司法書士試験AIブートラボ 司法書士AIブートラボ
記事 / 民法 / 共有:持分の処分・管理・分割と登記

共有:持分の処分・管理・分割と登記

民法 読了 約11分

民法の共有を、持分の処分、変更・管理・保存の区分、共有物の管理者、所在等不明共有者の持分の取得・譲渡、共有物分割の順に2023年4月施行の改正後の条文で整理。持分移転や分割禁止の定めなど登記との接続まで受験生向けに解説します。

共有は、民法の物権分野で毎年のように問われるテーマです。しかも2023年4月1日施行の改正で、変更と管理の線引き、共有物の管理者、所在等不明共有者の持分の取得と譲渡、裁判による共有物分割の方法が大きく書き換えられました。改正前の知識のまま過去問を解くと、正しい肢を誤りと判断してしまう分野です。

結論を先に言うと、共有の条文は「持分は各自が自由に処分できる」「共有物そのものの扱いは、行為の重さに応じて全員・過半数・単独に振り分ける」「共有を解消する出口は分割」という3本の柱で読めます。改正は、この3本の柱に、所在不明や無関心の共有者がいても手続が止まらない仕組みを足したものです。

本記事は、共有の条文を一度読んだものの、変更・管理・保存の区別や改正の新制度で迷う受験生に向けて書いています。民法249条から264条までを順に整理し、最後に不動産登記法との接続を扱います。民法全体の学習順序は民法の勉強法を参照してください。

共有の基本構造と持分

持分は割合的な所有権

共有は、1個の物を複数の者が所有する状態です。各共有者が持つのは、物の一部ではなく、物全体に及ぶ割合的な権利です。これを持分と呼びます。

民法249条1項は、各共有者は共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができると定めます。持分の割合は、当事者の合意や法律の規定で決まり、決まっていなければ相等しいものと推定されます(民法250条)。

2023年改正で249条に2項と3項が加わりました。共有物を使用する共有者は、別段の合意がない限り、他の共有者に対して自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負います(2項)。また、共有者は善良な管理者の注意をもって共有物を使用しなければなりません(3項)。

持分の処分は単独でできる

持分は各共有者に帰属する権利なので、各共有者は他の共有者の同意なく持分を譲渡したり、持分に抵当権を設定したりできます。共有物全体の処分とは区別してください。

行為 誰が決めるか
自己の持分の譲渡・持分への抵当権設定 各共有者が単独で
共有物全体の売却・共有物全体への抵当権設定 共有者全員の合意。実質は全員がそれぞれの持分を処分すること

共有物全体を売るのは、各共有者が自分の持分を同時に売ることと同じです。このため、一人でも反対すれば共有物全体の売却はできません。

持分の放棄と相続人の不存在

共有者の一人が持分を放棄したとき、または死亡して相続人がないときは、その持分は他の共有者に帰属します(民法255条)。

相続人がない場合については、255条と特別縁故者への財産分与(民法958条の2)の関係が問題になります。判例は、共有持分も特別縁故者への分与の対象になり、分与がされなかったときに初めて255条により他の共有者に帰属するとしています。特別縁故者の制度が先、255条が後という順序で覚えてください。

共有物の変更・管理・保存

3つの区分と決め方

共有物そのものに関する行為は、重さに応じて3つに分かれます。

区分 内容 決め方 条文
変更 形状または効用の著しい変更を伴うもの 共有者全員の同意 251条1項
管理 軽微な変更を含む、変更以外の管理行為。管理者の選任・解任も含む 持分の価格に従い過半数 252条1項
保存 現状を維持する行為 各共有者が単独で 252条5項

改正前の251条は、単に「変更」には全員の同意が必要としていました。現行法は括弧書きで「その形状又は効用の著しい変更を伴わないもの」を変更から除き、そうした軽微な変更は管理として過半数で決められるようにしました。「変更なら全員」と機械的に覚えていると、軽微変更の肢を落とします。

また252条1項後段は、共有物を使用する共有者があるときも過半数で管理事項を決められると定めます。ただし、共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければなりません(252条3項)。

