司法書士試験AIブートラボ 司法書士AIブートラボ
記事 / 学習法 / 司法書士試験のテキスト選びの基本:基本書・過去問・六法...

司法書士試験のテキスト選びの基本:基本書・過去問・六法の揃え方

学習法 読了 約11分

司法書士試験の教材を、基本書・過去問集・六法・雛形集・先例集の5つの型で整理します。型ごとの選ぶ基準、揃える順番、改訂版が出たときの買い替えの判断まで。教材選びで迷っている受験生向けです。

司法書士試験の教材は、書名ではなく「型」で考えると迷いが減ります。結論を先に言います。核になるのは基本書・過去問集・六法の3つで、雛形集と先例集は必要になった時点で足します。選ぶ基準は、対応している法令の時点、過去問集との参照のつながり、自分が一周できる分量の3つです。改訂版が出たときは、前の版との差分の量で買い替えるかどうかを決めます。

この記事は、これから教材を揃える人と、手元の教材を買い替えるべきか迷っている受験生のためのものです。独学での教材の組み方の全体は司法書士は独学で合格できるかで扱っているので、ここでは型ごとの選ぶ基準と、揃える順番、改訂版の扱いに絞ります。特定の出版社や書名の比較はしません。どの教材にも当てはまる確かめ方を示します。

教材は5つの型で考える

型ごとの役割と、必要になる時期

司法書士試験の教材は、次の5つの型に分けられます。

型 役割 必要になる時期
基本書 制度と要件・効果を理解する 学習の初日
過去問集 正誤を判断する力をつける 最初の単元を読み終えたとき
六法 条文の文言を確かめる 最初の単元を読み終えたとき
雛形集 申請書の型を覚える 不動産登記法の択一を一周したとき
先例集 登記の実務上の取扱いを確かめる 過去問で基本書にない先例に何度も出会ったとき

ここでいう基本書は、科目別に制度を説明したテキストのことです。講義の板書をまとめたものでも、学者の体系書でもなく、試験範囲を網羅した受験用のテキストを指します。

核は3つ、雛形集と先例集は後から

学習の初日に要るのは基本書だけで、最初の単元を読み終えるころに過去問集と六法が加わります。この3つが揃えば、択一の学習は回ります。

雛形集は、不動産登記法の択一を一周して記述式に着手する時点で要ります。それより前に買っても、申請書の欄の意味が分からないまま眺めることになります。先例集はさらに後で、買わずに済む受験生も多い型です。最初から5つを揃えようとすると、使わない教材に費用と時間をかけることになります。

型を増やさない

学習が進むと、一問一答、論点別のまとめ本、判例集、図解本など、5つの型に収まらない教材が目に入ります。買う前に、その教材がどの型の役割を担うかを考えてください。

目に入る教材 担う役割 吸収できる型
一問一答 正誤判断の反復 肢別形式の過去問集
論点別のまとめ本 知識の整理 基本書の表と自分の比較表
判例集 判例の事案と結論の確認 基本書と過去問集の解説
数字の暗記本 期間・人数・金額の整理 自分で作る数字の表

どれも既存の型で代わりが利きます。型が増えるほど1冊あたりの回転数が落ち、定着が悪くなります。新しい教材は、既存の5つの型ではどうしても埋まらない穴があるときだけ足してください。

基本書を選ぶ基準

対応している法令の時点を確かめる

最初に確かめるのは、その基本書がどの時点の法令に対応しているかです。奥付の発行日と、はしがきの記載で確認します。はしがきに「令和○年○月○日現在の法令に基づく」といった記載があれば、それが対応時点です。

司法書士試験の解答は、受験案内書が定める基準日の法令で行います。令和8年度の受験案内書は、令和8年4月1日現在で施行されている法令と定めていました。基本書の対応時点がこれより前なら、その間に施行された改正は基本書に載っていません。

たとえば民法では、父母の離婚後の子の養育に関する改正が2026年4月1日に施行されました。不動産登記法では、住所等変更登記の申請義務化が同じ日に施行されています。それより前の時点に対応した基本書では、この2つが拾えていません。改正の拾い方は法改正への対応で扱っています。

