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マイナー科目の攻略法|民訴・供託・書士法

司法書士試験の午後の部で出るマイナー科目11問を落とさないための戦略。学習開始時期と時間配分、民訴・民執・民保・供託・司法書士法の攻略順序、条文素読の効かせ方までを解説します。

司法書士試験の受験勉強で、最後まで手つかずのまま残りやすいのがマイナー科目です。民事訴訟法、民事執行法、民事保全法、供託法、司法書士法。この5科目は午後の部の択一式で合計11問が出題されますが、多くの受験生が「不動産登記法と商業登記法が終わってから」「記述式のめどが立ってから」と後回しにし、結果として直前期に慌てて詰め込むことになります。

しかしこの11問は、投入時間に対する得点効率でいえば、主要科目をはるかに上回ります。民法20問を1問伸ばすために必要な労力と、司法書士法1問を確実に取るために必要な労力は、まったく釣り合っていません。マイナー科目を軽視することは、最も安く買える点数を買わずに、最も高い点数を買いに行くのと同じです。

この記事では、マイナー科目11問をどの順序で、いつから、どれだけの時間をかけて仕上げるのかという設計図を示したうえで、科目ごとの具体的な攻略法を解説します。あわせて、午前の部のマイナーである憲法3問・刑法3問をどう割り切るかについても一章を設けます。

マイナー科目とは何か — 午後の部11問の正体

まず、午後の部の出題構成を正確に把握するところから始めます。感覚的に「マイナー科目は少ししか出ない」と思っていると、優先順位を誤ります。

午後の部・択一式35問の内訳

科目 出題数 配点 位置づけ 不動産登記法 16問 48点 主要科目 商業登記法 8問 24点 主要科目 民事訴訟法 5問 15点 マイナー科目 供託法 3問 9点 マイナー科目 民事執行法 1問 3点 マイナー科目 民事保全法 1問 3点 マイナー科目 司法書士法 1問 3点 マイナー科目 合計 35問 105点 —

午後の部の択一式は35問105点です。このうちマイナー科目は11問33点。割合にすると、午後択一の3割強がマイナー科目から出ています。3問に1問はマイナー科目だ、という数字の実感を持ってください。

さらに、午後の部にはこの択一35問に加えて記述式2問140点があります。記述式は令和6年度(2024年度)から配点が70点から140点へと倍増しました。つまり午後の部は合計245点の勝負であり、そのなかで択一35問を解く時間をどれだけ圧縮できるかが、記述式2問の出来を直接左右します。マイナー科目の話が単なる33点分の話に留まらないのは、この時間の問題があるからです。

「マイナー」という呼び名の危うさ

マイナー科目という呼称は、単に出題数が少ないことを指しているにすぎません。難易度が低いという意味でも、勉強しなくてよいという意味でもありません。実際、民事訴訟法は条文数も判例も多く、範囲だけで見れば決してコンパクトな科目ではありません。

一方で、民事執行法・民事保全法・司法書士法の3科目は、出題数が各1問と限られており、かつ出題される論点の幅が狭いという特徴があります。同じ「マイナー科目」というくくりのなかでも、性質はまったく異なります。ひとまとめにして「後回し」と処理してしまうと、この差が見えなくなります。

本記事では以下の3つの層に分けて考えます。

  • 第1層(民事執行法・民事保全法・司法書士法/計3問) — 範囲が狭く、短期間で仕上がる。最優先で着手する層。
  • 第2層(供託法/3問) — 手続の骨格と先例の知識で決まる。パターン化しやすく、費用対効果が高い層。
  • 第3層(民事訴訟法/5問) — 範囲が広く、体系理解が要る。早めに始めて長く付き合う層。

出題数が多い順に手をつけるのではなく、仕上がりの速い順に手をつけます。理由は次章で説明します。

なぜ11問が合否を分けるのか

マイナー科目に力を入れるべき理由は3つあります。得点効率、時間効率、そして基準点制度の構造です。

理由1:1問あたりの学習コストが圧倒的に安い

司法書士試験の合格に必要な学習時間は膨大ですが、その配分は科目ごとに均等ではありません。ごく大まかな感覚として、次のような差があります。

科目 出題数 到達までの相対的な負荷 1問あたりの負荷 民法 20問 非常に大きい 中 不動産登記法 16問 非常に大きい 中 商法・会社法 9問 大きい やや大 民事訴訟法 5問 中 中 供託法 3問 小 小 司法書士法 1問 極小 極小

