賃料の供託(増額請求・受領拒絶)ちんりょうのきょうたく
建物や土地の賃料について、賃貸人の受領拒絶・受領不能・賃貸人の相続人不明などを原因にする弁済供託で、出題の最も多い場面です。増額請求を受けたときの提供額、賃貸人死亡時の扱い、期日前の供託の可否が肢で突かれます。
賃料の供託は、建物や土地の賃借人が賃料を弁済供託する場面で、受領拒絶・受領不能・債権者不確知のどの原因も現れる供託法の出題の中心です。借地借家法32条の賃料増額請求を受けて協議が調わないときは、賃借人は相当と認める額を支払えば足り、提供して拒まれれば供託できます。賃貸人が死亡して相続人が分からなければ債権者不確知、明渡しを求められて受領を拒まれれば受領拒絶です。肢で突かれるのは、提供する額、提供する相手、供託できる時期、供託する場所の四つです。
民法 第494条(供託)
弁済者は、次に掲げる場合には、債権者のために弁済の目的物を供託することができる。この場合においては、弁済者が供託をした時に、その債権は、消滅する。
一 弁済の提供をした場合において、債権者がその受領を拒んだとき。
二 債権者が弁済を受領することができないとき。
弁済者が債権者を確知することができないときも、前項と同様とする。ただし、弁済者に過失があるときは、この限りでない。

増額請求を受けたら従来の額を提供すれば足ります
賃料の増額について協議が調わない間は、賃借人は増額を正当とする裁判が確定するまで、相当と認める額を支払えば足ります。従来の賃料と同じ額を相当と認める額として提供し、賃貸人が受領を拒めば、その額で受領拒絶の供託ができます。「建物の賃料の増額請求を受けた賃借人は,その増額について賃貸人との協議が調わない場合において,従来の賃料と同じ額を相当と認める額として賃貸人に弁済の提供をし,賃貸人からその受領を拒まれたときは,受領拒絶を原因として供託をすることができる」という肢は正しい肢です。家賃に電気料を含む契約なら、「電気料と家賃の合計額を供託することができる」という肢も正しい肢にあたります。
賃貸人が死亡したら戸籍を調べなくても不確知で供託できます
賃貸人が死亡して相続人の有無が分からないときは、賃借人は戸籍を調べる義務を負いません。「賃貸人が死亡した場合において、その相続人の有無が戸籍により調査をしなければ賃借人に不明であるときは、賃借人は、当該調査をすることなく、賃料の全額につき債権者不確知を原因とする供託をすることができる」という肢は正しい肢です。相続人が二人と分かっているときは、賃料債権は相続分に応じて分かれるので、一人に全額を提供しても本旨に従った提供になりません。「賃料全額を当該共同相続人のうちの一人に提供し,その受領を拒まれたとしても,賃料全額について,受領拒絶を原因とする弁済供託をすることはできない」という肢は正しい肢です。
支払期日前の賃料は係争中でも供託できません
明渡訴訟を起こされて賃料を受領しないと告げられた賃借人は、弁済期が来た賃料を提供なしで供託できます。しかし弁済期が来ていない賃料は、受領しないことが明らかでも供託できません。「当該賃貸人において家賃を受領しないことが明らかであるときは,当該賃借人は,毎月末日の家賃支払日の前に当月分の家賃につき弁済供託をすることができる」という肢は誤りです。支払日が「毎月末日まで」なら月の途中の提供は期限内なので、6月15日に提供して拒まれた同月分の賃料は供託できます。
賃料の供託所は賃貸人の住所地です
賃料は別段の定めが無ければ持参債務で、履行地は賃貸人の現在の住所ですから、供託所も賃貸人の住所地です。賃貸人が死亡して相続人が不明なときに「賃借人の現在の住所地の供託所にしなければならない」という肢は誤りで、「当該建物の所在地の最寄りの供託所に供託をすることができる」という肢も誤りです。供託実務では、賃貸人の最後の住所地の供託所に供託すると扱われています。借地上の建物の賃借人が地代を供託するときは、地代の債務者である借地人に代わる第三者弁済で、「借地人(建物の賃貸人)に代わって当該借地の地代を弁済供託することはできない」という肢は誤りです。
一括供託の一部を取り戻すと残りの時効も新たに進みます
家賃の数か月分を一括して供託した後、そのうち1か月分を取り戻すと、供託所が残りの供託金の取戻請求権を承認したことになり、残りの取戻請求権の時効も更新されます。「家賃の 5 か月分につき一括してされた弁済供託の 1 か月分の供託金について取戻請求があり、これが払い渡された場合には、他の 4 か月分の供託金取戻請求権の消滅時効は、その時から新たに進行する」という肢は正しい肢です。受領拒絶の供託の還付請求権の時効は、供託の通知が到達した時からではなく、紛争の解決などで還付を現実に期待できる時から進みます。「被供託者に供託の通知が到達した時から 10 年間行使しない場合には、時効によって消滅する」という肢は誤りです。
民法 第484条第1項弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の弁済は債権者の現在の住所において、それぞれしなければならない。
試験ではこう問われる
- 増額請求を受けた賃借人はいくら提供して供託できるか(従来の額を相当と認める額として提供すればよい)
- 賃貸人が死亡したとき戸籍を調べてから供託するか(調べなくてよい。不確知で供託できる)
- 係争中なら支払日前に賃料を供託できるか(できない。「末日まで」なら月の途中でも可)
- 賃料の供託所はどこか(賃貸人の住所地。賃借人の住所地や建物所在地ではない)
- 一括供託の1か月分を取り戻すと残りの時効はどうなるか(新たに進行する)
この用語が問われた肢
建物の賃料の増額請求を受けた賃借人は,その増額について賃貸人との協議が調わない場合において,従来の賃料と同じ額を相当と認める額として賃貸人に弁済の提供をし,賃貸人からその受領を拒まれたときは,受領拒絶を原因として供託をすることができる。
家賃に電気料を含む旨の家屋の賃貸借契約がされている場合において,電気料を含む家賃を提供し,その全額の受領を拒否されたときは,賃借人は,電気料と家賃の合計額を供託することができる。
賃貸人が死亡した場合において、その相続人の有無が戸籍により調査をしなければ賃借人に不明であるときは、賃借人は、当該調査をすることなく、賃料の全額につき債権者不確知を原因とする供託をすることができる。
解説と関連先例は肢別演習で読めます。
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