代位による登記:債権者代位と登記申請の手続
代位による登記を、民法423条・423条の7と不動産登記法59条7号、不動産登記令3条4号・7条1項3号から整理。代位原因の書き方、典型例、登記識別情報が通知されない理由、強制執行の前提となる代位まで受験生向けに解説します。

代位による登記とは、債権者が、債務者に代わって、債務者のための登記を申請することです。申請するのは債権者ですが、登記されるのは債務者の権利です。択一では、代位原因の扱い、登記識別情報が誰にも通知されないこと、どんな場面で代位が使われるかが繰り返し問われます。
結論を先に言うと、押さえる条文は4つです。実体の根拠は民法423条と423条の7。登記記録には代位者と代位原因が記録されます(不動産登記法59条7号)。申請情報には代位者である旨と代位原因を書き(不動産登記令3条4号)、代位原因を証する情報を添付します(不動産登記令7条1項3号)。あとは「申請人と登記名義人がずれる」という1点から、ほぼすべての論点が導けます。
本記事は、代位による登記を条文から組み立て直したい受験生向けです。不動産登記法の学習全体は不動産登記法の勉強法で扱っています。
代位による登記とは何か
他人の登記を、他人の名義で申請する
登記は、原則として当事者の申請か官公署の嘱託がなければできません(不動産登記法16条1項)。当事者が自分の登記を放置していると、その登記を前提に権利を得たい人が困ります。
たとえば、Aが登記名義人の甲土地をBが買い、さらにBがCに売ったとします。A・B間の所有権移転登記がされていないと、Cは自分への移転登記を受けられません。登記記録上の所有者はAのままで、Bは登記義務者になれないからです。
そこでCは、Bに代わってA・B間の登記を申請します。申請人はCですが、登記名義人になるのはBです。これが代位による登記の基本形です。

民法423条:債権者代位権の要件
民法423条1項本文は、債権者は、自己の債権を保全するため必要があるときは、債務者に属する権利を行使することができると定めています。行使される債務者の権利を被代位権利と呼びます。
ただし、債務者の一身に専属する権利と差押えを禁じられた権利は代位できません(同項ただし書)。債権の期限が到来しない間は、保存行為を除き代位できません(同条2項)。強制執行により実現できない債権でも代位できません(同条3項)。
金銭債権者が債務者の財産を確保するために代位する場面は、この423条が根拠です。
民法423条の7:登記請求権の保全
民法423条の7前段は、登記をしなければ権利の得喪・変更を第三者に対抗できない財産を譲り受けた者は、譲渡人が第三者に対して有する登記手続を請求する権利を譲渡人が行使しないときは、その権利を行使することができると定めています。後段は、423条の4から423条の6までを準用しています。
先ほどの例でいえば、甲土地の譲受人Cが、譲渡人Bが前主Aに対して持つ所有権移転登記請求権を行使する場面です。2020年4月施行の債権法改正で明文化された規定で、金銭債権の保全とは目的が違います。保全したいのは「自分への登記請求権」そのものです。
| 根拠 | 典型の場面 | 保全する債権 |
|---|---|---|
| 民法423条 | 金銭債権者が債務者名義の登記をする | 金銭債権 |
| 民法423条の7 | 不動産の譲受人が、譲渡人の前主に対する登記請求権を行使する | 自己への登記請求権 |
不動産登記法と令の手当て
代位による申請は、民法の規定だけでは手続になりません。不動産登記法と不動産登記令が、次の3点を手当てしています。
| 場面 | 条文 | 内容 |
|---|---|---|
| 登記記録 | 不動産登記法59条7号 | 代位者の氏名・名称と住所、代位原因を登記事項とする |
| 申請情報 | 不動産登記令3条4号 | 申請人が代位者である旨、被代位者の氏名・名称と住所、代位原因 |
| 添付情報 | 不動産登記令7条1項3号 | 代位原因を証する情報 |
59条7号の文言は「民法第四百二十三条その他の法令の規定により他人に代わって登記を申請した者」です。民法423条だけでなく、他の法令による代位も同じ枠組みで扱います。不動産登記法99条が定める、受益者または委託者が受託者に代わってする信託の登記の申請がその例です。
代位原因と代位原因を証する情報
代位原因は「代位者が持つ権利」
代位原因とは、代位者がなぜ代位できるのか、つまり代位者が被代位者に対して持つ権利のことです。登記原因とは別物です。登記原因は被代位者と相手方の間の売買や相続で、代位原因は代位者と被代位者の間の売買や貸金です。
| 項目 | 内容 | 先ほどの例 |
|---|---|---|
| 登記原因 | 登記される権利変動の原因 | A・B間の売買 |
| 代位原因 | 代位者が被代位者に対して持つ権利 | B・C間の売買による所有権移転登記請求権 |
