司法書士試験AIブートラボ 司法書士AIブートラボ
記事 / 不動産登記法 / 登記識別情報と添付情報:申請書の構造を理解する

登記識別情報と添付情報:申請書の構造を理解する

不動産登記法 読了 約11分

共同申請の原則(不動産登記法60条)から登記識別情報(21条・22条・23条)と添付情報の体系(61条・不動産登記令7条)までを一本の線で整理。記述式の添付情報欄を落とさないための考え方も解説します。

不動産登記法の総論で毎年出題される「登記識別情報」と「添付情報」は、暗記科目のように見えて、実は1本の理屈で貫かれています。権利に関する登記は登記権利者と登記義務者が共同で申請するのが原則で、添付情報の大半は「義務者が本人であること」と「登記原因が実在すること」を登記官に示すための道具です。この理屈から出発すると、どの登記でどの添付情報が要るかは、ほぼ導けるようになります。

この記事は司法書士試験の受験生向けに、不動産登記法60条から63条、21条から23条、61条と不動産登記令7条を、択一で切れる形と記述式の添付情報欄を埋める形に整理したものです。科目全体の学習配分は不動産登記法(択一)の勉強法で扱っているので、本記事はその「総論の核」を深掘りする位置づけです。

共同申請の原則と単独申請の例外

60条は「不利益を受ける者を関与させる」ための原則

不動産登記法60条は、権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者と登記義務者が共同してしなければならないと定めています。登記によって不利益を受ける義務者を手続に関与させることで、登記の真正を担保する趣旨です。

この趣旨から、次の2つがそのまま導かれます。

  • 義務者が関与するのだから、義務者が本人であることの証明が要る。これが登記識別情報(22条)と印鑑証明書の役割です。
  • 義務者を関与させなくても真正が担保できる事情があれば、単独申請が許される。これが63条以下の例外です。

単独申請の例外を根拠ごとに並べる

単独申請は「法令に別段の定めがある場合」なので、条文の根拠が必ずあります。頻出のものを根拠つきで整理します。

場面 根拠条文 真正が担保される理由
登記手続を命ずる確定判決による登記 63条1項 判決で義務者の意思表示が擬制される
相続または法人の合併による権利の移転 63条2項 包括承継で義務者が存在しない
相続人に対する遺贈による所有権移転 63条3項 2024年4月施行の改正で追加。相続人が受遺者に限る
登記名義人の氏名・住所の変更・更正 64条1項 不利益を受ける者がいない
所有権の保存 74条 前主が登記記録上存在しない
仮登記(義務者の承諾または仮登記を命ずる処分があるとき) 107条1項 承諾または裁判所の処分で真正が担保される
買戻しの特約の抹消(契約の日から10年経過) 69条の2 登記権利者が単独で申請できる

63条1項の判決は「登記手続をすべきことを命ずる確定判決」です。所有権確認判決では足りず、給付判決であることが要件です。相続と合併は「権利の移転の登記」に限られ、抵当権の抹消のような他の登記は63条2項の対象になりません。63条3項の遺贈は「相続人に対する遺贈に限る」と括弧書きで限定されており、相続人以外への遺贈は原則どおり共同申請です。この3項は相続登記の申請義務(76条の2)の範囲と揃っているので、相続登記の義務化と併せて押さえてください。

62条は「単独申請」ではない

62条は、登記権利者・登記義務者または登記名義人が申請人となることができる場合に、その者について相続その他の一般承継があったときは、相続人その他の一般承継人が登記を申請できると定めています。

これは申請人の地位の承継であって、単独申請の規定ではありません。売主が売買後に死亡した場合、売主の相続人が義務者側の申請人となり、買主と共同で申請します。相続人が自分名義の相続登記を経る必要はありません。択一では「62条により相続人が単独で申請できる」という形で誤りの肢が作られます。共同申請の構造は変わらず、申請人だけが入れ替わると理解してください。このとき添付情報として、一般承継があったことを証する公務員が職務上作成した情報が必要になります(不動産登記令7条1項5号イ)。

登記識別情報:通知と提供

通知される場面(21条)

不動産登記法21条は、登記官は「その登記をすることによって申請人自らが登記名義人となる場合」に、登記完了後速やかに、申請人に登記識別情報を通知しなければならないと定めています。ここから、通知されないケースが導けます。

