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仮登記:1号仮登記と2号仮登記、本登記の手続

不動産登記法 読了 約10分

仮登記を、1号仮登記と2号仮登記の違い、順位保全の効力、単独申請の要件と添付情報、所有権に関する本登記での利害関係人の承諾と職権抹消、仮登記の抹消、登録免許税の順に整理。司法書士試験の受験生向けに条文から解説します。

仮登記は、不動産登記法の各論の中でも「総論の例外」が集中する分野です。共同申請の例外、登記識別情報の提供の例外、利害関係人の承諾、職権抹消、登録免許税の控除と、条文ごとに独自のルールがあります。択一では毎年のように問われ、記述式でも本登記の申請が出題されます。

結論を先に言うと、仮登記は「順位を確保するだけの登記」です。仮登記そのものには対抗力がなく、本登記をしたときに、その順位が仮登記の順位になります(不動産登記法106条)。この一点から、所有権に関する本登記で後順位の登記が抹消される理由も、利害関係人の承諾が必要になる理由も導けます。

本記事では、105条から110条を中心に、1号仮登記と2号仮登記の区別、申請手続、本登記、抹消の順で整理します。不動産登記法全体の学習順序は不動産登記法の勉強法を参照してください。

仮登記の効力:順位保全だけを持つ登記

本登記の順位は仮登記の順位による

法106条は、仮登記に基づいて本登記をした場合は、当該本登記の順位は、当該仮登記の順位によると定めます。これを順位保全効といいます。

仮登記をしただけでは、第三者に対抗できません。仮登記の後に第三者が所有権移転の登記を受ければ、その時点では第三者が優先します。しかし仮登記権利者が後に本登記をすると、本登記は仮登記の順位で扱われるので、仮登記より後にされた第三者の登記は、本登記と両立しない範囲で本登記に劣後します。所有権に関する本登記では、そうした登記が職権で抹消されます。この点は後で扱います。

仮登記があっても処分は止まらない

仮登記は、差押えや処分禁止の仮処分のように処分を制限する登記ではありません。仮登記がされた後も、所有者は不動産を第三者に売却でき、抵当権を設定することもでき、それらの登記も受け付けられます。

そのため登記記録には、仮登記と、それと矛盾する後順位の登記が並ぶことがあります。どちらが最終的に優先するかは、仮登記権利者が本登記をするかどうかで決まります。本登記がされなければ後順位の登記がそのまま効力を持ち、本登記がされれば仮登記の順位が優先します。後順位で登記を受ける者は、仮登記の存在を登記記録で知ることができるので、この結果を予測できます。

登記記録上の仕組み

登記官は、権利部の相当区に仮登記をしたときは、その次に同一の順位番号で本登記をするための余白を設けます(不動産登記規則179条1項)。本登記は、仮登記と同一の順位番号を用いてします(同条2項)。

登記記録を見ると、仮登記の直下に空欄があり、後から本登記がそこに記録されます。本登記は仮登記の順位番号の位置に記録されるので、仮登記の後にされた登記よりも前に位置します。記述式で登記記録を読むときは、仮登記の下の余白が埋まっているかどうかで、本登記が済んでいるかを判断してください。

1号仮登記と2号仮登記

仮登記は、法3条各号に掲げる権利、つまり所有権・地上権・抵当権・賃借権など登記できる権利について、保存・設定・移転・変更・消滅の場面でできます(法105条)。所有権の移転だけでなく、抵当権設定の仮登記や賃借権設定の仮登記もあります。

法105条は、仮登記ができる場合を2つに分けています。この区別が、登記の目的と登記原因の書き方を決めます。

1号仮登記:権利変動はあるが手続要件が欠ける

1号は、権利の保存等があった場合に、登記の申請に必要な情報のうち法務省令で定めるものを提供できないときです。法務省令で定める情報は、登記識別情報または第三者の許可・同意・承諾を証する情報です(不動産登記規則178条)。

