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条文の覚え方:素読・比較表・数字の整理

学習法 読了 約10分

司法書士試験の条文の覚え方を、素読・比較表・数字の整理の3つの作業で解説します。条文を読む単位と順番、法令用語の読み分け、似た条文の比較表の作り方、期間・年齢・金額の数字を束ねて覚える方法まで。

条文は、読む・並べる・思い出すの3つの作業に分けると覚えられます。結論を先に言います。素読は過去問に出た条文から始め、主語・要件・効果・ただし書の4つに分けて読みます。似た条文は、混同したものだけを比較表に並べます。期間・年齢・金額の数字は、条文ごとではなく数字ごとに束ねて、起算点とセットで覚えます。最後に、表を見ずに再現する練習で定着させます。

この記事は、条文を読んでも頭に残らない受験生と、数字の入れ替えの肢で失点が続く受験生のためのものです。司法書士試験の択一は、条文の文言や数字を一語だけ入れ替えた肢で正誤を問うことがよくあります。条文の覚え方は科目を問わず共通なので、民法を中心に例を示し、会社法の数字は会社法・商業登記法の勉強法に譲ります。

条文は3つの作業で覚える

覚えたと言えるのは何ができる状態か

条文を覚えたと言えるのは、次の3つができる状態です。

  1. 条文の要件と効果を、自分の言葉で言える
  2. 原則と例外の区別がつき、例外の条件を言える
  3. 数字があれば、その数字と起算点を言える

条文番号を言えることは、この中に入っていません。択一の肢は条文番号ではなく中身を問うからです。条文番号は、六法やテキストで条文を引くための住所として使えれば足ります。

3つの作業の役割

作業 やること 身につくもの
素読 条文を声に出すか、目で追って読む 要件・効果・例外の構造
比較表 似た条文を横に並べる 条文どうしの違い
思い出す練習 表や条文を見ずに再現する 本番で引き出せる記憶

素読だけでは、読んだ直後は分かったつもりになっても、数日で抜けます。比較表を作っても、見返すだけでは定着しません。3つの作業を順に通して、初めて本番で使える記憶になります。

全部の条文を同じ深さで覚えない

司法書士試験の出題範囲には、民法だけで千を超える条文があります。すべてを同じ深さで覚えるのは不可能です。深さは3段階に分けます。

深さ 対象 やること
深い 過去問で繰り返し問われた条文、数字を含む条文 素読、比較表、思い出す練習まで
中間 過去問で一度問われた条文、その前後の条文 素読まで
浅い 過去問で問われていない条文 テキストの説明で足りる

どの条文が深いかは、過去問が教えてくれます。条文の学習は、過去問を解いた後に始めるのが効率的です。

素読:条文を読む単位と順番

素読は過去問の後に始める

素読は、条文を最初から順に読む作業ではありません。過去問で問われた条文を起点にして、その条文と前後の条文を読みます。

手順は次のとおりです。肢別の過去問を解き、解説に根拠として挙げられた条文を六法で引きます。その条文を読み、同じ条の他の項と、前後の条文にも目を通します。過去問で問われた箇所には印をつけておきます。

この順で読むと、どこが問われたかを意識しながら読めます。前後の条文に目を通すのは、同じ条文の別の項や、隣の条文が次の本試験で問われることがあるからです。

1つの条文を4つに分けて読む

条文は、主語・要件・効果・ただし書の4つに分けて読みます。民法915条1項を例にとります。

部分 民法915条1項の該当箇所
主語 相続人は
要件 自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に
効果 単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない
ただし書 この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる

4つに分けると、肢のどこが入れ替えられているかを探す目ができます。起算点を「相続の開始の時から」に変えた肢、期間を別の数字に変えた肢、伸長の請求権者から検察官を外した肢。どれも、4つのどこかを一語だけ変えたものです。相続の承認と放棄の論点は相続放棄と限定承認で扱っています。

