司法書士試験AIブートラボ 司法書士試験AIブートラボ
記事 / 試験制度・キャリア / 「司法書士はやめとけ」は本当か:理由の検証と向く人・向...

「司法書士はやめとけ」は本当か:理由の検証と向く人・向かない人

試験制度・キャリア 読了 約11分

「司法書士はやめとけ」と言われる理由を、合格率・学習時間・基準点・複数年受験・合格後の仕事・オンライン化の6つに分け、法務省の公表資料と条文で検証します。向く人・向かない人の判断基準と、迷ったときの小さな始め方まで。

「司法書士はやめとけ」は本当か:理由の検証と向く人・向かない人

「司法書士はやめとけ」という声には、事実の部分と推論の部分が混ざっています。合格率が5%前後であること、基準点で足切りがあること、合格しても登録しなければ業務ができないことは事実です。一方で「何年やっても受からない」「AIで仕事がなくなる」は、事実から先に踏み込んだ推論です。

この記事は、「やめとけ」を見て迷っている受験検討者に向けて書いています。言われる理由を6つに分け、法務省の公表資料と条文で確認できることだけを並べます。そのうえで、向く人・向かない人の判断基準と、大きく賭ける前に適性を測る小さな始め方を整理します。煽りもしませんし、持ち上げもしません。

「やめとけ」の中身を分解する

理由は大きく6つに分かれる

「やめとけ」と言われる理由を集めると、おおむね次の6つに整理できます。それぞれについて、公的な資料で確認できることと、確認できないことを並べます。

言われる理由 公的な資料で確認できること 確認できないこと
合格率が低い 令和7年度は受験者14,418人、合格者751人 合格率から個人の合格確率を出すこと
勉強時間が長い 試験範囲が11科目に及ぶこと 「3,000時間」などの必要時間の統計
基準点で足切りされる 3つの基準点の点数と、達しなければ不合格になること 翌年の基準点
何年も受け続けることになる 一部の科目だけを持ち越す制度がないこと 合格者の平均受験回数
合格しても食べていけない 登録しなければ業務ができないこと 就職率や年収の公的統計
AIやオンライン化で仕事がなくなる オンライン申請や申請義務化の条文 将来の業務量

右の列にある項目は、どこかで具体的な数字を見かけても、公的な出どころがないものです。判断の材料にするなら、真ん中の列から始めてください。

事実と推論を分けて読む

「合格率5%だからやめとけ」という言い方は、「合格率5%」という事実に「だから自分には無理だ」という推論をつなげています。事実は誰にとっても同じですが、推論の部分は人によって当てはまったり当てはまらなかったりします。

この記事では、以下の章ごとに「事実として言えること」を先に書き、そこから先は推論だと明示して書きます。読む側も、自分に当てはまる推論かどうかを1つずつ確かめてください。

試験の側の理由を検証する

合格率5%前後は事実、ただし分母の中身を見る

合格率が低いのは事実です。法務省の最終結果の発表によると、直近2年は次のとおりでした。

年度 受験者数 合格者数 合格率
令和6年度 13,960人 737人 約5.3%
令和7年度 14,418人 751人 約5.2%

受験者数は「午前の部及び午後の部の双方を受験した者の数」と定義されています。合格率はこの受験者数と合格者数から計算した値です。

ただし、分母には学習を始めたばかりの人も、記念に受けた人も含まれています。合格率は受験者全体の平均であって、準備を整えた人が5%の確率でしか受からないという意味ではありません。令和8年度の出願者数は17,862人で、令和3年度の14,988人から5年続けて増えています(法務省の出願状況の発表)。受験を考える人は減っていません。数字の詳しい読み方は司法書士試験の合格率と難易度で扱っています。

「3,000時間」は公的な統計ではない

「3,000時間必要だからやめとけ」もよく見かけます。ただ、必要な勉強時間を調べた公的な統計はありません。3,000時間は、受験指導の世界で目安として使われてきた数字です。

確認できるのは、試験範囲の広さのほうです。司法書士法6条2項は、筆記と口述で問う事項を、憲法・民法・商法・刑法、登記・供託・訴訟に関する知識などと定めています。いわゆる11科目です。範囲が広いので時間がかかるのは確かですが、何時間かかるかは、法律の学習経験や1週間に確保できる時間で大きく変わります。自分の場合の見積もり方は司法書士試験に必要な勉強時間で扱っています。

基準点方式は「得意科目で穴を埋められない」

司法書士試験は、総合点だけで合否が決まりません。令和8年度の筆記試験の合格点は350点満点中258.0点以上で、そのうえで次の3つの基準点が設けられました(法務省公表)。

