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根抵当権の元本確定:確定事由ごとの登記の要否と申請構造

不動産登記法 読了 約11分

根抵当権の元本確定を、確定事由ごとに登記が要るか、共同申請か不動産登記法93条の単独申請か、添付情報は何かで整理。確定後の移転登記との連件まで、司法書士試験の受験生向けに解説します。

根抵当権の元本確定は、不動産登記法の記述式で「申請すべき登記を1件増やす」論点です。民法の確定事由を覚えていても、登記の場面では別の問いが立ちます。確定の登記が要るか。要るなら誰が申請するか。何を添付するか。

結論を先に言うと、判断の軸は2本です。第1に、登記記録から確定が読み取れないときは、確定後にしかできない登記の前提として確定の登記を入れます。第2に、申請は設定者と根抵当権者の共同申請が原則で、不動産登記法93条が定める3つの事由に限り根抵当権者が単独で申請できます。

この記事は、根抵当権の確定事由を民法で一通り学んだ受験生向けです。確定事由そのものの意味や確定後の性質は抵当権と根抵当権の違いで扱っているので、ここでは確定事由ごとの登記の要否と申請構造に絞ります。

元本確定の登記が必要になる場面

確定の登記は後続の登記の前提として入れる

元本が確定すると、根抵当権は確定時に存在する債権だけを担保する権利に変わります。確定後には、被担保債権の譲渡や代位弁済に伴う根抵当権の移転、民法398条の21の極度額減額請求による変更など、確定前にはできなかった登記ができるようになります。

ところが、確定したかどうかは登記記録に当然に現れるわけではありません。設定者が確定請求をしたか、根抵当権者が他人の競売を知ってから2週間が過ぎたかは、登記記録からは分かりません。そこで、確定後にしかできない登記を申請するときは、その前提として元本確定の登記を申請します。登記官は登記記録と提供された情報だけで審査するので、確定の登記がなければ、確定前の根抵当権について債権譲渡による移転を求める申請と扱うほかありません。確定前の根抵当権は被担保債権の譲渡に随伴しないので、その申請は受理されません。

登記記録から確定が明らかなら不要

逆に、登記記録を見れば確定が分かる場合は、確定の登記を入れずに後続の登記を申請できます。典型は次の2つです。

場面 登記記録から分かる理由
登記された確定期日が到来した 民法398条の6の期日が乙区に記録されている
根抵当権者自身の申立てによる競売開始決定の差押えの登記がある 民法398条の20第1項1号の事由が甲区に現れている

根抵当権者自身が滞納処分による差押えをし、その登記がされている場合(2号)も同じ考え方です。これに対して、他人の申立てによる競売の差押えの登記は、それだけでは確定を示しません。3号は「根抵当権者が知った時から2週間」を要件にしており、知った時期は登記記録に出ないからです。

登記の目的・原因・税額の型

元本確定の登記は、根抵当権の変更の登記として付記登記でされます。申請情報の骨格は次のとおりです。

項目 記載の例
登記の目的 何番根抵当権元本確定
原因 年月日確定
権利者 設定者
義務者 根抵当権者
登録免許税 不動産1個につき1000円

確定によって被担保債権の枠が固まり、設定者の負担が限定されます。登記上利益を受けるのは設定者なので、権利者は設定者、義務者は根抵当権者になります。登録免許税は登録免許税法別表第一第1号(十四)の変更の登記として、不動産の個数1個につき1000円です。税額の区分全体は登録免許税の計算で整理しています。