法令用語の読み分け

条文には、日常の言葉と違う意味で使われる言葉があります。択一では、この読み分けが正誤を分けます。

用語 意味 条文の例
以上・以下 基準の数を含む 民法20条1項の「一箇月以上の期間」
超える・未満 基準の数を含まない 民法797条1項の「十五歳未満」
以内 基準の期間を含む 民法915条1項の「三箇月以内」
みなす 反対の事実を証明しても覆らない 民法20条1項の「追認したものとみなす」
推定する 反対の事実を証明すれば覆る 民法32条の2の同時死亡の推定
この限りでない 本文の規律をその場合に適用しない 民法140条ただし書
妨げない 本文があっても、その扱いを排除しない 民法256条1項ただし書の不分割の契約

もう1組、「又は」と「若しくは」の使い分けがあります。選択するものが2段階になるとき、大きい区切りに「又は」、小さい区切りに「若しくは」を使います。「及び」と「並びに」も同じで、大きい区切りが「並びに」、小さい区切りが「及び」です。民法915条1項の「単純若しくは限定の承認又は放棄」は、単純承認と限定承認をまず「若しくは」でまとめ、それと放棄を「又は」でつないでいます。

素読にかける時間

素読は、1日のまとまった時間ではなく、肢別の演習の合間に挟みます。肢を1つ解き、解説の根拠条文を引いて読むまでを1単位にします。1つの条文にかける時間は1〜2分です。最初は遅く感じますが、同じ条文に何度も戻るうちに、読む時間は短くなります。

比較表:似た条文を並べる

比較表は混同したときだけ作る

比較表は、すべての論点について作るものではありません。作るのは、過去問で2つの条文を取り違えて間違えたときだけです。取り違えがなければ、比較表を作る時間は周回に回すほうが効きます。この考え方は肢別過去問の勉強法の間違えた肢の管理と同じです。

列の決め方

比較表の列は、混同した点から決めます。期間の制限を混同したなら、列は次のようになります。

列 何を書くか
権利 何の権利の期間か
主観的な起算点と期間 知った時から何年か
客観的な起算点と期間 行為の時・相続開始の時などから何年か
条文 条文番号

列を増やしすぎると、表を見返しても違いが目に入りません。混同した点に関係する列だけに絞ってください。

例:知った時からの期間と、行為の時からの期間

民法には、主観的な起算点からの短い期間と、客観的な起算点からの長い期間を組み合わせた規定がいくつもあります。取り違えやすいものを並べます。

権利 主観的な起算点からの期間 客観的な起算点からの期間 条文
取消権 追認をすることができる時から5年 行為の時から20年 民法126条
詐害行為取消請求の訴え 債務者が債権者を害することを知って行為をしたことを債権者が知った時から2年 行為の時から10年 民法426条
相続回復請求権 相続権を侵害された事実を知った時から5年 相続開始の時から20年 民法884条
遺留分侵害額の請求権 相続の開始と遺留分を侵害する贈与・遺贈を知った時から1年 相続開始の時から10年 民法1048条
不法行為の損害賠償請求権 損害と加害者を知った時から3年 不法行為の時から20年 民法724条

並べると、組み合わせに規則がないことが分かります。5年と20年、2年と10年、1年と10年、3年と20年。規則がないからこそ、並べて違いを目に入れておく意味があります。

不法行為で人の生命または身体を害した場合は、知った時からの期間が5年になります(民法724条の2)。債権の消滅時効も、人の生命または身体の侵害による損害賠償請求権は、権利を行使することができる時からの期間が20年になります(民法167条)。どちらも債権法改正で置かれた規定です。時効の体系は時効:取得時効と消滅時効で整理しています。