区分 満点 令和8年度の基準点
午前の部 択一式 105点 84点
午後の部 択一式 105点 75点
記述式 140点 70.0点

どれか1つでも基準点に達しなければ、総合点に関係なく不合格です。令和8年度の得点順位別員数累計表では、午前の部で84点以上を取った人の比率は27.54%、午後の部で75点以上は20.64%でした。午後の択一式の基準点を超えた時点で、受験者のおよそ5人に1人に絞られています。

「やめとけ」の理由として、これはかなり実態に近い指摘です。得意な科目を伸ばして苦手な科目を補う、という戦い方が通用しません。仕組みの詳細は基準点と上乗せ点の仕組みで解説しています。

基準点のある区分は、どれか一つでも基準点に達しなければ総合点に関係なく不合格になる。

複数年受験になりやすい構造がある

司法書士試験には、一部の科目だけ合格して翌年に持ち越す仕組みがありません。司法書士法6条3項が定める免除は、筆記試験に合格した人が、申請により次回の筆記試験を免除されるというものです。筆記試験そのものは、毎年全科目を受け直します。

この構造のため、1年目で届かなかった場合、2年目も全範囲を維持しながら弱点を補うことになります。複数年の受験を前提に考える人が多いのはこのためです。

ただし、合格者が平均で何回目の受験だったかは、法務省の発表に含まれていません。「平均○回で合格」という数字を見かけたら、出どころを確かめてください。確認できる事実として、令和7年度の合格者の平均年齢は42.05歳、最低年齢は17歳、最高年齢は74歳でした(法務省の最終結果の発表、令和7年11月4日現在)。社会人になってから学習を始め、何年かかけて合格する人が珍しくないことは、この年齢分布からも読み取れます。

合格後の理由を検証する

合格だけでは業務ができない

試験に合格しても、それだけで司法書士として働けるわけではありません。司法書士法8条1項により、日本司法書士会連合会の司法書士名簿に登録を受けて初めて司法書士になります。さらに73条1項は、司法書士会に入会している司法書士や司法書士法人でない者は、3条1項1号から5号の業務を行ってはならないと定めています。

合格から業務開始までには、登録と司法書士会への入会という段階があります。「合格したらすぐ稼げる」という期待で始めると、この段階で計画がずれます。最終合格の前には口述試験もあり、その流れは司法書士試験の口述試験で扱っています。

司法書士試験の合格から業務開始までには、登録と司法書士会への入会という段階がある。

業務の範囲は法律で決まっている

司法書士の業務は、司法書士法3条1項に列挙されています。登記・供託の手続の代理、法務局に提出する書類の作成、裁判所・検察庁に提出する書類の作成、これらの相談などです。さらに研修を修了し法務大臣の認定を受けた司法書士は、簡易裁判所での訴訟代理などの簡裁訴訟代理等関係業務も行えます(3条2項)。

業務の範囲が法律で決まっているということは、仕事の中身がある程度予測できるということでもあります。登記の手続や書類の作成に関心が持てるかどうかは、試験を始める前に確かめられる適性の1つです。業務の全体像は司法書士法の業務範囲、簡裁代理の認定は認定司法書士と簡裁訴訟代理で整理しています。

就職と独立について言えること・言えないこと

「合格しても食べていけない」という声について、この記事では年収の具体的な数字を書きません。公的な統計で確認できる数字がないからです。合格者の就職率や、独立した人の収入分布を法務省は公表していません。

言えることは、司法書士の働き方には大きく2つの形があるということです。事務所や法人に勤める形と、自分で事務所を開く形です。どちらを選んでも、収入は扱う業務の量と種類に左右されます。独立すれば、仕事を得る活動も自分の仕事になります。

ここから先は推論です。資格を取れば仕事が自動的に入ってくる、という期待で始めた人ほど、合格後に「やめとけ」と言いたくなる状況に置かれやすいと考えられます。逆に、合格後にどの業務を、どの地域で、誰に向けて行うかを事前に考えている人にとっては、この理由は当てはまりにくくなります。

「AIやオンライン化で仕事がなくなる」論を検証する

オンライン申請は、すでにある制度

不動産登記法18条は、登記の申請の方法として、電子情報処理組織を使用する方法と、申請情報を記載した書面を提出する方法の2つを定めています。オンラインでの申請は、これから来る変化ではなく、すでに条文に書かれている選択肢です。

また、登記の申請は当事者が自分ですることもできます。司法書士法が司法書士に限っているのは、他人の依頼を受けて登記の手続を代理することなどを業として行うことです(3条1項・73条1項)。本人申請もオンライン申請も以前から可能な制度の中で、司法書士の業務は続いてきました。「オンライン化で不要になる」という主張は、この事実と照らし合わせて読む必要があります。