申請情報では、代位原因は「年月日売買の所有権移転登記請求権」のように、発生原因と権利の種類で書きます。金銭債権者が強制執行の前提として代位するなら、「年月日金銭消費貸借の強制執行」のように書きます。登記原因の欄と代位原因の欄に、それぞれ別の原因と日付が入ることになります。

代位原因を証する情報の例
代位原因を証する情報は、代位原因が存在することを登記官に示す情報です。公文書に限られず、私文書でもかまいません。
| 代位原因 | 代位原因を証する情報の例 |
|---|---|
| 売買による所有権移転登記請求権 | 代位者と被代位者の間の売買契約書 |
| 強制執行のための代位 | 執行力のある債務名義の正本 |
| 判決で認められた登記請求権 | 判決の正本 |
代位原因を証する情報と登記原因証明情報は、別々に用意します。A・B間の所有権移転なら、登記原因証明情報はA・B間の売買を証する情報です。代位原因を証する情報はB・C間の売買契約書です。登記原因証明情報の全体像は登記原因証明情報の記事で確認してください。
登記記録にはこう残る
代位による登記がされると、権利部の該当欄に、通常の登記事項に加えて代位者の氏名・住所と代位原因が記録されます(59条7号)。
記録されるのは代位者と代位原因で、権利者として記録されるのは被代位者です。権利者欄に代位者を書く誤りは、記述式で起きやすい失点です。
代位による登記の典型例
譲受人が譲渡人の前主に対する登記請求権を代位する
最初の例そのものです。Aが登記名義人の甲土地をBが買い、BがCに転売したが、A・B間の登記をBが申請しない。CはBに代位して、Aと共同でA・B間の所有権移転登記を申請します(民法423条の7)。
この登記は共同申請の構造を保ちます。登記権利者Bの地位をCが代わって行使し、登記義務者Aは通常どおり申請に関与します。Aの登記識別情報や印鑑証明書も通常どおり必要です。代位は権利者側の協力を補うもので、義務者側の協力は補いません。Aも協力しないなら、CはAを相手に訴えを起こし、判決を得て申請することになります。判決による単独申請の仕組みは判決による登記で扱っています。

買主が売主に代位して相続登記をする
甲土地の登記名義人Aが死亡し、相続人Bが甲土地を取得したが、相続登記をしないままCに売却した場合です。登記記録上の所有者はAなので、BからCへの移転登記をいきなり申請することはできません。
Cは、Bに対する所有権移転登記請求権を代位原因として、Bに代位してA・B間の相続登記を申請します。相続による移転は登記権利者の単独申請なので(不動産登記法63条2項)、代位者Cだけで申請できます。その後、B・C間の売買による所有権移転登記を共同申請します。
この場面と混同しやすいのが、Aが生前にCへ売却し、登記前に死亡した場合です。このときは相続登記を経由しません。Aの相続人が登記義務者の地位を承継し、Cと共同で、A名義からCへの所有権移転登記を申請します(不動産登記法62条)。代位の問題にはなりません。
| 事案 | 前提の相続登記 | 根拠 |
|---|---|---|
| 相続後に相続人Bが売却 | 必要。CがBに代位して申請できる | 民法423条・63条2項 |
| Aが生前に売却し、登記前に死亡 | 不要。相続人が義務者として申請 | 不動産登記法62条 |
相続登記そのものの手続は相続登記の義務化とやり方で整理しています。
登記名義人の住所変更登記を代位する
売主Bが登記名義人で、登記記録上の住所が現在の住所と違う場合、そのままではB・C間の所有権移転登記はできません。申請情報の登記義務者の住所が登記記録と合致しないと、申請は却下されるからです(不動産登記法25条7号)。
前提として登記名義人の住所の変更登記が必要です。Bが協力しないなら、買主CはBに代位してこの変更登記を申請できます。判決による登記で被告の住所が登記記録と違うときも同じ処理で、判決の正本が代位原因を証する情報になります。住所変更登記の申請義務は住所変更登記の義務化で扱っています。
抵当権者や金銭債権者が相続登記を代位する
抵当権設定者が死亡し、相続登記がされていない場合、抵当権者が競売を申し立てるには、相続人名義への登記が前提になります。抵当権者は相続人に代位して相続登記を申請できます。
金銭債権者が、相続人である債務者の財産を差し押さえる場合も同じです。債務者が相続した不動産の名義が被相続人のままなら、債権者が債務者に代位して相続登記を申請します。
登記識別情報と完了の通知
代位者にも被代位者にも通知されない
登記識別情報の通知を定める不動産登記法21条本文は、登記官は、その登記をすることによって申請人自らが登記名義人となる場合に、登記を完了したときは申請人に登記識別情報を通知すると定めています。
