不動産登記法の勉強法:司法書士試験の択一16問を得点源にする手順
司法書士試験の不動産登記法(不登法)を得点源にしたい受験生向け。総論を先に固め、各論は売買の所有権移転との差分で覚えるのが結論です。出題配分、学習順序、頻出論点、先例の覚え方、記述式との往復まで解説します。
司法書士試験の不動産登記法(不登法)は、総論を先に固め、各論は「売買による所有権移転登記」を基準形にした差分で覚えるのが最短ルートです。不登法は午後の部の択一35問のうち16問を占め、記述式でも1問が出ます。択一16問(48点)と記述式1問を合わせると、試験全体で最も配点の大きい科目です。この記事は、手続法特有の決まりごとの多さに戸惑っている初学者と、択一で10問前後から伸びない受験生に向けて、出題配分・学習順序・頻出論点・先例の覚え方・記述式との往復・午後の時間戦略を1本にまとめました。
不動産登記法は午後の部の主役
配点構造から逆算する
筆記試験の構成は次のとおりです。
| 区分 | 内容 | 問数 | 配点 |
|---|---|---|---|
| 午前の部 | 択一:憲法3・民法20・刑法3・会社法等9 | 35問 | 105点 |
| 午後の部 | 択一:民訴5・民保1・民執1・書士法1・供託3・不登法16・商登法8 | 35問 | 105点 |
| 午後の部 | 記述式:不動産登記法1問・商業登記法1問 | 2問 | 140点 |
午後の択一35問のうち16問、約46%が不登法です。商業登記法8問と合わせれば24問、7割近くが登記法になります。記述式は令和6年度から2問で140点満点になり、不登法の比重はもう一段上がりました。
午前・午後の択一と記述式にはそれぞれ基準点があり、1つでも下回れば不合格です。基準点は年度ごとに法務省が公表する値で、毎年動きます。仕組みは基準点と上乗せ点の仕組みで整理しています。
16問中何問取るか
| 学習段階 | 不登法16問の目標 | 考え方 |
|---|---|---|
| 1年目前半 | 8〜10問 | 総論の頻出論点と所有権・抵当権を確実に |
| 直前期に入る前 | 12問 | 根抵当権・仮登記まで戦力化 |
| 本試験 | 13〜14問 | 落とすのは新傾向・マイナー各論の2〜3問 |
16問全問正解を目標にしないのがコツです。毎年1〜2問は、見たことのない先例や実務の細部を突く問題が混ざります。そこで時間と集中力を吸われるより、13〜14問を速く確実に取り、余った時間を記述式に回すほうが総合点は伸びます。
16問の出題分布
年度によって前後しますが、16問はおおむね次のように分かれます。
| 領域 | おおよその問数 | 特徴 |
|---|---|---|
| 総論:申請手続・添付情報・登記識別情報・登録免許税など | 5〜7問 | 毎年必ず出る。差がつきにくいが、落とすと致命的 |
| 所有権に関する登記 | 2〜3問 | 相続・共有・更正が頻出 |
| 抵当権・根抵当権 | 2〜3問 | 根抵当権は元本確定が中心 |
| 仮登記 | 1問前後 | ほぼ毎年。パターンが決まっている |
| 用益権・信託・区分建物・処分制限など | 2〜3問 | 差がつく領域。捨て問も混ざる |
| 表示に関する登記 | 0〜1問 | 深追い不要 |
総論だけで5〜7問あります。総論は範囲が狭く、同じ論点が繰り返し出ます。ここを固めるだけで基準点を越える土台ができるので、学習は総論から入ります。
択一と記述を分けて勉強しない
択一で問われる「この登記に登記原因証明情報は要るか」は、記述式で添付情報欄に書く内容そのものです。記述式で書く登記原因の日付は、択一で問われる物権変動の効力発生時期そのものです。択一の肢を解いたら「申請書にするとどうなるか」を考え、雛形を書いたら「択一でどう聞かれるか」を考える。この往復を最初から習慣にしてください。
学習順序と教材
総論から入り、時期で配分を変える
不登法の範囲は総論と各論に分かれます。総論はどの登記にも共通するルールで、申請主義、共同申請主義、申請人、申請情報、添付情報、登記識別情報、却下・取下げ、登録免許税、審査請求などです。各論は所有権・抵当権・根抵当権・用益権・仮登記・信託・区分建物など、権利ごとの手続です。
