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司法書士法の業務範囲:できること・できないことを条文で整理

司法書士法 読了 約10分

司法書士法3条の業務を、全司法書士ができる1号〜5号と、認定司法書士だけの6号〜8号に分けて整理。140万円の基準、上訴・強制執行の制限、依頼に応ずる義務、非司法書士の取締り、司法書士法人の業務まで。択一1問を確実に取りたい受験生向け。

司法書士の業務範囲は、司法書士法3条1項の8つの号を2つに分けると整理できます。1号から5号までは、すべての司法書士ができる業務です。登記・供託の代理、法務局や裁判所に出す書類の作成、審査請求の代理、それらの相談です。6号から8号までは簡裁訴訟代理等関係業務と呼ばれ、研修を修了して法務大臣の認定を受けた司法書士だけができます。金額の上限は裁判所法33条1項1号の140万円です。

この記事は、司法書士法の択一1問を確実に取りたい受験生向けです。3条の各号を条文で確認し、できることとできないことの境界、依頼に応ずる義務、非司法書士の取締り、司法書士法人の業務までを1本にまとめます。

業務の全体像:3条1項の8つの号

1号〜5号と6号〜8号に分ける

司法書士は、他人の依頼を受けて、3条1項各号の事務を行うことを業とします(司法書士法3条1項)。各号の内容は次のとおりです。

号 業務 できる司法書士
1号 登記または供託に関する手続の代理 すべて
2号 法務局または地方法務局に提出・提供する書類や電磁的記録の作成 すべて
3号 法務局または地方法務局の長に対する登記・供託に関する審査請求の手続の代理 すべて
4号 裁判所・検察庁に提出する書類、筆界特定の手続で法務局に提出する書類の作成 すべて
5号 1号から4号までの事務についての相談 すべて
6号 簡易裁判所における一定の手続の代理 認定を受けた司法書士
7号 140万円以下の民事紛争の相談、仲裁手続や裁判外の和解の代理 認定を受けた司法書士
8号 一定の価額以下の筆界特定の手続の相談・代理 認定を受けた司法書士

6号から8号の業務を、条文は「簡裁訴訟代理等関係業務」と呼んでいます(司法書士法3条2項)。

「代理」と「書類作成」を区別する

8つの号は、「代理」と「書類作成」と「相談」の3種類の行為でできています。択一の肢は、この3種類を入れ替えて作られます。

行為 登記・供託 裁判所 金額の上限
代理 1号・3号 6号。簡易裁判所の手続に限る 6号は140万円
書類作成 2号 4号 なし
相談 5号 5号は書類作成の相談、7号は紛争の相談 7号は140万円

裁判所に提出する書類の作成は4号の業務で、金額の上限がありません。地方裁判所の事件でも、140万円を超える事件でも、書類の作成はできます。代理ができないだけです。業務範囲を理解するうえで、最初に押さえる区別です。

「他人の依頼を受けて」行う業務

3条1項は、他人の依頼を受けて行うことを前提にしています。自分自身の登記を申請するのは、司法書士の業務ではなく本人としての申請です。依頼者の登記を代理して初めて、3条の業務になります。

すべての司法書士ができる業務:1号〜5号

登記・供託の代理と法務局提出書類の作成

1号は、登記または供託に関する手続の代理です。不動産登記・商業登記の申請代理と、供託の申請代理がここに入ります。

2号は、法務局または地方法務局に提出し、または提供する書類や電磁的記録の作成です。条文は「登記又は供託に関する」と限定していません。法務局に提出する書類であれば2号の対象です。ただし、筆界特定の手続で法務局に提出する書類は4号に回されているので、2号からは除かれています(司法書士法3条1項2号ただし書)。

