取戻請求権の消滅(質権・抵当権の消滅)とりもどしせいきゅうけんのしょうめつ
供託者の取戻請求権が消える事由をまとめた語で、受諾・有効判決の確定・放棄・時効のほか、民法496条2項の供託によって質権や抵当権が消滅した場合があります。担保権が消えた供託は受諾がなくても取り戻せないこと、取戻請求権の時効が還付請求権と別に進むことが肢で突かれます。
取戻請求権の消滅は、供託者が供託物を取り戻す権利を失う場面の総称です。民法496条1項は債権者の受諾と供託を有効と宣告した判決の確定を定め、2項は供託によって質権や抵当権が消滅した場合には取戻しを認めないと定めます。供託者による取戻請求権の放棄と消滅時効も、取戻請求権を消す事由です。取り戻すと供託をしなかったものとみなされて債権と担保権が復活するので、担保権が消えた後の取戻しは物上保証人や後順位者の地位を揺るがすことになり、法が封じています。肢で突かれるのは、2項の場面で受諾の有無が関係ないこと、取戻請求権の時効の起算点と更新です。
民法 第496条第2項前項の規定は、供託によって質権又は抵当権が消滅した場合には、適用しない。

供託で質権や抵当権が消滅したときは受諾がなくても取り戻せません
担保付きの債務を弁済供託すると債権が消え、付従性により質権や抵当権も消滅します。取戻しを認めると債権と一緒に担保権まで復活し、供託後に担保物を取得した第三者や後順位の担保権者が害されるので、民法496条2項は取戻しを封じます。「弁済者は、供託によって質権が消滅した場合であっても、債権者が供託を受諾せず、又は供託を有効と宣告した判決が確定しない間は、供託物を取り戻すことができる」という肢は誤りです。受諾や有効判決を待たずに、供託の時点で取戻請求権が消える点が1項との違いです。供託規則13条2項は、供託により質権や抵当権が消滅するときはその表示を供託書に記載させるので、供託官は副本ファイルで消滅の事実を把握できます。
受諾、有効判決の確定、放棄は取戻請求権を確定的に消します
債権者が供託を受諾する旨の書面を供託所に提出するか、供託を有効と宣告した判決が確定すると、民法496条1項により取戻しができなくなります。供託者が供託所に対して取戻請求権を放棄する旨の意思表示をしたときも、取戻請求権は消滅して撤回できません。「弁済供託の供託者が供託所に対して供託金取戻請求権を放棄する旨の意思表示をした場合には、これによって取戻請求権は消滅し、この放棄を撤回することができない」という肢は正しい肢です。どの事由でも、取戻請求権が消えると供託は確定的に有効になりますが、被供託者の還付請求権の存否や時効は別に判断します。
取戻請求権の時効は免責の必要が消えた時から進みます
取戻請求権の消滅時効は、供託者が供託による免責の効果を受ける必要がなくなった時から進むと扱われます。供託の基礎となった債務の消滅時効が完成した時が代表例で、取り戻せば債権が復活する以上、債権が残っている間は取戻しを現実に期待できないからです。「債権者の所在不明による受領不能を原因とする弁済供託における供託金取戻請求権の消滅時効は,供託の基礎となった債務について消滅時効が完成するなど,供託者が供託による免責の効果を受ける必要が消滅した時から進行する」という肢は正しい肢です。受領不能の還付請求権が供託の時から進むのと対比して覚えます。
取戻請求権の更新は還付請求権に及ばず、逆も同じです
供託者の請求で書類が閲覧に供されたり証明書が交付されたりすると、取戻請求権の時効は供託所の承認として更新されますが、その効果は還付請求権には及びません。「供託物取戻請求権の消滅時効の更新の効力が生じた場合には、同一の供託に係る供託物還付請求権の消滅時効は、その時から新たに進行する」という肢は誤りです。被供託者への証明書の交付も取戻請求権を更新しません。「供託官が弁済供託の被供託者に対して,当該弁済供託に関する事項の証明書を交付したときは,供託金還付請求権の消滅時効及び供託金取戻請求権の消滅時効は,いずれも中断する」という肢は誤りです。一括供託の一部を取り戻して払渡しを受けると、残りの取戻請求権は新たに進みます。「家賃の 5 か月分につき一括してされた弁済供託の 1 か月分の供託金について取戻請求があり、これが払い渡された場合には、他の 4 か月分の供託金取戻請求権の消滅時効は、その時から新たに進行する」という肢は正しい肢です。
供託規則 第13条第2項前項の供託書には、次の事項を記載しなければならない。
一 供託者の氏名及び住所、供託者が法人であるとき又は法人でない社団若しくは財団であつて、代表者若しくは管理人の定めのあるものであるときは、その名称、主たる事務所及び代表者又は管理人の氏名
二 代理人により供託する場合には、代理人の氏名及び住所、ただし、公務員がその職務上するときは、その官公職、氏名及び所属官公署の名称
三 供託金の額又は供託有価証券の名称、総額面、券面額(券面額のない有価証券についてはその旨)、回記号、番号、枚数並びに附属利賦札及びその最終の渡期
四 供託の原因たる事実
五 供託を義務付け又は許容した法令の条項
六 供託物の還付を請求し得べき者(以下「被供託者」という。)を特定することができるときは、その者の氏名及び住所、その者が法人又は法人でない社団若しくは財団であるときは、その名称及び主たる事務所
七 供託により質権又は抵当権が消滅するときは、その質権又は抵当権の表示
八 反対給付を受けることを要するときは、その反対給付の内容
九 供託物の還付又は取戻しについて官庁の承認、確認又は証明等を要するときは、当該官庁の名称及び事件の特定に必要な事項
十 裁判上の手続に関する供託については、当該裁判所の名称、件名及び事件番号
十一 供託所の表示
十二 供託申請年月日
試験ではこう問われる
- 質権や抵当権が消滅した供託で、受諾がない間は取り戻せるとする肢
- 放棄の撤回を認める肢や、受諾の後に取戻しができるとする肢
- 取戻請求権の時効の起算点を供託の時にすり替える肢
- 取戻請求権の更新が還付請求権にも及ぶとする肢
この用語が問われた肢
弁済者は、供託によって質権が消滅した場合であっても、債権者が供託を受諾せず、又は供託を有効と宣告した判決が確定しない間は、供託物を取り戻すことができる。
弁済供託の供託者が供託所に対して供託金取戻請求権を放棄する旨の意思表示をした場合には、これによって取戻請求権は消滅し、この放棄を撤回することができない。
供託物取戻請求権の消滅時効の更新の効力が生じた場合には、同一の供託に係る供託物還付請求権の消滅時効は、その時から新たに進行する。
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