| 時期 | 総論:各論 | やること |
|---|---|---|
| 第1期:インプット初期 | 7:3 | 総論を一通り通す。各論は売買と相続の所有権移転、抵当権設定だけ触れる |
| 第2期:各論展開期 | 4:6 | 所有権各論・抵当権・根抵当権・仮登記・用益権へ広げ、総論の枠に載せて理解する |
| 第3期:過去問回転期 | 5:5 | 過去問を分野別・年度別に回し、聞かれ方への反応速度を上げる |
第2期では、各論の論点を必ず総論の枠組みに載せます。「根抵当権の極度額の変更は、誰が申請人で、添付情報は何で、登録免許税はいくらか」という形です。
各論は「差分」で覚える
各論を権利ごとにゼロから覚え直すと、記憶量が膨れ上がります。基準形を1つ決め、ほかの登記は基準形との違いだけを覚えます。
- 基準形 — 売買による所有権移転登記。申請人、登記の目的、登記原因、添付情報、登録免許税をフルセットで覚えます。具体的な中身は売買による所有権移転登記で確認してください
- 差分 — 抵当権設定なら、権利者が抵当権者になり、債権額・利息・損害金などの登記事項が加わり、住所証明情報が不要になり、課税標準が債権額になります。詳しくは抵当権設定登記で扱っています。相続による所有権移転なら、単独申請になり、登記識別情報と印鑑証明書が不要になります
この方式で覚えると、覚える量は体感で半分以下になります。
教材は4点で足りる
- 基本テキスト — 総論と各論が表で整理されているもの。肢別で間違えたときに戻る辞書として使います
- 肢別過去問集 — 改正対応の版を選びます。過去問に出た先例がそのまま学習範囲の目安になります
- 記述式の雛形集または雛形の一覧 — 択一の段階から申請書の形を見ておくと、添付情報の理解が速くなります
- 六法 — 不動産登記法と不動産登記令・規則の条文を引く習慣を作ります
教材を増やすより、同じ教材の周回を優先してください。
総論の核:申請手続・添付情報・登記識別情報
共同申請主義から例外を束ねる
権利に関する登記は、登記権利者と登記義務者が共同して申請するのが原則です(不動産登記法60条)。登記によって不利益を受ける者を手続に関与させることで、登記の真正を担保する趣旨です。この趣旨から、次の論点が一本の線でつながります。
- 登記識別情報を登記義務者が提供するのは、義務者本人が申請していることを担保するため
- 単独申請が例外的に許されるのは、義務者を関与させなくても真正が担保できる事情があるとき
- 判決による登記が確定判決などに限られるのは、義務者の意思表示が判決で擬制されるから(63条1項)
択一で問われるのは、ほぼ常に原則からのずれです。単独申請できる場面は、次のような表を自分で作って再現できるようにします。
| 単独申請できる場面 | 理由 | 注意点 |
|---|---|---|
| 相続・法人の合併による権利の移転 | 包括承継で義務者がいない | 遺贈は原則共同申請。相続人に対する遺贈は単独申請できる |
| 判決による登記 | 意思表示の擬制 | 給付判決。和解調書・調停調書も含む |
| 登記名義人の氏名等の変更・更正 | 不利益を受ける者がいない | 変更・更正を証する情報が必要 |
| 所有権保存の登記 | 前主が登記記録上いない | 申請できる者が74条で法定されている |
| 仮登記 | 仮登記義務者の承諾または仮登記を命ずる処分がある | 承諾を証する情報が必要 |
| 仮登記の抹消 | 仮登記名義人が自らの権利を消す | 利害関係人も、仮登記名義人の承諾があれば単独で申請できる(110条) |
| 買戻しの特約に関する登記の抹消 | 契約の日から10年を経過している | 2023年4月1日施行の69条の2 |
申請人の周辺で問われること
「誰が申請できるか」の周辺も定番です。
- 一般承継人による申請 — 登記権利者・登記義務者が申請前に死亡した場合、その相続人が申請できます(62条)。売主が売却後に死亡した場合、買主への所有権移転登記は相続登記を経由せずに、売主の相続人が義務者側として申請します
- 代位申請 — 債権者は債権者代位により債務者に代わって登記を申請できます。代位原因を証する情報が必要になります