審査請求の代理

3号は、法務局または地方法務局の長に対する、登記または供託に関する審査請求の手続の代理です。登記官の処分に不服がある場合の審査請求を、依頼者に代わって行えます。

審査請求の代理は、認定を受けていない司法書士もできます。「審査請求の代理は認定司法書士に限る」という肢は誤りです。

裁判所提出書類の作成と相談

4号は、裁判所もしくは検察庁に提出する書類、または筆界特定の手続において法務局に提出する書類の作成です。訴状・答弁書・準備書面、支払督促の申立書、告訴状などが典型です。民事訴訟法の IT 化に合わせた改正で、現行の4号には書類に加えて電磁的記録の作成も入っています。令和8年度試験の前提となった令和8年4月1日時点の条文は「書類」だけでした。

5号は、1号から4号までの事務について相談に応ずることです。5号の相談は、あくまで書類作成や登記の手続についての相談です。紛争の相手方との交渉や、紛争そのものについての法律相談は、7号の簡裁訴訟代理等関係業務に位置づけられています。

認定司法書士だけができる業務:6号〜8号

認定の3要件

簡裁訴訟代理等関係業務は、次のいずれにも該当する司法書士に限り行えます(司法書士法3条2項)。

  1. 法務省令で定める法人が実施する研修で、法務大臣が指定するものの課程を修了したこと
  2. その者の申請に基づき、法務大臣が簡裁訴訟代理等関係業務を行うのに必要な能力を有すると認定したこと
  3. 司法書士会の会員であること

認定をするのは法務大臣です。日本司法書士会連合会や最高裁判所ではありません。主体を入れ替えた肢に注意してください。

6号:簡易裁判所の手続の代理

6号は、簡易裁判所における次の手続の代理です。いずれも、価額が裁判所法33条1項1号に定める額を超えないものに限られます。裁判所法33条1項1号は、簡易裁判所が第一審の裁判権を持つ請求を、訴訟の目的の価額が140万円を超えないものと定めています。司法書士法は金額を直接書かず、この条文を引用しているので、上限は140万円です。

号 手続
イ 民事訴訟法の手続。訴訟の目的の価額が140万円以下
ロ 訴え提起前の和解、支払督促。請求の目的の価額が140万円以下
ハ 訴え提起前の証拠保全、民事保全法の手続。本案の訴訟の目的の価額が140万円以下
ニ 民事調停法の手続。調停を求める事項の価額が140万円以下
ホ 少額訴訟債権執行。請求の価額が140万円以下

認定司法書士は、民事訴訟法54条1項本文の規定にかかわらず、これらの手続で訴訟代理人または代理人となれます(司法書士法3条6項)。少額訴訟と支払督促の仕組みは少額訴訟と支払督促で、民事保全の手続は仮差押えと仮処分で扱っています。

6号ただし書:上訴・再審・強制執行

6号の手続であっても、次の事項は代理できません(司法書士法3条1項6号ただし書)。

  • 上訴の提起。ただし、自ら代理人として手続に関与している事件の判決・決定・命令に係るものは除く
  • 再審
  • 強制執行に関する事項。ただし、6号ホの少額訴訟債権執行は除く

つまり、簡易裁判所で自分が代理した事件の判決に対して控訴を提起することはできます。しかし、控訴審は地方裁判所の手続なので、控訴審での代理はできません。

強制執行については3条7項も置かれています。6号イ・ロの手続で訴訟代理人になった認定司法書士は、委任を受けた事件について強制執行に関する訴訟行為ができません。例外は、少額訴訟の訴訟代理人になった認定司法書士が、少額訴訟債権執行の手続でする訴訟行為です。強制執行の種類は強制執行の種類で整理しています。

7号・8号:裁判外の和解と筆界特定

7号は、簡易裁判所の民事訴訟手続の対象となる民事紛争で、紛争の目的の価額が140万円を超えないものについて、相談に応じ、仲裁事件の手続や裁判外の和解について代理することです。訴訟になる前の交渉も、この範囲で代理できます。

7号の価額の数え方について、最高裁平成28年6月27日判決があります。債務整理を依頼された認定司法書士について、紛争の目的の価額は、債務整理の対象となる個別の債権ごとに、その債権の額で判断するとしました。債務の総額や、依頼者が受ける経済的利益の額で判断するのではありません。

