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司法書士と弁護士の違い:できること・できないこと

試験制度・キャリア 読了 約11分

司法書士と弁護士の違いを、弁護士法3条・72条と司法書士法3条の条文で整理します。140万円の簡裁代理、債務整理の最高裁判決、家事・刑事・登記の扱い、司法試験と司法書士試験のルート・科目の重なりまで。どちらを目指すか迷う人向け。

司法書士と弁護士の違い:できること・できないこと

司法書士と弁護士の違いは、代理できる範囲にあります。弁護士は訴訟や交渉をはじめとする法律事務全般を、金額や裁判所の制限なく代理できます。司法書士の中心は登記・供託の代理と、裁判所や法務局に出す書類の作成です。認定を受けた司法書士は簡易裁判所の訴訟などを代理できますが、上限は140万円です。家事事件や刑事事件の代理人・弁護人も、原則として弁護士の仕事です。

この記事は、司法書士と弁護士のどちらを目指すか迷っている人に向けて書いています。業務の違いは弁護士法・司法書士法などの条文で、試験の違いは法務省の公表資料で確認できる範囲に限って整理します。年収や予備校の比較は扱いません。

業務の違い:条文の書き方が正反対

弁護士の職務は「一般の法律事務」

弁護士の職務は、弁護士法3条1項が定めています。当事者その他関係人の依頼または官公署の委嘱によって、訴訟事件、非訟事件、行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことです。

ポイントは最後の「その他一般の法律事務」です。弁護士の職務は、訴訟に限らず法律事務全般に及びます。金額の上限も、扱える裁判所の制限もありません。同条2項は、弁護士は当然に弁理士と税理士の事務を行えるとも定めています。

司法書士の業務は3条1項の列挙

司法書士の業務は、司法書士法3条1項の1号から8号に列挙されています。

号 業務 できる司法書士
1号 登記または供託に関する手続の代理 すべて
2号 法務局・地方法務局に提出する書類の作成 すべて
3号 登記・供託に関する審査請求の手続の代理 すべて
4号 裁判所・検察庁に提出する書類の作成など すべて
5号 1号から4号の事務についての相談 すべて
6号〜8号 簡易裁判所の手続の代理、140万円以下の紛争の相談・裁判外の和解の代理など 認定を受けた司法書士

弁護士法が「一般の法律事務」と包括的に書くのに対し、司法書士法は業務を1つずつ数え上げています。司法書士ができるのは列挙された業務であり、列挙にない代理はできません。この書き方の違いが、2つの資格の違いの出発点です。各号の詳しい中身は司法書士法の業務範囲で扱っています。

司法書士の業務は法律に列挙された範囲に限られ、列挙にない代理はできない。

72条と73条が互いの領域を守る

2つの資格の領域は、それぞれの法律の禁止規定で守られています。

規定 禁止される者 禁止される行為
弁護士法72条 弁護士・弁護士法人でない者 報酬を得る目的で、法律事件に関して代理・和解などの法律事務を取り扱うことを業とすること
司法書士法73条1項 司法書士会に入会している司法書士・司法書士法人でない者 3条1項1号から5号の業務を行うこと

どちらの条文にも、ただし書で「他の法律に別段の定めがある場合」を除く定めがあります。認定司法書士が140万円以下の事件を代理できるのは、司法書士法3条1項6号・7号が弁護士法72条ただし書の「別段の定め」に当たるからです。

反対に、弁護士は登記の申請の代理もできます。弁護士法3条1項の「一般の法律事務」に登記の申請代理も含まれると解されており、司法書士法73条1項ただし書の「別段の定め」に当たるという整理です。ただし、弁護士法3条2項が当然にできると明記しているのは弁理士と税理士の事務だけで、司法書士の事務は条文に挙がっていません。試験で問われたら、条文の文言そのものを基準にしてください。

裁判・紛争の場面での違い

認定司法書士の代理は140万円まで

民事訴訟法54条1項は、法令により裁判上の行為をすることができる代理人のほか、弁護士でなければ訴訟代理人となれないと定めています。司法書士法3条6項は、認定司法書士がこの規定にかかわらず、3条1項6号の手続で訴訟代理人になれるとしています。

6号イの対象は、簡易裁判所の民事訴訟手続で、訴訟の目的の価額が裁判所法33条1項1号に定める額を超えないものです。裁判所法33条1項1号は、簡易裁判所が第一審の裁判権を持つ請求を、訴訟の目的の価額が140万円を超えないものと定めています。