- 判決による登記と承継 — 判決の後に当事者に承継があった場合の扱いは、民事執行法の承継執行文の知識と接続します
添付情報は「何を証明するか」で分類する
添付情報を丸暗記しようとすると必ず破綻します。何を証明するための情報かで分類してください。
| 添付情報 | 証明するもの | 典型的に不要になる場面 |
|---|---|---|
| 登記原因証明情報 | 登記原因となる法律行為・事実 | 所有権保存の登記(敷地権付き区分建物の74条2項保存を除く) |
| 登記識別情報 | 申請人が登記名義人本人であること | 単独申請の多く |
| 印鑑証明書 | 書面の押印が本人のものであること | 所有権以外の権利の登記名義人が義務者となる場合など |
| 住所証明情報 | 新たに所有権の登記名義人となる者の実在 | 所有権以外の権利の設定・移転、抹消・変更 |
| 代理権限証明情報 | 代理人の権限 | 本人申請 |
| 第三者の許可・同意・承諾を証する情報 | 実体法上必要な第三者の関与 | 該当する規定がない場合 |
この分類を覚えたうえで、登記ごとに埋めていきます。住所証明情報は「新たに所有権の登記名義人になるとき」に必要、という切り口が択一で繰り返し問われます。添付情報と登記識別情報の関係は登記識別情報と添付情報で申請書の構造から説明しています。
利害関係人の承諾は「効力要件か、付記か」で分ける
第三者の承諾が問題になる場面では、承諾がないとどうなるかが最重要の分岐です。
- 権利の変更・更正の登記(66条) — 承諾があれば付記登記、なければ主登記でする
- 登記の抹消(68条)・抹消された登記の回復(72条) — 承諾がなければ申請できない
- 所有権に関する仮登記に基づく本登記(109条) — 承諾がなければ本登記できない。本登記をすると、その第三者の登記は登記官が職権で抹消する
- 根抵当権の極度額の変更 — 利害関係人の承諾が効力要件(民法398条の5)なので、承諾がなければ主登記でもできない
「承諾がなければ主登記」と「承諾がなければ登記できない」を取り違えないことが、この領域の得点を決めます。
登記識別情報を提供できない場合の3ルート
登記識別情報は、申請人自らが登記名義人となる場合に登記完了後に通知され(21条)、共同申請の際に登記義務者が提供します(22条)。提供できない場合のルートは3つです。
| ルート | 概要 | ポイント |
|---|---|---|
| 事前通知 | 登記官が登記義務者に通知し、義務者が期間内に申出をする(23条1項) | 期間内に申出がなければ却下(25条10号) |
| 資格者代理人による本人確認情報 | 司法書士等が本人確認をした情報を提供し、登記官が相当と認める(23条4項1号) | 事前通知が省略される |
| 公証人の認証 | 申請情報等について公証人の認証を受け、登記官が相当と認める(23条4項2号) | 同じく事前通知が省略される |
登記識別情報が通知されない場合、失効の申出、有効証明の請求といった周辺制度も一体で押さえます。
却下と形式的審査
却下事由は25条に13号まで法定されています。すべてを暗記する必要はなく、頻出は「申請の権限を有しない者の申請」(4号)、「登記義務者の氏名・住所が登記記録と合致しない」(7号)、「必要な情報が提供されない」(9号)あたりです。
重要なのは、却下事由に当たらないものを見抜けることです。登記官は形式的審査権しか持たないため、申請情報と添付情報の形式が整っていれば、実体法上の問題を理由に却下することは原則としてできません。取下げと却下の違い(添付書面の還付、登録免許税の再使用証明)も比較表にしておきます。
登録免許税は「区分」を問われる
択一で問われるのは複雑な計算ではなく、課税区分の判断です。
| 課税標準 | 対象となる登記の例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 不動産の価額 | 所有権の保存・移転、地上権等の設定・移転 | 持分の移転は持分に応じた価額 |
| 債権額・極度額 | 抵当権・根抵当権の設定、抵当権の移転 | 極度額の増額変更は増加額に課税 |
| 不動産の個数 | 抵当権の抹消、名変、多くの変更・更正の登記 | 1個につき1,000円。抹消だけ、同一申請で20個を超えると2万円の上限 |