数字の整理:期間・年齢・金額

期間は年数ごとに束ねる

数字は、条文ごとに覚えるより、同じ数字を持つ条文を束ねて覚えるほうが混ざりません。民法と不動産登記法の主な期間を、年数ごとに並べます。

期間 規定 条文
1か月以上 制限行為能力者の相手方の催告で定める期間 民法20条1項
3か月以内 相続の承認・放棄の熟慮期間 民法915条1項
6か月 配偶者短期居住権の存続の基準となる期間 民法1037条1項
1年以内 占有回収の訴えの提起 民法201条3項
1年以内 契約不適合を知った買主の売主への通知 民法566条
2年分 抵当権で担保される利息などの最後の範囲 民法375条1項
2年以内 住所等の変更の登記の申請義務 不動産登記法76条の5
3年 根抵当権設定者の元本確定請求ができるまでの期間 民法398条の19第1項
3年以内 相続による所有権の移転の登記の申請義務 不動産登記法76条の2第1項
5年以内 根抵当権の元本確定期日 民法398条の6第3項
5年を超えない 共有物の不分割の契約 民法256条1項
5年以内 期間を定めない買戻し 民法580条3項
10年を超えない 買戻しの期間 民法580条1項
50年を超えない 賃貸借の存続期間 民法604条1項

数字ごとに束ねると、「5年」の行に元本確定期日、不分割の契約、期間を定めない買戻しが並びます。肢で「5年」を見たときに、この行の規定が一緒に浮かぶ状態を目指します。根抵当権の2つの数字は根抵当権の元本確定で申請構造とあわせて扱っています。

年齢の規定は少ない

民法で覚える年齢の規定は多くありません。

年齢 規定 条文
15歳に達した者 遺言をすることができる 民法961条
15歳未満 養子縁組で法定代理人が代わって承諾する 民法797条1項
18歳 成年 民法4条
18歳 婚姻をすることができる年齢 民法731条

15歳は「達した者」と「未満」で表現が違います。遺言は15歳から自分ででき、養子縁組の代諾は15歳未満の場合です。15歳ちょうどの者は、遺言ができ、縁組の承諾も自分でします。成年と婚姻の年齢は、成年年齢の引下げで18歳にそろいました。制限行為能力者の整理は制限行為能力者の比較で扱っています。

金額は科目をまたいで並べる

金額の規定は科目に散らばっているので、科目をまたいで並べます。

金額 規定 条文
60万円以下 少額訴訟を求めることができる金銭の支払の請求 民事訴訟法368条1項
140万円を超えない 簡易裁判所が第一審の裁判権を持つ請求の価額 裁判所法33条1項1号
5億円以上 大会社の要件の1つ。最終事業年度の貸借対照表の資本金 会社法2条6号イ
200億円以上 大会社の要件の1つ。最終事業年度の貸借対照表の負債の合計額 会社法2条6号ロ

140万円は、司法書士法3条1項6号イが簡裁訴訟代理等関係業務の範囲を定めるときに、裁判所法33条1項1号の額として引いている数字です。司法書士法の択一で問われるので、裁判所法の条文と結びつけて覚えます。業務の範囲は認定司法書士の簡裁代理で扱っています。

起算点と初日の扱いをセットで覚える

数字だけを覚えても、いつから数えるかを取り違えると正誤を誤ります。数字の表には、起算点の列を必ず添えてください。

期間の数え方の原則も押さえておきます。日・週・月・年で期間を定めたときは、初日を算入しません(民法140条)。期間はその末日の終了をもって満了します(民法141条)。月や年で定めた期間は暦に従って計算します(民法143条1項)。

思い出す練習と周回

表を見ずに再現する

比較表や数字の表は、見返すだけでは定着しません。表を見ずに再現する練習をします。やり方は3つです。

  1. 白紙に表の枠だけを書き、中身を思い出して埋める
  2. 数字の列だけを空欄にした表を用意し、数字を埋める
  3. 数字を1つ見て、同じ数字を持つ規定を全部挙げる

