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所有権保存登記:申請できる者と74条

不動産登記法 読了 約10分

所有権保存登記を、不動産登記法74条1項の3類型と2項の区分建物の転得者、登記原因証明情報が要らない理由と例外、申請情報・添付情報・登録免許税の順に整理。司法書士試験の受験生向けに条文から解説します。

所有権保存登記は、甲区に最初の所有権の登記をする手続です。移転登記と違って登記義務者がいないため、誰が申請できるかを法律が限定しています。ここを条文で押さえると、択一の肢の大半は処理できます。

結論を先に言うと、押さえる点は3つです。第1に、申請できる者は不動産登記法74条1項の3類型と、区分建物に限って認められる2項の転得者だけであること。第2に、保存登記には登記原因がないので、登記原因証明情報も原因日付も原則として不要であること。第3に、その例外が敷地権付き区分建物の74条2項の保存で、ここだけは原因と承諾が要ることです。

本記事は、所有権保存の条文を一度通して整理したい受験生向けです。不動産登記法の学習全体は不動産登記法の勉強法で扱っています。

所有権保存登記とは何をする登記か

表題部から甲区へ

不動産の登記記録は、表題部と権利部に分かれます。建物を新築したり、登記のない土地が見つかったりすると、まず表題登記がされ、表題部に所有者が記録されます。これが表題部所有者です。

表題部所有者は、あくまで表示に関する登記事項です(不動産登記法27条3号)。第三者に所有権を対抗するための権利の登記ではありません。売買や抵当権の設定を登記するには、その前に権利部の甲区に所有権の登記が必要です。その最初の登記が所有権保存登記です。

保存登記がされると、登記官は表題部所有者に関する登記事項を抹消する記号を記録します(不動産登記規則158条)。以後、所有者は甲区で公示されます。

登記義務者がいない登記

移転登記は、登記権利者と登記義務者の共同申請が原則です(不動産登記法60条)。保存登記は、所有権の登記がまだない状態から始まるので、登記上不利益を受ける者がいません。そのため、保存登記は申請人の単独申請です。

単独申請を誰にでも許すと、無関係な者が他人の不動産を自分名義で保存できてしまいます。そこで74条は、申請できる者を列挙し、それ以外の者は申請できないと定めています。条文の書き出しが「次に掲げる者以外の者は、申請することができない」となっている点に注目してください。

74条1項:申請できる3類型

1号:表題部所有者とその一般承継人

最も多いのが1号です。表題部所有者、またはその相続人その他の一般承継人が申請できます。

場面 保存登記の申請
表題部所有者A本人 A名義で申請できる
Aが死亡し、B・Cが相続 B・C名義で直接申請できる。A名義を経由しなくてよい
表題部所有者の法人が合併で消滅 承継会社名義で直接申請できる
Aから売買で買い受けたD 申請できない。まずA名義で保存し、AからDへ移転する

表題部所有者から買い受けた者が申請できないのは、1号の「一般承継人」に特定承継人が含まれないからです。表題部所有者の変更は、保存登記をした後に移転登記の手続をするのでなければ登記できない(不動産登記法32条)という規定とも整合します。

表題部所有者が複数いる場合、共有者の1人は保存行為として全員のために保存登記を申請できます。ただし、自分の持分だけの保存登記はできません。所有権の登記が持分ごとに分かれて始まる状態を認めないためです。共有の実体法は民法の共有で扱っています。

2号:確定判決で所有権を確認された者

2号は、所有権を有することが確定判決によって確認された者です。表題部所有者が協力しない場合や、表題部所有者が真実の所有者でない場合に使います。

条文は「確認された者」と書いていますが、先例上、判決の種類は確認判決に限られません。給付判決などでも、判決の理由中で申請人の所有権が認められていれば足ります。令別表28項添付情報欄ロも、確定判決と同一の効力を有するもの、つまり和解調書なども含めています。

2号の判決は、あくまで保存登記の申請資格を示すものです。共同申請に代わる判決による登記(不動産登記法63条1項)とは条文も目的も違います。違いは判決による登記で整理しています。

3号:収用によって所有権を取得した者

3号は、土地収用法などによる収用で所有権を取得した者です。起業者が該当します。収用は原始取得なので、表題部所有者からの承継を登記で表す必要がありません。令別表28項添付情報欄ハにより、収用の裁決が効力を失っていないことを証する情報を含めて、収用による取得を証する情報を提供します。

表題登記がない不動産の場合

2号と3号の者は、表題登記がない不動産についても、いきなり保存登記を申請できます。この場合、登記官は保存登記をするときに、法務省令で定める不動産の表示を登記します(不動産登記法75条)。表題部を作る材料が必要になるため、土地なら土地所在図と地積測量図、建物なら建物図面と各階平面図を提供します(令別表28項添付情報欄ホ・ヘ)。1号の者にはこの道がありません。1号は表題部所有者を前提にしているからです。

