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登記申請の却下と取下げ:補正できる場合とできない場合

不動産登記法 読了 約12分

不動産登記法25条の却下事由1号〜13号を補正できるもの・できないものに分けて整理。受付と受付番号、形式的審査、補正期間、却下の方法、取下げと登録免許税の再使用証明、審査請求まで条文で解説します。

登記申請の却下と取下げ:補正できる場合とできない場合

登記の申請に不備があると、登記官は申請を却下します(不動産登記法25条)。ただし、不備が補正できるもので、登記官が定めた相当の期間内に補正すれば却下されません(同条ただし書)。申請人の側からは、登記が完了するまでなら申請を取り下げることもできます(不動産登記規則39条2項)。

結論を先に言うと、軸は2本です。第1に、25条の却下事由のうち1号〜3号と13号は申請の中身そのものが登記できないもので、補正の余地がありません。第2に、4号〜12号は手続や情報の不備で、補正や取下げ後の再申請で立て直せる場合があります。この区別は、登記完了後の職権抹消(71条)の範囲とも重なります。

本記事は、受付から却下・取下げ・審査請求までを条文の順に整理したい受験生向けです。不動産登記法の学習全体は不動産登記法の勉強法で扱っています。

受付から審査まで:19条・20条と形式的審査

申請情報の提供と受付番号

登記の申請は、電子申請か書面申請のいずれかの方法で、申請情報を登記所に提供してします(不動産登記法18条)。申請情報が提供されると、登記官は申請の受付をしなければなりません(19条1項)。

受付をすると、登記官は申請に受付番号を付します(19条3項)。受付帳には受付の年月日と受付番号が記録され、書面申請なら申請書にも記載されます(不動産登記規則56条1項・2項)。受付番号は1年ごとに更新されます(同条3項)。

前後が明らかでないときは同時とみなす

同一の不動産に関し2以上の申請がされ、その前後が明らかでないときは、これらの申請は同時にされたものとみなされます(19条2項)。同時に2以上の申請がされたときは、同一の受付番号が付されます(19条3項後段)。

同時にされたとみなされた申請の権利が相互に矛盾するときは、その申請は登記すべきものでないとして却下されます(不動産登記令20条6号)。郵送で同じ日に届いた複数の申請書が典型的な場面です。

受付番号の順序で登記する

同一の不動産に関し権利に関する登記の申請が2以上あったときは、登記官は受付番号の順序に従って登記しなければなりません(20条)。規則58条は、20条の場合以外でも受付番号の順序に従って登記するとしています。

権利の登記の順位は、登記の前後によって決まります。受付番号の順序で登記することで、先に申請した者が先順位を得る仕組みが守られます。だから連件申請では、前提となる登記から順に申請することが重要になります。

登記官の審査は形式的審査

登記官は、申請情報が提供されたときは、遅滞なく、申請に関するすべての事項を調査しなければなりません(規則57条)。権利の登記の調査は、申請情報・添付情報・登記記録を材料にして行うのが原則です。登記原因となった売買が本当にあったかを、関係者に聞いて確かめることはしません。これを形式的審査といいます。

例外が2つあります。1つは、申請人となるべき者以外の者が申請していると疑うに足りる相当な理由があるときの本人確認です(24条1項)。登記官は出頭を求め、質問をし、文書の提示を求めることができます。もう1つは表示に関する登記で、登記官は必要があるときは不動産の実地調査ができます(29条)。表示の登記は現況と登記記録を合わせる登記なので、実質的な調査権が与えられています。

却下事由:25条1号〜13号を2つに分ける

25条の全体像

25条は、登記官が「理由を付した決定で」申請を却下しなければならない場合を13の号で列挙しています。号ごとの中身と、補正の余地を並べると次のとおりです。

号 却下事由 補正
1号 不動産の所在地が申請を受けた登記所の管轄に属しない できない
2号 登記事項以外の事項の登記を目的とする できない
3号 申請に係る登記が既に登記されている できない
4号 申請の権限を有しない者の申請 本当に権限がなければできない
5号 申請情報またはその提供の方法が方式に適合しない できる
6号 不動産または登記の目的である権利が登記記録と合致しない できる
7号 登記義務者の氏名・名称・住所が登記記録と合致しない できる
8号 申請情報が登記原因を証する情報と合致しない できる
9号 提供すべき添付情報が提供されない できる
10号 事前通知の期間内に申出がない 補正の対象にならない
11号 表示の登記で不動産の表示が登記官の調査結果と合致しない できる
12号 登録免許税を納付しない できる
13号 政令で定める登記すべきものでないとき できない

