登記官の実地調査権とうきかんのじっちちょうさけん
表示に関する登記の申請があったときや職権で登記しようとするときに、登記官が不動産の現況を調査し、現地を検査したり関係者に質問したりできる権限です。権利に関する登記には及ばないこと、調査結果と申請が合わなければ却下されることが肢で突かれます。
登記官の実地調査権は、表示に関する登記について申請があった場合や職権で登記しようとする場合に、登記官が必要と認めるときにその不動産の表示に関する事項を調査できる権限です。不動産登記法29条が定め、日の出から日没までの間に限って現地を検査し、所有者その他の関係者に文書の提示を求め、質問することができます。権利に関する登記の審査は申請情報と添付情報を登記記録と照らして判断する形式的審査で、現地には出向きません。表示に関する登記は不動産の物理的な状況を公示するので、登記官が自ら現地を確かめる仕組みが置かれています。肢で突かれるのは、この調査権が権利に関する登記に及ぶか、調査の限界はどこか、調査結果と申請が食い違ったらどうなるかです。
不動産登記法 第29条(登記官による調査)
登記官は、表示に関する登記について第十八条の規定により申請があった場合及び前条の規定により職権で登記しようとする場合において、必要があると認めるときは、当該不動産の表示に関する事項を調査することができる。
登記官は、前項の調査をする場合において、必要があると認めるときは、日出から日没までの間に限り、当該不動産を検査し、又は当該不動産の所有者その他の関係者に対し、文書若しくは電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの提示を求め、若しくは質問をすることができる。この場合において、登記官は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。

実地調査ができるのは表示に関する登記に限られます
登記官が実地調査をできるのは、表示に関する登記について申請があった場合と、職権で表示に関する登記をしようとする場合だけです。所有権の移転や抵当権の設定といった権利に関する登記では、登記官は申請情報と添付情報、登記記録を照らし合わせて審査するにとどまり、現地に出向いて取引の実体を調べることはありません。申請人になりすましの疑いがあるときに登記官がする本人確認の調査は、申請人の確認であって不動産の調査ではなく、24条に根拠があります。表示に関する登記の審査が実質的審査と呼ばれるのは、この調査権があるからです。
検査は日の出から日没までに限られ、身分証明書の携帯が要ります
登記官は調査のため必要があれば、不動産を検査し、所有者その他の関係者に文書や電磁的記録の提示を求め、質問することができます。検査ができるのは日の出から日没までの間に限られ、登記官は身分を示す証明書を携帯して、関係者の請求があれば提示しなければなりません。住居に立ち入る以上、時間と身分の明示で関係者の生活を守る建付けです。調査を行った登記官は、結果を記録した実地調査書を作成する決まりです。
調査士の調査報告があれば実地調査を省略できます
不動産登記規則93条は、表示に関する登記をするときは原則として実地調査を行うとしつつ、省略できる場合を定めています。土地家屋調査士が代理人として申請し、その調査士が作成した不動産の調査に関する報告が提供されたときが一つです。公知の事実や登記官が職務上知った事実から調査の必要がないと認めたときも、実地調査をしないことが可能です。省略するかどうかは登記官が必要がないと認めるかで決まり、報告書を付ければ必ず省略されるわけではありませんが、調査士の調査報告書が添付されるのはこの省略を受けるためです。
調査結果と申請の表示が合わなければ却下事由です
表示に関する登記の申請に係る不動産の表示が、登記官の調査の結果と合致しないときは、申請の却下事由に当たります。床面積や地積が実測と違うなら、補正できる不備として相当の期間内に申請人が直せば却下を免れ、直さなければ却下されます。申請どおりに登記してから後で更正するのではなく、登記をする前に現況に合わせるのが表示に関する登記の順序です。権利に関する登記で登記記録と申請情報が合わない場合の却下事由とは、別の号に置かれている点も肢の材料です。
職権で登記するときの調査にも同じ権限が使えます
表示に関する登記は登記官が職権ですることができ、その場合にも実地調査権が及びます。一部が別地目になった土地の分筆や、滅失した建物の登記記録の閉鎖を職権でするときは、登記官が現地を確かめてから職権表示登記等事件簿に立件して登記する手順です。利害関係人が職権の発動を促す申出をしたときも、登記官は調査のうえで登記するかどうかを決めます。調査の結果が登記記録と違っても、申請も職権発動もしないという判断はあり得ます。
不動産登記規則 第93条(実地調査)
登記官は、表示に関する登記をする場合には、法第二十九条の規定により実地調査を行わなければならない。ただし、申請に係る不動産の調査に関する報告(土地家屋調査士又は土地家屋調査士法人が代理人として登記を申請する場合において、当該土地家屋調査士(土地家屋調査士法人の場合にあっては、その代表者)が作成したものに限る。)その他の申請情報と併せて提供された情報又は公知の事実若しくは登記官が職務上知り得た事実により登記官が実地調査をする必要がないと認めたときは、この限りでない。
試験ではこう問われる
- 登記官が実地調査をできるのはどの登記か(表示に関する登記の申請と職権登記。権利に関する登記には及ばない)
- 現地の検査ができる時間はいつか(日の出から日没まで)
- 実地調査を省略できるのはどんな場合か(調査士の調査報告書や公知の事実などから登記官が必要がないと認めたとき)
- 調査結果と申請の表示が合わないときどうなるか(却下事由。補正できれば補正)
- 登記官は身分証明書を携帯しなければならないか(携帯し、請求があれば提示する)
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