8号は、筆界特定の手続のうち、対象土地の価額を基礎に法務省令で算定される額が140万円を超えないものについて、相談に応じ、または代理することです。

できないこと・制限される場面

他の法律による制限と業務を行い得ない事件

司法書士は、3条1項の業務であっても、その業務を行うことが他の法律で制限されているものは行えません(司法書士法3条8項)。

また、公務員として職務上取り扱った事件と、仲裁人として取り扱った事件については、業務を行ってはなりません(司法書士法22条1項)。相手方の依頼を受けて裁判書類の作成をした事件などについても、同条2項以下で業務が制限されています。

依頼に応ずる義務

司法書士は、正当な事由がある場合でなければ依頼を拒むことができません(司法書士法21条)。ただし、簡裁訴訟代理等関係業務に関する依頼は、この義務から除かれています。

業務 依頼に応ずる義務
登記・供託の代理、書類作成など1号〜5号 ある。正当な事由がなければ拒めない
簡裁訴訟代理等関係業務 ない

条文がかっこ書で明示的に除いています。「認定司法書士は簡裁訴訟代理の依頼を正当な事由なく拒めない」という肢は誤りです。

非司法書士の取締りと他の士業法

司法書士会に入会している司法書士または司法書士法人でない者は、3条1項1号から5号までの業務を行ってはなりません(司法書士法73条1項)。ただし、他の法律に別段の定めがある場合は除かれます。違反した者は、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金に処せられます(司法書士法78条1項)。

73条1項が禁止しているのは1号から5号までの業務です。6号から8号の簡裁訴訟代理等関係業務は、ここには入っていません。訴訟の代理や紛争の和解の代理を無資格者がすることは、弁護士法72条の問題として扱われる構造です。

業務だけでなく名称も保護されています。司法書士でない者は、司法書士またはこれに紛らわしい名称を用いてはなりません(司法書士法73条3項)。司法書士法人でない者が司法書士法人またはこれに紛らわしい名称を用いることも禁止されています(同条4項)。業務の独占と名称の独占が、同じ条文に並んでいる点を押さえてください。

他の士業法の同種の規定と並べると、構造の違いが見えます。

規定 禁止の対象 報酬についての文言
司法書士法73条1項 3条1項1号〜5号の業務 条文に報酬の要件なし
弁護士法72条 法律事件に関する法律事務の取扱い・周旋 報酬を得る目的
行政書士法19条1項 行政書士法1条の3に規定する業務 報酬を得て

行政書士法1条の3第2項は、行政書士の書類作成であっても、他の法律で制限されているものは行えないと定めています。登記申請書の作成は司法書士法3条1項2号の業務で、73条1項により司法書士以外の者には禁じられています。そのため、行政書士法1条の3第2項により、行政書士の業務には入らないという構造です。2つの資格の違いは司法書士と行政書士の違いで整理しています。

司法書士法人の業務

3条業務と定款で定める業務

司法書士法人は、3条1項1号から5号までの業務を行うほか、定款で定めるところにより、次の業務を行えます(司法書士法29条1項)。

  • 法令等に基づきすべての司法書士が行うことができるものとして法務省令で定める業務の全部または一部
  • 簡裁訴訟代理等関係業務

法務省令で定める業務は、司法書士法施行規則31条に列挙されています。管財人・管理人などの地位に就いて他人の財産を管理・処分する業務、後見人・保佐人・補助人・監督委員などの地位に就く業務、司法書士の業務に関連する講演会や出版などの教育・普及の業務、これらに附帯しまたは密接に関連する業務などです。条文が「すべての司法書士が行うことができるもの」と書いているとおり、成年後見人への就任などは、個人の司法書士も行える業務です。

簡裁訴訟代理等関係業務ができる法人

司法書士法人が簡裁訴訟代理等関係業務を行えるのは、社員のうちに認定を受けた司法書士がいる法人に限られます(司法書士法29条2項)。法人自体が認定を受けるのではありません。社員に認定司法書士がいるかどうかで決まります。