補正できないもの:1号〜3号と13号

1号〜3号と13号は、申請の中身そのものが登記できない場合です。情報を差し替えても、登記できない状態は変わりません。

  • 1号:管轄違いです。正しい管轄の登記所に改めて申請するしかありません。
  • 2号:登記できる事項ではない場合です。たとえば、留置権や占有権は不動産登記法3条の登記できる権利に含まれていません。
  • 3号:二重登記です。所有権の保存の登記がある不動産に、重ねて保存の登記を申請する場面が典型です。
  • 13号:不動産登記令20条が定める場合です。中身は後で見ます。

この4つは、71条1項で登記官が職権で抹消できる登記の範囲と一致します。誤って登記されてしまっても、その登記を残しておく意味がないからです。職権抹消の手続は別の記事で扱います。

25条1号〜3号と13号は、情報を差し替えても補正できない却下事由である。

補正の余地があるもの:4号〜12号

4号〜12号は、申請の手続や提供された情報の不備です。登記の中身は登記できるものなので、不備を正せば登記できます。

  • 5号:申請情報の記載漏れや、方式に合わない書き方。申請情報を正せば足ります。
  • 6号:不動産の表示や権利の表示の誤り。登記記録に合わせて直します。
  • 7号:登記義務者の住所が登記記録と違う場合。前提として登記名義人の住所の変更の登記が必要になります。住所の変更は住所等変更登記の義務化でも扱っています。
  • 8号:申請情報と登記原因証明情報の食い違い。登記原因証明情報の読み方は登記原因証明情報:何を書けば足りるかを参照してください。
  • 9号:添付情報の不提供。不足している情報を追加で提供します。
  • 12号:登録免許税の不納付や不足。不足額を納付します。税額の出し方は登録免許税の計算で整理しています。

4号は注意が要ります。代理人の権限を証する情報が付いていないだけなら、それは9号の添付情報の不足の問題で、追加の提供で直せます。本当に権限のない者が申請したのであれば、補正では直りません。10号は、登記識別情報を提供できない場合の事前通知(23条1項)で、期間内に登記義務者から申出がないことが却下事由です。期間の経過そのものが理由なので、補正で直す性質のものではありません。事前通知の仕組みは登記識別情報と添付情報で扱っています。

13号の中身:不動産登記令20条

13号の「登記すべきものでないとき」は、不動産登記令20条が8つの号で定めています。

令20条 内容
1号 不動産以外のものについての登記を目的とする
2号 登記名義人となる者が権利能力を有しない
3号 法32条・41条・56条・73条2項3項・80条3項・92条で登記できない
4号 1個の不動産の一部についての登記を目的とする(承役地の地役権を除く)
5号 目的である権利が他の権利を目的とする場合に、その他の権利が登記されていない
6号 同時申請で権利が相互に矛盾する
7号 既にされた登記の権利と矛盾する
8号 民法その他の法令で無効とされることが申請情報・添付情報・登記記録から明らか

2号の典型は、権利能力のない社団を登記名義人とする申請です。4号は、1筆の土地の一部に抵当権を設定する申請です。分筆の登記をしてから申請することになります。地役権だけは、承役地の一部に設定できるので除かれています。

8号は形式的審査の限界を示す号です。登記官が無効を判断できるのは、提供された情報や登記記録から明らかな場合に限られます。

補正:25条ただし書と規則60条

相当の期間内に補正すれば却下されない

25条ただし書は、申請の不備が補正することができるもので、登記官が定めた相当の期間内に申請人が補正したときは、却下しないとしています。補正の期間を定めたときは、その期間内は、補正すべき事項に係る不備を理由に申請を却下することができません(規則60条1項)。

補正は申請人の権利として期間が保障されているのではなく、登記官が期間を定めて機会を与える構造です。期間内に補正がなければ却下されます。

補正の方法

補正の方法は、申請の区分に応じて規則60条2項が定めています。

区分 補正の方法
電子申請 電子情報処理組織を使用して申請の補正をする
書面申請 提出した書面を補正するか、補正に係る書面を提出する

補正は申請の受付を前提に、その申請の不備を正すものです。受付番号は変わりません。順位を守ったまま申請を立て直せるのが、補正の最大の意味です。

補正は受付済みの申請の不備を正すもので、受付番号を変えずに順位を守れる。

補正できないときは取下げか却下か

補正できない不備がある申請、または期間内に補正が間に合わない申請は、そのままなら却下されます。申請人は、却下される前に取り下げることもできます。

どちらでも登記はされず、受付番号による順位は失われます。違いは、却下が登記官の処分として記録に残り審査請求の対象になること、取下げなら申請書や添付書面が返り、登録免許税の再使用証明を受けられることです。実務では、補正で直らない不備なら取り下げて再申請するのが通常の対応です。

