登録免許税の計算:不動産登記の税率・軽減・免税の整理
司法書士試験の受験生向けに、不動産登記の登録免許税を登録免許税法別表第一と租税特別措置法で整理。課税標準の決め方・端数処理・主要税率・定額課税・非課税と軽減・免税の適用期限まで、計算手順つきで解説します。
登録免許税の計算は、手順さえ固めれば確実に点になる分野です。結論から言うと、やることは3つだけです。「課税標準を決める」「税率を当てる」「端数を処理する」。つまずく原因の多くは税率の暗記不足ではなく、課税標準の取り方と端数処理の順序を曖昧にしていることにあります。
この記事は司法書士試験の受験生向けに、不動産登記の登録免許税を登録免許税法9条・10条・別表第一と租税特別措置法の軽減・免税規定から整理したものです。税率の一覧を眺めるだけでなく、計算の順序と、択一で狙われる非課税・免税の要件まで扱います。不動産登記法全体での位置づけは不動産登記法(択一)の勉強法を先に読んでおくと分かりやすくなります。
登録免許税の基本構造:課税標準と税率
定率課税と定額課税
登録免許税の課税標準と税率は、登録免許税法9条により、別表第一の区分に応じて決まります。不動産登記は別表第一の第1号です。区分は大きく2つに分かれます。
| 種類 | 課税標準 | 典型例 |
|---|---|---|
| 定率課税 | 不動産の価額、債権金額、極度金額 | 所有権の保存・移転、抵当権の設定 |
| 定額課税 | 不動産の個数、抵当権の件数 | 変更・更正・抹消の登記、抵当権の順位の変更 |
権利が新しく生まれたり移ったりする登記は価額や債権額に税率をかけ、既存の登記の内容を直すだけの登記は個数あたりの定額になる、というのが大きな考え方です。
課税標準の決め方
不動産の価額を課税標準とする場合、その価額は登記の時における不動産の価額です(登録免許税法10条1項前段)。実務では固定資産課税台帳の価格をもとにしますが、試験では問題文で価額が与えられるので、その数字を使います。
同項後段は、不動産の上に所有権以外の権利や処分の制限があるときも、それがないものとした場合の価額によると定めています。抵当権が付いている土地の所有権移転でも、抵当権の負担を差し引いて課税標準を下げることはできません。
持分の移転は、不動産の価額に持分の割合をかけた金額が課税標準です(同条2項)。共有者の1人が持分2分の1を売却したなら、価額の2分の1に税率をかけます。
端数処理と最低税額
計算の最後に、次の3つのルールを順に当てはめます。
- 課税標準に1,000円未満の端数があれば切り捨てる(国税通則法118条1項)
- 税率をかけた税額に100円未満の端数があれば切り捨てる(国税通則法119条1項)
- 定率課税で計算した税額が1,000円に満たないときは1,000円とする(登録免許税法19条)
順序を逆にすると答えがずれます。「課税標準を先に丸め、税額を後で丸める」と覚えてください。複数の不動産を1件で申請する場合は、各不動産の価額を合計してから1,000円未満を切り捨てます。
所有権に関する登記の税率
保存と移転
所有権の登記の税率は、原因によって大きく変わります。登録免許税法別表第一第1号の(1)と(2)です。
| 登記 | 課税標準 | 本則税率 |
|---|---|---|
| 所有権の保存 | 不動産の価額 | 1000分の4 |
| 相続・法人の合併による移転 | 不動産の価額 | 1000分の4 |
| 共有物分割による移転 | 不動産の価額 | 1000分の4 |
| 売買・贈与・遺贈などその他の原因による移転 | 不動産の価額 | 1000分の20 |
相続と遺贈の区別は頻出です。遺贈はその他の原因にあたり1000分の20ですが、相続人に対する遺贈は、相続人であることを証する情報を提供すれば相続と同じ1000分の4で扱われます。相続人以外への遺贈は1000分の20のままです。
共有物分割による移転が1000分の4になるのは、分割前に有していた持分に応じた価額に対応する部分に限られます。分割によって従前の持分を超えて取得した部分は、その他の原因として1000分の20です。