過去問集と参照でつながるか

基本書を単独で評価するより、過去問集とどうつながるかを見るほうが実用的です。確かめる点は次の3つです。

  1. 基本書の本文や欄外に、その論点が出題された年度が書かれているか
  2. 過去問集の解説に、基本書の対応箇所が示されているか
  3. 基本書の用語と過去問集の解説の用語がそろっているか

1と2があれば、過去問を解いて間違えたときに、基本書のどこへ戻ればよいかがすぐ分かります。この往復の速さが、周回の速さを決めます。同じシリーズの基本書と過去問集なら、この参照がつながっていることがあります。買う前に確かめてください。別々のシリーズを組み合わせるなら、少なくとも3の用語のずれがないかを確かめてください。

一周できる分量かを最初の単元で試す

基本書の分量は、読み比べの印象ではなく数字で判断します。手に取れるなら、民法の代理の章のように中身の詰まった単元を30分読み、何ページ進んだかを数えます。全体のページ数をその速度で割れば、一周にかかる時間の見積もりが出ます。

たとえば30分で8ページ進み、民法の基本書が全体で800ページあれば、一周に50時間かかります。一周目を2か月で終えたいなら、1日あたり50分強です。この数字が自分の学習時間に収まらないなら、その基本書は一周目の教材として重すぎます。網羅性の高い基本書は安心感がありますが、一周できない基本書は網羅性を発揮できません。

表と索引の作りを見る

司法書士試験は、似た制度の違いを問う出題が多い試験です。基本書の中に比較の表がどれだけあるかは、学習の効率に直結します。制限行為能力者の4類型、抵当権と根抵当権、取締役と監査役の任期のように、並べて覚える論点が表になっているかを見てください。

索引も確かめます。過去問で出会った用語から基本書の該当ページを引けるかどうかで、復習の手間が変わります。事項索引に加えて条文索引があれば、六法で読んだ条文から基本書の説明へ戻ることもできます。

過去問集を選ぶ基準

形式は肢別を軸にする

過去問集には、一肢ずつ正誤を判断する肢別形式と、本試験の5肢の形のまま年度ごとに並べた年度別形式があります。日々の周回の軸には肢別形式を使い、年度別形式は時間を計った演習に使います。形式ごとの使い分けと周回の設計は肢別過去問の勉強法で、遡る年数は過去問は何年分やるかで扱っています。

改正の扱いが明示されているか

過去問は古い年度の法令で作られています。過去問集を選ぶときは、改正で結論が変わった肢をどう扱っているかを確かめます。見るのは次の点です。

確認する点 望ましい状態
改正前の肢の扱い 削除するか、現行法に合わせて改題し、その旨を注記している
注記の対応時点 受験する年度の基準日に近い
解説の法令 現行法の条文番号で書かれている

注記がない過去問集では、改正前の肢を自分で見分けなければなりません。民法の債権法や相続法のように改正の範囲が広い分野では、この作業に相当の時間がかかります。

解説に根拠条文が書かれているか

解説の質は、正誤の理由が条文か判例か先例かに結びついているかで判断します。「正しい。民法○条○項」と根拠が示されていれば、六法を引いて確かめられます。理由だけが文章で書かれ、根拠が示されていない解説は、間違えたときに戻る先が決まりません。

六法を選ぶ基準

収録法令を確かめる

司法書士試験の六法で最も大事なのは、収録されている法令の範囲です。法律だけでなく、政令と省令まで要るからです。確かめる法令は次のとおりです。

科目 法律 政令・省令
不動産登記法 不動産登記法 不動産登記令、不動産登記規則
商業登記法 商業登記法 商業登記規則
供託法 供託法 供託規則
司法書士法 司法書士法 司法書士法施行規則
登録免許税 登録免許税法 税率は法律の別表第一で確かめる

不動産登記法の択一と記述式は、法律より不動産登記令と不動産登記規則の規定で決まる部分が多くあります。申請情報の内容は不動産登記令3条、添付情報の多くは不動産登記令7条と別表、印鑑証明書の要否は不動産登記令16条と不動産登記規則48条で定められています。一般向けの六法には、これらの政省令が収録されていないことがあります。司法書士試験向けと明示された六法か、収録法令一覧に上の表の法令が載っている六法を選んでください。

判例付きか、条文だけか

六法には、条文の後に判例の要旨を載せた判例付きのものと、条文だけのものがあります。司法書士試験では、判例の学習は基本書と過去問集の解説で足ります。六法は条文の文言を確かめる道具と割り切れば、条文だけの六法で十分です。判例付きは厚く重くなり、引く速さが落ちます。

