区分建物の登記:敷地権と一体化の原則
区分建物の登記を、区分所有法22条の分離処分の禁止、不動産登記法44条1項9号の敷地権、46条の敷地権である旨の登記、73条の一体化の原則と例外の順に整理。登録免許税の数え方まで、司法書士試験の受験生向けに条文で解説します。
マンションの一室を売ると、建物だけでなく敷地の共有持分も一緒に移ります。不動産登記法は、この一体性を「敷地権」という仕組みで登記記録に反映させ、建物の登記簿だけで敷地の権利まで公示できるようにしています。
結論を先に言うと、押さえる点は3つです。第1に、区分所有法22条1項が専有部分と敷地利用権の分離処分を原則として禁止していること。第2に、その敷地利用権のうち登記されたものが敷地権で、敷地権の登記がされると土地の登記記録に敷地権である旨の登記がされること。第3に、以後は建物についてした登記が敷地権についての登記としての効力を持ち、土地だけ・建物だけの登記は原則としてできなくなることです。
本記事は、区分建物の登記を条文の流れで一度つかみたい受験生向けです。不動産登記法の学習全体は不動産登記法の勉強法で扱っています。
区分所有法の基本
区分所有権・専有部分・共用部分
一棟の建物に構造上区分された数個の部分で、独立して住居や店舗などの用途に使えるものは、それぞれ所有権の目的にできます(区分所有法1条)。この部分を目的とする所有権が区分所有権、その目的である建物の部分が専有部分です(同法2条1項・3項)。
専有部分以外の建物の部分は共用部分です(同法2条4項)。廊下や階段室のように構造上共用に供される部分は、そもそも区分所有権の目的になりません(同法4条1項)。一方、集会室のように本来は専有部分になり得る部分も、規約で共用部分にでき、その旨を登記しなければ第三者に対抗できません(同条2項)。
| 用語 | 意味 | 条文 |
|---|---|---|
| 区分所有権 | 専有部分を目的とする所有権 | 区分所有法2条1項 |
| 専有部分 | 区分所有権の目的である建物の部分 | 同条3項 |
| 共用部分 | 専有部分以外の建物の部分など | 同条4項 |
| 建物の敷地 | 建物が所在する土地と規約で敷地とされた土地 | 同条5項 |
| 敷地利用権 | 専有部分を所有するための建物の敷地に関する権利 | 同条6項 |
建物の敷地と敷地利用権
建物の敷地には、建物が実際に建っている土地のほか、規約で敷地とした土地も含まれます。区分所有者が建物と一体として管理・使用する庭や通路などの土地は、規約で建物の敷地にできます(区分所有法5条1項)。これを規約敷地と呼びます。
敷地利用権は、専有部分を所有するための敷地の権利です。多くは土地の所有権の共有持分ですが、地上権や賃借権の準共有のこともあります。
分離処分の禁止
敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合、区分所有者は、専有部分と敷地利用権とを分離して処分できません(区分所有法22条1項本文)。規約に別段の定めがあるときは、この限りではありません(同項ただし書)。
分離処分を認めると、敷地の共有持分だけを持つ者や、敷地利用権を持たない専有部分の所有者が生まれ、権利関係が複雑になります。22条は、これを実体法の段階で止める規定です。共有の一般原則は民法の共有で扱っています。
この規定は、専有部分の全部を所有する者の敷地利用権が単独で有する権利である場合にも準用されます(同条3項)。分譲業者が一棟全部の専有部分と敷地の所有権を1人で持っている段階でも、分離処分の禁止はかかっているということです。
分離処分の禁止に違反する処分は無効ですが、その無効は善意の相手方に主張できません。ただし、不動産登記法の定めるところにより、分離して処分できない専有部分と敷地利用権であることを登記した後に処分がされたときは、この限りではありません(区分所有法23条)。ここで言う登記が、次に見る敷地権の登記です。
敷地権とは何か
44条1項9号の定義