司法書士法は条文数が限られ、出題される範囲も業務範囲・登録・司法書士法人・懲戒・司法書士会などに集中しています。ここを固めるのに必要な時間は、他科目の1問を上積みするのに必要な時間よりはるかに短いと考えてよいでしょう。それにもかかわらず、司法書士法を最後まで放置して本番で失点する受験生は少なくありません。

この非対称性こそが、マイナー科目を先に固めるべき最大の理由です。合格ラインの手前で毎年足踏みしている受験生の多くは、主要科目の細かい知識を積み増すことに時間を使い、安く買える点を買い逃しています。

理由2:午後の部の時間配分を救う

午後の部は択一35問と記述式2問を、限られた時間のなかで処理しなければなりません。記述式の配点が140点に増えた以上、記述式に投入できる時間をどれだけ確保できるかが合否を決めます。

そこで問題になるのが、択一を何分で抜けるかです。多くの合格者が目標に置くのは、択一35問を60分前後で処理し、残りを記述式に充てるという型です。この型を成立させるには、1問あたり平均1分40秒ほどで判断を下し続ける必要があります。

不動産登記法16問と商業登記法8問は、事案を読み込んで登記手続の可否を判断する問題が多く、どうしても時間がかかります。ここで時間を使う前提に立つなら、マイナー科目11問は「読んだ瞬間に切れる」状態にしておかなければ計算が合いません。

つまりマイナー科目の完成度は、33点という得点だけでなく、記述式に回せる時間という形でも効いてきます。マイナー科目があやふやな受験生は、択一で迷って時間を溶かし、記述式の最後の欄が埋まらないまま終わります。逆にマイナー科目が完成していれば、11問を10分台で抜けて、その分を記述式の見直しに使えます。この差は33点よりずっと大きな影響を及ぼします。

理由3:基準点制度が科目の穴を許さない

司法書士試験には、午前の部の択一・午後の部の択一・記述式のそれぞれに基準点(いわゆる足切り)が設けられています。3つの基準点をすべて超えたうえで、総合の合格点に達して初めて合格となります。総合点がどれだけ高くても、1つでも基準点を下回れば不合格です。

午後択一の基準点は、例年おおむね7割前後の水準に落ち着くことが多いとされています。105点満点のうち7割といえば約24〜25問。35問中10問しか間違えられない計算です。ここでマイナー科目11問のうち5問を落としてしまえば、残る不動産登記法・商業登記法24問で5問しかミスできないという、かなり苦しい戦いになります。

逆に、マイナー科目11問のうち9問以上を確保できれば、主要科目24問で許される失点が大きく広がります。マイナー科目は、午後択一の基準点を突破するための土台なのです。基準点制度そのものの考え方や、上乗せ点をどう積むかについては直前期の過ごし方と基準点戦略で詳しく扱っています。

学習開始時期と時間配分の設計図

「マイナー科目はいつから始めるべきか」という質問に対する答えは、受験回数によって変わります。初学者と経験者では、置かれた状況が違うからです。

初学者の場合:主要科目の学習と並走させる

初学者がやりがちな失敗は、民法・不動産登記法・会社法・商業登記法という主要4科目を一巡させてから、ようやくマイナー科目に着手するというスケジュールです。この順序では、マイナー科目に手をつけるのが受験年の年明け以降になり、演習量が絶対的に不足します。

推奨する順序は、主要科目の学習が半ばに差しかかった段階で、マイナー科目を並走させる形です。目安として次のように配置します。

時期 主要科目の状況 着手するマイナー科目 学習開始〜4か月 民法・不動産登記法の一巡目 — 5〜7か月 会社法・商業登記法の一巡目 司法書士法/民事保全法 8〜10か月 主要科目の二巡目、記述式の基礎 民事執行法/供託法 11か月〜直前期前 主要科目の演習中心 民事訴訟法 直前期 全科目のメンテナンス 全マイナー科目の総復習

ここで司法書士法と民事保全法を最初に置いているのは、この2科目が最も短時間で仕上がるからです。学習の早い段階で「1科目を完成させた」という手応えを得られることには、心理的な効果もあります。長い受験生活のなかで、完成した領域を持っていることは支えになります。

民事訴訟法だけは、体系の理解に時間がかかるため後ろに置いていますが、これは「最後に詰め込む」という意味ではありません。少なくとも本試験の半年前には一巡を終え、その後は演習を繰り返すという配置です。