原則は「権利が新たに生まれるか価値が動くなら定率、既存の登記を直すなら定額」です。税率・軽減・免税の全体像は登録免許税の計算でまとめています。軽減税率には適用期限があるので、学習している年度の法令で確認してください。
審査請求は3点だけ
登記官の処分に不服がある者は、登記官を監督する法務局または地方法務局の長に審査請求ができ(156条)、審査請求は登記官を経由してします(157条)。問われるのは、誰ができるか、何が対象か、手続の流れの3点です。年に1肢程度なので深追いは不要です。
改正で狙われる領域
相続登記の申請義務化
2024年4月1日から、相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ所有権を取得したことを知った日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければなりません(76条の2第1項)。相続人に対する遺贈で取得した者も同様です。義務を簡易に履行する手段として相続人申告登記が設けられ(76条の3)、期間内に申出をすれば義務を履行したものとみなされます。
期間の起算点、法定相続分による登記の後に遺産分割があった場合の扱い(76条の2第2項)、相続人申告登記が権利の登記ではなく登記官が職権で付記する登記であることは、条文で正確に押さえてください。実務の流れは相続登記の義務化で整理しています。
住所等変更登記の申請義務化
2026年4月1日からは、所有権の登記名義人の氏名・名称・住所に変更があったとき、変更があった日から2年以内に変更の登記を申請する義務が課されました(76条の5)。登記官が他の公的機関から情報を取得して職権で変更登記をする仕組みも設けられています。施行直後の数年は、期間・対象・職権登記の要件が狙われやすい領域です。詳しくは住所等変更登記の義務化を参照してください。
各論の頻出論点
所有権:保存・相続・更正
所有権保存登記は、申請できる者が法定されている点が特徴です。表題部所有者またはその相続人その他の一般承継人、所有権を有することが確定判決によって確認された者、収用によって所有権を取得した者(74条1項)、そして区分建物では表題部所有者から所有権を取得した者(同条2項)です。2項の保存で敷地権付き区分建物の場合は、敷地権の登記名義人の承諾が必要になります。
相続による所有権移転登記は、民法の相続法と完全に連動します。法定相続分による登記、遺産分割による登記、相続放棄があった場合、遺言がある場合、数次相続とパターンが多く、民法側の理解が甘いと手も足も出ません。相続法の学び方は民法の勉強法で扱っています。
更正登記は、登記の一部に錯誤または遺漏があるときに、登記の同一性を保ちながら是正する手続です。同一性が失われるような更正はできません。単独所有を共有に更正できるか、共有者の一部を入れ替える更正ができるか、を同一性の基準で説明できるようにしてください。
抵当権:基本形を完全に固める
- 登記事項 — 債権額、債務者、利息、損害金などのうち、どれが必要的でどれが任意的か
- 共同抵当 — 共同担保目録、追加設定の扱い
- 移転 — 債権譲渡や代位弁済による移転は付記登記。随伴性の帰結です
- 順位変更 — 当事者全員の共同申請で、利害関係人の承諾が必要。順位変更の登記は主登記でされます
- 抹消 — 弁済、解除、混同。混同は民法179条の理解が前提です
根抵当権:元本確定の前後で整理する
根抵当権は各論の最重要領域で、最も差がつく領域です。軸は「元本確定前か確定後か」の一点です。
| 論点 | 元本確定前 | 元本確定後 |
|---|---|---|
| 被担保債権の範囲・債務者の変更 | できる(民法398条の4) | できない |
| 極度額の変更 | できる。利害関係人の承諾が必要(398条の5) | できる。同様に承諾が必要 |
| 元本確定期日の変更 | できる(398条の6) | できない |
| 被担保債権の譲渡に伴う移転 | 随伴しない(398条の7) | 随伴する |
| 全部譲渡・分割譲渡・一部譲渡 | できる(398条の12・398条の13) | できない |
