目の夏の最初の1か月で埋めます。マイナー科目の開始を1か月遅らせても、2年目の冬までに全科目を一周する計画には収まります。2か月以上の遅れが出ている場合は、最後の節で扱う立て直しに進んでください。
平日と休日の時間割例
平日は知識を落とさない時間にする
平日の2〜3時間は、細切れになりやすく、仕事の疲れも残っています。新しい単元をじっくり読むより、覚えたことを保つ作業に向いています。
| 時間帯 | 平日の時間割例 | 作業 |
|---|---|---|
| 朝6時〜7時 | 1時間 | 前日に間違えた肢の見直し、テキストの読み直し |
| 通勤・昼休み | 30〜45分 | 肢別過去問を10〜20問 |
| 夜21時半〜22時半 | 1時間 | 肢別過去問の続き、雛形の書き写し |
朝の1時間は、仕事や家族の予定と重なりにくい時間です。頭の負荷が高い作業はここに置きます。夜は疲れているので、手を動かせば進む作業に限ります。子育て中で夜の時間が読めない人は、朝の時間を厚くし、夜は取れたらやる枠として扱ってください。

休日は範囲を進める時間にする
休日は、まとまった時間で新しい単元を進めます。
| 時間帯 | 休日の時間割例 | 作業 |
|---|---|---|
| 午前 | 3時間 | テキストの新しい単元を読み、その単元の過去問を解く |
| 午後 | 2〜3時間 | 記述式の雛形や演習、年度別過去問 |
| 夜 | 1時間 | 1週間の振り返りと翌週の配分 |
休日の午前は、平日に積み残した新しい単元をまとめて進める時間です。読む時間と解く時間は、おおむね半々にします。家族と過ごす時間を確保するために、休日のうち1日は午前だけにするなど、2日の配分に差をつけても構いません。社会人の1週間と1年の組み方は働きながら合格するための設計で詳しく扱っています。
2年目は休日の中身を入れ替える
2年目に入ると、休日の中身が変わります。1年目の休日は新しい単元の読み込みが中心でしたが、2年目の秋以降は記述式の演習と年度別過去問が中心になります。
記述式の答案作成は、事実関係の読み取りから申請書の作成まで、まとまった時間がかかります。平日の夜に1問を通して解くのは難しいので、休日の午後に固定します。平日は、雛形を1枚書き写す、前の休日に間違えた枠を書き直すといった短い作業で、記述式に触れ続けます。
中だるみと忘却への対策
1年目の冬に中だるみが来る
2年計画では、1年目の冬に中だるみが来やすくなります。学習を始めた頃の勢いが落ち、本試験はまだ1年半先で、民法で覚えたはずのことを忘れ始める時期です。
この時期に必要なのは、やる気を出すことではなく、進んでいることを数字で見える状態にすることです。肢別の周回数、累計の学習時間、季節ごとの到達目標の達成状況を記録しておくと、手応えが薄い時期でも前に進んでいることが分かります。
周回で忘れる前に戻る
2年計画の弱点は、1年目に学んだ民法を本試験までの約2年間保たなければならないことです。忘れてから学び直すと、最初に学んだときに近い時間がかかります。忘れる前に戻ることで、復習の時間は短くなります。
| 周回 | 時期の目安 | 中身 |
|---|---|---|
| 一周目 | 単元を学んだ当日 | その単元の肢別を全部解く |
| 二周目 | 1〜2週間後 | 一周目で間違えた肢と、迷った肢 |
| 三周目 | 1〜2か月後 | 科目全体を通して解く |
| 以降 | 季節に1回 | 科目全体を回し、2回以上間違えた肢に印をつける |
新しい科目を学んでいる間も、既習科目の肢別を毎週一定量回します。1年目の冬に会社法を学んでいる時期でも、民法と不動産登記法の肢別を週に数時間は残してください。

肢別過去問を平日の柱にする
平日の細切れ時間で忘却を防ぐには、肢別過去問が最も向いています。1肢ずつ正誤を判断し、根拠を確かめる作業は、10分でも成立します。通勤の電車の中でも、子どもが寝た後の30分でも続けられます。
間違えた肢には印をつけ、2回以上間違えた肢を別に管理します。直前期に見直すのは、この2回以上間違えた肢です。回し方と間違えた肢の管理は肢別過去問の勉強法で扱っています。
計画が崩れたときの立て直し
遅れは季節単位で吸収する
社会人の2年計画は、ほぼ確実にどこかで崩れます。繁忙期、異動、家族の病気など、学習が止まる時期は予告なく来ます。
遅れが1つの季節の範囲内なら、次の季節で吸収します。吸収するときは、新しい科目の範囲を削るのではなく、周回の対象を絞ります。民法の三周目を全範囲で回す予定だったなら、一周目と二周目で間違えた肢だけに絞ります。2年目の冬には、最初から予備の時間を置いておき、それまでの遅れをここで受け止めます。