  • 申請人が登記名義人にならない場合。代位申請で債権者が申請したとき、登記名義人となるのは債務者であり、申請人である債権者には通知されません。
  • 申請人があらかじめ通知を希望しない旨の申出をした場合(21条ただし書、不動産登記規則64条1項1号)。
  • 通知を受けるべき者が、法務省令で定める期間内に登記識別情報を受領しない場合(規則64条1項2号・3号)。

「登記名義人となる者が申請人でない」という切り口は、代位申請と判決による登記の両方で問われます。判決による登記で権利者が単独申請した場合は、申請人が登記名義人になるので通知されます。

提供が必要な場面(22条)

22条は、登記権利者と登記義務者が共同して権利に関する登記を申請する場合と、登記名義人が政令で定める登記を申請する場合に、申請人は申請情報と併せて登記義務者の登記識別情報を提供しなければならないと定めています。

「政令で定める登記」は不動産登記令8条1項に列挙されています。共同申請ではないのに登記識別情報が要る登記として、択一でよく問われます。

令8条1項の登記 提供する登記識別情報
所有権の登記がある土地の合筆の登記 いずれか一筆の所有権登記名義人のもので足りる(令8条2項)
所有権の登記がある建物の合体による登記等・合併の登記 いずれか一個の建物の所有権登記名義人のもので足りる(同項)
共有物分割禁止の定めに係る権利の変更の登記 登記名義人全員
所有権の移転の登記がない場合における所有権の登記の抹消 所有権登記名義人
質権または抵当権の順位の変更の登記 順位を変更する登記名義人
共有根抵当権の優先の定め(民法398条の14第1項ただし書)の登記 根抵当権者
仮登記の登記名義人が単独で申請する仮登記の抹消 仮登記名義人

同項ただし書により、確定判決による登記は除かれます。いずれも「自分の権利を減らす側が単独で申請する登記」であることに気づけば、丸暗記に頼らずに済みます。

逆に、共同申請なのに登記識別情報が要らない登記もあります。仮登記を登記権利者と登記義務者が共同して申請する場合には、22条本文は適用されません(107条2項)。仮登記は順位保全の効力しか持たず、本登記の際にあらためて義務者の登記識別情報が問われるからです。

提供できない「正当な理由」

22条ただし書は、21条ただし書により通知されなかった場合その他、提供できないことにつき正当な理由がある場合には提供を要しないとしています。失念や紛失もここに含まれます。提供できない場合に登記官がどう本人性を確認するかが、次の23条です。

登記識別情報を提供できないときの3ルート(23条)

原則は事前通知

23条1項は、22条ただし書により登記識別情報を提供できないとき、登記官が登記義務者に対し、申請があった旨と、申請の内容が真実であると思料するときは法務省令で定める期間内にその旨の申出をすべき旨を通知しなければならないと定めています。期間内に申出がない限り、登記官は登記をすることができません。

期間は不動産登記規則70条8項により、通知を発送した日から2週間、義務者が外国に住所を有する場合は4週間です。通知は義務者が自然人であれば本人限定受取郵便またはこれに準ずる方法で送付されます(規則70条1項1号)。

所有権に関する登記では前住所への通知が加わる

23条2項は、申請が所有権に関するもので、義務者の住所について変更の登記がされているときは、法務省令で定める場合を除き、登記記録上の前の住所にあてても通知しなければならないとしています。住所変更を装ったなりすましを防ぐ趣旨です。所有権以外の権利の登記には適用されない点、住所変更登記がされている場合に限られる点が肢になります。

事前通知が省略される2つの場合

23条4項は、次のいずれかにあたるときは1項の事前通知を適用しないとしています。

ルート 条文 要件
資格者代理人による本人確認情報 23条4項1号 登記申請の代理を業とすることができる代理人による申請で、登記官がその代理人から申請人が義務者であることを確認するために必要な情報の提供を受け、内容を相当と認めるとき
公証人の認証 23条4項2号 申請情報または委任状について公証人から本人確認に必要な認証がされ、登記官がその内容を相当と認めるとき

どちらも「登記官が相当と認める」という要件が付いています。本人確認情報を提供すれば自動的に事前通知が省略されるのではありません。また、23条3項により、25条(10号を除く)の却下事由がある場合には事前通知の手続自体が行われません。

添付情報の体系:不動産登記令7条から組み立てる

6つの機能で分類する

添付情報の根拠は、法61条(登記原因証明情報)と不動産登記令7条1項が土台で、登記ごとの個別の添付情報は同令別表に定められています。機能ごとに分けると次のようになります。