紙の六法と e-Gov 法令検索の使い分け

六法は年版で出るので、毎年買い替えるかどうかが問題になります。判断の目安は、前の年の基準日から今年の基準日までに、自分が受ける科目で改正があったかどうかです。改正があった科目の条文は、e-Gov 法令検索で現行の条文を確かめられます。改正履歴と施行日も表示されるので、条文の確認には紙の六法より正確です。

紙の六法の利点は、一覧性と書き込みです。同じページで前後の条文が目に入り、線や印を残せます。条文の素読は紙で、改正と施行日の確認は e-Gov で、と役割を分けると、紙の六法を毎年買い替えなくても済みます。条文の読み方と数字の覚え方は条文の覚え方で扱っています。

雛形集と先例集はいつ、どう選ぶか

雛形集は記述式に入る時点で1冊

基本書の中にも申請書の記載例は載っています。不動産登記法の択一を学んでいる間は、それで足ります。雛形集が要るのは、記述式に着手して、主要な登記の申請書を白紙に書く練習を始める時点です。

雛形集を選ぶ基準は次の4つです。

  1. 登記の目的・原因・申請人・添付情報・登録免許税が、登記ごとに同じ並びで載っている
  2. 添付情報と登録免許税に根拠条文が書かれている
  3. 対応している法令の時点が新しい
  4. 基本書の記載例と表記がそろっている

4つ目が見落とされがちです。基本書と雛形集で「権利者」「義務者」の表記や添付情報の並べ方が違うと、どちらで覚えるべきかで迷います。同じシリーズで揃えるか、表記の違いを最初に確かめてください。雛形の覚え方そのものは雛形の覚え方で扱っています。

先例集は過去問で必要性を判断する

先例は、登記の実務上の取扱いを示した法務省の通達や回答です。不動産登記法の択一では、先例の結論を問う肢が出ます。ただ、過去問に出た先例の多くは、基本書と過去問集の解説に載っています。

先例集を買うかどうかは、過去問の周回の中で判断します。基本書にも解説にも載っていない先例に、同じ分野で何度も出会うなら、その分野を補う教材を検討します。そうでなければ、先例集は要りません。先例の学び方は不動産登記法の勉強法で扱っています。

揃える順番と、改訂版が出たときの扱い

揃える順番

教材は、学習の進行に合わせて順に揃えます。一度に全部を買う必要はありません。

時期 揃えるもの 揃える理由
学習開始 民法の基本書 最初に学ぶ科目だけでよい
民法の最初の単元を読み終えたとき 民法の過去問集、六法 単元ごとに基本書と過去問を往復するため
民法の一周が見えたとき 不動産登記法の基本書と過去問集 民法の知識が新しいうちに登記法へ入るため
不動産登記法の択一を一周したとき 雛形集、記述式の問題集 記述式に着手するため
会社法に入るとき 会社法・商業登記法の基本書と過去問集 会社法と商業登記法を続けて学ぶため
主要科目の二周目 マイナー科目・憲法・刑法の基本書と過去問集 主要科目と並走させるため

科目の順序の理由は合格ロードマップで説明しています。順に揃えると、後の科目の教材を買う時点で、その年の改訂版が出ていることもあります。最初にまとめて買うより、新しい法令に対応した版を手にしやすくなります。

改訂版が出たら差分の量で決める

基本書や過去問集の改訂版が出たとき、買い替えるかどうかは差分の量で決めます。はしがきや改訂の案内で、何が変わったかを確かめてください。

差分 判断
誤植の訂正、体裁の変更だけ 買い替えない
改正が1つか2つ、該当箇所が数ページ 買い替えない。条文を確かめて手元の版に書き込む
改正が章単位に及ぶ その科目だけ買い替える
自分の版の対応時点から基準日までに大きな改正が複数ある 買い替える

全科目を一度に買い替える必要はありません。改正は科目ごとに起きるので、判断も科目ごとにします。民法の親族のように改正が続いた分野を含む科目は買い替え、改正のなかった科目は手元の版を使い続ける、という組み合わせで構いません。