74条2項:区分建物の転得者

分譲マンションの購入者が直接保存できる

区分建物に限り、表題部所有者から所有権を取得した者も保存登記を申請できます(不動産登記法74条2項前段)。1号の例外です。

分譲マンションでは、分譲業者が一棟全部の区分建物について表題登記をし、表題部所有者になります。各戸の購入者は分譲業者から買い受けた特定承継人です。1項だけなら、分譲業者名義で保存してから購入者へ移転する必要があり、登録免許税も手間も二重になります。2項は、購入者名義で直接保存することを認めて、この無駄を省いています。

認められるのは表題部所有者から直接取得した者だけです。購入者からさらに買い受けた者は2項で申請できません。

敷地権付きなら承諾と原因が要る

区分建物に敷地権があると、事情が変わります。敷地権付き区分建物の所有権の登記は、敷地権についての登記としての効力も持ちます(不動産登記法73条1項)。購入者の保存登記は、建物部分では保存でも、敷地権部分では分譲業者から購入者への権利の移転を公示することになります。

そこで2項後段は、敷地権の登記名義人の承諾を要求しています。敷地権の登記名義人は、通常は分譲業者です。さらに、この場合に限って次の扱いになります。

項目 通常の保存 敷地権付き区分建物の2項保存
登記原因及びその日付 登記しない(76条1項本文) 登記する(76条1項ただし書)
申請情報の原因 記載しない(令3条6号) 記載する。例:年月日売買
登記原因証明情報 不要(令7条3項2号) 必要(令別表29項添付情報欄ロ)
敷地権の登記名義人の承諾 不要 必要(74条2項後段)

敷地権のない区分建物の2項保存では、登記原因証明情報ではなく、表題部所有者またはその一般承継人が作成した、申請人が所有権を取得したことを証する情報を提供します(令別表29項添付情報欄イ)。敷地権の有無で添付情報の名前が変わる点が、択一の典型です。敷地権そのものの仕組みは区分建物の登記で扱っています。

申請情報と添付情報

登記原因証明情報が要らない理由

権利に関する登記の申請には、登記原因証明情報の提供が原則です(不動産登記法61条)。保存登記がその例外になるのは、保存登記に権利変動の原因がないからです。令7条3項2号は、所有権の保存の登記を申請する場合を、登記原因を証する情報の提供を要しない場合として挙げ、敷地権付き区分建物の2項保存を除いています。登記原因証明情報の全体像は登記原因証明情報の記事で確認してください。

申請情報の骨格

架空の例で、1号による建物の保存登記の骨格を示します。

項目 記載の例
登記の目的 所有権保存
原因 記載しない
所有者 申請人の住所・氏名。共有なら持分
申請の根拠 法74条1項1号など、申請人がどの号に当たるか
添付情報 住所証明情報、代理権限証明情報、相続人なら相続を証する情報
課税価格 不動産の価額
登録免許税 課税価格に1000分の4を乗じた額
不動産の表示 表題部に記録された表示

申請人がどの号に該当するかは、令別表28項申請情報欄イが求める事項です。所有権の登記名義人になる者が法人であれば会社法人等番号などの法人識別事項、国内に住所がなければ国内連絡先事項も申請情報になります(令3条11号ト)。

添付情報の一覧

添付情報 要否 根拠
登記原因証明情報 不要。敷地権付き区分建物の2項保存は必要 令7条3項2号、令別表29項
登記識別情報 不要。登記義務者がいない 法22条
住所証明情報 必要 令別表28項ニ・29項ハ
相続その他の一般承継を証する情報 1号の一般承継人が申請するとき 令別表28項イ
判決・収用を証する情報 2号・3号のとき 令別表28項ロ・ハ
敷地権の登記名義人の承諾を証する情報 敷地権付き区分建物の2項保存 令別表29項ロ
代理権限証明情報 代理人が申請するとき 令7条1項2号

登記識別情報は、保存登記の申請で提供するものではなく、保存登記が完了した後に申請人へ通知されるものです(不動産登記法21条)。印鑑証明書も、所有権の登記名義人が登記義務者になる場面ではないので提供しません。通知と提供の区別は登記識別情報と添付情報で整理しています。

登録免許税

所有権の保存の登記は、不動産の価額を課税標準として1000分の4です(登録免許税法別表第一第1号(一))。敷地権付き区分建物の2項保存では、建物部分は保存として計算しますが、敷地権部分は権利の移転にあたるので、売買であれば移転の税率で計算します。住宅用家屋には租税特別措置法の軽減がありますが、適用期限と要件が付いています。計算の手順は登録免許税の計算で確認してください。

保存登記の周辺で問われること

処分の制限の嘱託と職権保存

所有権の登記がない不動産に、裁判所が差押えや仮差押えなどの処分の制限の登記を嘱託することがあります。このとき登記官は、職権で所有権の保存の登記をします(不動産登記法76条2項)。処分の制限は所有権の登記を前提にするからです。表題登記もない不動産であれば、75条が準用され、登記官が表示の登記もします(同条3項)。申請によらない保存登記がある点は、74条の「申請できる者の限定」と対比して覚えてください。