実体上は権利変動がすでに生じています。たとえば売買で所有権は移転したが、売主が登記識別情報を提供できないという場面です。農地法の許可が既に到達しているのに許可書を提供できない場面も1号にあたります。

提供できないものが登記識別情報と許可等を証する情報に限られる点が重要です。登記原因証明情報や印鑑証明書を提供できないことを理由に、1号仮登記をすることはできません。

2号仮登記:請求権を保全する

2号は、権利の設定・移転・変更・消滅に関して請求権を保全しようとするときです。始期付き・停止条件付きのもの、その他将来確定することが見込まれるものも含みます。

実体上は、まだ権利変動が生じていません。売買予約をして予約完結権を持っている場面や、農地法の許可を停止条件とする売買で許可がまだない場面が典型です。

登記の目的と登記原因の書き分け

区分 場面の例 登記の目的 登記原因
1号 売買は成立したが登記識別情報を提供できない 所有権移転仮登記 年月日売買
2号 売買予約をした 所有権移転請求権仮登記 年月日売買予約
2号 農地法の許可を条件とする売買で許可が未了 条件付所有権移転仮登記 年月日売買(条件 農地法の許可)
2号 死因贈与契約をした 始期付所有権移転仮登記 年月日贈与(始期 贈与者の死亡)

1号は権利そのものの仮登記、2号は請求権や条件付きの権利の仮登記です。農地の売買は、許可の有無で1号と2号が分かれるので、記述式では許可書の日付を必ず確認してください。

仮登記の申請手続

共同申請が原則、単独申請は2つの場合

仮登記も権利に関する登記なので、共同申請が原則です(法60条)。ただし法107条1項により、次の2つの場合は仮登記権利者が単独で申請できます。

  • 仮登記の登記義務者の承諾があるとき
  • 法108条の仮登記を命ずる処分があるとき

仮登記を命ずる処分は、仮登記権利者の申立てにより裁判所がするものです(108条1項)。申立てでは仮登記の原因となる事実を疎明し(2項)、事件は不動産の所在地を管轄する地方裁判所の専属管轄です(3項)。申立てを却下した決定には即時抗告ができます(4項)。

登記識別情報を提供しなくてよい

仮登記を共同で申請する場合でも、法22条本文は適用されません(法107条2項)。つまり義務者の登記識別情報を提供しなくてよいのです。仮登記は順位を確保するだけの登記なので、厳格な本人確認より迅速性を優先した規定です。

一方で、書面申請の場合、登記義務者が所有権の登記名義人であれば、印鑑証明書は必要です(不動産登記規則47条3号イ・48条5号)。登記識別情報は不要でも印鑑証明書は必要、という組み合わせが択一で問われます。

申請形態ごとの添付情報

申請形態 主な添付情報 根拠
共同申請 登記原因証明情報、義務者の印鑑証明書。登記識別情報は不要 法107条2項
義務者の承諾による単独申請 登記原因証明情報、義務者の承諾を証する情報と印鑑証明書 令別表68項、令19条
仮登記を命ずる処分による単独申請 仮登記を命ずる処分の決定書の正本 令7条1項5号ロ(2)

所有権移転の仮登記では、住所証明情報は不要です。住所証明情報は、本登記で所有権の登記名義人になる段階で提供します。

仮登記に基づく本登記

所有権に関する本登記と利害関係人の承諾

法109条1項は、所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者がある場合には、その第三者の承諾があるときに限り申請できると定めます。そして2項により、登記官は本登記をするときに、職権でその第三者の権利に関する登記を抹消します。

利害関係を有する第三者の典型は、仮登記の後に登記を受けた次の者です。

  • 仮登記後に所有権移転の登記を受けた第三取得者
  • 仮登記後に抵当権や賃借権の設定の登記を受けた者
  • 仮登記後に差押えや仮差押えの登記をした債権者

仮登記より前に登記された抵当権者は、本登記によって影響を受けないので、利害関係人ではありません。承諾を証する情報は、第三者が作成した承諾書か、第三者に対抗できる裁判があったことを証する情報です(令別表69項)。仮登記担保の場合は、仮登記担保契約に関する法律18条本文の差押えと清算金の供託を証する情報で代えることができます(同項)。