経験者の場合:年内にマイナー科目を終わらせる

一度以上の受験を経験している方は、主要科目の土台がすでにあります。その強みを活かすなら、年内(本試験の半年以上前)にマイナー科目11問を仕上げきってしまうのが最も効率的です。

年明け以降は、記述式の演習量を確保することと、主要科目の精度を上げることに時間を使いたい時期です。そこにマイナー科目の初期学習が食い込むと、どちらも中途半端になります。

経験者向けの目安配分は次のとおりです。

  • 7〜9月:司法書士法・民事保全法・民事執行法を完成。3科目合わせて、過去問を回せる状態にする。
  • 10〜12月:供託法と民事訴訟法を完成。供託法は手続の骨格と先例、民事訴訟法は条文と判例。
  • 1月以降:週に1回、マイナー科目の過去問を回すメンテナンス日を作る。新規のインプットはしない。

総学習時間に占める配分の目安

マイナー科目11問に、全学習時間のどれだけを割くべきか。33点分の配点だからといって、全体の3割を投じる必要はありません。かといって1割では足りません。

現実的な目安は、全学習時間の12〜18%程度です。仮に年間1500時間を投じる計画なら、180〜270時間ということになります。この範囲であれば、マイナー科目を仕上げつつ、主要科目にも十分な時間を残せます。

内訳のイメージは次のとおりです。

科目 出題数 時間配分の目安 備考 民事訴訟法 5問 全体の6〜8% 範囲が広く、判例知識も必要 供託法 3問 全体の3〜4% 手続と先例のパターン学習 民事執行法 1問 全体の1.5〜2% 出題論点が絞られる 民事保全法 1問 全体の1〜1.5% 条文数が少なく短期で完成 司法書士法 1問 全体の0.5〜1% 最短で仕上がる

この配分を見て「司法書士法にたった1%か」と思われるかもしれませんが、逆にいえば1%の投資で3点が安定します。学習時間全体の1%というのは、1500時間のうち15時間程度。この15時間を惜しんで本番で3点を失うのは、あまりにもったいない判断です。

民事訴訟法5問の攻略 — 手続の流れを軸に

マイナー科目のなかで最も重量があるのが民事訴訟法です。ここは腰を据えて取り組む必要があります。

「手続の時系列」を背骨にする

民事訴訟法の学習でつまずく最大の原因は、論点を個別のカードとして覚えようとすることです。訴訟要件、弁論主義、既判力、共同訴訟。それぞれを独立した知識として暗記すると、量に押しつぶされます。

そうではなく、一つの訴訟が始まってから終わるまでの時系列に、すべての論点をぶら下げてください。

  1. 訴え提起の前 — 管轄(専属管轄・合意管轄・応訴管轄)、当事者能力・訴訟能力、訴訟代理
  2. 訴え提起 — 訴状の記載事項、訴訟物、訴え提起の効果(時効の完成猶予・二重起訴の禁止)、送達
  3. 口頭弁論 — 弁論主義の3つのテーゼ、釈明権、期日の変更、擬制自白、争点整理手続
  4. 証拠調べ — 証明責任、証人尋問と当事者尋問、書証、文書提出義務、自由心証主義
  5. 訴訟の終了 — 判決、訴えの取下げ、請求の放棄・認諾、訴訟上の和解
  6. 判決の効力 — 既判力の作用・客観的範囲・主観的範囲・基準時、執行力、形成力
  7. 複雑訴訟 — 訴えの変更、反訴、共同訴訟(通常共同訴訟・必要的共同訴訟)、訴訟参加、訴訟承継
  8. 上訴・再審 — 控訴、上告、抗告、不利益変更禁止の原則、再審事由

この8段階の骨格を頭に入れてから個別論点を学ぶと、新しい知識が入るたびに「これは訴訟のどの段階の話か」という置き場所が決まります。置き場所が決まった知識は忘れにくくなります。

司法書士試験ならではの出題の癖

司法書士は簡易裁判所における訴訟代理権を持ちうる資格です。そのため、司法書士試験の民事訴訟法では、簡易裁判所の手続に関する特則が繰り返し問われます。ここは他の資格試験の民事訴訟法とは明確に傾向が違う部分です。