業務 司法書士法人ができるか 根拠
3条1項1号〜5号 できる 司法書士法29条1項
施行規則31条の業務 定款で定めればできる 司法書士法29条1項1号
簡裁訴訟代理等関係業務 定款で定め、社員に認定司法書士がいればできる 司法書士法29条1項2号・2項

試験での出題ポイント

択一式ではこう問われる

司法書士法は午後の択一で例年1問です。業務範囲の肢は、条文の主語・金額・例外の入れ替えで作られます。

  • 認定を受けていない司法書士は、地方裁判所に提出する訴状を作成することができない。誤りです。裁判所提出書類の作成は4号で、認定も金額の上限も要りません
  • 認定司法書士は、自ら代理した簡易裁判所の事件の判決に対する控訴審において、訴訟代理人となることができる。誤りです。控訴の提起まではできますが、控訴審の代理はできません
  • 簡裁訴訟代理等関係業務の認定は、日本司法書士会連合会が行う。誤りです。法務大臣が行います(司法書士法3条2項2号)
  • 司法書士は、簡裁訴訟代理等関係業務に関する依頼についても、正当な事由がなければ拒むことができない。誤りです(司法書士法21条)
  • 社員に認定司法書士がいない司法書士法人も、定款で定めれば簡裁訴訟代理等関係業務を行うことができる。誤りです(司法書士法29条2項)

司法書士法は範囲が狭く、条文素読と過去問で仕上がる科目です。学習の順番と時間の配分はマイナー科目の攻略法で扱っています。

口述試験との接続

司法書士試験の筆記試験に合格すると、口述試験があります。業務範囲は、司法書士が何をする資格なのかという根本に関わるので、条文の番号と内容を口頭で説明できるようにしておくと安心です。口述試験の形式は司法書士試験の口述試験で扱っています。

まとめ

  • 3条1項1号〜5号はすべての司法書士ができる業務、6号〜8号は認定を受けた司法書士だけの簡裁訴訟代理等関係業務。
  • 裁判所提出書類の作成は4号で、認定も金額の上限も要らない。代理だけが簡易裁判所・140万円に限られる。
  • 140万円は裁判所法33条1項1号の額。認定は研修修了・法務大臣の認定・司法書士会の会員の3要件。
  • 上訴の提起は自ら代理した事件なら可、再審と強制執行は不可。少額訴訟債権執行だけは代理できる。
  • 依頼に応ずる義務は、簡裁訴訟代理等関係業務には及ばない。
  • 非司法書士による1号〜5号の業務は73条1項で禁止され、78条1項で処罰される。
  • 司法書士法人の簡裁訴訟代理等関係業務は、社員に認定司法書士がいる場合に限る。

よくある質問

認定を受けていない司法書士は、簡易裁判所の事件に一切関われないのですか

関われます。訴状や答弁書などの裁判所提出書類の作成は4号の業務なので、認定の有無にかかわらず行えます。認定がないとできないのは、簡易裁判所で依頼者の代理人として手続を行うことと、7号の紛争についての相談・裁判外の和解の代理などです。本人が自分で訴訟を進め、司法書士が書類の作成で支える形は、認定がなくても可能です。

140万円を超える請求でも、支払督促の代理はできますか

できません。6号ロは、支払督促の手続で請求の目的の価額が裁判所法33条1項1号に定める額、つまり140万円を超えないものに代理の範囲を限っています。支払督促は請求額にかかわらず簡易裁判所の裁判所書記官に申し立てる手続ですが、代理できる範囲は140万円以下です。申立書の作成なら、4号の業務として金額にかかわらず行えます。

司法書士が成年後見人になるのは、3条の業務ですか

3条1項の各号には入っていません。司法書士法29条1項1号は、司法書士法人が定款で定めれば行える業務として、法令等に基づきすべての司法書士が行うことができるものとして法務省令で定める業務を挙げ、施行規則31条がその中に後見人・保佐人・補助人などの地位に就く業務を置いています。個人の司法書士も行える業務として位置づけられており、3条の業務とは別の枠です。

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