書き込みを移す手間を見積もる

買い替えで見落とされがちなのが、書き込みの移し替えです。何周も回した基本書には、過去問で間違えた箇所の印や、比較の書き込みが残っています。新しい版でこれを一から作り直すと、数十時間を失うことがあります。

移し替えは、全部ではなく改正のあった章と、過去問で2回以上間違えた箇所に絞ります。それ以外の章は、新しい版を読むときに旧版を横に置いて参照すれば足ります。直前期に入ってからの買い替えは、この手間が回転数を削るので避けてください。

乗り換えたくなったときの確かめ方

改訂とは別に、使っている基本書そのものに不満が出ることがあります。乗り換える前に、不満の原因が教材にあるのか、使い方にあるのかを分けてください。

症状 原因の見当 先にやること
読んでも頭に入らない 過去問との往復が足りない 単元ごとに過去問を解いてから読み直す
過去問の論点が載っていない 基本書の網羅性の不足 載っていない論点を数え、特定の分野に偏るか確かめる
説明が分かりにくい章がある その章だけの問題 その章だけ別の説明で補う
全体に分量が多すぎる 一周目の教材として重い 一周目は太字と表だけで回す

載っていない論点が特定の分野に偏るなら、その分野だけ補います。全体を乗り換えるのは、ほぼすべての分野で不足があるときだけです。

試験での出題ポイント

択一式ではこう問われる

教材の選び方は、択一の肢のどこで効いてくるかで考えると分かりやすくなります。

  • 条文の文言をそのまま使った肢:「以上」と「超える」、「みなす」と「推定する」のように、一語の違いで正誤が決まる肢は、六法で文言を確かめた経験がものを言います
  • 政省令の規定を問う肢:添付情報の要否や申請情報の内容は、不動産登記令と不動産登記規則の規定です。六法にこれらが収録されていなければ、確かめる手段がありません
  • 改正で結論が変わった論点の肢:基本書の対応時点が古いと、旧法の結論で覚えたまま本試験を迎えます

記述式との接続

記述式の答案は、雛形集で覚えた型で書きます。基本書・雛形集・記述式の問題集の3つで表記がそろっていれば、覚えた型がそのまま答案になります。表記がばらばらだと、本番で「どちらの書き方だったか」と迷う時間が生まれます。記述式の教材の使い方は不動産登記法の記述式対策で扱っています。

まとめ

  • 教材は基本書・過去問集・六法・雛形集・先例集の5つの型で考える。核は最初の3つ
  • 基本書は、対応している法令の時点、過去問集との参照のつながり、一周できる分量で選ぶ
  • 過去問集は肢別形式を軸にし、改正の扱いと解説の根拠条文を確かめる
  • 六法は、不動産登記令・不動産登記規則・商業登記規則・供託規則まで収録されているかで選ぶ
  • 雛形集は記述式に入る時点で、先例集は過去問で必要性が見えたときに足す
  • 教材は学習の進行に合わせて科目ごとに揃える
  • 改訂版は差分の量で判断し、買い替えるなら科目単位で。書き込みの移し替えは改正箇所と弱点に絞る

よくある質問

基本書と過去問集は同じシリーズで揃えるべきですか

揃えると、過去問集の解説から基本書の対応箇所へ戻る参照がつながっていることがあり、用語もそろいやすくなります。別々のシリーズでも使えますが、その場合は用語のずれがないか、解説から基本書のどこへ戻るかを自分で決めておく必要があります。周回の速さを重視するなら、同じシリーズのほうが手間は少なくなります。

古い年版の六法を使い続けても大丈夫ですか

使い続けること自体は可能です。その場合、六法の年版の時点から受験する年度の基準日までに施行された改正を書き出し、該当する条文を e-Gov 法令検索で確かめて書き込んでください。改正が多い年に手元の六法が数年前のものなら、買い替えたほうが確認の手間は少なく済みます。

中古の基本書を使ってもよいですか

使えます。確かめるのは、対応している法令の時点と、前の持ち主の書き込みの量です。対応時点が古ければ、改正の差分を自分で埋める必要があります。書き込みが多いと、自分の印と区別がつかなくなります。民法や不動産登記法のように改正が続いた科目は、新しい版を選ぶほうが結果として時間を節約できることがあります。

読んだあとに、今日の1問を

過去問ベースの肢別演習で、読んだ内容をそのまま演習に移せます。

関連記事