司法書士 会社法・商業登記法の勉強法:機関から学ぶ一気通貫の手順
司法書士試験の会社法・商業登記法を一緒に攻略したい受験生向け。機関から学び、会社法の要件を添付書面に置き換えて覚えるのが結論です。午前9問・午後8問・記述式の配点、学習順序、頻出論点、数字の覚え方を解説します。
司法書士試験の会社法と商業登記法は、別々の科目として学ばず、「機関」から入って会社法の要件をそのまま商業登記の添付書面に置き換えて覚えるのが最短ルートです。同じ知識が午前の会社法等9問、午後の商業登記法8問、記述式の商業登記1問の3か所で問われるからです。3つを一本の線でつなげば、同じ論点を3回覚え直さずに済みます。この記事は、会社法の条文量に圧倒されている初学者と、択一は取れるのに記述式で崩れる受験生に向けて、配点・学習順序・頻出論点・添付書面とのセット学習・数字要件の覚え方・持分会社の割り切り方を1本にまとめました。
会社法・商業登記法は3か所から出る
配点構造
| 区分 | 内容 | 問数 | 配点 |
|---|---|---|---|
| 午前の部 | 択一:憲法3・民法20・刑法3・会社法等9 | 35問 | 105点 |
| 午後の部 | 択一:民訴5・民保1・民執1・書士法1・供託3・不登法16・商登法8 | 35問 | 105点 |
| 午後の部 | 記述式:不動産登記法1問・商業登記法1問 | 2問 | 140点 |
午前の会社法等9問(27点)、午後の商業登記法8問(24点)、記述式の商業登記1問。記述式は令和6年度から2問で140点満点になり、商業登記の1問の重みが大きく増しました。かつての「午前は民法で稼ぎ、会社法はほどほどに」という戦略は、もう成り立ちません。
午前の9問は、商法総則・商行為から例年1問前後、残りが会社法です。年度で前後しますが、おおむね次の重みで出ます。
| 領域 | 午前9問での目安 | 午後の商業登記法との接点 |
|---|---|---|
| 機関 | 3問前後 | 役員変更、機関設計の変更の登記 |
| 株式・新株予約権 | 2問前後 | 募集株式の発行、株式の内容の変更 |
| 設立 | 1問前後 | 設立の登記 |
| 計算・組織再編・解散清算 | 1〜2問 | 資本金の額の減少、合併、解散の登記 |
| 商法総則・商行為 | 1問前後 | 商号、支配人の登記 |
機関だけで3問前後あり、しかも午後の役員変更の登記と記述式に直結します。学習の起点を機関に置く理由はここにあります。
目標点
| 学習段階 | 午前9問 | 午後8問 | 考え方 |
|---|---|---|---|
| 1年目前半 | 5問 | 4問 | 機関と設立、役員変更の登記まで |
| 直前期に入る前 | 6〜7問 | 6問 | 株式・募集株式・組織再編まで戦力化 |
| 本試験 | 7問 | 6〜7問 | 落とすのは細部の1〜2問程度 |
会社法は範囲が膨大なので、9問すべてを取りにいくと学習時間が破綻します。7問取れれば十分に戦えます。むしろ午後の商業登記法と記述式のほうが、投資に対するリターンが大きい領域です。基準点と合格点の関係は基準点と上乗せ点の仕組みで確認してください。
学習順序は「機関」から
テキストの章立てどおり設立、株式、機関、計算、組織再編と進めると、多くの人が設立で挫折します。設立の規定は技術的に難しく、しかも機関と株式の知識を前提にしているからです。推奨する順序は次のとおりです。
- 機関 — 株主総会・取締役・取締役会・監査役・会計監査人・委員会。会社法の骨格です
- 株式 — 株式の内容、種類株式、譲渡制限、自己株式、募集株式の発行
- 設立 — 機関と株式の知識が入ってから読むと、驚くほど読みやすくなります
- 計算 — 資本金・準備金・剰余金の配当
- 組織再編 — 合併・会社分割・株式交換・株式移転・株式交付
- 解散・清算、持分会社、商法総則・商行為