止まった後の再開は15分から
数週間まったく手をつけられなかった後に、取り戻そうとして1日の時間を倍にしても続きません。再開は次の順で進めます。
- 15分だけ教材を開き、肢別を10問解く
- 新しい単元ではなく、既習範囲の復習から入る
- 量は問わず、3日続けて触る
- 元の計画に戻そうとせず、残りの期間で何ができるかを計算し直す
止まった期間を責めても学習は進みません。再開した日を記録に残し、次の季節の終わりに改めて到達度を確かめます。
2年目の冬に一周が終わらなければ
2年目の冬の終わりに全科目の一周が終わっていない場合は、優先順位を切り直します。配点の大きい民法・不動産登記法・商業登記法と記述式を最優先にし、憲法・刑法は頻出分野だけに絞ります。未学習の科目を1つも残さないことを、精度より優先してください。
それでも届かないと判断したら、2年目の本試験は受けたうえで、翌年を本命にする3年計画に引き直します。2年目の本試験で、どの部門が基準点に届かなかったかを確かめ、3年目の配分を決めます。不合格の後の立て直しは司法書士試験に落ちたときの立て直し方で扱っています。
本試験の科目構成とスケジュールの関係
配点の大きい科目を1年目に置く理由
2年計画で主要4科目を1年目に置くのは、本試験の科目構成に合わせるためです。出題数は例年の目安ですが、午前の部の択一35問のうち、民法が20問、会社法・商法が9問を占めます。午後の部の択一35問のうち、不動産登記法が16問、商業登記法が8問です。記述式は午後の部に2問あり、不動産登記と商業登記から1問ずつ出ます。
主要4科目は択一の出題数が多いだけでなく、記述式の土台にもなります。1年目にこの4科目を固めることは、2年目の記述式の演習を始めるための準備でもあります。
マイナー科目は2年目でも間に合う
マイナー科目は、午後の部の択一で合計11問です。範囲が主要科目より狭く、一周にかかる時間が短いので、2年目の夏から秋の半年で一周できます。憲法と刑法は午前の部で3問ずつで、頻出分野に絞れば2年目の冬の1か月ほどで回せます。
ただし、マイナー科目を後回しにしすぎると、午後の択一の基準点が危うくなります。2年目の秋までに一周を終え、冬からは主要科目と同じように季節に1回の周回に乗せてください。
直前期は2年目の春に置く
本試験の3か月前からは、新しい範囲を増やさず、持っている知識を得点に変える時期に切り替えます。2年計画では、2年目の4〜6月がこの直前期にあたります。この時期の受験申請は、受付期間を法務省の公告と受験案内書で確かめ、早めに済ませます。直前期の3か月の組み立ては直前期の基準点戦略で扱っています。
まとめ
- 3,000時間を2年で割ると週約29時間。2週間の実測で、2年に収まるかを先に確かめる
- 1年目は主要4科目の択一の一周と過去問1周に絞り、マイナー科目には手を広げない
- 2年目はマイナー科目と憲法・刑法の一周、記述式の本格化、直前期の仕上げに充てる
- 記述式は1年目の冬に雛形の書き写しで入口を作り、2年目の秋から白紙演習に移る
- 平日は肢別過去問で知識を落とさず、休日に新しい単元と記述式を進める
- 到達度は季節ごとに確かめ、遅れは次の季節で周回の対象を絞って吸収する
- 本試験の日程と受験申請の期間は、その年度の法務省の公告で確かめる
よくある質問
1年目の本試験は受けたほうがよいですか
主要4科目の一周が終わっているなら、受ける価値があります。本番の時間割で解く経験と、3つの基準点のうちどれが遠いかの実感は、2年目の計画に直接使えます。一周が終わっていない場合は、受験より学習の継続を優先しても構いません。どちらを選んでも、2年目の本試験が本命であることは変わりません。
子育て中で平日の夜が読めません
夜を計画の柱にせず、朝の時間と通勤や昼休みを柱にしてください。夜は取れたら肢別を解く枠として扱えば、予定どおりにいかなくても計画は崩れません。週の合計が20時間を切るようなら、最初から2年半から3年の計画で引くほうが、途中で諦めずに続けられます。
2年計画だと最初に学んだ民法を忘れませんか
忘れます。だからこそ、忘れる前に戻る周回を最初から計画に入れます。単元を学んだ当日、1〜2週間後、1〜2か月後、それ以降は季節に1回のように間隔を空けて肢別を回すと、学び直しの時間は短くなります。新しい科目を学んでいる時期も、民法の肢別を週に数時間は残してください。

