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判決による登記:単独申請ができる場合

不動産登記法 読了 約10分

判決による登記を、不動産登記法63条1項と民事執行法177条の意思表示の擬制から整理。使える判決と使えない債務名義、執行文が要る場合、添付情報の違いまで、司法書士試験の受験生向けに条文で解説します。

登記の相手方が協力しないとき、登記権利者は訴訟を起こし、登記手続を命ずる判決を得て単独で申請できます。これが判決による登記です。択一では、どの判決なら使えるか、執行文が要るか、添付情報が共同申請とどう変わるかが繰り返し問われます。

結論を先に言うと、軸は2本です。第1に、不動産登記法63条1項が、登記手続を命ずる確定判決があれば他方が単独で申請できると定めていること。第2に、民事執行法177条が、判決の確定の時に債務者が意思表示をしたものとみなしていることです。執行文の要否も、使える債務名義の範囲も、この2本から導けます。

本記事は、判決による登記を条文から組み立て直したい受験生向けです。不動産登記法の学習全体は不動産登記法の勉強法で扱っています。

判決による登記の仕組み

63条1項:共同申請の例外

権利に関する登記は、登記権利者と登記義務者の共同申請が原則です(不動産登記法60条)。63条1項は、この原則に対する例外として、共同して申請しなければならない者の一方に登記手続をすべきことを命ずる確定判決による登記は、他方が単独で申請できると定めています。

条文は60条のほか、65条と89条1項も挙げています。65条は共有物分割禁止の定めに係る権利の変更の登記で、共有者全員の共同申請が必要な場面です。89条1項は抵当権の順位の変更の登記で、順位を変更する抵当権者全員の共同申請が必要な場面です。どちらも、協力しない者に対して判決を得れば、残りの者で申請できます。

同じ63条でも、2項の相続・合併による移転と、3項の相続人に対する遺贈による移転は、判決と無関係に登記権利者の単独申請を認める規定です。1項は「相手方の協力を判決で補う」単独申請、2項・3項は「そもそも相手方がいないか、共同申請を要しない」単独申請です。択一で63条が出たら、何項の話かを先に確かめてください。

民事執行法177条:意思表示の擬制

登記の申請は、登記義務者にとっては登記所に対する意思表示です。民事執行法177条1項本文は、意思表示をすべきことを債務者に命ずる判決その他の裁判が確定したときは、債務者はその確定の時に意思表示をしたものとみなすと定めています。

つまり、判決が確定した瞬間に、被告は登記の申請をしたことになります。執行官が何かをする必要はありません。63条1項は、この擬制を登記手続の側から受け止めた規定です。強制執行の他の方法との比較は強制執行の種類で扱っています。

勝訴したのが登記義務者でも使える

63条1項の文言は「一方に登記手続をすべきことを命ずる確定判決」で、「他方が単独で申請することができる」です。登記権利者が勝訴する場面に限っていません。

売主が買主に代金を受け取ったのに、買主が固定資産税の負担を嫌って所有権移転登記に応じない場合、売主は買主に対して登記を引き取るよう求める訴えを起こせます。買主に登記手続を命ずる判決が確定すれば、登記義務者である売主が単独で所有権移転登記を申請できます。

使える判決と使えない債務名義

給付判決であること

63条1項の判決は、登記手続をすべきことを命ずる判決、つまり給付判決です。主文が「被告は、原告に対し、別紙物件目録記載の土地について、年月日売買を原因とする所有権移転登記手続をせよ」のような形になっているものです。

所有権があることを確認するだけの確認判決では、被告に登記手続を命じていないので63条1項は使えません。確認判決が意味を持つのは、所有権保存登記の申請資格(不動産登記法74条1項2号)です。63条1項と74条1項2号の違いは、所有権保存登記で扱っています。

確定していること

条文は「確定判決」です。177条も確定の時に意思表示を擬制しています。仮執行の宣言を付した判決は、確定前に強制執行を可能にするものですが、意思表示の擬制は確定まで生じないので、判決による登記には使えません。判決の確定と既判力の関係は判決の効力で整理しています。

判決と同一の効力を持つもの、持たないもの

判決以外でも、確定判決と同一の効力を有するものであれば使えます。177条1項は、和解、認諾、調停、労働審判に係る債務名義が成立したときにも、その成立の時に意思表示を擬制しています。

債務名義 判決による登記に使えるか
登記手続を命ずる確定判決 使える
登記手続をする旨の和解調書・認諾調書・調停調書 使える。成立の時に擬制される
所有権の確認判決 使えない。登記手続を命じていない
仮執行宣言付き判決 使えない。確定していない
公正証書(執行証書) 使えない

公正証書が使えないのは、執行証書が債務名義になるのは金銭の一定額の支払などを目的とする請求に限られるからです(民事執行法22条5号)。登記手続をする約束を公正証書にしても、単独申請の根拠にはなりません。

確定の時期と和解調書

判決は、控訴などの期間が満了する前には確定しません(民事訴訟法116条1項)。控訴期間は、判決書の送達を受けた日から2週間の不変期間です(同法285条)。第一審で勝訴しても、被告が期間内に控訴すれば確定は遮断され、その間は判決による登記を申請できません。