相続登記の義務との関係

相続登記の申請義務を定める不動産登記法76条の2は、「所有権の登記名義人について相続の開始があったとき」を要件にしています。表題部所有者が死亡した場合は、この条文の文言には当たりません。相続人が74条1項1号で保存登記をすることは、義務の履行ではなく、権利を公示するための選択です。建物の表題登記については、新築した建物などの所有権を取得した者に1か月以内の申請義務があり(同法47条1項)、これは権利の登記の義務とは別の規定です。義務化の全体は相続登記の義務化で扱っています。

移転登記の雛形との差分

保存登記は、売買による所有権移転の雛形と並べて覚えると崩れにくくなります。違いが出る欄は次のとおりです。

欄 売買による所有権移転 所有権保存
登記の目的 所有権移転 所有権保存
原因 年月日売買 書かない。敷地権付き区分建物の2項保存だけ書く
申請人 権利者と義務者 所有者のみ
申請の根拠 書かない 74条1項何号か、2項か
登記原因証明情報 必要 不要。2項保存の敷地権付きだけ必要
登記識別情報 義務者のものを提供 提供しない
印鑑証明書 義務者のものを提供 提供しない
住所証明情報 買主のもの 所有者のもの
税率 1000分の20 1000分の4

差分は「義務者がいない」「原因がない」の2点から全部導けます。欄を暗記する前に、この2点から自分で表を再現できるか試してください。売買の雛形の側は売買による所有権移転登記で扱っています。

試験での出題ポイント

択一式ではこう問われる

  • 申請人:表題部所有者から売買で取得した者は、区分建物でない限り保存登記を申請できない
  • 一般承継人:表題部所有者の相続人や合併の承継会社は、直接自己名義で保存登記ができる
  • 共有:共有者の1人は全員のために申請できるが、自己の持分のみの保存登記はできない
  • 2号の判決:確認判決に限られない。和解調書など確定判決と同一の効力を有するものも含む
  • 表題登記がない不動産:2号・3号の者は直接保存できる。1号の者はできない
  • 2項の保存:区分建物に限る。表題部所有者から直接取得した者に限る
  • 敷地権付き区分建物:敷地権の登記名義人の承諾、登記原因証明情報、原因日付の記載が必要
  • 職権保存:処分の制限の嘱託があると登記官が職権で保存登記をする

記述式との接続

記述式では、保存登記が単独で出るより、次の登記の前提として出ることが多くなります。架空の例で確認します。

表題部所有者Aの建物について、Aが死亡し、子B・Cが相続した。その後、B・CがE銀行から借入れをして、建物に抵当権を設定した。この場合、抵当権設定の前提として、B・C名義の保存登記が必要です。A名義で保存してから相続登記をするのではなく、74条1項1号によりB・C名義で直接保存します。申請の根拠の欄に号を書き、原因の欄を書かない点が、移転登記の雛形との差分です。

記述式で表題部の別紙が出たら、甲区があるかを最初に確認してください。甲区がなければ、次の登記はすべて保存登記が前提になります。答案構成の手順は記述式・不動産登記法の対策にまとめています。

まとめ

  • 保存登記は甲区の最初の所有権の登記で、登記義務者がいないため単独申請になる
  • 申請できる者は74条1項の表題部所有者とその一般承継人、確定判決で所有権を確認された者、収用による取得者に限られる
  • 区分建物に限り、表題部所有者から直接取得した者も申請できる(74条2項)
  • 保存登記は原則として登記原因証明情報も原因日付も不要
  • 敷地権付き区分建物の2項保存だけは、登記原因証明情報、原因日付、敷地権の登記名義人の承諾が必要
  • 住所証明情報は必要で、登記識別情報と印鑑証明書は不要
  • 税率は1000分の4。敷地権付き区分建物の2項保存では敷地権部分を移転として計算する

よくある質問

建物を買ったのに、売主が表題登記しかしていません。自分の名義で保存登記できますか

区分建物でなければできません。74条1項1号の一般承継人に買主は含まれないからです。売主名義で保存登記をし、売主から買主へ売買による所有権移転登記をします。区分建物であれば、表題部所有者から直接買い受けた者として74条2項で保存できます。

保存登記の申請書に登記原因を書かないのはなぜですか

保存登記は、権利の移転ではなく、すでにある所有権を初めて公示する登記だからです。76条1項本文が登記原因及びその日付を登記しないと定め、令3条6号も申請情報に書く場面を敷地権付き区分建物の2項保存に限っています。

敷地権付き区分建物の2項保存で、登録免許税を全部1000分の4で計算してはいけないのですか

いけません。建物部分は保存ですが、敷地権部分は分譲業者などの敷地権の登記名義人から購入者への権利の移転を公示するものです。敷地権部分は、原因に応じた移転の税率で計算します。

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