押さえるべき簡裁関連の項目は次のとおりです。

  • 簡易裁判所の訴訟手続の特則 — 訴えの提起の方式(口頭でも可)、任意の出頭による訴え提起、準備書面の省略、擬制陳述の範囲、和解に代わる決定
  • 少額訴訟 — 訴額の上限、同一の簡裁における年間の利用回数制限、原則1回の期日で審理を終える建前、反訴の禁止、判決に対する不服申立てが異議に限られること、少額訴訟債権執行
  • 手形訴訟・小切手訴訟 — 証拠が書証に限られること、反訴の禁止、異議申立て後の通常手続への移行
  • 支払督促 — 申立先(債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する簡裁の裁判所書記官)、督促異議、仮執行宣言

これらの特則は、原則である通常訴訟のルールと対比させて覚えるのが最も効率的です。「通常訴訟ではこうだが、少額訴訟ではこうなる」という差分の形で整理してください。表にすると記憶に残りやすくなります。

既判力は捨てずに、深追いもしない

民事訴訟法のなかで学説対立が激しく、深入りすると際限がないのが既判力の周辺です。ここは学者の議論に踏み込まず、次の枠組みだけを確実にしてください。

論点 押さえるべき内容 既判力の生じる範囲(客観的) 主文に包含するものに限る。理由中の判断には原則として生じない 相殺の抗弁 例外的に、相殺をもって対抗した額について既判力が生じる 既判力の及ぶ者(主観的) 当事者、口頭弁論終結後の承継人、請求の目的物の所持者など 基準時 事実審の口頭弁論終結時。それ以前に存在した事由は原則として遮断される 作用 後訴で同一の判断が繰り返される場合、矛盾する主張・判断が許されない

択一式で問われるのは、この枠組みからの素直な帰結がほとんどです。学説の対立を前提とした難問が出ることはまれで、出たとしても他の受験生も落とします。標準的な理解の範囲を固めるほうが、はるかに合理的です。

過去問の使い方

民事訴訟法は、過去問の論点が繰り返し問われる傾向が強い科目です。年度別に解くよりも、分野別に、上記の8段階の順に並べ替えて解くほうが、体系の定着に直結します。

1周目は、解けなくてよいので全肢の正誤理由を確認する。2周目は、正誤を判断できた肢に印をつけ、判断できなかった肢だけを条文・判例に戻って確認する。3周目以降は、印のついていない肢だけを回す。この方式であれば、周回するほど所要時間が短くなり、直前期には全体を短時間で通せるようになります。過去問全般の回し方については足別過去問の勉強法も参考にしてください。

民事執行法・民事保全法・司法書士法 — 3問を落とさない最短ルート

この3科目は合計3問、9点分です。しかしここは、マイナー科目のなかで最も投資効率が高い領域です。それぞれ短期間で完成できます。

民事執行法:債権執行と不動産執行に絞る

民事執行法は1問しか出ません。にもかかわらず条文数は多く、全条文を追いかけると時間がいくらあっても足りません。出題の中心は限られています。

優先して押さえる領域

  1. 債務名義と執行文 — 債務名義の種類(確定判決、仮執行宣言付判決、和解調書、認諾調書、執行証書など)、執行文の要否と種類(単純執行文・条件成就執行文・承継執行文)
  2. 不動産執行 — 差押えの効力、売却手続の流れ(現況調査・評価・売却基準価額・買受申出)、消除主義と引受主義、配当要求ができる債権者の範囲
  3. 債権執行 — 差押命令の申立てと効力、第三債務者の陳述催告、転付命令と譲渡命令、差押禁止債権の範囲、供託(権利供託・義務供託)
  4. 執行に対する不服申立て — 執行抗告と執行異議の区別、請求異議の訴え、第三者異議の訴え

とくに債権執行における供託は、供託法の執行供託と直結します。両科目をまたいで理解すると、どちらの得点も安定します。民事執行法と供託法を同じ時期に学習する価値はここにあります。

後回しにしてよい領域は、動産執行の細目、船舶・航空機など特殊な財産に対する執行、間接強制の細かい手続、財産開示手続の詳細などです。まったく出ないという意味ではありませんが、優先順位は明らかに下です。

民事保全法:条文が少なく、対比で覚えられる

民事保全法は条文数が少なく、マイナー科目のなかでも最短で仕上がる部類です。核となるのは、3つの保全命令の区別と、不服申立ての3階層です。

保全命令 対象 典型例 仮差押命令 金銭債権の執行を保全 債務者の不動産・預金の仮差押え 係争物に関する仮処分 特定物に対する請求権の執行を保全 処分禁止の仮処分、占有移転禁止の仮処分 仮の地位を定める仮処分 争いある権利関係についての現在の危険を除去 従業員の地位保全、建築工事続行禁止