場面 弁護士 認定司法書士
簡易裁判所の民事訴訟。訴額140万円以下 代理できる 代理できる
地方裁判所の民事訴訟 代理できる 代理できない
自ら代理した簡裁の判決に対する控訴の提起 できる できる
控訴審の手続 代理できる 代理できない
強制執行 代理できる 原則できない。少額訴訟債権執行は例外
裁判所に出す書類の作成 できる できる。金額の上限なし

最後の行が見落とされがちです。代理ができない事件でも、訴状や答弁書などの書類の作成は3条1項4号の業務で、認定も金額の上限も要りません。本人が自分で訴訟を進め、司法書士が書類で支える形です。

認定を受けるには、特別研修の修了と法務大臣の認定、司法書士会の会員であることの3つが必要です(司法書士法3条2項)。研修と考査の流れは認定司法書士と簡裁訴訟代理で扱っています。

司法書士は代理できない事件でも、認定や金額の制限なく訴状などの書類を作成できる。

裁判外の和解と最高裁平成28年6月27日判決

訴訟になる前の交渉も同じ構造です。認定司法書士は、簡易裁判所の民事訴訟手続の対象となる民事紛争で、紛争の目的の価額が140万円を超えないものについて、相談に応じ、裁判外の和解を代理できます(司法書士法3条1項7号)。弁護士の交渉には、この金額の制限がありません。

140万円の数え方が争われたのが、最高裁平成28年6月27日第一小法廷判決です。事案は、債務整理を依頼された認定司法書士が、元本が140万円を超える個別の債権について貸金業者と裁判外の和解をし、報酬を受けたというものです。依頼者側は、債権の総額で判断すべきだと主張しました。司法書士側は、債務者が弁済計画の変更で受ける経済的利益の額で判断すべきだと主張しました。

最高裁は、どちらの主張も採りませんでした。債務整理を依頼された認定司法書士は、債務整理の対象となる個別の債権の価額が140万円を超える場合には、その債権に係る裁判外の和解について代理することができない、と判断しています。理由として、債権ごとに争いの内容や解決の方法が異なり、最終的には個別の債権の給付を求める訴訟が想定されることを挙げ、代理できる範囲は和解の相手方との関係でも客観的かつ明確な基準で決められるべきだとしました。

家事事件と刑事事件

認定司法書士の代理の対象は、3条1項6号に列挙された民事訴訟法・民事保全法・民事調停法・少額訴訟債権執行の手続です。家事事件手続法の手続は入っていません。家事事件手続法22条1項は、法令により裁判上の行為をすることができる代理人のほか、弁護士でなければ手続代理人になれないと定めています。家庭裁判所の許可を得れば弁護士でない者を手続代理人にできるという例外はありますが、司法書士の業務として代理できるわけではありません。

刑事事件では、刑事訴訟法31条1項が、弁護人は弁護士の中から選任しなければならないと定めています。

場面 弁護士 司法書士
遺産分割調停・離婚調停の手続代理 できる できない
相続放棄の申述書など家庭裁判所に出す書類の作成 できる できる。3条1項4号
成年後見人への就任 できる できる
刑事事件の弁護人 できる 原則できない
告訴状など検察庁に出す書類の作成 できる できる。3条1項4号

家事事件でも、申立書の作成は司法書士の業務です。相続の場面では、相続放棄の申述書の作成から、その後の相続登記までを司法書士が担うことがよくあります。成年後見の制度と司法書士の関わりは成年後見制度で扱っています。

資格取得ルートの違い

弁護士:司法試験と司法修習

弁護士になるルートは、原則として次の順です。

  1. 法科大学院の課程を修了するか、司法試験予備試験に合格する(司法試験法4条1項)
  2. 司法試験に合格する
  3. 最高裁判所から司法修習生を命じられ、少なくとも1年間の修習の後、試験に合格して修習を終える(裁判所法66条1項・67条1項)
  4. 日本弁護士連合会の弁護士名簿に登録される(弁護士法8条)

弁護士法4条は、司法修習生の修習を終えた者が弁護士となる資格を持つと定めています。このほか、5条に法務大臣の認定による資格の特例があります。

司法試験には受験資格があり、受験できる期間も法科大学院の修了や予備試験の合格から5年以内に限られます(司法試験法4条1項)。法科大学院に在学中でも、所定の単位を修得し、1年以内に修了する見込みがあると学長が認定すれば受験できます(同条2項)。予備試験は、短答式・論文式の筆記と口述の方法で行われます(司法試験法5条1項)。

司法書士:司法書士試験と登録

司法書士になるルートは、次のとおりです。

  1. 司法書士試験に合格する(司法書士法4条1号)
  2. 日本司法書士会連合会の司法書士名簿に登録を受ける(司法書士法8条)
  3. 簡易裁判所の代理をするなら、特別研修を修了し法務大臣の認定を受ける(司法書士法3条2項)