元本確定事由(398条の20)と、確定の登記が要る場合・要らない場合の区別も定番です。「登記記録を見て確定が分かるか」という基準で整理します。相続・合併・会社分割による根抵当権の帰趨(398条の8〜398条の10)は、表を作って一気に覚えるのが効率的です。抵当権との違いは抵当権と根抵当権の違いで比較しています。
仮登記:パターンが安定した得点源
仮登記はほぼ毎年出題され、パターンが安定しているため費用対効果が高い領域です。1号仮登記(手続上の要件が備わらない場合)と2号仮登記(請求権保全の場合)の区別を出発点に、単独申請の要件、所有権に関する仮登記に基づく本登記と利害関係人の承諾、仮登記の抹消を押さえます。本登記で「所有権に関する仮登記に限る」という限定は頻繁に狙われます。要件と手続は仮登記の種類と効力にまとめています。
処分制限・用益権・表示登記は最低限
- 処分禁止の仮処分に後れる登記の抹消 — 所有権について処分禁止の登記がされた後、仮処分債権者が本案勝訴に基づいて登記を申請するとき、後れる登記の抹消を単独で申請できます(111条1項)。抹消の際、登記官は処分禁止の登記も職権で抹消します(同条3項)
- 用益権 — 地上権・地役権・賃借権・配偶者居住権の登記事項の違い。地役権は要役地と承役地の関係が独特です。配偶者居住権は存続期間の記録と、譲渡できない権利であることが問われます
- 信託・区分建物 — 信託の登記は権利の登記と同一の申請情報でする点、区分建物では敷地権の登記がされた後の建物のみ・土地のみを目的とする登記の制限が中心です
- 表示に関する登記 — 出題は年0〜1問。登記官の職権でもできること、表題部所有者やその持分の変更は所有権保存の後に移転の登記をするのでなければ登記できないこと(32条)、所有権の登記以外の権利に関する登記がある土地の合筆制限(41条6号)の3点で十分です
つまずきやすい3つの壁と越え方
総論が抽象的で頭に入らない
総論は具体的な登記の姿が見えないまま読むと、条文の言い換えを延々と読まされている感覚になります。対策は、総論の論点を1つ読むたびに「売買による所有権移転ならどうなるか」に当てはめることです。登記識別情報を読んだら、売主が提供するものだと確認する。住所証明情報を読んだら、買主について必要だと確認する。基準形の申請書1枚を手元に置いて総論を読むだけで、抽象的な規律が具体的な欄に結びつきます。
添付情報が覚えられない
添付情報を登記ごとに縦に覚えようとすると、数十種類の登記の数だけ一覧表が必要になります。先に「何を証明する情報か」という横の分類を覚え、そのうえで個々の登記について「この登記で証明が必要なのはどれか」を考える順序にしてください。印鑑証明書なら「所有権の登記名義人が義務者になるか」、住所証明情報なら「新たに所有権の登記名義人になる者がいるか」という1つの問いで要否が決まります。
根抵当権で混乱する
根抵当権の混乱は、ほとんどが元本確定の前後を意識せずに論点を読んでいることから生じます。問題文を読んだら、最初に「この根抵当権は確定しているか」を判定し、その答えを余白に書いてから肢を読んでください。確定前なら変更・譲渡の自由度が高く随伴性がない、確定後なら普通抵当権に近づく。この第一分岐を固定するだけで、正答率は目に見えて変わります。
先例の学び方:暗記ではなく射程をつかむ
過去問に出た先例に絞る
不登法は条文だけでは実務の細部が決まらず、通達や質疑応答が事実上のルールとして機能しています。ただし先例は膨大で、「先例を覚える」という発想で臨むと溺れます。
結論として、過去問と肢別問題集に出てきた先例で十分です。先例の出題は過去に出たものの繰り返しが大半で、まったく新しい先例は「捨てる2〜3問」に入れて構いません。先例集を単独で読む学習は文脈が欠けるため定着しにくく、過去問の中で事案と一緒に出会ったほうが記憶に残ります。
結論ではなく理由で覚える
「AはできるがBはできない」を暗記しても、本試験では少しずらした事案が出ます。対応できるのは理由を知っている人だけです。先例の理由は、多くが次のどれかに還元できます。
- 登記の真正の担保 — 虚偽の登記が入り込む余地があるからできない
- 公示の明確性 — 登記記録から権利関係が読み取れなくなるからできない