用益権の設定と移転
地上権・永小作権・賃借権・採石権の設定や移転は、別表第一第1号(3)です。設定は不動産の価額の1000分の10、相続・合併による移転は1000分の2、その他の原因による移転は1000分の10です。配偶者居住権の設定は(3の2)で1000分の2、地役権の設定は(4)で承役地の不動産1個につき1,500円の定額です。地役権だけ定額である点は択一で狙われます。
仮登記と仮登記に基づく本登記
所有権の移転の仮登記は、別表第一第1号(12)ロにより、相続・合併・共有物分割による移転の仮登記なら1000分の2、その他の原因による移転の仮登記なら1000分の10です。所有権の保存の仮登記は1000分の2です。
仮登記に基づいて本登記をするときは、登録免許税法17条1項により、本登記の税率から一定の割合を控除します。売買による所有権移転の仮登記の後に本登記をする場合、本則の1000分の20から1000分の10を控除して、本登記は1000分の10です。仮登記と本登記の合計が本則税率に一致するよう設計されていると理解すると覚えやすくなります。仮登記の種類と効力は仮登記の種類と効力で扱っています。
税率は「原因」と「権利」の2軸で覚える
所有権の税率表は、原因が相続・合併・共有物分割なら低く、それ以外なら高い、という1本の軸で整理できます。用益権と担保権の移転も、相続・合併なら低く、その他の原因なら高いという同じ軸を持っています。そのうえで、権利が所有権か用益権か担保権かで、基準となる数字が変わります。表を丸ごと覚えるより、この2軸の交点として税率を引き出せるようにしておくと、初めて見る登記でも見当がつきます。
担保権の登記と定額課税
抵当権・根抵当権の設定と共同担保
抵当権の設定は債権金額、根抵当権の設定は極度金額を課税標準として、いずれも1000分の4です(別表第一第1号(5))。
同一の債権のために数個の不動産に抵当権を設定する場合、同じ登記所に同時に申請すれば、全体を1つの設定登記とみなして計算します(登録免許税法13条1項)。不動産の数だけ税額が増えるわけではありません。
最初の申請とは別に、後から追加で共同担保として設定する場合は、追加設定であることを証する財務省令で定める書類を添付すれば、権利の件数1件につき1,500円になります(同条2項)。この書類として、前の設定登記の登記事項証明書が典型です。抵当権設定の申請全体は抵当権設定登記の申請構造で確認してください。
移転と極度額の増額
抵当権の移転は、相続・合併による移転が債権金額の1000分の1、その他の原因による移転が1000分の2です(別表第一第1号(6))。根抵当権の全部譲渡はその他の原因による移転として極度金額の1000分の2です。根抵当権の一部譲渡や会社分割による移転は、極度金額を譲渡後または分割後の共有者の数で割った金額に1000分の2をかけます(同(7))。
根抵当権の極度額の増額の変更登記は、形式上は変更の登記ですが、増加する部分について設定の登記とみなされます(登録免許税法12条1項)。したがって課税標準は増加額、税率は1000分の4です。抵当権の債権額を増やす変更登記も同じ扱いです。定額の1,000円と取り違えやすいので注意してください。
定額課税の登記と20個の上限
| 登記 | 区分 | 税額 |
|---|---|---|
| 付記登記・変更・更正の登記 | 別表第一第1号(14) | 不動産1個につき1,000円 |
| 登記の抹消 | 同(15) | 不動産1個につき1,000円。同一の申請書で20個を超えるときは1件2万円 |
| 抵当権の順位の変更 | 同(8) | 抵当権の件数1件につき1,000円 |
| 所有権の登記のある不動産の分筆・合筆による変更 | 同(13) | 分筆後・合筆後の不動産1個につき1,000円 |
20個を超える場合の2万円の上限は、別表の文言上、(15)の登記の抹消に付いています。変更や更正の登記に同じ上限を当てはめると誤りです。抵当権の順位の変更は不動産の個数ではなく抵当権の件数で数える点も、他の定額課税と違います。