これに対して、訴訟上の和解や請求の認諾は、調書に記載した時点で確定判決と同一の効力を有します(民事訴訟法267条)。控訴期間の経過を待つ必要がないので、和解調書の場合は確定を証する情報が問題になりません。訴訟の途中で被告が登記手続をすると約束して和解が成立すれば、その調書の正本で単独申請ができます。

書面 効力が生じる時 確定証明書
判決 控訴期間などの満了で確定した時 併せて提供する
和解調書・認諾調書 調書に記載した時 不要

執行文が要る場合

原則は不要

意思表示の擬制は判決の確定の時に当然に生じます。そのため、判決による登記では、原則として執行文の付与を受ける必要がありません。確定した判決の正本と、確定したことを証する情報があれば申請できます。

条件・引換え・債務者の証明すべき事実

例外は、177条1項ただし書に列挙されています。この場合、意思表示の擬制は判決の確定の時ではなく、執行文が付与された時に生じます。

判決の内容 擬制の時点 執行文付与の要件
債権者の証明すべき事実の到来に係る 執行文付与の時 債権者がその事実の到来を証する文書を提出する(27条1項)
反対給付との引換えに係る 執行文付与の時 債権者が反対給付またはその提供のあったことを証する文書を提出する(177条2項)
債務者の証明すべき事実のないことに係る 執行文付与の時 裁判所書記官が債務者に証明文書の提出を催告し、期間内に提出がない(177条3項)

引換給付判決の典型は、「被告は、原告から金何円の支払を受けるのと引換えに、所有権移転登記手続をせよ」という主文です。原告は代金を支払ったか提供したことを証明して執行文の付与を受け、その執行文が付いた判決正本で申請します。強制執行一般では、引換給付は執行開始の要件です(民事執行法31条1項)。意思表示の擬制では、これを執行文付与の要件に前倒ししている点が特徴です。

当事者に承継があった場合

判決に表示された当事者以外の者のために、または当事者以外の者に対して登記をする場合は、承継執行文が問題になります。債務名義の執行力は、口頭弁論終結後の承継人にも及び(民事執行法23条1項3号)、承継人を債権者または債務者とする執行文は、承継が裁判所書記官に明白であるか、債権者が承継を証する文書を提出したときに付与されます(同法27条2項)。

一方、登記権利者である原告が判決確定後に死亡した場合、相続人は被相続人名義への登記を不動産登記法62条により申請できます。62条は、登記権利者について相続があったときに相続人が登記を申請できるとする規定です。この場面では承継執行文を要しないとする先例があります。承継の時期と誰の名義に登記するかで扱いが分かれるので、択一では時期を確認してから肢を読んでください。

添付情報と申請情報

登記原因証明情報は判決の正本

63条1項の確定判決による登記では、登記原因証明情報は、執行力のある確定判決の判決書の正本に限られます(不動産登記令7条1項5号ロ(1))。確定判決と同一の効力を有するものの正本を含むので、和解調書の正本なども該当します。報告形式の登記原因証明情報で代えることはできません。判決の正本には確定の事実が表れないので、実務では確定証明書を併せて提供します。

登記原因とその日付は、判決の主文や理由から読み取ります。主文が「年月日売買を原因とする」と特定していれば、そのまま「年月日売買」です。登記原因証明情報の全体像は登記原因証明情報の記事で確認してください。

なお、令和8年5月21日施行の改正で、令7条1項5号ロ(1)に電子判決書に係る証明書などが加わりました。令和8年度試験の法令の基準日は令和8年4月1日なので、この改正は令和8年度試験では前提になっていません。

登記識別情報と印鑑証明書は不要

登記識別情報の提供を定める不動産登記法22条は、登記権利者と登記義務者が共同して申請する場合などを対象にしています。判決による登記は単独申請なので、敗訴した登記義務者の登記識別情報は提供しません。登記名義人が単独で申請する登記で登記識別情報を求める令8条も、ただし書で確定判決による登記を除いています。書面申請での印鑑証明書も、登記義務者が申請に関与しないので提供しません。協力しない相手の書類を求めても意味がない、と考えれば覚えやすいはずです。

変わらないもの

判決によって共同申請の相手方が不要になるだけで、登記の中身が変わるわけではありません。次の添付情報や税額は、共同申請の場合と同じ基準で判断します。

項目 判決による登記での扱い
住所証明情報 所有権移転なら登記権利者のものが必要
第三者の許可を証する情報 登記原因に農地法の許可などが要るなら必要(令7条1項5号ハ)
代理権限証明情報 代理人が申請するなら必要
登録免許税 登記原因に応じた税率。判決であることで変わらない

判決があるから許可が要らない、ということにはなりません。許可は登記原因である売買の効力に関わるもので、判決は協力しない相手の意思表示を補うものだからです。

判決の効力と登記記録のずれ

被告と登記名義人が一致しているか

判決による登記は、判決で登記手続を命じられた者が、申請の時点でも登記記録上の登記義務者であることを前提にしています。訴訟中や判決後に、被告から第三者へ所有権移転登記がされていると、判決だけでは第三者名義の登記を前提にした申請ができません。