確定事由ごとの申請構造

一覧表で全体をつかむ

確定事由ごとに、確定する時期、申請の形、確定の登記の要否を並べます。この表が記事全体の骨格です。

確定事由 確定する時期 申請の形
確定期日の到来(398条の6) 期日 登記記録から明らかなので確定の登記は不要
設定者の確定請求(398条の19第1項) 請求から2週間経過時 共同申請
根抵当権者の確定請求(398条の19第2項) 請求時 根抵当権者の単独申請が可能(93条本文)
根抵当権者の競売等の申立て(398条の20第1項1号) 申立時。開始決定または差押えがあったときに限る 差押えの登記があれば確定の登記は不要
根抵当権者の滞納処分による差押え(同項2号) 差押えの時 差押えの登記があれば確定の登記は不要
他人の競売等を知って2週間経過(同項3号) 知った時から2週間経過時 取得の登記と併せてする単独申請が可能(93条ただし書)
債務者または設定者の破産手続開始決定(同項4号) 決定の時 取得の登記と併せてする単独申請が可能(93条ただし書)
相続後6か月以内に合意の登記をしない(398条の8第4項) 相続開始の時 相続を登記したうえで処理する
合併・会社分割後の設定者の確定請求(398条の9・398条の10) 合併・分割の時 共同申請

設定者の確定請求は共同申請

設定者は、根抵当権の設定から3年を経過したときに確定を請求でき、請求の時から2週間を経過すると元本が確定します(民法398条の19第1項)。確定期日の定めがあるときは請求できません(同条3項)。

この事由は不動産登記法93条に含まれていません。確定の登記は、設定者を権利者、根抵当権者を義務者とする共同申請です(法60条)。根抵当権者は登記義務者として、根抵当権の登記識別情報を提供します。義務者は所有権の登記名義人ではないので、印鑑証明書は要りません。

根抵当権者が申請に協力しないときは、設定者は登記手続を命ずる確定判決を得て単独で申請します(法63条1項)。設定者の側から単独申請の道が用意されていない点が、次の根抵当権者の請求との違いです。

根抵当権者の確定請求は単独申請ができる

根抵当権者は、いつでも確定を請求でき、請求の時に確定します(民法398条の19第2項)。この場合、確定の登記は根抵当権の登記名義人が単独で申請できます(法93条本文)。

単独申請のときに提供する情報は、不動産登記令別表61項が「民法第三百九十八条の十九第二項の規定による請求をしたことを証する情報」と定めています。請求は設定者に対する意思表示なので、請求の内容と到達が分かる書面を用意します。典型は、配達証明付きの内容証明郵便です。

根抵当権者が自分に不利益な確定を自ら求めたのだから、設定者の関与がなくても真実性は確保できる。これが単独申請を認める理由です。

93条ただし書:3号・4号は取得の登記と併せて申請する

他人の競売を知って2週間が経過した場合

根抵当権者が、抵当不動産に対する競売手続の開始または滞納処分による差押えがあったことを知った時から2週間を経過したときも、元本は確定します(民法398条の20第1項3号)。この事由による確定の登記も、根抵当権者が単独で申請できます(法93条本文)。

提供する情報は令別表62項に定めがあり、民事執行法49条2項の規定による催告、または国税徴収法55条の規定による通知を受けたことを証する情報です。執行裁判所からの債権届出の催告や、税務署などからの差押えの通知を受け取った時点が、「知った時」を示す資料になります。

破産手続開始決定の場合

債務者または設定者が破産手続開始の決定を受けたときも確定します(民法398条の20第1項4号)。申立てではなく「決定」である点は、択一の定番です。この事由による確定の登記も単独で申請でき、令別表63項により、破産手続開始の決定があったことを証する情報を提供します。

単独申請なのに「併せて」が要る理由

3号と4号による確定の単独申請には、もう1つ条件があります。根抵当権またはこれを目的とする権利の取得の登記の申請と併せてしなければなりません(法93条ただし書)。

理由は民法398条の20第2項にあります。3号の競売手続の開始や差押え、4号の破産手続開始決定の効力が後で消滅すると、元本は確定しなかったものとみなされます。ただし、確定したものとして根抵当権やこれを目的とする権利を取得した者があるときは別です。

つまり、3号・4号の確定は後から覆る可能性があり、覆らないことが保障されるのは確定を前提に権利を取得した人がいる場合だけです。そこで、根抵当権者の一方的な申請で確定を登記できるのは、代位弁済や債権譲渡による根抵当権の移転など、確定を前提とする取得の登記と同時に申請するときに限られています。

事由 単独申請 併せて申請する登記 令別表
398条の19第2項 できる 不要 61項
398条の20第1項3号 できる 根抵当権またはこれを目的とする権利の取得の登記 62項
398条の20第1項4号 できる 同上 63項