不動産登記法は、区分建物の表示に関する登記事項として敷地権を挙げています(不動産登記法44条1項9号)。敷地権とは、区分所有法2条6項の敷地利用権のうち、登記されたもので、区分所有法22条1項本文により専有部分と分離して処分できないものです。
| 要件 | 意味 | 満たさない例 |
|---|---|---|
| 敷地利用権であること | 専有部分を所有するための敷地の権利 | 敷地と関係のない土地の権利 |
| 登記されていること | 所有権・地上権・賃借権が登記されている | 登記されていない土地賃借権 |
| 分離処分できないこと | 22条1項本文が適用される | 規約で分離処分を認めた場合 |
「登記されたものに限る」という括弧書きが重要です。敷地権は土地の登記記録と建物の登記記録をつなぐ仕組みなので、土地の側に登記がなければつなぐ先がありません。借地上のマンションで賃借権が登記されていなければ、その賃借権は敷地権になりません。
敷地権の割合
区分所有者が数個の専有部分を所有するときは、各専有部分に係る敷地利用権の割合は、規約で別の割合を定めていなければ、区分所有法14条1項から3項までに定める割合、つまり専有部分の床面積の割合によります(区分所有法22条2項)。この割合が、専有部分の表題部に敷地権の割合として記録されます。
架空の数字で確認します。一棟の専有部分の床面積の合計が3000平方メートルで、101号室の床面積が60平方メートルなら、規約に別段の定めがない限り、101号室の敷地権の割合は3000分の60です。区分所有者が101号室と102号室の2戸を持っていても、敷地利用権は1つの持分にまとめず、専有部分ごとに割り付けます。1戸だけを売れば、その戸に割り付けられた敷地権だけが一緒に移ります。
登記記録はどうなるか
区分建物の表題部
区分建物の登記記録の表題部には、一棟の建物の表示と、専有部分の建物の表示が記録されます。専有部分の表題部に敷地権を記録するときは、敷地権の目的である土地の符号・所在・地目・地積、敷地権の種類、敷地権の割合を、敷地権の登記原因及びその日付とともに記録します(不動産登記規則118条)。
区分建物の表題登記は、一棟の建物に属する他の区分建物の表題登記と併せて申請しなければなりません(不動産登記法48条1項)。一棟全部を一括で登記することで、敷地権の割合の合計や一棟の建物の表示に食い違いが出ないようにしています。なお、表題登記の申請義務を定める47条1項は、区分建物について、新築した者ではなく後から取得した者には申請義務を課していません。
土地側の「敷地権である旨の登記」
区分建物の表題部に敷地権を最初に登記するとき、登記官は、敷地権の目的である土地の登記記録に、職権で、その所有権・地上権その他の権利が敷地権である旨の登記をします(不動産登記法46条)。記録する場所は権利部の相当区で、敷地権が所有権なら甲区、地上権や賃借権なら乙区です(不動産登記規則119条1項)。
| 登記記録 | 何が記録されるか |
|---|---|
| 区分建物の表題部 | 敷地権の目的である土地、敷地権の種類と割合 |
| 土地の権利部 | その権利が敷地権である旨、一棟の建物の表示など |
土地の登記記録を見れば、この土地の所有権はマンションの敷地権になっていて、以後の変動は建物の登記記録を見よ、という案内が付いていることになります。
一体化の原則:73条
1項:建物の登記が敷地権にも効く
敷地権付き区分建物についての所有権または担保権に係る権利に関する登記は、敷地権である旨の登記をした土地の敷地権についてされた登記としての効力を有します(不動産登記法73条1項本文)。ここで担保権とは、一般の先取特権、質権、抵当権です。
たとえば、敷地権付き区分建物について売買による所有権移転登記をすると、建物の登記記録にだけ登記がされ、土地の登記記録には何も記録されません。それでも、その登記は敷地権の移転の登記としての効力を持ちます。抵当権の設定登記も同じです。1件の申請で建物と敷地権の両方を処理できるのが、一体化の実益です。
2項・3項:片方だけの登記は原則できない