このうち、仮の地位を定める仮処分は原則として債務者の審尋を要するという点、他の2つは密行性が求められるため債務者に知られずに発令される点が対比のポイントです。

不服申立てについては、次の3つを混同しないことが最重要です。

  • 保全異議 — 発令した裁判所に対し、命令の当否を争う。債務者が申し立てる。
  • 保全取消し — 本案の訴えの不提起、事情の変更、特別の事情を理由に取消しを求める。
  • 保全抗告 — 保全異議・保全取消しの裁判に対する不服申立て。

このほか、担保の提供と担保の取消し、保全命令の送達、保全執行の期間制限(債権者に送達された日から2週間)といった数値要件が問われます。数値が出てくる箇所は必ず正確に押さえてください。

民事保全法の学習は、集中すれば数日で一巡できます。条文を通読し、過去問を2〜3周すれば、1問を安定して取れる水準に届きます。

司法書士法:最も安い1問

司法書士法は、司法書士試験のなかで最も学習コストが低い科目です。それでいて毎年1問確実に出ます。ここを落とすのは純粋な損失です。

出題の中心は次の領域に集中しています。

領域 押さえる内容 目的・職責 司法書士法の目的、司法書士の職責 業務範囲 登記・供託の代理、裁判所等提出書類の作成、審査請求の代理、簡裁訴訟代理等関係業務 簡裁代理権 認定を受けた司法書士のみが行える。訴額の上限があること 資格・登録 欠格事由、登録の申請先(日本司法書士会連合会)、登録の拒否と審査請求、変更・取消し 義務 依頼に応ずる義務とその例外、会則の遵守義務、業務を行い得ない事件、事務所の設置 司法書士法人 社員の資格、社員の常駐、業務執行、社員の責任、解散事由 懲戒 懲戒の種類(戒告・業務禁止等)、懲戒権者、懲戒手続、何人も懲戒を求める申出ができること 団体 司法書士会、日本司法書士会連合会、入会の強制 罰則・非司規制 司法書士でない者の業務取扱いの禁止

条文数はごくわずかで、通読しても大きな負担にはなりません。司法書士法の学習は、条文素読と過去問だけで完結します。テキストを分厚く読み込む必要はありません。

一点だけ注意すべきは、司法書士法は改正がある科目だという点です。懲戒権者や業務範囲、法人制度に関する規定は改正の対象になってきました。古い年度の過去問を解く際は、現行法での結論を必ず確認してください。改正前の知識のまま覚えてしまうと、本番で逆の結論を選ぶことになります。この点は、使用する教材が最新年度版であることの確認にも直結します。

供託法3問 — 手続の骨格と頻出先例

供託法は3問9点。マイナー科目のなかでは民事訴訟法に次ぐ出題数で、しかも学習量に対する得点の伸びが素直な科目です。ここは確実に3問取りにいく設計をしてください。

供託の4類型を骨格にする

供託法の学習は、まず供託がどんな目的で行われるのかという類型分けから入ります。この分類が頭に入っていないと、個別の先例が散らばった知識になってしまいます。

類型 目的 主な例 弁済供託 債務を消滅させる 受領拒否・受領不能・債権者不確知による供託 担保保証供託 相手方の損害を担保する 保全命令の担保、強制執行停止の担保、営業保証 執行供託 執行手続の一環として金銭を保管 第三債務者の権利供託・義務供託、執行官の供託 保管供託・没取供託 目的物の保管、没取の担保 災害時の保管供託、選挙供託

このうち、出題の中心は弁済供託と執行供託です。担保保証供託も出ますが、弁済供託ほどの細かさでは問われません。

弁済供託の3つの原因を精密に

弁済供託の原因は、受領拒否・受領不能・債権者不確知の3つです。それぞれについて、どのような場合に供託が認められるかが繰り返し問われます。

受領拒否では、債権者があらかじめ受領を拒んでいる場合に、口頭の提供をしたうえで供託できるのが原則です。ただし、債権者があらかじめ受領を拒んでいるときは、口頭の提供すら不要と扱われる場面があります。この「提供が要るのか要らないのか」は頻出です。

受領不能は、債権者の所在が不明である場合や、債権者が制限行為能力者で法定代理人がいない場合などが典型です。受領不能は債権者側の事情に起因する必要があり、債務者側の事情では供託できません。