単独申請と登記識別情報

不動産登記法22条は、共同申請の場合と、政令で定める登記を登記名義人が申請する場合に、登記識別情報の提供を求めます。その政令である不動産登記令8条1項の列挙には、93条による確定の登記が入っていません。したがって、根抵当権者が93条で単独申請するときは、条文上、登記識別情報の提供は求められません。共同申請なら義務者として提供が必要になるので、申請の形によって添付情報が変わることを押さえてください。登記識別情報の提供場面の一般論は登記識別情報と添付情報で扱っています。

相続・合併・共同根抵当と確定

相続は6か月の期限と92条の順序で考える

元本確定前に根抵当権者または債務者について相続が開始したときは、相続人と設定者などの合意で、確定前の根抵当権として存続させる道があります(民法398条の8第1項・2項)。この合意について相続開始後6か月以内に登記をしないと、元本は相続開始の時に確定したものとみなされます(同条4項)。

登記の順序も決まっています。指定根抵当権者や指定債務者の合意の登記は、相続による根抵当権の移転または債務者の変更の登記をした後でなければできません(法92条)。記述式では次の2つの分岐が生じます。

  • 6か月以内に合意の登記をする:相続による移転または債務者変更の登記、続けて合意の登記。根抵当権は確定前のまま存続する
  • 6か月以内に合意の登記をしない:相続開始の時に確定。確定後の根抵当権として、相続による移転や、その後の処分を検討する

別紙の日付から6か月の期限を計算させる問題が典型です。合意そのものが6か月以内でも、登記が6か月を過ぎれば確定します。

合併・会社分割は設定者の請求で遡って確定する

根抵当権者や債務者の合併では、根抵当権は合併後の法人のもとで確定前のまま存続するのが原則です(民法398条の9第1項・2項)。ただし設定者は確定を請求でき、請求があると合併の時に確定したものとみなされます(同条3項・4項)。債務者の合併で、その債務者自身が設定者である場合は請求できません(同条3項ただし書)。

請求の期限は、合併を知った日から2週間、または合併の日から1か月です(同条5項)。会社分割にも同じ規律が準用されます(民法398条の10第3項)。これらの確定は93条の対象ではないので、確定の登記は共同申請です。

共同根抵当は1個の不動産で全部が確定する

民法398条の16の共同根抵当の登記がされている根抵当権は、1個の不動産についてだけ確定事由が生じた場合でも、全体として確定します(民法398条の17第2項)。たとえば甲土地だけに差押えがあっても、乙建物の根抵当権も同時に確定します。

記述式では、別紙の登記記録で共同担保目録の記号を見落とすと、確定していない前提で答案を作ってしまいます。共同根抵当かどうかは、乙区を読んだ段階で確認してください。

確定後の登記との連件

申請の順序は確定が先

確定の登記を要する場面では、確定の登記を先に、確定後の登記を後に、前後を明らかにして同時に申請します。典型的な連件を示します。

事実関係 1件目 2件目
設定者の確定請求後、第三者が債務者に代わって全額を弁済した 元本確定(共同申請) 代位弁済を原因とする根抵当権移転
根抵当権者の確定請求後、被担保債権を第三者に譲渡した 元本確定(単独申請も可) 債権譲渡を原因とする根抵当権移転
債務者が破産手続開始決定を受け、保証人が代位弁済した 元本確定(93条ただし書で併せて申請) 代位弁済を原因とする根抵当権移転
確定後、設定者が極度額の減額を請求した 元本確定(記録から明らかでなければ) 極度額減額による根抵当権変更

破産の例では、2件目の移転の登記があるからこそ1件目を単独で申請できます。移転の登記を申請しないまま、確定の登記だけを根抵当権者が単独で申請することはできません。

確定後にできなくなる登記

確定を判断する目的は、できる登記を見つけることだけではありません。確定後にはできない登記を見抜くことも同じくらい重要です。

  • 債権の範囲の変更、債務者の変更(民法398条の4)
  • 全部譲渡・分割譲渡・一部譲渡(民法398条の12・398条の13)
  • 確定期日の変更(民法398条の6)
  • 相続を原因とする指定根抵当権者・指定債務者の合意の登記