抵当権の本登記では承諾は不要

109条は「所有権に関する」仮登記に限った規定で、所有権以外の権利に関する仮登記の本登記には、利害関係人の承諾を求める規定がありません。典型は抵当権設定の仮登記に基づく本登記です。後順位の抵当権者がいても承諾は不要で、後順位の登記は抹消されません。本登記された抵当権が仮登記の順位で優先し、後順位の抵当権はその後ろに並ぶだけです。

項目 所有権に関する本登記 抵当権設定の仮登記に基づく本登記
利害関係人の承諾 必要(109条1項) 不要
後順位の登記 職権で抹消(109条2項) 残る
理由 所有権は両立しない 抵当権は順位の前後で両立する

本登記の申請人・添付情報・原因日付

本登記の申請人は、仮登記権利者と仮登記の登記義務者です。仮登記の後に所有権が第三者に移転していても、本登記の義務者は仮登記の義務者のままで、第三取得者は利害関係人として承諾を与える立場になります。

所有権移転の本登記では、通常の所有権移転登記と同じく、義務者の登記識別情報と印鑑証明書、権利者の住所証明情報を提供します。仮登記のときに不要だった登記識別情報と住所証明情報が、本登記の段階で必要になる点を対比で押さえてください。

登記の目的は「所有権移転(何番仮登記の本登記)」のように、どの仮登記に基づくかを示します。原因日付は、実体上の権利変動が生じた日です。仮登記の種類ごとに、どの日を拾うかが変わります。

仮登記 本登記の原因 原因日付として拾う日
1号の所有権移転仮登記 年月日売買 仮登記と同じ売買の日
所有権移転請求権仮登記(売買予約) 年月日売買 予約完結の意思表示をした日
条件付所有権移転仮登記(農地法の許可) 年月日売買 許可が到達した日
始期付所有権移転仮登記(死因贈与) 年月日贈与 贈与者が死亡した日

1号仮登記はすでに権利変動が生じているので、本登記でも原因日付は変わりません。2号仮登記は、本登記の時点で初めて権利変動が生じるので、その日を別紙から拾います。農地の売買で日付がずれる仕組みは売買による所有権移転登記でも扱っています。

死因贈与の仮登記に基づく本登記では、仮登記の義務者である贈与者がすでに死亡しています。執行者の定めがなければ、贈与者の相続人全員が法62条により義務者の地位で申請します。義務者側に相続が絡むと申請人の欄が大きく変わるので、記述式では別紙の戸籍関係の資料を読み落とさないでください。

仮登記の抹消と登録免許税

仮登記の抹消は単独申請できる

法110条前段により、仮登記の抹消は、仮登記の登記名義人が単独で申請できます。後段により、仮登記の登記名義人の承諾がある場合は、登記上の利害関係人も単独で申請できます。もちろん原則どおり共同申請もできます。

申請人 主な添付情報 根拠
仮登記名義人が単独で 登記原因証明情報、仮登記名義人の登記識別情報。所有権に関する仮登記名義人なら印鑑証明書 法110条前段、令8条1項9号、規則47条3号イ(5)
利害関係人が単独で 登記原因証明情報、仮登記名義人の承諾を証する情報、第三者があればその承諾を証する情報 法110条後段、令別表70項

仮登記名義人が単独で申請する場合は、単独申請であっても登記識別情報の提供が必要です(令8条1項9号)。仮登記の申請では登記識別情報が不要だったのと対比して覚えてください。

仮登記と本登記の登録免許税

登記 税率 根拠
所有権移転の仮登記・請求権仮登記(売買など) 不動産の価額の1000分の10 登録免許税法別表第一第1号(十二)ロ(3)
所有権移転の仮登記・請求権仮登記(相続・合併) 不動産の価額の1000分の2 同ロ(1)
抵当権設定の仮登記 不動産1個につき1000円 同ト
仮登記に基づく所有権移転の本登記(売買など) 本則1000分の20から1000分の10を控除 登録免許税法17条1項
仮登記の抹消 不動産1個につき1000円 別表第一第1号(十五)