非課税・免税と軽減税率
非課税になる登記
登録免許税法4条・5条は、そもそも課税しない登記を定めています。試験で押さえるべきは次のものです。
- 国や別表第二に掲げる者が自己のために受ける登記(4条1項)
- 登記官が職権でする登記で政令で定めるもの(5条2号)
- 住居表示の実施・変更に伴う変更の登記(5条4号)
- 行政区画、町・字またはこれらの名称の変更に伴う変更の登記(5条5号)
- 登記官の過誤による登記の抹消・更正(5条12号)
5条4号と5号は、そのことを証する財務省令で定める書類を添付して受けるものに限られます。住所等の変更登記との関係は住所等変更登記の義務化も参照してください。
相続登記の免税:租税特別措置法84条の2の2
相続登記の促進のため、租税特別措置法84条の2の2は2つの免税措置を置いています。いずれも適用期限は2027年3月31日までです。
| 条項 | 内容 |
|---|---|
| 1項 | 相続により土地を取得した個人が、その相続による移転登記を受ける前に死亡した場合、その個人を登記名義人とするための登記は免税 |
| 2項 | 相続による土地の所有権移転登記などで、課税標準たる不動産の価額が100万円以下であれば免税 |
1項は数次相続の途中の名義人を経由する登記、2項は少額の土地が対象です。どちらも土地に限られ、建物には適用されない点が肢になります。1項の「相続」には相続人に対する遺贈が含まれると条文に明記されています。
軽減税率:適用期限に注意する
租税特別措置法には、本則税率を下げる規定があります。主なものと、2026年9月時点の現行法の適用期限は次のとおりです。
| 規定 | 対象 | 軽減後の税率 | 適用期限 |
|---|---|---|---|
| 措置法72条1項1号 | 土地の売買による所有権移転 | 1000分の15 | 2029年3月31日 |
| 措置法72条の2 | 住宅用家屋の所有権保存 | 1000分の1.5 | 2027年3月31日 |
| 措置法73条 | 住宅用家屋の所有権移転 | 1000分の3 | 2027年3月31日 |
| 措置法75条 | 住宅用家屋の新築・取得資金の抵当権設定 | 1000分の1 | 2027年3月31日 |
住宅用家屋の軽減は、個人が自己の居住の用に供すること、新築・取得後1年以内に登記を受けることなどの要件があります。いずれも期限付きの措置で、税制改正で延長や変更がされてきたので、学習時点の現行法を法令検索で確認する習慣をつけてください。
試験で軽減税率を使うかどうかは、問題文や答案作成上の注意の指示に従います。指示を読まずに軽減税率を当てはめるのが、最も避けたい失点です。
計算の手順を例で確認する
例1 売買による所有権移転
土地の価額が12,345,678円で、売買による所有権移転登記を申請する場合を、本則税率で計算します。
- 課税標準は1,000円未満を切り捨てて12,345,000円
- 税率1000分の20をかけて246,900円
- 100円未満の端数はないので、登録免許税は246,900円
例2 持分の移転と複数の不動産
土地8,000,500円と建物3,000,800円について、共有者の1人が持分2分の1を売買で移転する場合です。
- 各不動産の価額に2分の1をかけると、土地4,000,250円、建物1,500,400円
- 合計5,500,650円の1,000円未満を切り捨てて5,500,000円
- 1000分の20をかけて110,000円
持分の割合をかけてから合算し、最後に1,000円未満を切り捨てる順序です。
例3 仮登記に基づく本登記
土地の価額が20,000,000円で、売買予約を原因とする所有権移転請求権仮登記がされている場合を考えます。仮登記の時点では、その他の原因による移転の請求権保全の仮登記として1000分の10、つまり200,000円です。その後、仮登記に基づいて本登記をするときは、登録免許税法17条1項により1000分の20から1000分の10を控除した1000分の10をかけて200,000円です。価額が仮登記の時と本登記の時で変わっていれば、本登記の時の価額で計算します。