代位による登記では、申請人は代位者で、登記名義人は被代位者です。申請人自らが登記名義人となる場合にあたらないので、代位者には通知されません。被代位者は申請人ではないので、被代位者にも通知されません。結果として、この登記の登記識別情報は誰にも通知されません。

被代位者が次に登記義務者になるとき
前の例で、CがBに代位して相続登記をした後、B・C間の所有権移転登記を共同申請する場面を考えます。登記義務者Bは本来、登記識別情報を提供しなければなりません(不動産登記法22条本文)。しかしBには通知されていません。
22条ただし書は、登記識別情報を提供できないことにつき正当な理由がある場合には提供を要しないとしています。代位による登記で通知を受けていないことは、この正当な理由にあたります。その代わり、登記官は登記義務者に事前通知をするか(23条1項)、資格者代理人による本人確認情報の提供などで代えることになります(23条4項)。登記識別情報の仕組み全体は登記識別情報と添付情報で確認してください。
被代位者への完了の通知
登記識別情報は通知されませんが、被代位者は自分の知らないうちに登記がされたことになります。そこで登記官は、代位による申請に基づく登記を完了したときは、被代位者に対して登記が完了した旨を通知します(不動産登記規則183条1項2号)。
代位者は申請人なので、登記完了証の交付を受けます(不動産登記規則181条1項)。このほか、登記官が権利に関する登記の錯誤・遺漏を発見したときの通知は代位者にもしなければならず(不動産登記法67条4項)、職権抹消の通知も、代位による申請に基づく登記なら代位者にもします(不動産登記規則185条2項)。
| 誰に | 何が | 根拠 |
|---|---|---|
| 代位者 | 登記完了証 | 規則181条1項 |
| 被代位者 | 登記が完了した旨の通知 | 規則183条1項2号 |
| 代位者・被代位者 | 登記識別情報は通知されない | 法21条本文 |
表示に関する登記の代位と代位の代位
表示に関する登記も代位できる
代位は権利に関する登記に限られません。申請情報の内容を定める令3条4号と、添付情報を定める令7条1項3号は、どちらも「登記の申請」一般についての規定で、表示に関する登記を除いていません。
たとえば、債務者所有の建物が表題登記もされていない場合、債権者は債務者に代位して建物の表題登記を申請できます。申請情報に代位者である旨と代位原因を書き、代位原因を証する情報を添付する点は、権利に関する登記と同じです。なお、表示に関する登記を完了したときは、申請人以外の表題部所有者または所有権の登記名義人に完了の通知がされます(規則183条1項1号)。
代位の代位
代位者の債権者が、さらに代位することも認められています。たとえばA名義の甲土地がB、C、Dと順に売られ、どの段階の登記もされていない場合、DはCに代位し、CがBに代位する権利をさらに行使して、A・B間の登記を申請できるとする先例があります。
この場合、申請情報には、各段階の代位原因を明らかにします。代位の連鎖のどこかが欠ければ、申請はできません。代位原因を証する情報も、連鎖の各段階について必要になります。
強制執行・仮差押えの前提としての代位
差押えの登記は嘱託でされる
強制競売の開始決定がされると、裁判所書記官は直ちに差押えの登記を嘱託します(民事執行法48条1項)。仮差押えの登記も裁判所書記官が嘱託します(民事保全法47条3項)。どちらも債権者の申請ではなく、官公署の嘱託による登記です。
嘱託による登記の手続には、申請の規定の多くが準用されます(不動産登記法16条2項)。そのため、差押えの嘱託でも、登記義務者にあたる者の表示が登記記録と合致している必要があります。債務者が相続した不動産が被相続人名義のままでは、債務者の財産として差押えの登記をすることができません。仮差押えと登記の関係は民事保全の仮差押え・仮処分で扱っています。
前提の相続登記は債権者が代位で申請する
裁判所書記官は差押えの登記を嘱託しますが、前提となる相続登記まで嘱託するわけではありません。債権者は、強制競売の申立てをする前に、債務者に代位して相続登記を申請しておきます。代位原因は「年月日金銭消費貸借の強制執行」のような形で、代位原因を証する情報は執行力のある債務名義の正本です。
仮差押えでも考え方は同じです。仮差押命令を得た債権者が、その正本を代位原因を証する情報として、債務者に代位して相続登記を申請します。強制執行の全体像は強制執行の種類で整理しています。
未登記の不動産なら職権で保存登記
所有権の登記がない不動産に、嘱託により所有権の処分の制限の登記をするときは、登記官が職権で所有権の保存の登記をします(不動産登記法76条2項)。表題登記もない不動産なら、登記官は不動産の表示のうち法務省令で定めるものも併せて登記します(同条3項による75条の準用)。差押えは処分の制限なので、この規定が働きます。