債権者不確知は、過失なく債権者を確知できない場合に限られます。ここでいう「不確知」は、事実関係が不明な場合だけでなく、法律上どちらが債権者か判断がつかない場合も含みます。典型は、債権譲渡の効力が争われている場合、相続人が誰か確定しない場合、抵当権の被担保債権の帰属が争われている場合などです。

一方で、債権者が誰であるか法律上明白な場合には、債権者不確知を理由とする供託はできません。単に債務者が判断に迷っているだけでは足りない、という点が問われます。

賃料・地代の供託は最頻出

供託法の出題で最も多いのが、賃料や地代に関する供託です。実務でも頻繁に登場する場面で、先例も豊富にあります。

押さえるべき典型論点は次のとおりです。

  • 賃料増額請求がされた場合 — 賃借人は、相当と認める額の賃料を提供し、受領を拒まれれば供託できます。増額を認めない立場のまま従前額を供託することの可否が問われます。
  • 一部供託の効力 — 債務の一部のみを供託しても、原則として弁済の効力は生じません。ただし、複数月分の賃料を供託した場合に、どの月の分として効力が生じるかという問題があります。
  • 将来の賃料の供託 — 弁済期が到来していない将来の賃料をあらかじめ供託することは、原則として認められません。継続的に受領を拒まれている場合の扱いが論点となります。
  • 賃貸人が変わった場合 — 所有権移転により賃貸人が交代したが、賃借人が新旧いずれに支払うべきか確知できない場合、債権者不確知を理由とする供託の可否が問われます。

払渡手続 — 還付請求と取戻請求

供託した金銭を誰がどのように受け取るのかという払渡しの手続も、繰り返し出題されます。

請求の種類 請求できる者 内容 還付請求 被供託者(債権者) 供託の目的である給付を受ける 取戻請求 供託者(債務者) 供託を撤回して供託物を取り戻す

取戻請求については、取戻しができなくなる3つの場合が最重要です。

  1. 債権者が供託を受諾したとき
  2. 供託を有効と宣告した判決が確定したとき
  3. 供託によって質権または抵当権が消滅したとき

このうち「供託の受諾」がとくに問われます。被供託者が供託所に対して受諾の意思表示をした後は、供託者はもはや取り戻せません。受諾の意思表示が供託所に到達した時点が基準になります。

また、供託不受諾という概念、つまり被供託者が供託を受け入れない旨を留保しながら還付を受ける「留保付き還付請求」の可否も論点です。債権の一部として受領する旨を留保して還付を受けることができるかどうかは、実務上も重要な問題です。

供託金の利息と時効

数値や期間が絡む論点は、択一式で狙われやすい部分です。

  • 供託金の利息 — 供託金には利息が付きます。利息の計算開始時期と、月未満の端数の扱い、利息の支払いを受けられる者について問われます。
  • 供託物払渡請求権の消滅時効 — 権利を行使できる時から進行します。いつが「権利を行使できる時」なのかは、供託の原因や類型によって異なります。

供託官の処分に対する不服申立て

供託官が供託の受理を却下したり、払渡請求を却下した場合、供託者や被供託者はどう争うのか。これは審査請求の手続です。

審査請求は、供託官を監督する法務局または地方法務局の長に対して行いますが、審査請求書は当該供託官を経由して提出します。供託官は、審査請求に理由があると認めるときは相当の処分をし、理由がないと認めるときは意見を付して監督法務局長に送付します。この経由の仕組みと、審査請求期間の定めがない点が問われます。

供託法は、以上の骨格を押さえたうえで過去問を回せば、3問中2〜3問を安定して取れるようになります。学習期間としては、集中して2〜3週間程度を見ておけば十分でしょう。

条文素読を効かせる技術

マイナー科目の攻略法として必ず挙げられるのが「条文素読」です。ただし、素読は正しくやらないと、ただ時間を消費するだけの作業になります。ここでは、素読を得点に変えるための具体的な方法を述べます。

素読が効く科目と効かない科目

すべての科目で素読が有効なわけではありません。素読の費用対効果は、科目の性質によって大きく変わります。

科目 素読の効果 理由 司法書士法 非常に高い 条文数が少なく、条文がそのまま出題される 民事保全法 高い 条文数が少なく、手続要件が条文に明記されている 供託法 高い 供託法・供託規則の条文が直接問われる 民事執行法 中 条文数が多いが、主要部分に絞れば有効 民事訴訟法 中 判例知識も必要なため、条文だけでは足りない 民法 低め 条文数が膨大で、判例・解釈の比重が高い