この順序は商業登記法の学習順序ともほぼ一致します。商業登記で最も出題の多い役員変更の登記は、機関の知識を前提にするからです。会社法と商業登記法を合わせてどの程度の時間を見込むかは、司法書士試験に必要な勉強時間で科目別の内訳を示しています。
会社法の条文学習は機関を骨格にする
条文を3層に分ける
会社法の択一は、判例より条文の知識を直接問う問題が中心です。ただし会社法は979条まである巨大な法律で、全部を読むのは現実的ではありません。
| 層 | 対象 | 扱い方 |
|---|---|---|
| 第1層 | 機関・株式・組織再編の中核規定 | 条文を何度も読み、要件と効果を言えるようにする |
| 第2層 | 設立・計算・解散清算 | 論点として出会ったときに条文を引く |
| 第3層 | 罰則、細かい訴訟規定、外国会社の大半 | 過去問に出たもの以外は読まない |
機関設計は2軸と3ルールで押さえる
出発点は「公開会社か」と「大会社か」の2つの区分です。公開会社は、発行する株式の全部または一部について譲渡制限を定めていない会社です(2条5号)。一部にでも譲渡制限のない株式があれば公開会社になります。大会社は、最終事業年度に係る貸借対照表上、資本金5億円以上または負債総額200億円以上の会社です(2条6号)。
そのうえで、次の3つのルールを順に適用します。
- 公開会社・監査役会設置会社・監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社は、取締役会を置かなければならない(327条1項)
- 取締役会設置会社は監査役を置かなければならない。ただし公開会社でない会計参与設置会社を除く(同条2項)。会計監査人設置会社も監査役が必要(同条3項)
- 大会社は会計監査人が必要で、公開会社である大会社は監査役会も必要(328条。監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社を除く)。監査等委員会設置会社と指名委員会等設置会社は、監査役を置けない(327条4項)
取締役会と機関設計の組み合わせは取締役会設置会社と非設置会社の違いで表にしています。
株主総会:権限・招集・決議要件
株主総会は毎年出題される最頻出テーマです。
権限 — 取締役会設置会社では、株主総会は会社法と定款に定めた事項に限り決議できます(295条2項)。取締役会非設置会社では一切の事項について決議できます(同条1項)。
招集 — 招集通知は、公開会社では総会の日の2週間前まで、非公開会社では1週間前まで、取締役会非設置会社ではさらに定款で短縮できます(299条1項)。書面投票・電子投票を定めた場合は非公開会社でも2週間前です。株主による招集請求は総株主の議決権の100分の3以上を6か月前から有する株主ができ、非公開会社では保有期間の要件がありません(297条)。
決議要件 — 表で完全に覚えます。
| 決議 | 定足数 | 可決要件 | 主な対象 |
|---|---|---|---|
| 普通決議 | 議決権の過半数を有する株主の出席。定款で排除可 | 出席株主の議決権の過半数 | 計算書類の承認、剰余金の配当 |
| 役員の選任・解任 | 同上。ただし定款でも3分の1未満にできない | 出席株主の議決権の過半数 | 取締役・監査役の選任、取締役の解任(下記の例外を除く) |
| 特別決議 | 議決権の過半数を有する株主の出席。定款で3分の1まで下げられる | 出席株主の議決権の3分の2以上 | 定款変更、資本金の額の減少、組織再編、解散、監査役・監査等委員である取締役・累積投票で選任された取締役の解任 |
| 特殊決議(309条3項) | なし | 議決権を行使できる株主の半数以上、かつ議決権の3分の2以上 | 全部の株式に譲渡制限を設ける定款変更 |
| 特殊決議(309条4項) | なし | 総株主の半数以上、かつ総株主の議決権の4分の3以上 | 非公開会社の属人的な定め |