例4 抹消と変更を同時に申請する場合
抵当権の抹消を25個の不動産について1件で申請するなら、20個を超えるので2万円です。一方、同じ25個について所有権登記名義人の住所変更を1件で申請するなら、上限がないので25,000円です。なお、同一の申請書で区分の異なる二以上の登記を受ける場合は、区分ごとに計算した金額を合計します(登録免許税法18条)。
試験での出題ポイント
択一式ではこう問われる
登録免許税は、計算よりも区分と要件を問う形で出題されます。次の切り口を用意しておいてください。
- 課税標準の時点と範囲:登記の時の価額。所有権以外の権利がないものとした価額。持分は割合をかける。
- 相続と遺贈:相続人に対する遺贈は1000分の4、相続人以外への遺贈は1000分の20。
- 共同担保の追加設定:証明書類を添付すれば1件1,500円。
- 極度額の増額:増加額を課税標準として1000分の4。定額ではない。
- 20個の上限:抹消の登記に限る。
- 順位の変更:抵当権の件数で数える。
- 非課税と免税:住居表示の実施・行政区画の変更は非課税。相続登記の免税は土地に限り、期限付き。
肢別の過去問を回すときは、定率と定額を取り違える肢をまとめて解くと区分の感覚が固まります。不動産登記法の科目ページから論点別に演習できます。
記述式との接続
記述式では、申請書ごとに登録免許税を書かせる形が定番です。
- 課税価格と税額を分けて書く形式なら、課税価格は1,000円未満切り捨て後の金額を書く。
- 前提登記として住所変更登記や抵当権抹消登記を入れたら、それぞれに定額の税額を書く。
- 共同担保の追加設定で1件1,500円とするのは、登録免許税法13条2項の書類を添付する前提である。問題文にその書類があるかを確認する。
- 軽減税率の適用の有無は、答案作成上の注意に従う。
登録免許税の一覧を答案構成の中でどう使うかは、記述式(不動産登記)対策でも触れています。
まとめ
- 登録免許税は「課税標準を決める」「税率を当てる」「端数を処理する」の順に計算する。
- 課税標準は登記の時の価額で、所有権以外の権利がないものとした価額。持分は割合をかける。
- 課税標準は1,000円未満、税額は100円未満を切り捨てる。定率課税の最低税額は1,000円。
- 所有権の保存・相続による移転は1000分の4、売買などその他の原因による移転は1000分の20。
- 極度額の増額は増加額に1000分の4。共同担保の追加設定は証明書類の添付で1件1,500円。
- 20個を超える場合の2万円の上限は抹消の登記に限る。
- 相続登記の免税や軽減税率には適用期限がある。学習時点の現行法で確認する。
よくある質問
相続人に対する遺贈はなぜ1000分の4になるのですか
別表第一第1号(2)イは相続による移転を1000分の4としており、相続人に対する遺贈はこれと同じ扱いを受けます。受遺者が相続人であることを戸籍などで証明する必要があります。相続人以外の者に対する遺贈は、同じ(2)のハのその他の原因による移転として1000分の20です。
抵当権の債務者の変更登記はいくらですか
債務者の変更は権利の変更の登記なので、別表第一第1号(14)により不動産1個につき1,000円です。これに対し、債権額や極度額を増やす変更登記は登録免許税法12条1項により設定の登記とみなされ、増加額に1000分の4をかけます。同じ変更の登記でも、額が増えるかどうかで区分が変わります。
軽減税率の適用期限はどこで確認すればよいですか
租税特別措置法の条文そのものに期限が書かれているので、e-Gov法令検索で現行の条文を確認するのが確実です。この記事の表は2026年9月時点の現行法によっています。税制改正で延長や変更がされることがあるので、受験する年の現行法を確認してください。
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