事実関係の中で確定事由が先に生じていれば、その後に結ばれた債権の範囲の変更契約は登記できません。記述式で「登記できない事項」として理由を書かせる素材になりやすい部分です。

試験での出題ポイント

択一式ではこう問われる

  • 単独申請の範囲:93条は398条の19第2項と398条の20第1項3号・4号の3つだけ。設定者の確定請求は共同申請
  • ただし書の対象:取得の登記と併せて申請するのは3号・4号だけ。根抵当権者の確定請求は単独で確定の登記だけを申請できる
  • 申請人の立場:共同申請では設定者が権利者、根抵当権者が義務者。逆にした肢は誤り
  • 添付情報:93条の単独申請では令別表61項〜63項の情報を提供する。確定請求の到達を示す書面、催告・通知を受けたことの証明、破産手続開始決定の証明
  • 要否の判断:確定期日の到来や、根抵当権者の申立てによる差押えの登記があれば、確定の登記を経ずに後続の登記ができる
  • 共同根抵当:1個の不動産で確定事由が生じれば全部確定する

根抵当権の実体法の比較は民法の記事で、不動産登記法全体の学習順序は不動産登記法の勉強法で扱っています。

記述式との接続

記述式では、確定の登記は「別紙のどこかに確定事由が隠れていて、それに気づけば1件増える」形で出ます。答案構成では次の順で確認してください。

  1. 乙区の根抵当権に確定期日の登記があるか。あれば到来しているか
  2. 事実関係に確定請求・競売・差押え・破産・相続・合併が出ていないか
  3. 確定していれば、その時期はいつか。後の変更契約や譲渡契約より前か
  4. 登記記録から確定が分かるか。分からなければ確定の登記を1件目に置く
  5. 単独申請か共同申請か。単独なら93条ただし書の併せての要否

抹消の場面でも確定は効きます。確定前の根抵当権は個々の債権が弁済されても消えないので、抹消の登記原因は解除や放棄になります。確定後であれば、被担保債権の弁済による消滅を原因にできます。抵当権の抹消の構造は抵当権抹消登記と見比べて整理してください。申請順序の決め方は記述式(不動産登記)の答案構成を参照してください。

まとめ

  • 確定の登記は、確定後にしかできない登記の前提として入れる。登記記録から確定が明らかなら不要
  • 共同申請が原則で、権利者は設定者、義務者は根抵当権者。登録免許税は不動産1個につき1000円
  • 93条の単独申請は、根抵当権者の確定請求、他人の競売等を知って2週間経過、破産手続開始決定の3つ
  • 3号・4号の単独申請は、確定を前提とする取得の登記と併せてする。398条の20第2項で確定が覆る可能性があるため
  • 相続は6か月以内の合意の登記、合併・分割は設定者の請求で確定の有無が決まる
  • 共同根抵当は1個の不動産で確定事由が生じれば全部確定する

よくある質問

設定者の確定請求で確定した場合、設定者が単独で確定の登記を申請できますか

できません。93条が単独申請を認めるのは、根抵当権者の確定請求と398条の20第1項3号・4号による確定だけです。設定者の請求による確定は、根抵当権者を義務者とする共同申請になります。根抵当権者が協力しなければ、登記手続を命ずる判決を得て申請します。

根抵当権者の確定請求による単独申請でも、取得の登記と併せる必要がありますか

必要ありません。93条ただし書が併せての申請を求めているのは、398条の20第1項3号と4号の場合だけです。根抵当権者の確定請求による確定は後から覆る仕組みがないので、確定の登記だけを単独で申請できます。

他人の申立てによる差押えの登記があれば、確定の登記は不要ですか

それだけでは足りません。3号の確定は、根抵当権者が競売手続の開始などを知った時から2週間を経過したときに生じます。知った時期は登記記録から分からないので、確定を前提とする登記をするには、確定の登記を入れる必要があります。根抵当権者が単独で申請するなら、取得の登記と併せ、催告や通知を受けたことを証する情報を提供します。

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