司法書士試験には受験資格の制限がなく、受験回数や期間の制限もありません。司法修習にあたる制度もなく、合格後は登録を受ければ業務を始められます。司法書士試験は筆記と口述の方法で行われ、口述試験は筆記試験の合格者について行われます(司法書士法6条2項)。口述試験の中身は司法書士試験の口述試験で扱っています。

なお、司法書士法4条が司法書士となる資格を認めるのは、司法書士試験の合格者と、裁判所書記官などの職歴に基づき法務大臣が認めた者です。弁護士は登記の申請代理ができますが、弁護士の資格で司法書士として登録できるわけではありません。

司法書士試験は受験資格や回数・期間の制限がなく、合格後は登録で業務を始められる。

令和7年の数字で比べる

法務省の公表資料から、令和7年の数字を並べます。

項目 司法試験 司法書士試験
受験者数 3,837人 14,418人
合格者数 1,581人 751人
合格率 約41.2% 約5.2%
合格者の平均年齢 26.8歳 42.05歳

司法試験の数字は法務省「令和7年司法試験の採点結果」、司法書士試験の数字は法務省「令和7年度司法書士試験の最終結果について」によります。合格率は受験者数と合格者数から計算した値です。司法試験の平均年齢は令和7年12月末現在、司法書士試験は令和7年11月4日現在の値です。

この合格率をそのまま比べることはできません。司法試験の受験者は、法科大学院の修了や予備試験の合格という関門を通った人に限られます。司法書士試験は誰でも受けられるので、分母の中身が違います。合格者の平均年齢の差には、社会人が働きながら受験しやすいという司法書士試験の性格が表れています。合格率の読み方は司法書士試験の合格率と難易度で扱っています。

試験の違い:形式と科目の重なり

試験の形式を比べる

項目 司法試験 司法書士試験
根拠 司法試験法 司法書士法6条
筆記の方法 短答式と論文式 択一式と記述式
口述 なし。予備試験にはある あり。筆記合格者が受ける
受験資格 法科大学院の修了、予備試験の合格など 制限なし
合格後 司法修習 登録

司法試験は、短答式と論文式による筆記の方法で行われます(司法試験法2条1項)。論文式は、事例を読んで法的な分析と構成を文章で論じる試験です。司法書士試験の記述式は、事実関係から登記の申請書の内容を答案用紙の枠に書く試験です。同じ筆記の記述でも、求められる作業はまったく違います。

司法書士試験の記述式は、事実関係をもとに登記申請書の内容を答案の枠に書く試験。

科目の重なり

司法試験の短答式は憲法・民法・刑法の3科目です(司法試験法3条1項)。論文式は公法系・民事系・刑事系の科目と選択科目1科目で、民事系には民法・商法・民事訴訟法が含まれます(同条2項)。

区分 科目
両方にある 憲法、民法、商法・会社法、刑法、民事訴訟法
司法書士試験だけ 不動産登記法、商業登記法、民事執行法、民事保全法、供託法、司法書士法
司法試験だけ 行政法、刑事訴訟法、選択科目

重なる科目は多く見えますが、問われ方が違います。司法書士試験の民法は択一式で、条文と判例の結論を正確に選ぶ力が問われます。司法試験の論文式は、同じ民法でも事例を分析して論述する力が問われます。

司法書士試験の比重は、司法試験にない不動産登記法と商業登記法にあります。午後の部の択一式35問のうち例年24問がこの2科目で、記述式の2問も登記の申請書を作る問題です。登記法の進め方は不動産登記法の勉強法で扱っています。

学習時間を比べる公的な統計はない

2つの試験に必要な学習時間を比べた公的な統計はありません。言えるのは構造の違いです。弁護士は試験の前に法科大学院か予備試験、試験の後に1年以上の司法修習があります。司法書士は試験に合格すれば登録で業務を始められる一方、登記法と記述式という独自の領域の学習が必要です。司法書士試験の学習時間の見積もり方は司法書士試験に必要な勉強時間で扱っています。

どちらを目指すかの判断軸

扱いたい事件で選ぶ

最初の判断軸は、将来どんな仕事をしたいかです。

  • 不動産の売買や相続の登記、会社の設立や役員変更の登記を中心に扱いたいなら司法書士
  • 金額の大きい訴訟、家事調停、刑事弁護、企業間の交渉を扱いたいなら弁護士
  • 少額の民事紛争や債務整理に関わりたいなら、どちらでも入口はある。ただし司法書士は認定と140万円の範囲内に限られる