つまり、素読はマイナー科目にこそ効く手法です。民法や不動産登記法で素読をしても、条文数に対して得られるものが釣り合いません。マイナー科目に絞って素読を行うのが、時間の使い方として合理的です。

素読の3段階

漫然と条文を読み流すのではなく、段階を踏みます。

第1段階:構造を読む(1周目)

条文の中身を覚えようとせず、章立てと見出しだけを追います。民事保全法なら「総則」「保全命令に関する手続」「保全執行に関する手続」という構造を把握し、そのなかにどんな条文が並んでいるかを俯瞰します。所要時間は1科目あたり30分程度。この段階では覚える必要はありません。

第2段階:要件と効果を拾う(2〜3周目)

各条文について、「何が要件で、何が効果か」だけを意識して読みます。ここで重要なのは、主語・期間・数値・「〜することができる」と「〜しなければならない」の区別に印をつけながら読むことです。択一式で問われるのは、まさにこの部分だからです。

たとえば「2週間」「1週間」といった期間、「裁判所」なのか「裁判所書記官」なのかという主体、「できる」なのか「しなければならない」なのかという義務の性質。ここが入れ替えられて誤りの肢が作られます。

第3段階:過去問と往復する(4周目以降)

過去問を解いて間違えた肢について、必ず条文に戻ります。そして、その条文の前後3か条も一緒に読みます。この「前後を読む」という一手間が効きます。試験は同じ条文の周辺から繰り返し出題される傾向があるため、間違えた条文の隣は、次に問われる可能性の高い場所なのです。

素読を継続させる仕組み

素読が続かない最大の理由は、手応えがないことです。読んでも読んでも覚えている実感が湧かないため、途中でやめてしまいます。

これを防ぐには、素読を「読む作業」ではなく「確認作業」に変えることです。具体的には、次の順序に組み替えます。

  1. まず過去問を解く
  2. 間違えた肢の条文に戻る
  3. その条文の前後を読む

つまり、過去問を先にして、素読を後にするという順序です。この順序であれば、条文を読むときに「これは前に間違えたところだ」という文脈が生まれ、記憶に定着しやすくなります。何も知らない状態で条文を頭から読むより、はるかに効率的です。

なお、素読の際には必ず現行法の条文を使ってください。マイナー科目、とくに民事執行法や司法書士法は改正が入っています。古い六法や古いテキストの条文を素読すると、改正前の知識を刷り込むことになります。

素読にかける時間の目安

素読は、まとまった時間を確保して行うより、細切れの時間に組み込むほうが続きます。1日15〜20分を、週に4〜5日。これで1か月あれば、司法書士法・民事保全法・供託法規則あたりは何周も回せます。

直前期には、素読の対象をさらに絞ります。数値要件が集中している条文、主体が入れ替わりやすい条文だけを抜き出したリストを作り、それを回します。試験直前の2週間は、新しい条文に手を出さず、このリストの精度だけを上げてください。

憲法・刑法の割り切り方と直前期のメンテナンス

ここまで午後の部のマイナー科目を扱ってきましたが、午前の部にもマイナー科目があります。憲法3問と刑法3問です。この2科目の扱い方は、午後のマイナー科目とはやや異なります。

午前の部の構成を確認する

科目 出題数 配点 民法 20問 60点 商法・会社法 9問 27点 憲法 3問 9点 刑法 3問 9点 合計 35問 105点

午前の部は択一式35問105点。民法20問が全体の過半を占め、商法・会社法9問と合わせて29問。憲法と刑法は合わせて6問です。

午前の部にも基準点があり、例年おおむね7割から8割近くの水準で推移することが多いとされています。この基準点を超えるには、民法と会社法での取りこぼしを最小限にすることが大前提です。そのうえで、憲法・刑法6問をどれだけ拾えるかが上乗せ点に効いてきます。