却下の方法と添付書面の還付

理由を付した決定で、申請人ごとに交付

却下は「理由を付した決定」でします(25条本文)。登記官は決定書を作成し、申請人ごとに交付します(規則38条1項本文)。代理人によって申請された場合は、代理人に交付すれば足ります(同項ただし書)。交付は送付の方法によることもできます(同条2項)。

却下は登記官の処分です。不服がある申請人は、後で見る審査請求で争うことになります。

添付書面の還付と偽造の疑い

書面申請が却下されたときは、登記官は添付書面を還付します(規則38条3項本文)。ただし、偽造された書面その他の不正な登記の申請のために用いられた疑いがある書面は還付しません(同項ただし書)。

書面申請の却下では添付書面を還付するが、偽造など不正使用の疑いがある書面は還付しない。

却下と登録免許税

登録免許税を納付して申請した者の申請が却下されたときは、登記機関は納付された額を税務署長に通知し、還付の手続に進みます(登録免許税法31条1項1号)。

また、登記機関が却下に伴って申請書を返付する場合に、貼り付けられた領収証書や印紙を却下の日から1年以内に同じ登記所での登記に再使用させることを適当と認めるときは、再使用の証明をすることができます(同条4項)。却下の場合は申請人の申出ではなく、登記機関が適当と認めるかどうかで決まる点が取下げと違います。

取下げ:不動産登記規則39条

登記完了前に限る

申請の取下げは、登記完了後はすることができません(規則39条2項)。登記が完了すれば、その登記は効力を持って登記記録に残ります。消したければ、抹消の登記を申請する必要があります。

逆に言えば、受付後、登記完了までは、補正期間中でも取り下げられます。却下の決定がされた後は、取り下げる対象の申請がありません。

受付後から登記完了までは補正期間中でも取下げできるが、却下決定後は対象の申請がない。

方法:電子申請と書面申請

取下げの方法は、申請の区分に応じて規則39条1項が定めています。

区分 取下げの方法
電子申請 電子情報処理組織を使用して、申請を取り下げる旨の情報を提供する
書面申請 申請を取り下げる旨の情報を記載した書面を提出する

書面申請が取り下げられたときは、登記官は申請書とその添付書面を還付します(規則39条3項前段)。偽造などの疑いがある書面を還付しない扱いは、却下の場合と同じです(同項後段による38条3項ただし書の準用)。

一部取下げと代理人による取下げ

1つの申請情報で複数の不動産について申請した場合に、その一部の不動産について取り下げることも認められています。残りの不動産については、そのまま審査が続きます。

代理人による取下げにも注意が要ります。登記申請の委任を受けた代理人が申請を取り下げるには、取下げについての特別の授権が必要とする先例があります。一方で、申請の不備を直して再申請するための取下げは、申請の委任の範囲内とされています。

取下げと登録免許税の再使用証明

取下げの場合、登録免許税は2通りの扱いがあります。

扱い 根拠 内容
還付 登録免許税法31条1項2号 納付額を税務署長に通知し、還付される
再使用証明 同条3項 取下げにあわせて申出があれば、取下げの日から1年以内に同じ登記所での登記に再使用できる旨を証明する

再使用証明の対象は、申請書に貼り付けられた領収証書や印紙で使用済みの記載や消印がされたものです。証明を受けた分は、原則として還付されません(同条3項後段)。証明を受けた後に再使用しないことになったときは、証明の日から1年を経過した日までに、証明を無効にして還付を受けたい旨の申出ができます(同条5項)。

審査請求:156条以下

監督法務局長に、登記官を経由して

登記官の処分に不服がある者、または登記官の不作為に係る処分を申請した者は、その登記官を監督する法務局または地方法務局の長に審査請求をすることができます(156条1項)。審査請求は、登記官を経由してしなければなりません(同条2項)。

却下の決定は、典型的な審査請求の対象です。登記官は、審査請求に理由があると認めるときは、自ら相当の処分をします(157条1項)。そうでなければ、審査請求の日から3日以内に、意見を付して事件を法務局長などに送付します(同条2項)。

法務局長の判断と仮登記の命令

法務局長などは、審査請求に理由があると認めるときは、登記官に相当の処分を命じ、その旨を審査請求人と登記上の利害関係人に通知します(157条3項)。処分を命ずる前に、登記官に仮登記を命ずることもできます(同条4項)。審査の間に他の申請が先に登記されて順位を失うことを防ぐためです。