弁護士は登記の代理もできますが、登記の申請を日常の業務として担っているのは司法書士です。司法書士試験は登記法と記述式で、その実務の基礎を集中的に問う試験になっています。

受験の条件で選ぶ

2つ目の判断軸は、受験の条件です。弁護士を目指すには、法科大学院に進学するか予備試験に合格する必要があり、合格後も1年以上の司法修習に専念する期間があります(裁判所法67条2項)。働きながら目指す場合は、予備試験のルートを選ぶことになります。

司法書士試験は、受験資格も期間の制限もなく、合格後に修習もありません。仕事を続けながら受験し、合格後に登録して開業や転職に進むという道筋が描きやすい試験です。働きながらの学習の組み立て方は社会人が仕事と両立する方法で扱っています。

司法書士を選んだ後の広がり

司法書士を選んでも、紛争に関わる道は閉じていません。認定を受ければ140万円以下の簡易裁判所の事件と裁判外の和解を代理でき、それを超える事件でも書類の作成で本人を支えられます。司法書士試験に向けた学習全体の設計は合格ロードマップにまとめています。

認定司法書士は範囲内の事件を代理でき、範囲を超える事件も書類の作成で本人を支えられる。

試験での出題ポイント

択一式ではこう問われる

午後の部の司法書士法では、業務の範囲が条文の主語と金額と例外の入れ替えで問われます。弁護士との違いは、次のような肢になります。

  • 認定司法書士は、地方裁判所の民事訴訟で訴訟代理人となることができる。誤りです。代理できるのは簡易裁判所の手続で、訴額140万円以下に限られます
  • 認定を受けていない司法書士は、地方裁判所に提出する訴状を作成することができない。誤りです。書類の作成は3条1項4号で、認定も金額の上限も要りません
  • 認定司法書士は、債務の総額が140万円を超える債務整理でも、個別の債権の価額が140万円以下であれば、その債権について裁判外の和解を代理できる。正しいです。最高裁平成28年6月27日判決の基準は個別の債権ごとの価額です
  • 認定司法書士は、自ら代理した簡易裁判所の事件の判決に対し、控訴を提起できる。正しいです。ただし控訴審の代理はできません

司法書士法は範囲の狭い科目で、条文の素読と過去問で仕上がります。学習の順番はマイナー科目の攻略法で扱っています。

民事訴訟法との接続

140万円の基準は、民事訴訟法の訴額の算定と事物管轄の知識とつながります。訴額は訴えで主張する利益で算定し、数個の請求は合算し、附帯の目的である遅延損害金は算入しません(民事訴訟法8条・9条)。訴額の算定と管轄の関係は民事訴訟の訴訟要件で整理しています。

まとめ

  • 弁護士の職務は弁護士法3条1項の「一般の法律事務」で、金額や裁判所の制限がない。
  • 司法書士の業務は司法書士法3条1項の列挙で、中心は登記・供託の代理と裁判所・法務局に出す書類の作成。
  • 認定司法書士の代理は簡易裁判所の手続で、訴額140万円以下に限られる。裁判外の和解も140万円以下。
  • 債務整理での140万円は、最高裁平成28年6月27日判決により個別の債権ごとの価額で判断する。
  • 家事事件の手続代理と刑事事件の弁護人は、原則として弁護士の仕事。書類の作成は司法書士もできる。
  • 弁護士は司法試験と1年以上の司法修習、司法書士は受験資格のない試験と登録で資格を得る。

よくある質問

弁護士になれば、司法書士の仕事もすべてできますか

登記の申請の代理は、弁護士法3条1項の一般の法律事務として行えると解されています。ただし、弁護士の資格で司法書士として登録することはできません。司法書士法4条が司法書士となる資格を認めているのは、司法書士試験の合格者と、裁判所書記官などの職歴に基づき法務大臣が認めた者です。

司法書士に債務整理を頼むと、どこまで対応してもらえますか

認定司法書士は、個別の債権の価額が140万円以下であれば、その債権について貸金業者との裁判外の和解を代理できます。140万円を超える債権については代理できません。最高裁平成28年6月27日判決は、債権の総額や依頼者が受ける経済的利益の額ではなく、個別の債権の価額で判断するとしています。代理できない債権でも、裁判所に出す書類の作成は司法書士の業務です。

司法書士試験と司法試験の学習は両立できますか

憲法・民法・商法・刑法・民事訴訟法は両方の試験にありますが、司法書士試験は択一式と登記の記述式、司法試験は論文式が中心で、問われ方が違います。司法試験には法科大学院の修了か予備試験の合格という受験資格もあります。どちらを主に目指すかを先に決め、その試験の過去問の水準に合わせて学習を組み立ててください。

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