共謀共同正犯(共謀・正犯意思)きょうぼうきょうどうせいはん
共謀共同正犯とは、二人以上の者が特定の犯罪を行うことを共謀し、そのうちの一部の者が共謀に基づいて実行した場合に、実行行為を分担しなかった者も含めて全員が共同正犯になることです。共謀とは、互いに他人の行為を利用して各自の意思を実行に移すという共同犯行の認識に基づく意思の連絡をいいます。
文化祭の出し物で、台本を書いて配役を決めた人は舞台に立ちませんが、その劇を作った一人であることは誰も疑いません。犯罪でも、計画を立てて仲間に実行させた者が、現場に行かなかったというだけで軽く扱われるのは不合理です。そこで判例は、共謀に参加し、仲間の行為を自分の手段として犯罪を実現した者を、実行した者と同じ共同正犯として扱っています。

実行行為を分担しない者も、共謀に参加し共謀者の誰かが実行すれば共同正犯になります
60条は「二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする」と定めます。共同正犯が自分のしていない行為の結果まで責任を負うのは、互いに他人の行為を利用し補い合って犯罪を実現したからです。この関係は、実行行為を分担しなくても作ることができます。最大判昭和33年5月28日(練馬事件)は、共謀に参加した事実が認められる以上、直接実行行為に関与しない者でも、他人の行為をいわば自己の手段として犯罪を行ったという意味において、刑責の成立に差異を生ずると解すべき理由はないとしました。判旨は、共同正犯の成立に実行行為の一部を分担することは必要ないとの立場に立っています。判旨は「謀議をなし」たことを求めているので、内心の意思の合致だけでは足りず客観的な謀議行為が必要であるとする考えとも矛盾しません。他方で、実行行為をしない教唆犯・幇助犯との境目が実行行為の分担では決まらなくなるため、この判旨には、共同正犯を教唆及び幇助と区別することが困難になるとの批判が向けられます。共謀共同正犯が成立するための要件は、次の三つにまとめられます。
- 共謀特定の犯罪を共同して行うという意思の連絡と、自己の犯罪として行う意思(正犯意思)があることです
- 共謀に基づく実行共謀者のうちの誰かが、共謀の内容に沿って実行行為をすることです
- 実行に準ずる重要な寄与計画の立案、資金や道具の提供、指示など、犯罪の実現に重要な役割を果たしたことです。正犯意思を認定する事情にもなります
共謀には共同犯行の認識が必要であり、他人の犯行を認識しているだけでは足りません
共謀は、互いに他人の行為を利用して各自の犯意を実行に移すという意思が相互にあって成立します。仲間が犯罪をすると知っているだけの者は、まだ共謀者ではありません。共謀には、実行行為者の犯行の認識だけでなく、数人相互の間に共同犯行の認識があることが必要です。反対に、共同犯行の認識があれば、実行の細部まで知っている必要はありません。判例は、実行者の具体的行為の内容を逐一認識することを要しないとしています。窃盗を共謀した者が、実行行為の日時・場所・方法を詳細に認識していなくても、窃盗罪の共同正犯は成立します。上下関係も要件ではありません。練馬事件の判旨は、実行行為に直接関与したかどうか、その分担又は役割のいかんは刑責の成立を左右しないとしており、判例は対等な関係の者の間でも共謀共同正犯を認めています(最決昭和57年7月16日)。
共謀は、黙示の意思連絡でも成立します
最決平成15年5月1日(スワット事件)は、暴力団組長が警護役の組員らに拳銃を持てと直接指示していなくても、組員らが自発的に警護のため拳銃等を所持していることを確定的に認識しながら当然のこととして受け入れて認容し、そのことを組員らも承知していた以上、拳銃等の所持につき黙示的に意思の連絡があったとしました。実行行為者と背後者の間に、明示の意思連絡が必要なわけではありません。ただし、黙示の意思連絡は双方が承知していて成り立ちます。組員らが、組長は所持に気付いていないと思っていた場合には、黙示の意思連絡があったとはいえません。また、この決定は意思の連絡だけで共同正犯としたのではありません。組員らが終始組長の近辺にいて行動を共にしていたこと、組員らを指揮命令する権限を有する組長の地位、警護を受けるという組長の立場を併せ考えて、実質的には組長が拳銃等を所持させていたと評価しました。犯行現場付近にいて犯行と密接な関係を保っていたことや組織内での地位が、組長を共同正犯と評価するうえで重要な事情として考慮されています。意思連絡があれば共同正犯になるとは限らず、背後者に狭義の共犯が成立する場合もあります。指揮命令権限は、この事案で考慮された事情の一つにすぎず、一般的な要件ではありません。

全員が一か所に集まらなくても、順次共謀によって全員の間に共謀が成立します
練馬事件判決は、数人の共謀共同正犯が成立するためには、その数人が同一場所に会し、その数人間に一個の共謀が成立することを必要とせず、同一の犯罪について甲と乙が共謀し、次いで乙と丙が共謀するというように順次共謀が行われた場合は、これらの者すべての間に共謀が行われたと解するとしました。間に入った者を通じて、互いの行為を利用し合う関係ができるからです。順次共謀の形式でも、共謀共同正犯は成立します。甲と乙が窃盗を共謀し、次に乙と丙が同じ窃盗を共謀して丙が財物を窃取した場合、甲にも窃盗罪の共同正犯が成立します。

共謀の内容を超える行為を事後に了承しても、その行為についての共謀にはなりません
共謀は実行の前か実行の最中に成立していなければなりません。窃盗を共謀したのに実行者が強盗をした場合、実行行為を分担しなかった者が後からその話を聞いて了承し、財物をもらい受けたとしても、強盗の暴行・脅迫を利用し合う関係は事前に無かったのですから、強盗の共謀があったことにはなりません。この場合、実行行為を分担しなかった者には、窃盗と強盗が重なり合う窃盗罪の限度で共同正犯が成立します。共謀した犯罪と実行された犯罪が食い違う場合の処理は、共犯と錯誤の語で扱います。
刑法 第60条(共同正犯)
二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。
最大判昭和33年5月28日共謀共同正犯が成立するには、二人以上の者が、特定の犯罪を行うため、共同意思の下に一体となつて互に他人の行為を利用し、各自の意思を実行に移すことを内容とする謀議をなし、よつて犯罪を実行した事実が認められなければならない。
試験ではこう問われる
- 共謀に参加した者は、実行行為を分担しなくても共同正犯になる(最大判昭和33年5月28日)
- 共謀には共同犯行の認識が必要だが、実行の細部の認識や指揮命令は要らない
- 共謀は黙示の意思連絡でも成立する(最決平成15年5月1日)
- 甲乙間、乙丙間と順次共謀が行われた場合も、全員の間に共謀が成立し、甲にも丙との間で共謀共同正犯が成立する(H26 問24 ア ○・出題当時)
- 窃盗の共謀の後に実行者がした強盗を事後に了承しても、強盗の共謀にはならず、窃盗罪の限度で共同正犯が成立する

