形成の訴えの利益(後婚取消と離婚・決議取消訴訟と事情の変化)けいせいのうったえのりえき
形成の訴えの利益とは、形成の訴えについて判決を求めることが正当と認められる利益のことです。形成の訴えは法律に定めのある場合に限って許されるので、法定の要件を満たせば原則として利益がありますが、訴訟の係属中の事情の変化によって形成判決で法律関係を変える実益がなくなると、利益は失われます。
離婚の訴えのような形成の訴えは、法律が「この要件があれば訴えで法律関係を変えられる」と定めたものなので、要件を満たした訴えなら、判決を求める利益があるのが原則です。ところが、裁判の途中で事情が変わり、判決で実現しようとしていた状態がすでに別の形で実現してしまったり、判決を出しても何も変わらなくなったりすることがあります。そうなると判決を出す意味がなくなり、訴えの利益が失われます。

形成の訴えは法定の要件を満たせば原則として利益がありますが、事後の事情の変化で失われることがあります
形成の訴えは、法律が訴えによる法律関係の変動を認めている場合に限って起こせるので、法定の要件を満たしていれば、それだけで原則として訴えの利益が認められます。確認の訴えのように個別に利益を吟味する必要はありません。しかし、訴訟の係属中に事情が変わり、形成判決によって法律関係を変えることに実益がなくなれば、訴えの利益は失われ、訴えは却下されます。訴えの利益は事実審の口頭弁論終結時を基準に判断されるからです。どんな事情の変化で利益がなくなるかは、形成判決で実現しようとする効果と、変化後の状態とを比べて判断します。
重婚を理由とする後婚の取消訴訟は、後婚が離婚で解消されると、特段の事情がない限り利益を失います
配偶者のある者は重ねて婚姻できず(民法732条)、これに反する後婚は取り消すことができます(民法744条)。判例は、重婚の場合に後婚が離婚によって解消されたときは、特段の事情のない限り、後婚が重婚に当たることを理由にその取消しを請求することは許されないとしました(最判昭和57年9月28日)。婚姻の取消しは将来に向かってのみ効力を生じ(民法748条1項)、その効果は離婚の効果に準じるので、離婚した後になお婚姻の取消しを求めても法律上の利益がないからです。

株主総会決議の取消訴訟は、決議に基づく行為が完了し取消しの実益がなくなると利益を失うことがあります
株主総会の決議の取消しの訴え(会社法831条)も形成の訴えで、決議後の事情によって利益が失われることがあります。判例は、役員選任決議の取消訴訟の係属中に、その決議で選任された役員が全員任期満了で退任し、その後の総会で新たに役員が選任されて、取消しを求める決議に基づく役員が現存しなくなったときは、特別の事情のない限り訴えの利益を欠くとしました(最判昭和45年4月2日)。新株の発行についても、発行を承認した決議の取消訴訟の係属中に新株が発行されると、その効力は新株発行無効の訴えで争うべきものになるので、決議取消しの訴えの利益は失われるとされています(最判昭和37年1月19日)。新株予約権も同じで、発行されてしまえばその効力は新株予約権発行無効の訴え(会社法828条1項4号)で争うことになり、決議が取り消されても発行された新株予約権が無効になるわけではありません。これに対し、計算書類の承認決議の取消訴訟は、その後の期の計算書類が承認されていても、取り消されれば以後の計算書類も不確定になるので利益を失わないとした判例があります(最判昭和58年6月7日)。決議の効果がその後の法律関係に引き継がれるかどうかで結論が分かれます。
- 後婚の取消訴訟と後婚の離婚特段の事情がない限り利益を失います(最判昭和57年9月28日)
- 役員選任決議の取消訴訟と役員の全員退任特別の事情がない限り利益を失います(最判昭和45年4月2日)
- 新株発行・新株予約権発行の決議取消訴訟と発行利益を失い、発行無効の訴えで争います(最判昭和37年1月19日)
- 計算書類承認決議の取消訴訟と次期以降の承認利益を失いません(最判昭和58年6月7日)
民法748条1項婚姻の取消しは、将来に向かってのみその効力を生ずる。
試験ではこう問われる
- 形成の訴えは法定の要件を満たせば原則として訴えの利益があるが、事後の事情の変化で失われることがある
- 重婚を理由とする後婚の取消訴訟は、後婚が離婚で解消されれば特段の事情がない限り利益を失う(最判昭和57年9月28日)
- 役員選任決議の取消訴訟は、選任された役員が全員退任し新役員が選任されれば特別の事情がない限り利益を失う(最判昭和45年4月2日)
- 新株の発行を承認した決議の取消訴訟は、新株が発行されれば利益を失う(最判昭和37年1月19日)。新株予約権も同じで、発行の効力は新株予約権発行無効の訴え(会社法828条1項4号)で争う
- 計算書類の承認決議の取消訴訟は、次期以降の計算書類が承認されても利益を失わない(最判昭和58年6月7日)