3つ目は、数字ごとに束ねた表の使い方です。「5年」と聞いて元本確定期日、不分割の契約、期間を定めない買戻しが出てくれば、その行は定着しています。

1週間の回し方

曜日 素読 比較表・数字の表
月〜金 肢別の演習の中で、根拠条文を引いて読む 間違えた肢があれば、該当する表に行を足す
土 その週に印をつけた条文を読み直す 表を1枚選び、白紙で再現する
日 なし 数字の表を空欄で埋める

1回の再現練習は5〜10分で済みます。長い時間を一度にかけるより、短い時間で何度も思い出すほうが記憶に残ります。

改正で数字や文言が変わった条文

改正で数字や文言が変わった条文は、古い知識が残っていると誤答につながります。成年年齢は18歳、法定利率は年3%を出発点とし、3年を一期として変動する仕組みです(民法404条2項・3項)。不法行為の生命・身体の侵害の5年も改正で置かれた規定です。これらは旧法の数字と並べず、現行法の数字だけで覚えてください。改正論点の拾い方は法改正への対応で扱っています。

試験での出題ポイント

択一式ではこう問われる

条文の知識は、次の形で問われます。

  • 数字の入れ替え:熟慮期間を「1か月以内」に、遺留分侵害額の請求権の期間を「知った時から2年」に変えた肢。数字ごとに束ねた表が効きます
  • 起算点の入れ替え:熟慮期間を「相続の開始の時から」に変えた肢。4つに分けて読んだときの要件の部分です
  • 用語の入れ替え:「みなす」を「推定する」に、「以上」を「超える」に変えた肢。法令用語の読み分けで判断します
  • 例外の脱落:ただし書の例外を書かずに原則だけを示し、例外の場面に当てはめた肢

記述式との接続

不動産登記の記述式では、根抵当権設定者が元本の確定を請求できるか、つまり設定の時から3年を経過しているかといった数字が、申請すべき登記の判断に影響することがあります。商業登記の記述式では、取締役や監査役の任期の計算に、会社法の年数の規定を使います。条文の数字は択一だけのものではありません。

まとめ

  • 条文は、素読・比較表・思い出す練習の3つの作業で覚える
  • 深さを3段階に分け、過去問で繰り返し問われた条文と数字を含む条文を深く覚える
  • 素読は過去問の後に、根拠条文とその前後を読む。1つの条文を主語・要件・効果・ただし書に分ける
  • 「以上」と「超える」、「みなす」と「推定する」、「又は」と「若しくは」の読み分けを押さえる
  • 比較表は混同したときだけ作り、列は混同した点に絞る
  • 数字は同じ数字ごとに束ね、起算点とセットで覚える
  • 表は見返すのではなく、白紙や空欄で再現して定着させる

よくある質問

六法を最初から通読する必要はありますか

必要ありません。最初から通読しても、どこが問われるかが分からないまま読むことになり、残りにくくなります。過去問で問われた条文を起点に、その前後を読み広げるほうが効率的です。学習が進むと、よく引く条文の周辺は自然に通読したのと同じ状態になります。

条文番号は覚えるべきですか

択一で条文番号そのものが問われることはほとんどないので、番号の暗記を目的にする必要はありません。ただし、民法177条や民法94条2項のように、論点の名前として番号が使われる条文は、自然に覚えておくと解説や判例が読みやすくなります。番号は、六法で条文を引くための住所として使えれば十分です。

数字の表は自分で作るべきですか、市販のものを使うべきですか

自分で作るほうが定着します。作る過程で、条文を引き、数字と起算点を確かめる作業そのものが素読になるからです。表の土台として基本書の表を使うのは構いません。そこに、自分が過去問で間違えた数字の行を足していくと、自分用の表になります。教材の揃え方はテキスト選びの基本で扱っています。学習全体の順序は合格ロードマップを参照してください。

読んだあとに、今日の1問を

過去問ベースの肢別演習で、読んだ内容をそのまま演習に移せます。

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