ここは代位との比較で問われます。所有権の登記がない場合は職権で保存登記がされ、代位は要りません。被相続人名義で登記されている場合は職権の相続登記はなく、債権者の代位が必要です。
| 不動産の状態 | 差押えの前提 | 根拠 |
|---|---|---|
| 所有権の登記がない | 登記官が職権で保存登記 | 不動産登記法76条2項 |
| 被相続人名義のまま | 債権者が代位して相続登記 | 民法423条 |

相続登記の申請義務との関係
相続人は、相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する義務を負います(不動産登記法76条の2第1項)。ただし、代位者その他の者の申請または嘱託により、その登記がされた場合には、この義務の規定は適用されません(同条3項)。債権者の代位で相続登記がされれば、相続人は重ねて申請する必要がないということです。
試験での出題ポイント
択一式ではこう問われる
- 根拠条文:金銭債権の保全は民法423条、登記請求権の保全は423条の7。登記記録には代位者と代位原因(59条7号)
- 申請情報と添付情報:代位者である旨・被代位者・代位原因(令3条4号)、代位原因を証する情報(令7条1項3号)。私文書でもよい
- 権利者欄:登記名義人になるのは被代位者。代位者ではない
- 登記識別情報:代位者にも被代位者にも通知されない(21条本文)。被代位者が後に義務者となるときは正当な理由として事前通知などで処理
- 通知:被代位者には登記完了の通知(規則183条1項2号)
- 共同申請の場面:代位は権利者側を補うだけ。登記義務者の登記識別情報・印鑑証明書は通常どおり必要
- 62条との区別:生前の売買で売主が死亡したなら相続登記は経由しない
- 強制執行:被相続人名義なら債権者が代位して相続登記。所有権の登記がなければ職権で保存登記(76条2項)
記述式との接続
記述式では、代位が論点になるのは主に前提登記です。事実関係に「登記名義人が死亡している」「住所が変わっている」「前主からの登記が未了」とあれば、最終的な登記の前に何が必要かを考えます。
架空の例で確認します。甲土地の所有権登記名義人Aが令和7年3月1日に死亡し、子Bが単独で相続した。Bは相続登記をしないまま、令和7年8月1日にCへ甲土地を売却した。Bが相続登記を申請しないため、Cが前提の相続登記を代位で申請し、その後B・C間の売買による登記を共同で申請する。
| 欄 | 第1の登記 | 第2の登記 |
|---|---|---|
| 登記の目的 | 所有権移転 | 所有権移転 |
| 原因 | 令和7年3月1日相続 | 令和7年8月1日売買 |
| 申請人 | 相続人B、代位者C、代位原因は令和7年8月1日売買の所有権移転登記請求権 | 権利者C、義務者B |
| 添付情報 | 登記原因証明情報、住所証明情報、代位原因を証する情報 | 登記原因証明情報、印鑑証明書、住所証明情報。Bの登記識別情報は提供できない |
第2の登記で、Bの登記識別情報を添付情報に書かないことがポイントです。第1の登記は代位によるので、Bには通知されていません。申請情報には提供できない理由を書き、事前通知か本人確認情報で手当てします。答案構成の全体は記述式・不動産登記法の対策で扱っています。
まとめ
- 代位による登記は、債権者が債務者に代わって、債務者のための登記を申請するもの
- 根拠は民法423条と423条の7。登記記録には代位者と代位原因が記録される(不動産登記法59条7号)
- 申請情報に代位者である旨と代位原因を書き(令3条4号)、代位原因を証する情報を添付する(令7条1項3号)
- 代位原因は代位者が被代位者に対して持つ権利で、登記原因とは別
- 登記識別情報は代位者にも被代位者にも通知されない。被代位者には完了の通知がされる
- 表示に関する登記も代位でき、代位の代位も認められている
- 被相続人名義の不動産を差し押さえるには、債権者が代位して相続登記をする
よくある質問
代位による申請に、被代位者の委任状は要りますか
要りません。申請人は代位者で、被代位者は申請人ではないからです。被代位者の協力がなくても申請できるのが代位の意味です。司法書士が代理する場合は、代位者からの委任による代理権限証明情報を提供します(不動産登記令7条1項2号)。
代位者は、代位で自分の名義の登記をすることもできますか
できません。代位による登記で登記名義人になるのは、常に被代位者です。代位者が自分の名義を得るには、代位による登記を前提として、被代位者との間で改めて自分への登記を申請します。最初の例でいえば、CはまずBに代位してA・B間の登記をし、その後B・C間の登記を受けます。
被代位者が代位による登記を知らないままでも、登記は有効ですか
有効です。代位は債務者の協力がなくても権利を行使できる制度で、被代位者の同意は要件ではありません。被代位者が登記の事実を知れるよう、登記官から完了の通知がされます(規則183条1項2号)。