短期の賃貸借は管理にあたる

賃貸借のような使用収益権の設定が管理か変更かは、改正前から争いのあった論点です。現行法は252条4項で、次の期間を超えない賃借権等は過半数で設定できると明文化しました。

対象 期間の上限
樹木の栽植または伐採を目的とする山林の賃借権等 10年
それ以外の土地の賃借権等 5年
建物の賃借権等 3年
動産の賃借権等 6か月

この期間を超える賃貸借は、原則どおり共有者全員の同意が必要です。数字は択一でそのまま問われます。

所在不明・賛否不明の共有者がいる場合

改正の中心は、共有者の一部が不明または無反応でも手続を進められる仕組みです。

  • 変更について、共有者が他の共有者を知ることができず、またはその所在を知ることができないときは、裁判所は、その共有者以外の共有者の同意を得て変更を加えることができる旨の裁判ができる(251条2項)
  • 管理について、所在等が不明な共有者がいるとき(252条2項1号)、または相当の期間を定めて賛否を明らかにすべき旨を催告しても賛否を明らかにしない共有者がいるとき(同項2号)は、裁判所は、それ以外の共有者の持分の価格に従った過半数で決することができる旨の裁判ができる

賛否不明の共有者を除外できるのは管理についてだけで、変更には同じ仕組みがありません。変更で除外できるのは所在等不明の共有者だけです。この非対称は肢を作りやすいところです。

共有物の管理者と費用負担

管理者の選任と権限

2023年改正で、共有物の管理者の制度が新設されました。管理者の選任と解任は、管理に関する事項として持分の価格の過半数で決めます(252条1項括弧書)。

管理者は共有物の管理に関する行為をすることができます(252条の2第1項本文)。ただし、共有者全員の同意を得なければ、共有物に変更を加えることはできません(同項ただし書)。軽微な変更は管理なので、管理者が単独でできます。

管理者は、共有者が管理に関する事項を決したときは、これに従って職務を行わなければなりません(252条の2第3項)。これに違反した管理者の行為は共有者に対して効力を生じませんが、共有者はこれをもって善意の第三者に対抗することができません(同条4項)。

共有物に関する負担

各共有者は、その持分に応じて管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負います(民法253条1項)。共有者が1年以内にこの義務を履行しないときは、他の共有者は相当の償金を支払ってその者の持分を取得できます(同条2項)。

また、共有者の一人が共有物について他の共有者に対して有する債権は、その特定承継人に対しても行使できます(民法254条)。持分を譲り受けた者は、前の共有者が負っていた共有物に関する債務の負担を引き継ぐことになります。

所在等不明共有者の持分の取得と譲渡

持分の取得の裁判

不動産が数人の共有に属する場合に、共有者が他の共有者を知ることができず、またはその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者に所在等不明共有者の持分を取得させる旨の裁判ができます(民法262条の2第1項)。請求した共有者が複数いれば、各自の持分の割合で按分して取得させます。

押さえる要件と制限は次のとおりです。

  • 対象は不動産。所有権以外の使用収益権の共有にも準用される(262条の2第5項)
  • 他の共有者から共有物分割の請求や遺産分割の請求があり、かつ異議の届出があれば、裁判所は取得の裁判ができない(同条2項)
  • 所在等不明共有者の持分が相続財産に属し、共同相続人間で遺産分割をすべき場合は、相続開始から10年を経過していなければ裁判ができない(同条3項)
  • 所在等不明共有者は、取得した共有者に対し、取得された持分の時価相当額の支払を請求できる(同条4項)

手続は非訟事件手続法87条が定めています。管轄は不動産の所在地を管轄する地方裁判所で、裁判所は公告をしたうえ、申立人に対して、所在等不明共有者のために裁判所が定める額の金銭を供託するよう命じなければなりません(同条5項)。取得の裁判は確定しなければ効力を生じません(同条9項)。

持分の譲渡権限付与の裁判

もう一つが、所在等不明共有者の持分を第三者に譲渡する権限を付与する裁判です(民法262条の3第1項)。不動産全体を第三者に売却したいが、一人の所在が分からないために売れない、という場面に対応します。