監査役の解任には役員の選解任の決議要件(341条)が適用されず(343条4項)、特別決議になります(309条2項7号)。監査等委員である取締役と、累積投票で選任された取締役の解任も同じく特別決議です。2つの特殊決議は、309条3項が「議決権を行使できる株主」、4項が「総株主」を基準にしている点で区別します。決議の種類ごとの対象事項は株主総会の決議要件で一覧にしています。
取締役会:招集・決議・特別利害関係
取締役会の定番は、招集通知(原則1週間前、定款で短縮可。368条1項)、決議要件(議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その過半数で決する。369条1項)、特別の利害関係を有する取締役の議決からの排除(同条2項)、書面決議(定款の定めがあり、監査役が異議を述べないこと。370条)の4点です。代表取締役の解職決議での当該代表取締役は、特別利害関係人に当たります。特別利害関係人は定足数の算定からも除かれるので、記述式で議事録の出席者を数えるときにも使います。
取締役の任期と権利義務役員
| 役員等 | 原則の任期 | 非公開会社での伸長 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 取締役 | 選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで。短縮可 | 10年まで伸長可 | 332条1項・2項 |
| 監査等委員である取締役 | 2年。短縮不可 | 不可 | 332条1項・4項 |
| 監査等委員会設置会社のそれ以外の取締役 | 1年 | 不可 | 332条3項 |
| 指名委員会等設置会社の取締役 | 1年 | 不可 | 332条6項 |
| 監査役 | 4年。短縮不可 | 10年まで伸長可 | 336条1項・2項 |
| 会計監査人 | 1年。別段の決議がなければ再任とみなす | — | 338条 |
監査等委員会・指名委員会等を置く定款変更、それを廃止する定款変更、譲渡制限の定めを廃止する定款変更をすると、取締役の任期はその時に満了します(332条7項)。監査役にも同じ趣旨の規定があります(336条4項)。任期の計算と登記のタイミングは取締役の任期で詳しく扱っています。
役員の員数を欠いた場合、任期満了または辞任により退任した役員は、後任者が就任するまでなお役員としての権利義務を有します(346条1項)。権利義務役員がいる間は退任の登記ができない、という結論は、会社法の論点がそのまま登記の可否に直結する典型例です。
株式・計算・組織再編
種類株式と募集株式
種類株式は108条1項の9類型です。剰余金の配当、残余財産の分配、議決権制限、譲渡制限、取得請求権、取得条項、全部取得条項、拒否権、役員選任権です。このうち役員選任権付株式だけは、公開会社と指名委員会等設置会社が発行できません(108条1項ただし書)。拒否権付株式は公開会社でも発行できるので、取り違えないでください。
募集株式の発行は記述式でも頻出です。決定機関の区別が核心になります。
| 会社の類型 | 募集事項の決定機関 | 例外 |
|---|---|---|
| 非公開会社 | 株主総会の特別決議(199条2項) | 特別決議で取締役・取締役会に委任可。払込期日等は1年以内(200条) |
| 公開会社 | 取締役会(201条1項) | 有利発行は株主総会の特別決議 |
公開会社で支配株主の異動を伴う割当てをする場合は、株主への通知・公告と、一定割合の株主が反対したときの株主総会決議が必要です(206条の2)。登記の場面では資本金の額と発行済株式の総数が変わり、払込額の2分の1を超えない額を資本準備金にできる計算(445条2項・3項)は記述式で必ず使います。
自己株式と分配可能額