一体化の裏返しとして、片方だけの登記が禁止されます。
| 条文 | 禁止される登記 |
|---|---|
| 73条2項本文 | 敷地権である旨の登記をした土地に、敷地権の移転の登記や、敷地権を目的とする担保権に係る権利に関する登記をすること |
| 73条3項本文 | 敷地権付き区分建物に、建物のみの所有権の移転を登記原因とする所有権の登記や、建物のみを目的とする担保権に係る権利に関する登記をすること |
禁止されているのは、所有権の移転と担保権です。用益権は列挙されていません。敷地権である旨の登記がされた土地に地上権や地役権を設定する登記や、専有部分に賃借権を設定する登記は、73条2項・3項の禁止に当たりません。条文の列挙を正確に読むことが、択一での分かれ目です。
例外:原因がいつ生じたか
73条の例外は、登記原因が敷地権の発生の前か後かで整理すると見通しがよくなります。
| 場面 | 扱い | 条文 |
|---|---|---|
| 敷地権が生じる前に原因がある建物のみの抵当権・質権・所有権の仮登記 | 建物のみの登記ができる | 73条3項ただし書 |
| 敷地権が生じる前に原因がある土地のみの抵当権・質権・仮登記 | 土地のみの登記ができる | 73条2項ただし書 |
| 敷地権が生じた後に原因があるが、分離処分禁止の場合でない | 片方のみの登記ができる | 73条2項・3項ただし書 |
| 敷地権の登記の前から建物に登記されていた所有権・担保権の登記 | 敷地権への効力を持たない。ただし、土地の権利にされた担保権の登記と登記の目的・受付年月日・受付番号・登記原因及びその日付が同一の担保権の登記は除く | 73条1項1号 |
敷地権の発生前にすでに建物だけに抵当権設定契約をしていた場合、その抵当権は建物だけを目的とするものとして成立しています。敷地権の登記がされた後でも、実体に合わせて建物のみの抵当権設定登記を認める必要があるわけです。この場合、登記官は、その登記に付記する方法で、建物のみに関する旨を記録します(不動産登記規則156条)。
申請情報と登録免許税
敷地権の表示を申請情報に書く
敷地権付き区分建物についての所有権、一般の先取特権、質権、抵当権に関する登記を申請するときは、敷地権の目的となる土地の所在・地番・地目・地積と、敷地権の種類及び割合を申請情報の内容にします(不動産登記令3条11号ヘ)。73条3項ただし書の建物のみの登記は除かれています。申請書の不動産の表示で、一棟の建物・専有部分の建物・敷地権の表示の3段になっているのはこのためです。
分譲マンションの購入者が、表題部所有者である分譲業者から直接取得して自己名義で保存登記をする場面は、不動産登記法74条2項の問題です。敷地権付きなら登記原因証明情報と敷地権の登記名義人の承諾が要ります。詳しくは所有権保存登記で扱っています。
抵当権設定の申請の骨格
架空の例で、敷地権付き区分建物に抵当権を設定する登記の骨格を示します。
| 項目 | 記載の例 |
|---|---|
| 登記の目的 | 抵当権設定 |
| 原因 | 年月日金銭消費貸借年月日設定 |
| 抵当権者・設定者 | 金融機関と区分建物の所有権の登記名義人 |
| 添付情報 | 登記原因証明情報、設定者の登記識別情報、設定者の印鑑証明書、代理権限証明情報など |
| 課税価格・登録免許税 | 債権額に1000分の4 |
| 不動産の表示 | 一棟の建物の表示、専有部分の建物の表示、敷地権の表示 |
抵当権の設定登記では、課税標準は債権額なので、敷地権の分だけ税額が増えることはありません。申請は1件で、登記がされるのは建物の登記記録だけですが、73条1項により敷地権にも抵当権の効力が及びます。土地の登記記録を別に確認して、敷地権になる前から土地に登記されている担保権がないかを見ておくことも大切です。抵当権設定登記そのものの構造は抵当権設定登記で扱っています。
登録免許税の数え方
所有権移転のように不動産の価額を課税標準とする登記では、建物の価額に敷地権の価額を加えて課税標準を出します。敷地権の価額は、土地の価額に敷地権の割合を乗じて求めます。