オンライン申請はすでに条文に定められた選択肢であり、本人申請も以前から可能である。

法改正で増えた義務と、職権で済む手続

近年の不動産登記法の改正には、両方向の変化があります。

改正の内容 条文 施行
相続で所有権を取得したことを知った日から3年以内の登記申請義務 不動産登記法76条の2 2024年4月1日
所有権の登記名義人の氏名・住所の変更から2年以内の変更登記申請義務 不動産登記法76条の5 2026年4月1日
登記官が職権で氏名・住所の変更登記をできる仕組み 不動産登記法76条の6 2026年4月1日

申請の義務化は、これまで放置されがちだった登記の申請を促す改正です。一方で76条の6は、法務省令で定める場合に登記官が職権で変更登記をできるとしています。所有権の登記名義人が自然人のときは、その申出がある場合に限られます。申請が増える方向の改正と、申請を経ずに済む方向の改正が同時に入っている、というのが事実です。義務化の内容は相続登記の義務化と住所変更登記の義務化で扱っています。

事実と推論を切り分ける

AIが司法書士の業務をどこまで代替するかについて、確かなことを言える資料はありません。ここでは事実と推論を分けて書きます。

  • 事実:書類の作成や定型的な入力は、すでに電子化が進んでいる。オンライン申請と本人申請は制度として以前からある。
  • 事実:司法書士法3条1項5号は、登記・供託などの事務についての相談を業務に含めている。
  • 推論:定型的な作業の比重は、今後も下がっていく可能性がある。
  • 推論:事実関係を聞き取り、どの登記をどの順序で申請するかを判断し、その結果に責任を負う部分は、作業の自動化だけでは置き換わりにくい。

推論の部分は、どちらの方向にも外れる可能性があります。将来の業務量を理由に決めるなら、「なくなる」「なくならない」のどちらかを信じるのではなく、自分が5年後・10年後にどの業務をしていたいかを考えるほうが、判断の材料として確かです。

向く人・向かない人の判断基準

向く人の条件

ここまでの検証を踏まえると、司法書士試験に向くかどうかは、頭の良さよりも条件の問題です。次の項目に当てはまるほど、「やめとけ」の理由は自分には当てはまりにくくなります。

条件 確かめ方
1週間に一定の学習時間を年単位で確保できる 直近1か月の生活で、学習に使えた時間を実測する
細かい要件の違いを覚える作業が苦にならない 民法と不動産登記法の過去問を数問解いてみる
苦手科目を放置せずに手を入れられる 自分が避けがちな作業を書き出してみる
不合格の年があっても計画を立て直せる これまでの長期の目標で、途中で崩れたときの対応を振り返る
登記や書類作成の業務に関心が持てる 司法書士法3条の業務を読み、具体的な場面を想像できるか確かめる

最後の項目は見落とされがちです。試験に受かること自体が目的になっていると、合格後に「思っていた仕事と違う」と感じやすくなります。

向かない可能性が高い人

反対に、次のような状態なら、いまは始める時期ではないかもしれません。

  • 半年以内に結果が欲しい。基準点方式と全科目の受け直しの構造から、短期間で結果を出す前提とは相性がよくありません。
  • 学習時間を確保する見込みが立たない。時間の確保は、配分や教材の工夫より前に必要な土台です。
  • 合格すれば収入が自動的に上がると考えている。合格後は登録を経て、自分で業務を作っていく段階があります。
  • 登記や書類の正確さに関心が持てない。司法書士の業務の中心にあるのは、要件と手続を間違えずに積み上げる作業です。

「向かない」は能力ではなく、いまの条件の話

上の項目は、どれも生活や目的の状態です。いまは時間が取れなくても、仕事や家庭の状況が変われば条件は変わります。逆に、能力に自信があっても、時間の確保や目的の整理ができていなければ、複数年の学習は崩れやすくなります。働きながら学習を組み立てる方法は社会人が働きながら合格するための設計にまとめています。

司法書士試験への向き不向きは、仕事や家庭の状況によって変わる生活や目的の条件で考える。

迷ったときに小さく始める方法

過去問を解いて、試験との相性を測る

迷っているなら、教材をそろえる前に、過去問を少し解いてみてください。おすすめは民法と不動産登記法の過去問を、1肢ずつ正誤を判断する形で解くことです。正解できるかどうかは問題ではありません。解説を読んだときに、「なぜその結論になるのか」を追いかけるのが面白いと感じるか、苦痛に感じるか。そこに試験との相性が表れます。

1肢ずつ解く方法は肢別過去問の勉強法で詳しく扱っています。

3か月の試用期間を決める

いきなり数年単位の計画を立てる必要はありません。まず3か月を試用期間と決め、民法の入口と不動産登記法の基本に触れてみてください。この3か月で確かめるのは、点数ではなく次の3つです。