この裁判は、所在等不明共有者以外の共有者の全員が特定の者に対してその有する持分の全部を譲渡することを停止条件として、所在等不明共有者の持分をその特定の者に譲渡する権限を付与するものです。一部の持分だけを売るためには使えません。

相続財産に属する持分について10年の制限がある点、所在等不明共有者が時価相当額を按分した額の支払を請求できる点は、取得の裁判と同じ構造です(262条の3第2項・3項)。非訟事件手続法88条3項により、裁判の効力が生じた後2か月以内に譲渡の効力が生じなければ、裁判は効力を失います。裁判所はこの期間を伸長できます。

比較 持分の取得(262条の2) 譲渡権限の付与(262条の3)
結果 請求した共有者が持分を取得 共有者全員の持分とともに第三者へ譲渡
条件 異議の届出などの消極要件 他の共有者全員が持分全部を譲渡することが停止条件
対価 取得された持分の時価相当額 不動産の時価相当額を持分に応じて按分した額

共有物の分割

分割請求の自由と不分割特約

各共有者は、いつでも共有物の分割を請求できます(民法256条1項本文)。共有は解消できることが前提の制度です。ただし、5年を超えない期間内は分割をしない旨の契約ができ(同項ただし書)、更新もできますが、その期間も更新の時から5年を超えられません(同条2項)。

協議による分割と裁判による分割

分割は、まず共有者の協議で行います。協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、裁判所に分割を請求できます(民法258条1項)。「協議をすることができないとき」は2023年改正で加わった文言で、所在不明の共有者がいて協議ができない場合も裁判分割に進めることを明らかにしました。

裁判所が命じることのできる分割方法も明文化されました。

方法 内容 条文
現物分割 共有物の現物を分ける 258条2項1号
賠償分割 一部の共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部または一部を取得させる 258条2項2号
競売分割 上の方法で分割できないか、分割で価格を著しく減少させるおそれがあるときに競売を命じる 258条3項

裁判所は、分割の裁判において、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命じることができます(258条4項)。改正前は判例で認められていた全面的価格賠償の方法が、2号として条文に取り込まれた形です。競売は現物分割と賠償分割のいずれもできない場合の最後の手段という順序を押さえてください。

遺産共有との関係

共有物の全部またはその持分が相続財産に属し、共同相続人間で遺産分割をすべきときは、その共有物について258条による分割はできません(民法258条の2第1項)。遺産共有の解消は遺産分割の手続で行うのが原則だからです。

ただし、共有物の持分が相続財産に属する場合に、相続開始から10年を経過したときは、258条による分割ができます(同条2項)。遺産分割の請求があった場合に相続人が異議の申出をしたときは除かれ、その申出は、裁判所から通知を受けた日から2か月以内にしなければなりません(同条3項)。相続開始から10年という区切りは、所在等不明共有者の制度と共通しています。

共有と不動産登記の接続

持分は登記事項になる

権利に関する登記では、登記名義人が2人以上であるときは登記名義人ごとの持分が登記事項です(不動産登記法59条4号)。共有者の一人が持分を譲渡するときの登記の目的は「何某持分全部移転」「何某持分一部移転」のように書きます。持分を目的とする抵当権の設定も可能で、その登記は抵当権設定登記で扱っています。

共有と登記でよく問われる場面を整理します。

場面 登記の形
持分の放棄 放棄した共有者の持分について、他の共有者への持分移転の登記。放棄者と共同で申請する。抹消の登記ではない
共有物分割 取得する共有者への持分移転の登記。土地を現物で分けるなら、分筆の登記をしてから各土地について持分移転をする
保存行為としての申請 共有者の一人が共有者全員のために所有権保存の登記や法定相続分による相続登記を申請できる。自己の持分だけの保存登記はできない

持分放棄の登記を「抹消」と書く誤りは記述式でも起こります。放棄された持分は消えるのではなく、255条によって他の共有者に移るので、登記は移転です。相続登記の申請構造は相続登記の義務化とやり方で確認してください。