第三者が口頭弁論終結後の承継人にあたれば、その第三者に対する承継執行文を得る道があります(民事執行法23条1項3号・27条2項)。承継人にあたらなければ、第三者を相手に別の手続が必要です。訴訟の前に処分禁止の仮処分をしておくのは、このずれを防ぐためです。仮処分と登記の関係は民事保全の仮差押え・仮処分で扱っています。

被告の住所が登記記録と違う場合

被告の現在の住所が登記記録上の住所と違うときは、前提として登記名義人の住所の変更の登記が必要です。これは判決によるかどうかに関係なく、登記義務者の表示を登記記録と一致させるための登記です。

被告は協力しないので、原告は債権者代位により被告に代わって住所変更の登記を申請することになります。代位による申請では、代位者の氏名・住所と代位原因が登記事項になり(不動産登記法59条7号)、代位原因を証する情報を提供します(令7条1項3号)。判決の正本が代位原因を証する情報になります。記述式で判決が別紙に出たら、被告の表示と登記記録の表示を1字ずつ照合してください。

試験での出題ポイント

択一式ではこう問われる

  • 根拠:63条1項は60条・65条・89条1項の共同申請の例外。判決の確定で意思表示が擬制される(民事執行法177条)
  • 勝訴者:登記義務者が登記権利者に登記の引取りを命ずる判決を得た場合も、登記義務者が単独で申請できる
  • 判決の種類:給付判決に限る。確認判決は63条1項には使えない
  • 確定:仮執行宣言付き判決は使えない。和解調書・調停調書は使える
  • 公正証書:執行証書は金銭の支払などに限られ、登記手続の約束には使えない
  • 執行文:原則不要。条件付き・引換給付・債務者の証明すべき事実のないことに係るときは必要
  • 添付情報:判決正本が登記原因証明情報。登記識別情報と印鑑証明書は不要。農地法の許可は判決でも必要

記述式との接続

記述式では、別紙に判決の主文が置かれることがあります。読むのは3か所です。誰に対して何の登記手続を命じているか。登記原因と日付がどう特定されているか。引換えや条件が付いていないか。引換給付判決が置かれていれば、事実関係に反対給付の履行や提供があったか、執行文の付与を受けたかを探します。

架空の例で確認します。甲土地の所有権登記名義人Aが、Bに売却したのに登記に応じない。Bは「被告Aは、原告Bから金500万円の支払を受けるのと引換えに、甲土地について令和7年6月1日売買を原因とする所有権移転登記手続をせよ」との判決を得て、判決は確定した。Bは500万円を提供し、そのことを証明して執行文の付与を受けた。

欄 答案の骨格
登記の目的 所有権移転
原因 令和7年6月1日売買
申請人 権利者B、義務者A。申請するのはBのみ
添付情報 登記原因証明情報として執行文の付いた判決正本と確定証明書、住所証明情報、代理権限証明情報
登録免許税 不動産の価額に1000分の20

義務者Aの表示は申請情報に書きますが、Aの登記識別情報と印鑑証明書は添付情報に書きません。別紙の読み方の全体は記述式の別紙の読み方、答案構成は記述式・不動産登記法の対策で扱っています。

まとめ

  • 判決による登記は、共同申請の一方に登記手続を命ずる確定判決に基づき、他方が単独で申請する登記(不動産登記法63条1項)
  • 判決の確定の時に登記申請の意思表示が擬制される(民事執行法177条1項本文)
  • 使えるのは給付判決で、確定していることが必要。和解調書・調停調書なども使える
  • 確認判決、仮執行宣言付き判決、公正証書は使えない
  • 執行文は原則不要。条件、反対給付との引換え、債務者の証明すべき事実のないことに係るときは必要
  • 登記原因証明情報は判決正本に限られ、登記識別情報と印鑑証明書は不要
  • 住所証明情報、第三者の許可、登録免許税は共同申請と同じ基準で判断する

よくある質問

被告が判決後に任意に登記に協力してくれたら、判決は使わなくてよいのですか

使わなくてかまいません。判決は単独申請を可能にするものであって、共同申請を禁止するものではありません。被告が協力するなら、通常どおり共同申請をすることもできます。その場合は、登記識別情報や印鑑証明書など共同申請の添付情報が必要になります。

判決に「原告は被告に代金を支払え」とも書かれていますが、引換給付判決ですか

主文が別々の給付を命じているだけなら、引換給付ではありません。引換給付判決は、登記手続の給付そのものに「支払を受けるのと引換えに」という限定が付いている判決です。主文の文言を1つずつ確認してください。

判決による登記でも、登記原因の日付は必要ですか

必要です。判決は協力しない相手の意思表示を補うもので、登記原因そのものは売買などの実体上の原因です。原因と日付は判決の主文や理由から読み取って申請情報に書きます。

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