自己株式の取得には財源規制がかかり、分配可能額を超えて取得することはできません(461条)。株主との合意による取得、取得請求権付株式の請求による取得、取得条項付株式の取得など、取得の方法ごとに株主総会決議の要否と種類が変わります。計算分野は苦手意識を持つ受験生が多いのですが、択一で問われるのは複雑な計算ではなく、「資本金・準備金・剰余金はどう動くか」「どの操作に債権者異議手続が要るか」の2点です。
資本金の額の減少と債権者異議手続
資本金の額の減少は、原則として株主総会の特別決議と債権者異議手続が必要です(447条・449条)。定時株主総会で欠損の額を超えない範囲で減少する場合は普通決議で足ります。
債権者異議手続は、組織再編でも共通する型です。官報に公告し、知れている債権者に各別に催告し、1か月以上の異議申述期間を置き、異議を述べた債権者には弁済・担保提供・信託をする。定款所定の公告方法が日刊新聞紙または電子公告なら、官報に加えてその方法でも公告することで各別の催告を省略できます。商業登記では、この手続を経たことを証する書面がそのまま添付書面になります。
組織再編は共通の手続の型で読む
吸収合併・新設合併、吸収分割・新設分割、株式交換・株式移転、株式交付は、次の共通の流れで進みます。
- 吸収型は契約の締結、新設型は計画の作成
- 事前開示書面の備置
- 株主総会の承認。原則として特別決議
- 反対株主の株式買取請求、新株予約権買取請求
- 債権者異議手続。合併では常に必要、会社分割・株式交換等では場合による
- 効力発生。吸収型は契約で定めた効力発生日、新設型は設立の登記の日
- 事後開示書面の備置と登記
株主総会決議が不要になる例外は2つです。簡易組織再編は対価の額が純資産額の5分の1を超えない場合で、「会社への影響が小さい」ことが趣旨です。略式組織再編は相手方が総株主の議決権の10分の9以上を持つ特別支配会社である場合で、「決議の結果が見えている」ことが趣旨です。趣旨から区別すれば、どちらの会社で使えるかを取り違えません。
吸収合併の登記は、存続会社の変更登記と消滅会社の解散登記を同時に申請します。消滅会社の解散登記は、消滅会社の本店所在地を管轄する登記所に宛てたものを、存続会社の本店所在地を管轄する登記所を経由して申請します(商業登記法82条2項・3項)。
商業登記法とのセット学習
会社法の要件を添付書面に置き換える
商業登記法の択一8問は、ほとんどが「この登記に何を添付するか」「この登記はできるか」を問い、その答えは会社法の実体要件で決まります。取締役の就任による変更登記で考えます。
| 会社法上の要件 | 対応する添付書面 |
|---|---|
| 株主総会で選任決議がされた | 株主総会議事録、株主リスト |
| 本人が就任を承諾した | 就任承諾書 |
| 本人が実在する | 本人確認証明書。印鑑証明書を添付する場合は不要 |
| 取締役会で代表取締役を選定した | 取締役会議事録。一定の場合は印鑑証明書 |
会社法の要件を1つずつ書面に置き換えたものが、添付書面の一覧です。この関係を理解すれば、初見の登記でも「会社法上どんな手続が必要か」から添付書面を導けます。役員変更登記の添付書面は役員変更登記の添付書面で就任・退任・重任ごとに整理しています。
テキストを読むときの3つの問い
会社法のテキストを読むときは、次の3つを常に確認します。
- この事項は登記事項か — 登記事項でなければ登記との接点はありません
- 何をしたことを証明すればよいか — それが添付書面です
- 登記期間の起算点はいつか — 原則として効力発生から2週間以内です(915条1項)。期間を過ぎても登記は受理され、過料の問題が残るだけです
頻出の添付書面ルール
- 株主リスト(商業登記規則61条2項・3項) — 登記すべき事項に株主総会の決議や株主全員の同意を要する場合に添付します。議決権数上位10名と、議決権割合が3分の2に達するまでの株主のいずれか少ないほうを記載します
- 印鑑証明書(同条4項〜6項) — 取締役会非設置会社の取締役や取締役会設置会社の代表取締役の就任承諾書、代表取締役を選定した議事録について必要になる場面があります。変更前の代表取締役が登記所に提出した印鑑を押しているかで結論が変わるので、表で覚えます