分割禁止の定めと登録免許税

256条1項ただし書の不分割の契約は、共有物分割禁止の定めとして登記事項になります(不動産登記法59条6号)。共有物分割禁止の定めに係る権利の変更の登記は、その権利の共有者であるすべての登記名義人が共同して申請しなければなりません(同法65条)。この登記では、申請人全員が登記識別情報を提供します(不動産登記令8条1項4号)。権利者と義務者に分かれない点が特徴です。

共有物分割による所有権の移転の登記の登録免許税は、不動産の価額の1000分の4です(登録免許税法別表第一第1号(二)ロ)。売買などの1000分の20より低い税率です。ただし登録免許税法施行令9条は、この税率が適用される部分を「その共有物について有していた所有権の持分に応じた価額に対応する部分」として、その計算方法を定めています。分割前の持分を超えて取得した部分には、この税率は及びません。計算の手順は登録免許税の計算でまとめています。

試験での出題ポイント

択一式ではこう問われる

  • 変更と管理の線引き:軽微な変更は管理として過半数。形状または効用の著しい変更だけが全員の同意
  • 短期賃貸借:土地5年・建物3年・山林10年・動産6か月を超えないものは過半数で設定できる
  • 不明・無反応の共有者:所在等不明は変更・管理の両方で除外できる。賛否不明は管理だけ
  • 共有物の管理者:選任は過半数。変更は全員の同意がなければできない。違反行為は善意の第三者に対抗できない
  • 所在等不明共有者の持分:対象は不動産。相続財産なら10年の制限。譲渡権限付与は他の共有者全員の譲渡が停止条件
  • 分割:現物分割と賠償分割が原則、競売は補充的。遺産共有は原則として遺産分割で解消
  • 255条と958条の2:特別縁故者への分与が優先する

改正箇所は条文の文言そのままで肢が作られます。改正前の問題を解くときは、解説が現行法に対応しているかを確認してください。改正への対応の仕方は法改正への対応で整理しています。

記述式との接続

不動産登記の記述式では、共有は申請情報の書き方に直結します。

  • 申請人が複数なら、権利者の持分を必ず書く。持分の記載漏れは典型的な失点
  • 共有者の一人の持分だけを移転するなら、登記の目的に誰の持分かを特定する
  • 持分放棄は移転、分割は持分移転。いずれも抹消ではない
  • 共有者の一部が死亡しているなら、前提としての相続登記を検討する

まとめ

  • 持分の処分は各共有者が単独でできる。共有物全体の処分は全員の合意が必要
  • 共有物に関する行為は、変更が全員、管理が持分の価格の過半数、保存が単独
  • 軽微な変更と短期の賃貸借は管理にあたる
  • 所在等不明の共有者は裁判で除外できる。賛否不明の共有者の除外は管理に限る
  • 所在等不明共有者の持分は、不動産について取得の裁判と譲渡権限付与の裁判で処理できる
  • 裁判による分割は現物分割と賠償分割が原則で、競売は補充的
  • 持分放棄と共有物分割の登記は移転の登記。分割禁止の定めの変更は共有者全員の共同申請

よくある質問

共有者の一人が無断で共有物全体を第三者に賃貸した場合はどうなりますか

賃貸借の期間が252条4項の上限を超えるかどうかで扱いが分かれます。上限内の賃貸借は管理行為なので、持分の価格の過半数で決めていれば有効に設定できます。一人の共有者が過半数の持分を持っていなければ、その者だけの判断では設定できません。上限を超える賃貸借は全員の同意が必要です。

所在等不明共有者の持分の取得は、建物だけでなく土地にも使えますか

使えます。民法262条の2第1項は「不動産」と定めているので、土地と建物のいずれも対象です。動産は対象外です。所有権以外の不動産の使用収益権が共有になっている場合にも準用されます。

不分割の契約をした後に持分を譲り受けた人も、その契約に拘束されますか

共有物分割禁止の定めは登記事項です。不動産の共有では、持分の譲受人に不分割の定めを主張するには、その定めを登記しておく必要があります。登記がなければ、譲受人は分割を請求できる立場で持分を取得することになります。

民法の論点を、そのまま問題で確かめる

民法の肢別演習を一覧で一気に○×。解説と関連先例がその場で開きます。

関連記事