当事者能力(28条:胎児・清算法人・民法上の組合)とうじしゃのうりょく
当事者能力とは、民事訴訟の当事者になることができる一般的な資格のことです。訴訟法に特別の定めがある場合を除いて民法その他の法令に従い(28条)、権利能力のある自然人と法人のほか、代表者又は管理人の定めがある法人でない社団・財団にも認められます(29条)。
会社の営業部や飼い犬を被告にして訴えても、判決で権利義務を確定させる相手としては意味がありません。そこで民事訴訟法は、民事訴訟の当事者になることができる一般的な資格を当事者能力と呼び、原則として民法上の権利能力がある者にこれを認めています。権利義務の主体になれる者なら、その権利義務について訴訟をさせる必要があり、主体になれない者を相手に本案判決をしても紛争は解決しないからです。当事者能力は訴訟要件の一つで、欠ければ訴えは却下されます。

当事者能力は、訴訟法に特別の定めがある場合を除いて民法その他の法令に従い、権利能力のある自然人と法人に認められます
28条は、当事者能力は、この法律に特別の定めがある場合を除き、民法その他の法令に従うと定めています。したがって、権利能力のある自然人と法人は、訴訟物が何であるかにかかわらず当事者になることができます。当事者能力は訴訟要件なので、裁判所は職権で調べ、欠けていれば本案の判断に入らずに訴えを却下します。会社の一部署のように法人の一部にすぎないものには当事者能力がなく、会社自身が当事者になります。訴訟法が定める特別の定めの代表が29条で、法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものに当事者能力を認めています。
胎児は損害賠償請求権について、解散した法人は清算の目的の範囲内で、それぞれ当事者になることができます
権利能力は出生に始まります(民法3条1項)が、胎児は損害賠償の請求権については既に生まれたものとみなされます(民法721条)。そのため、不法行為に基づく損害賠償請求権を訴訟物とするときは、胎児も当事者になることができると説明されています。もっとも、民法の判例が胎児の権利能力について出生を条件とする立場を採っていると理解されていることとの関係で、胎児のままでは当事者能力がないとする見解もあります。法人は解散しても直ちに消滅するのではなく、清算株式会社は清算の目的の範囲内において清算が結了するまではなお存続するものとみなされます(会社法476条。持分会社は645条)。

民法上の組合も、代表者の定めがあり団体としての実体があれば、29条により当事者能力が認められます
民法上の組合は、組合財産が総組合員の共有に属し(民法668条)、権利能力のない社団に比べて構成員の個性が強い団体です。そこで29条を組合にも適用できるかが争われてきました。判例は、ある会社に対して債権を有する三つの銀行が、それぞれの債権を出資して会社の経営を管理し営業の再建整備を図るとともに、協力して各自の債権を保全回収するため、民法上の任意組合として結成し代表者を定めた協同組織について、29条(当時の46条)の権利能力のない社団で代表者の定めがあるものとして当事者能力を認めました(最判昭和37年12月18日)。組合員全員を当事者にしなければ訴訟ができないとすると、相手方は組合名義の財産について債務名義を得にくくなるからです。社団の成立要件や財産をめぐる訴訟の原告適格は、法人でない社団の語で扱います。
- 自然人出生から死亡まで当事者能力があります。胎児は損害賠償請求権について既に生まれたものとみなされます
- 法人法人格がある限り当事者能力があります。解散後も清算の目的の範囲内では存続するものとみなされます
- 法人でない社団・財団代表者又は管理人の定めがあれば、その名において訴え、又は訴えられることができます(29条)
- 民法上の組合代表者の定めがあり団体としての実体があれば、29条により当事者能力が認められます(最判昭和37年12月18日)
- 法人の一部署当事者能力はなく、法人自身が当事者になります
民事訴訟法 第28条(原則)
当事者能力、訴訟能力及び訴訟無能力者の法定代理は、この法律に特別の定めがある場合を除き、民法(明治二十九年法律第八十九号)その他の法令に従う。訴訟行為をするのに必要な授権についても、同様とする。
民法721条胎児は、損害賠償の請求権については、既に生まれたものとみなす。
会社法476条前条の規定により清算をする株式会社(以下「清算株式会社」という。)は、清算の目的の範囲内において、清算が結了するまではなお存続するものとみなす。
試験ではこう問われる
- 当事者能力は、訴訟法に特別の定めがある場合を除き、民法その他の法令に従う(28条)
- 当事者能力は訴訟要件であり、欠ければ訴えは却下される
- 胎児は、不法行為に基づく損害賠償請求権を訴訟物とするときは、当事者になることができる(民法721条)
- 解散した法人は、清算の目的の範囲内では存続するとみなされるから、その限度で当事者となることができる(会社法476条・645条)
- 債権者三者が債権を出資して結成し代表者を定めた民法上の任意組合は、29条により当事者能力を有する(最判昭和37年12月18日)