憲法3問:判例に絞り、統治は条文で拾う

憲法は、深く学ぼうとすれば学説の海に沈みます。司法書士試験の憲法3問に対して、憲法学の体系を一から積み上げるのは投資として合いません。

割り切りの方針は次のとおりです。

  • 人権分野は、有名判例の結論と判断枠組みだけを押さえる。 判例の事案の詳細や、学説からの批判には立ち入らない。表現の自由、平等原則、職業選択の自由、財産権、生存権あたりの主要判例が中心です。
  • 統治分野は、条文をそのまま覚える。 国会・内閣・裁判所・財政・地方自治は、条文の文言が直接問われることが多い領域です。ここは素読が有効に働きます。議員の任期、定足数、内閣総理大臣の指名手続、予算の議決、憲法改正の手続など、数値と手続を正確に。
  • 統治のほうが得点しやすい。 人権は判例の射程を問う難問が出ることがありますが、統治は条文知識で処理できる問題が比較的多くなります。時間が限られているなら統治を優先してください。

3問中2問を目標にし、1問は落としてもよいと割り切る。この姿勢が、憲法に時間を吸われないための防波堤になります。

刑法3問:総論の頻出テーマと財産犯

刑法も同様に、範囲を絞ります。司法書士試験の刑法は、条文と判例の基本的な理解を問う問題が中心で、刑法学の深い議論に踏み込む必要はありません。

優先度の高い領域

分野 テーマ 総論 罪数(併合罪・観念的競合・牽連犯)、共犯(共同正犯・教唆・幇助、共犯からの離脱)、正当防衛と緊急避難、錯誤(事実の錯誤・法律の錯誤)、未遂と中止犯 各論(財産犯) 窃盗罪、詐欺罪、横領罪、背任罪、強盗罪の区別と成否 各論(その他) 文書偽造罪、公務執行妨害罪、放火罪

とくに財産犯の区別は繰り返し問われます。占有の有無で窃盗と横領が分かれ、欺罔行為と処分行為の有無で詐欺が決まり、身分と任務違背で背任が問題になる。この区別の軸を持っておけば、多くの問題に対応できます。

学説対立(たとえば共犯の処罰根拠や因果関係の理論)については、通説・判例の立場を押さえるにとどめてください。複数の学説を比較させる問題が出ることもありますが、そこは他の受験生も苦戦する領域です。

刑法も3問中2問を目標にします。憲法・刑法合わせて6問中4問取れれば、午前の部としては十分な水準です。

直前期のメンテナンス設計

マイナー科目は、いったん仕上げても放置すれば必ず抜けます。とくに供託法の先例や民事保全法の数値要件は、1か月触らないと精度が落ちます。

直前期に入ったら、マイナー科目の定期メンテナンス日をスケジュールに組み込んでください。おすすめは次の形です。

頻度 内容 所要時間 週1回 供託法・民事保全法・司法書士法の過去問を通す 60〜90分 隔週 民事訴訟法の分野別過去問を1〜2分野 60分 隔週 民事執行法の主要論点の確認 30分 月1回 憲法・刑法の過去問を通す 60分

ポイントは、新規のインプットをしないことです。直前期に新しい教材や新しい論点に手を出すと、既存の知識まで揺らぎます。すでに一度仕上げた範囲を、正確に再現できる状態に保つ。それがメンテナンスの目的です。

また、直前期のマイナー科目学習は、必ず「時間を計って解く」形にしてください。マイナー科目11問を何分で処理できるかは、本番の午後の時間配分に直結します。11問を12〜15分で抜ける状態を作れていれば、午後の部の設計に余裕が生まれます。直前3か月の全体スケジュールについては直前期の過ごし方と基準点戦略で詳述しています。

マイナー科目の到達目標を数字で持つ

最後に、マイナー科目11問についての目標設定を明確にしておきます。

科目 出題数 目標得点 位置づけ 民事訴訟法 5問 4問 1問は落としてよい 供託法 3問 3問 全問正解を狙う 民事執行法 1問 1問 落とさない 民事保全法 1問 1問 落とさない 司法書士法 1問 1問 絶対に落とさない 合計 11問 10問 —

11問中10問。これが現実的かつ必要な水準です。そして、この10問を確保できていれば、不動産登記法16問と商業登記法8問の合計24問で、午後択一の基準点を超えるのがずっと楽になります。

マイナー科目は、後回しにしてよい科目ではありません。むしろ、限られた時間で合格ラインに乗るためには、最初に確保しておくべき土台です。主要科目の学習が思うように進まない時期にこそ、マイナー科目に手をつけてください。短期間で完成する科目を持っていることは、長い受験生活における確かな足場になります。

学習全体のスケジュール設計については司法書士試験の合格ロードマップを、独学で進める場合の教材選定については司法書士試験は独学で合格できるかもあわせてご覧ください。

#マイナー科目 #供託法 #司法書士法 #民事訴訟法

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