確かめること 見る数字
学習時間を確保できたか 1週間ごとの実際の学習時間
毎日続けられたか 学習した日数
内容に関心が持てたか 自分から解説や条文を読みに行った回数

3か月の過ごし方は、合格ロードマップの「最初の3か月でやること」を使えます。

まず三か月の試用期間を設け、学習時間の確保と継続、内容への関心を確かめる。

やめる基準を先に決めておく

始めると決めたら、同時に「どうなったらやめるか、または方法を変えるか」も決めておいてください。たとえば、1年目の終わりに年度別過去問を本番と同じ時間で解き、その年度の基準点との距離を測る。距離が縮んでいれば続け、縮んでいなければ学習方法を見直す。こうした基準を始める前に紙に書いておくと、感情ではなく数字で判断できます。

独学で続けるか講座を使うかの判断基準は独学で合格できるかで整理しています。司法書士と行政書士のどちらを目指すか迷っている場合は、司法書士と行政書士の違いも参考にしてください。

試験での出題ポイント

択一式ではこう問われる

この記事で扱った「資格」「試験」「登録」は、午後の部の司法書士法で問われる範囲そのものです。

  • 司法書士法4条:司法書士試験の合格者のほか、裁判所事務官・裁判所書記官・法務事務官・検察事務官として通算10年以上職務に従事した者などで、法務大臣の認定を受けた者が資格を持つ。
  • 司法書士法5条:未成年者、破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者などは、資格を有しない。
  • 司法書士法6条:口述試験は筆記試験の合格者について行う。筆記試験の合格者は、申請により次回の筆記試験を免除される。
  • 司法書士法8条:司法書士となるには、日本司法書士会連合会の司法書士名簿への登録が必要。

「司法書士試験に合格すれば、登録を受けなくても業務を行える」という肢は誤りです。条文が短いぶん、そのまま肢になりやすい箇所です。

記述式との接続

不動産登記法の改正は、記述式の問題文の事実関係にも関わります。相続を原因とする所有権の移転の登記や、所有権の登記名義人の住所の変更の登記は、記述式で頻繁に扱われる登記です。義務化されたからといって申請書の書き方が変わるわけではありませんが、申請義務を負う者や期間の起算点は択一式の肢になりえます。改正の内容を、申請書の構造と結びつけて押さえておいてください。

まとめ

  • 「やめとけ」の理由は、合格率・学習時間・基準点・複数年受験・合格後の仕事・オンライン化の6つに分けて考える。
  • 合格率は令和7年度で約5.2%。ただし分母には学習途中の人も含まれ、個人の合格確率ではない。
  • 基準点方式で得意科目による穴埋めができないこと、科目ごとの持ち越しがないことは、実態に近い指摘。
  • 必要な勉強時間、合格までの平均受験回数、就職率や年収は、公的な統計がない。
  • オンライン申請と本人申請は以前からある制度。改正には申請を促す方向と職権で済む方向の両方がある。
  • 向き不向きは能力より、時間の確保・目的の整理・業務への関心という条件で決まる。
  • 迷ったら、過去問と3か月の試用期間で相性を測り、やめる基準を先に決める。

よくある質問

30代・40代から始めても遅いですか

年齢そのものが不利に働く制度ではありません。受験資格に制限はなく、令和7年度の合格者の平均年齢は42.05歳、最高年齢は74歳でした(法務省公表)。年齢より問題になるのは、学習時間を年単位で確保できるかどうかです。仕事や家庭の事情を前提に、無理のない期間で計画を組んでください。

合格しても仕事がないというのは本当ですか

それを裏付ける公的な統計も、否定する公的な統計もありません。合格者の就職率や収入を法務省は公表していないからです。確かなのは、合格後に登録と司法書士会への入会が必要なこと、業務の範囲が司法書士法3条で決まっていることです。どの業務を中心にしたいかを考えたうえで、勤務か独立かを選ぶことになります。

何年続けて受からなければ撤退すべきですか

全員に当てはまる年数はありません。年数で決めるより、過去の年度の基準点との距離が縮んでいるかどうかで判断するほうが確かです。午前の択一・午後の択一・記述式の3つで、年度別過去問の点数と基準点の差を記録し、1年たっても縮んでいなければ、続けるかどうかの前に学習方法を見直してください。

司法書士試験AIブートラボ

司法書士試験の対策を、
スマホひとつで。

過去問の肢別演習、記述式と雛形ドリル、先例と条文、用語集。司法書士試験の勉強に使う教材をひとつのアプリにまとめました。

関連記事