抵当権の抹消のように不動産の個数に応じた定額課税の登記では、専有部分の建物と、敷地権の目的である土地の筆数をそれぞれ1個として数えます。敷地権の目的である土地が1筆なら、1戸の抹消で2個、税額は2000円です。建物の登記記録にしか登記をしないのに、土地も1個として数える点がひっかけになります。税率の一覧は登録免許税の計算で確認してください。
試験での出題ポイント
択一式ではこう問われる
- 敷地権の要件:登記された敷地利用権で、分離処分が禁止されるもの。登記のない賃借権は敷地権にならない
- 単独所有でも:専有部分の全部を1人で所有する場合も分離処分の禁止は準用される(区分所有法22条3項)
- 敷地権である旨の登記:登記官が職権でする。所有権なら甲区、地上権・賃借権なら乙区
- 一体化の効力:建物にした所有権・担保権の登記は敷地権にも効く。土地の登記記録には記録されない
- 禁止の範囲:禁止は所有権の移転と担保権。地上権・地役権・賃借権の設定は禁止されていない
- 例外:敷地権の発生前に原因がある抵当権などは片方のみの登記ができ、建物のみの登記には付記がされる
- 税の数え方:定額課税では専有部分と敷地権の目的である土地をそれぞれ1個と数える
記述式との接続
記述式で区分建物の登記記録が別紙に出たら、専有部分の表題部の敷地権の表示を最初に確認してください。敷地権があれば、申請書の不動産の表示に敷地権の表示を書き、登録免許税では土地も数に入れます。敷地権の登記原因の日付と抵当権の設定契約の日付を比べて、建物のみの登記になるかどうかも確かめます。
架空の例で確認します。分譲業者Pが建てたマンションの一室101号室について、敷地権の登記の後に、購入者QがR銀行から借り入れて抵当権を設定した。この抵当権設定登記は、敷地権の表示を含めて1件で申請し、敷地権にも効力が及びます。これに対し、敷地権が生じる前にPがS銀行のために建物だけに抵当権を設定する契約をしていれば、その登記は建物のみに関する旨の付記が付く登記になります。別紙の読み方は記述式の別紙の読み方で扱っています。
まとめ
- 区分所有法22条1項は、専有部分と敷地利用権の分離処分を原則として禁止する。単独所有でも準用される
- 敷地権は、登記された敷地利用権で分離処分できないもの(不動産登記法44条1項9号)
- 敷地権を表題部に登記すると、土地の登記記録に職権で敷地権である旨の登記がされる(46条)
- 建物にした所有権・担保権の登記は、敷地権についての登記としての効力を持つ(73条1項)
- 土地のみ・建物のみの所有権移転や担保権の登記は原則できない。用益権の設定は禁止されていない
- 敷地権の発生前に原因がある担保権などは例外として片方のみの登記ができる
- 定額課税では専有部分と敷地権の目的である土地をそれぞれ1個と数える
よくある質問
マンションの売買で、土地の登記記録に所有権移転が記録されないのはなぜですか
敷地権付き区分建物の所有権移転登記は、敷地権の移転の登記としての効力を持つからです(不動産登記法73条1項)。土地の登記記録には敷地権である旨の登記がされており、以後の変動は建物の登記記録で公示されます。土地の登記記録に重ねて記録する必要はありません。
規約で分離処分を認めたマンションにも敷地権はありますか
ありません。敷地権の要件は、区分所有法22条1項本文により分離処分できないことです。規約で分離処分を認めれば、この要件を欠きます。その場合、建物と土地はそれぞれ別の登記記録で権利変動を公示します。
敷地権付き区分建物の専有部分に賃借権を設定する登記はできますか
できます。73条3項本文が禁止しているのは、建物のみの所有権の移転を原因とする所有権の登記と、建物のみを目的とする担保権の登記です。賃借権の設定は列挙されていません。賃借権の設定登記は、建物の登記記録にだけ効力を持つ登記として申請します。
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