機能 添付情報 根拠
登記原因の実在を示す 登記原因証明情報 法61条、令7条1項5号ロ
義務者が本人であることを示す 登記識別情報 法22条
申請書の押印が本人のものであることを示す 印鑑証明書 令16条2項・18条2項
新しい所有権登記名義人の実在を示す 住所証明情報 令別表28ニ・30ハ
代理人・代表者の権限を示す 代理権限証明情報、会社法人等番号または代表者資格証明情報 令7条1項1号・2号
第三者の関与を示す 許可・同意・承諾を証する情報、代位原因証明情報、一般承継証明情報 令7条1項5号ハ・3号・5号イ

登記原因証明情報は権利に関する登記の原則

法61条は、権利に関する登記を申請する場合、法令に別段の定めがある場合を除き、登記原因を証する情報を提供しなければならないとしています。令7条1項5号ロは、確定判決による登記では執行力のある確定判決の判決書の正本等に、仮登記を命ずる処分による仮登記ではその決定書の正本に、それぞれ限定しています。

不要になる場合は、令7条3項に列挙されています。買戻しの特約の抹消を69条の2により単独申請する場合などがそれです。所有権保存登記も登記原因証明情報が不要な代表例です(令7条3項2号)。ただし敷地権付き区分建物について74条2項により申請する場合は除かれ、この場合は登記原因証明情報が必要です。

印鑑証明書は「義務者が所有権の登記名義人か」で決まる

令16条2項は、申請書に記名押印した者(委任による代理人を除く)の印鑑証明書を添付しなければならないとし、同条3項で作成後3か月以内のものに限っています。委任状に押印する場合も同じ構造です(令18条2項・3項)。

添付を要しない場合は規則48条・49条に定められており、結論として、書面申請で印鑑証明書が必要になるのは、所有権の登記名義人が登記義務者として申請する場合が中心です。抵当権者が抵当権の抹消の義務者となる場合は不要です。法人の代表者については、会社法人等番号を申請情報の内容としたときは登記官が印鑑証明書を作成できる場合に限り添付を省略できます(規則48条1号)。

第三者の承諾書にも、作成者の記名押印と印鑑証明書が必要です(令19条)。承諾書の印鑑証明書には3か月の期間制限がない点が、申請書・委任状のものとの違いとして問われます。

住所証明情報は「所有権の登記名義人になるか」で決まる

住所証明情報は、所有権保存(令別表28ニ)と所有権移転(令別表30ハ)で、登記名義人となる者について要求されます。抵当権設定で抵当権者の住所証明情報は不要です。所有権の更正登記で新たに登記名義人となる者がある場合には必要になります。「所有権かどうか」「新たに名義人になるかどうか」の2軸で判断してください。

記述式で添付情報欄に何を書くか

思考の順番を固定する

記述式では、申請書の添付情報欄を1枠として採点されます。過不足のどちらも失点です。書く前に次の順番で確認します。

  1. この登記は共同申請か単独申請か。義務者がいるか。
  2. 義務者がいるなら登記識別情報。義務者が所有権の登記名義人なら印鑑証明書。
  3. 登記原因証明情報は原則として要る。不要になる例外にあたるか。
  4. 新たに所有権の登記名義人になる者がいるか。いれば住所証明情報。
  5. 第三者の許可・同意・承諾が実体法上必要か。農地法の許可、利害関係人の承諾、会社の内部手続など。
  6. 代理人が申請するなら代理権限証明情報。申請人が法人なら会社法人等番号。

売買と相続の対比で型を作る

添付情報 所有権移転(売買) 所有権移転(相続) 抵当権設定
登記原因証明情報 要 要(戸籍等) 要
登記識別情報 要(売主) 不要 要(設定者)
印鑑証明書 要(売主) 不要 要(設定者が所有権登記名義人のとき)
住所証明情報 要(買主) 要(相続人) 不要
代理権限証明情報 要 要 要

この3列を基準形にして、他の登記は差分で覚えます。答案構成の全体は記述式(不動産登記)対策で扱っています。

問題文の指示に従う

本試験の記述式では「添付情報の記載は次の略語によること」「登記識別情報を提供できないものとする」といった指示がつきます。登記識別情報を提供できない設定なら、添付情報欄には書かず、別途本人確認情報が要るかを問われることがあります。指示を読み落とすと、条文どおりの正解を書いても枠ごと失点します。