売買の所有権移転なら、仮登記で1000分の10、本登記で残りの1000分の10を納め、合計が本則の1000分の20になります。抵当権設定の仮登記は定額で、本登記のときに債権額の1000分の4を納めます。17条1項の控除は所有権や用益権の本登記などを対象とし、抵当権の本登記は対象外です。計算の詳細は登録免許税の計算の記事で扱っています。

試験での出題ポイント

択一式ではこう問われる

  • 1号と2号:1号は権利変動があるが登記識別情報や許可書を提供できない場合。登記原因証明情報や印鑑証明書を提供できない場合は仮登記できない
  • 単独申請:義務者の承諾があるとき、仮登記を命ずる処分があるとき。処分は地方裁判所の専属管轄で、疎明が必要
  • 登記識別情報:共同申請の仮登記でも不要(107条2項)。仮登記名義人が単独で抹消するときは必要(令8条1項9号)
  • 印鑑証明書:仮登記でも義務者が所有権の登記名義人なら必要
  • 本登記:所有権に関する本登記は利害関係人の承諾が必要で、その登記は職権抹消。抵当権設定の仮登記に基づく本登記では不要
  • 本登記の義務者:仮登記後に所有権が移転しても、仮登記の義務者が本登記の義務者
  • 登録免許税:売買の仮登記は1000分の10、本登記は控除後1000分の10。抵当権設定の仮登記は1個1000円

記述式との接続

記述式では、登記記録に仮登記があり、別紙で「予約完結の意思表示をした」「農地法の許可が到達した」という事実が示されて、本登記を申請させる出題が典型です。

  • 本登記の原因日付は、予約完結の日や許可の到達日など、実体上の権利変動が生じた日
  • 仮登記後の第三取得者や抵当権者を登記記録から拾い、承諾を証する情報を添付情報に書く
  • 職権抹消される登記について、別途抹消の申請を書かない

処分禁止の仮処分とともにされる保全仮登記は、民事保全法の制度で、法112条により本登記の順位が保全仮登記の順位によります。仮処分との関係は仮差押えと仮処分の記事で、枠決めの手順は記述式(不動産登記)の答案構成で扱っています。

まとめ

  • 仮登記は順位を確保するだけの登記で、本登記の順位は仮登記の順位による(法106条)
  • 1号は権利変動があるが登記識別情報・許可等の情報を提供できない場合、2号は請求権や条件付きの権利を保全する場合
  • 義務者の承諾か仮登記を命ずる処分があれば単独申請できる(法107条1項)。共同申請でも登記識別情報は不要(同条2項)
  • 所有権に関する本登記は利害関係人の承諾が必要で、その登記は職権で抹消される(法109条)
  • 仮登記の抹消は仮登記名義人が単独で、名義人の承諾があれば利害関係人も単独でできる(法110条)
  • 売買の仮登記は1000分の10、本登記は控除後の1000分の10

よくある質問

仮登記をしておけば、第三者に所有権を主張できますか

仮登記のままでは主張できません。仮登記には対抗力がなく、順位を確保する効力しかないからです。第三者に対抗するには本登記が必要で、本登記をしたときに、その順位が仮登記の順位になります。

抵当権設定の仮登記に基づく本登記で、後順位の抵当権者の承諾は必要ですか

不要です。109条1項は所有権に関する仮登記に基づく本登記についての規定で、抵当権のような所有権以外の権利には適用されません。本登記がされても後順位の抵当権は抹消されず、順位が後ろになるだけです。

仮登記の後に所有者が変わった場合、本登記は誰と申請しますか

仮登記の登記義務者、つまり仮登記をした時点の所有者と共同して申請します。仮登記後に所有権を取得した第三者は、本登記の義務者ではなく、登記上の利害関係を有する第三者として承諾を与える立場です。承諾があれば、第三者の所有権移転登記は本登記の際に職権で抹消されます。

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