審査請求の期間制限

158条は、行政不服審査法の一部の規定を、不動産登記法の審査請求に適用しないとしています。その中に、審査請求期間を定めた行政不服審査法18条が含まれています。したがって、不動産登記の審査請求には期間の制限がありません。

完了した登記についても、それが25条1号〜3号・13号に当たるのであれば、71条の職権抹消の対象になります。却下事由の区別がここでも生きてきます。

行政不服審査法18条は適用されず、不動産登記の審査請求には期間の制限がない。

試験での出題ポイント

択一式ではこう問われる

  • 受付:前後が明らかでない申請は同時とみなされ、同一の受付番号が付される(19条2項・3項)
  • 順序:権利の登記は受付番号の順序に従ってする(20条)
  • 審査:権利の登記は形式的審査。例外は本人確認(24条)と表示の登記の実地調査(29条)
  • 補正できない事由:25条1号〜3号・13号。71条の職権抹消の範囲と一致する
  • 補正:登記官が相当の期間を定め、その期間内は当該不備を理由に却下できない(規則60条1項)
  • 却下:理由を付した決定。代理人に交付すれば足りる。添付書面は還付するが偽造の疑いがある書面は除く
  • 取下げ:登記完了後は不可(規則39条2項)。書面申請なら申請書と添付書面を還付
  • 登録免許税:取下げにあわせた申出で再使用証明。期間は取下げの日から1年以内
  • 審査請求:監督法務局長などに、登記官を経由して。期間制限なし

「取下げは補正期間の経過後はできない」「却下の決定書は代理人がいても本人に交付しなければならない」「審査請求は処分を知った日から3か月以内」のような肢は、いずれも誤りです。

記述式との接続

記述式では、却下や取下げそのものよりも、却下されない申請を組み立てる力が問われます。25条の各号は、答案の点検表として使えます。

1つ目は7号です。登記義務者の住所が登記記録と違う事案では、前提として登記名義人住所変更の登記を申請します。これを落とすと、本体の登記が7号で却下される答案になります。

2つ目は13号と令20条4号です。1筆の土地の一部に権利を設定する事案では、分筆の登記が先に必要です。

3つ目は20条の受付番号の順序です。連件申請では、前提登記から順に並べることで順位が守られます。答案の申請の順序は、登記の順序そのものです。答案構成の全体は記述式・不動産登記法の対策で扱っています。

まとめ

  • 申請情報が提供されると受付をし、受付番号を付す。前後不明の申請は同時とみなす(19条)
  • 権利の登記は受付番号の順序で登記する(20条)。審査は原則として形式的審査
  • 却下事由は25条1号〜13号。1号〜3号・13号は補正できず、71条の職権抹消の範囲と一致する
  • 4号〜12号は手続や情報の不備で、相当の期間内に補正すれば却下されない(25条ただし書・規則60条)
  • 却下は理由を付した決定でし、添付書面は還付する。偽造の疑いがある書面は還付しない(規則38条)
  • 取下げは登記完了前に限る。取下げにあわせて申出をすれば登録免許税の再使用証明を受けられる(規則39条・登録免許税法31条3項)
  • 登記官の処分への不服は、登記官を経由して監督法務局長などへの審査請求で争う。期間制限はない(156条・158条)

よくある質問

補正の連絡が来たのに期間内に対応できない場合はどうなりますか

登記官が定めた相当の期間内に補正がなければ、申請は却下されます。却下される前であれば、申請人は申請を取り下げることができます。取り下げた場合、書面申請なら申請書と添付書面が還付され、取下げにあわせて申出をすれば登録免許税の再使用証明も受けられます。ただし、却下でも取下げでも受付番号による順位は失われるので、再申請は新しい受付番号になります。

却下された申請の登録免許税は戻ってきますか

戻ってきます。登録免許税を納付して申請した者の申請が却下されたときは、登記機関が納付額を税務署長に通知し、還付の手続がされます(登録免許税法31条1項1号)。また、登記機関が適当と認めるときは、領収証書や印紙を却下の日から1年以内に同じ登記所での登記に再使用できる旨の証明をすることもできます(同条4項)。

登記が完了した後に誤りに気づいた場合、取り下げられますか

取り下げられません。申請の取下げは登記完了後はすることができないからです(不動産登記規則39条2項)。完了した登記を直すには、更正の登記や抹消の登記を申請します。完了した登記が25条1号〜3号・13号に当たる場合は、登記官が71条の手続で職権により抹消することになります。

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