- 登記の同一性 — 更正の範囲を超えるからできない
- 実体法上の効力 — そもそも生じない権利変動だからできない
新しい先例に出会ったら、どれに当たるかを考える癖をつけてください。ノートを作るなら「事案・可否・理由の型」の3列で1論点1行、A4数枚に収めます。
記述式との往復と午後の時間戦略
択一総論は記述式の得点そのもの
記述式で求められる登記の目的、登記原因と日付、申請人、添付情報のうち、後ろの3つはすべて択一総論の知識です。択一の肢を1つ解いたら、その事案を目的・原因・申請人・添付情報の4行だけの申請書に書き直してみてください。1肢1〜2分で終わり、1日10肢で1か月300肢分の申請書練習になります。書けなかった項目が、そのまま択一の弱点です。記述式の対策は記述式(不動産登記)の対策にまとめています。
雛形の暗記も択一に効きます。雛形を書けるということは、その登記の申請人・登記事項・添付情報・登録免許税をすべて言えるということです。「この登記の添付情報として正しいものはどれか」と聞かれたとき、雛形が頭に入っていれば、選択肢を読む前に答えが出ます。
午後の部は択一を速く抜ける
午後の部は3時間で択一35問と記述式2問を解きます。記述式に110分前後を残すなら、択一は60分前後で抜ける必要があり、1問あたり2分を切ります。そのためには、確実に判断できる肢から処理して組合せで切る技術と、30秒考えて方針が立たない問題に印をつけて飛ばす判断が欠かせません。不登法16問の中の「考えても分からない1〜2問」に3分使うと、後ろの商業登記法8問が崩れ、記述式の時間まで削られます。通過時刻の決め方や解く順序の型は午後の部の時間配分で詳しく扱っています。
直前期の回し方
本試験3か月前からは、過去問を総論・所有権・抵当権・根抵当権・仮登記・その他各論の6ブロックに分け、週に1〜2ブロックずつ回します。毎日、時間を計って択一を解く時間を必ず入れ、本番のペースを維持してください。
間違えた肢は、知識がなかった、知識はあったが引き出せなかった、事案を読み違えた、時間がなくて雑に処理した、の4つに分類して記録します。前の2つはテキストと周回で、後ろの2つは読み方と速度の訓練で直します。分類せずに「間違えた問題を復習する」だけだと、対処が的外れになります。
まとめ
- 不登法は午後の択一16問と記述式1問を占める最大の得点源。択一の目標は13〜14問
- 学習は総論から。各論は売買による所有権移転登記を基準形にした差分で覚える
- 添付情報は「何を証明するか」で分類し、利害関係人の承諾は「効力要件か付記か」で分ける
- 根抵当権は元本確定の前後、仮登記は1号・2号と本登記の承諾で整理する
- 相続登記・住所等変更登記の申請義務化は、施行直後の狙い目として条文で押さえる
- 先例は過去問に出たものに絞り、結論ではなく理由の型で覚える
- 択一の肢を申請書に書き直す往復で、択一と記述式を同時に伸ばす
よくある質問
不動産登記法は民法を終えてから始めるべきですか
民法の物権と担保物権を一通り終えたら始めて構いません。親族・相続まで待つ必要はありません。相続登記に進む前に民法の相続を学べば十分に間に合います。不登法を学ぶと民法の物権変動の理解も深まるので、並行するほうが両方伸びます。
先例集は買ったほうがよいですか
択一対策としては不要です。過去問と肢別問題集に出てきた先例で出題の大半をカバーできます。新しい先例を追うより、既に出た先例の理由を説明できる状態にするほうが得点につながります。
択一で12問前後から伸びません。何を見直せばよいですか
間違えた肢を分野と原因で分類してください。総論の添付情報と登記識別情報で落としているなら、表の再現練習が足りません。根抵当権や仮登記で落としているなら、確定前後や承諾の効果の比較表を作り直します。知識はあるのに間違えているなら、読み違いと時間配分の問題です。
記述式の勉強はいつから始めればよいですか
各論の所有権と抵当権を学び終えた段階から、雛形を書き始めてください。択一の知識が完成するのを待つ必要はありません。申請書を書くことで添付情報や申請人の理解が具体的になり、択一の得点も上がります。
不動産登記法の肢別演習を一覧で一気に○×。解説と関連先例がその場で開きます。