試験での出題ポイント

択一式ではこう問われる

  • 共同申請の例外の根拠:63条1項は給付判決に限る。63条2項は権利の移転に限る。63条3項は相続人に対する遺贈に限る。62条は単独申請ではなく申請人の承継。
  • 登記識別情報の通知:申請人が登記名義人になる場合だけ通知される。代位申請では申請人に通知されない。希望しない申出をすれば通知されない。
  • 登記識別情報の提供:共同申請では義務者のもの。令8条の登記では単独申請でも登記名義人のものが要る。確定判決による登記は除かれる。合筆・合併は1筆・1個分で足りる。
  • 事前通知:期間は2週間、海外は4週間。所有権で住所変更登記があれば前住所通知。資格者代理人の本人確認情報と公証人の認証は「登記官が相当と認めるとき」に省略。却下事由があれば事前通知はしない。
  • 印鑑証明書:3か月以内。所有権登記名義人が義務者のとき。承諾書のものには期間制限がない。
  • 住所証明情報:所有権の保存と移転で、新たに名義人となる者について。

似た要件を並べた肢を横に比較して解くと、記憶が整理されます。演習の回し方は肢別過去問の勉強法を、演習そのものは不動産登記法の科目ページを参照してください。

記述式との接続

記述式では、上記の知識が添付情報欄にそのまま現れます。とくに次の3点で差がつきます。

  • 単独申請の登記に登記識別情報や印鑑証明書を書いてしまう過剰記載。
  • 所有権移転で住所証明情報を落とす、抵当権設定で住所証明情報を書いてしまう混同。
  • 第三者の承諾が要る場面(利害関係人の承諾、農地法の許可)を見落とす。承諾がないと付記登記ができず主登記になる場面(66条)と、申請自体が却下される場面の区別も同時に問われます。

択一の肢を切るたびに「この登記の添付情報欄には何を書くか」を口に出して確認してください。択一と記述の往復が、この分野の最短経路です。

まとめ

  • 権利に関する登記は登記権利者と登記義務者の共同申請が原則(60条)。単独申請には必ず条文の根拠がある(63条・64条・74条・107条など)。
  • 62条は一般承継人による申請で、単独申請ではなく申請人の地位の承継。
  • 登記識別情報は、申請人自らが登記名義人となる場合に通知され(21条)、共同申請では義務者のものを提供する(22条)。令8条の登記では単独申請でも登記名義人のものが要る。
  • 提供できない場合は事前通知(23条1項、2週間・海外4週間)。所有権で住所変更登記があれば前住所通知(2項)。資格者代理人の本人確認情報と公証人の認証で省略できる(4項)。
  • 添付情報は「登記原因の実在」「義務者の本人性」「新名義人の実在」「権限」「第三者の関与」の機能で分類する。
  • 印鑑証明書は所有権登記名義人が義務者のとき、3か月以内。住所証明情報は新たに所有権登記名義人になる者について。
  • 記述式では、共同か単独か、義務者が所有権名義人か、新名義人がいるか、第三者の関与が要るか、の順に確認して添付情報欄を埋める。

よくある質問

相続人が被相続人名義のまま売却の登記を申請できるのはなぜですか

62条により、登記義務者について相続があったときは、相続人が義務者の地位で申請できるからです。ただし、これは相続人が被相続人の名義のまま売却の登記を申請できるという意味であって、実体法上は相続で所有権が相続人に移り、そこから買主に移っています。試験では、相続人が62条で申請できる場面と、相続登記を経てから移転登記をすべき場面を区別する肢が出ます。被相続人の生前に売買があった場合が62条の典型です。

登記識別情報を提供できないとき、必ず司法書士の本人確認情報が必要ですか

必須ではありません。23条の原則は登記官による事前通知で、資格者代理人による本人確認情報の提供は事前通知を省略するための手段の1つです(23条4項1号)。公証人の認証も同じ効果を持ちます(同項2号)。どちらも登記官が内容を相当と認めることが要件で、認めなければ事前通知の手続に戻ります。

印鑑証明書はどの申請でも3か月以内のものが必要ですか

申請書や委任状に添付する印鑑証明書は、作成後3か月以内のものに限られます(令16条3項・18条3項)。一方、第三者の承諾書に添付する印鑑証明書(令19条2項)には、条文上の期間制限がありません。この違いは択一で繰り返し問われます。

不動産登記法の論点を、そのまま問題で確かめる

不動産登記法の肢別演習を一覧で一気に○×。解説と関連先例がその場で開きます。

関連記事