- 本人確認証明書(同条7項) — 取締役・監査役・執行役の就任で、住民票の写しなどを添付します。印鑑証明書を添付する場合は不要です
2021年施行の改正と登記
2021年3月1日施行の会社法改正は、株式交付の創設、上場会社等での社外取締役の設置義務、取締役の報酬や補償契約の規律などを含みます。登記に関係するものとして、株主総会資料の電子提供措置をとる旨の定款の定めが登記事項になり、支店所在地における登記は廃止されました(いずれも2022年9月1日施行)。古い教材で支店所在地の登記を学んでいる場合は、改正に対応した版に切り替えてください。
数字要件は一覧にしてまとめて覚える
少数株主権
| 権利 | 要件 | 保有期間 |
|---|---|---|
| 株主総会の招集請求 | 総株主の議決権の3%以上 | 6か月。非公開会社は不要 |
| 業務執行に関する検査役の選任請求 | 議決権または発行済株式の3%以上 | なし |
| 会計帳簿の閲覧・謄写請求 | 議決権または発行済株式の3%以上 | なし |
| 役員の解任の訴え | 議決権または発行済株式の3%以上 | 6か月。非公開会社は不要 |
| 株主提案権(取締役会設置会社) | 議決権の1%以上または300個以上 | 6か月。非公開会社は不要 |
| 解散の訴え | 議決権または発行済株式の10%以上 | なし |
3%が基本線で、株主提案権が1%、解散の訴えが10%という構造で覚えます。
期間と員数
| 場面 | 数字 |
|---|---|
| 取締役会の招集通知 | 1週間前。定款で短縮可 |
| 債権者異議の申述期間 | 1か月以上 |
| 変更の登記の期間 | 効力発生から2週間以内 |
| 事前開示・事後開示書面の備置 | 効力発生日後6か月まで |
| 休眠会社のみなし解散 | 最後の登記から12年 |
| 取締役会設置会社の取締役 | 3人以上 |
| 監査役会 | 監査役3人以上、半数以上が社外監査役 |
| 監査等委員会・指名委員会等の各委員会 | 3人以上、過半数が社外取締役 |
監査役会だけが「半数以上」、委員会は「過半数」です。ここは入れ替えて出題されます。
読むのではなく思い出す
数字は読んで覚えるものではなく、思い出す訓練で定着します。表を白紙に再現する練習を週2回5分ずつ、数字だけを空欄にした表を埋める練習、過去問で数字が出たら周辺の数字も一緒に思い出す練習、の3つを組み合わせます。想起を軸にした周回の設計は肢別過去問の勉強法で扱っています。
設立・解散・持分会社・商法の割り切り方
設立は機関の後に一度だけ通す
押さえる骨格は3つです。発起設立と募集設立の違い(募集設立では創立総会があり、払込金保管証明書が必要)、定款の絶対的記載事項(27条)と公証人の認証(30条)、変態設立事項(28条)と検査役の調査が不要になる場合(33条10項:500万円以下、市場価格のある有価証券、弁護士等の証明)です。会社は本店所在地での設立の登記によって成立します(49条)。
解散・清算は流れだけ
解散事由(471条)と休眠会社のみなし解散(472条)、清算人の就任の順序(478条)、債権申出の公告(2か月以上)、清算結了の登記までの流れを通しておきます。記述式で解散が絡む年もあるので、解散の登記と清算人の登記が別の登記事項であることは押さえてください。
持分会社は株式会社との差分だけ
| 項目 | 株式会社 | 持分会社 |
|---|---|---|
| 責任 | 有限責任 | 合名は無限、合資は無限と有限、合同は有限 |
| 業務執行 | 取締役・取締役会 | 原則として社員全員 |
| 意思決定 | 資本多数決 | 原則として社員の過半数、定款変更は総社員の同意 |
| 持分の譲渡 | 原則自由 | 原則として他の社員全員の承諾 |
| 定款の認証 | 必要 | 不要 |
「持分会社は人で動き、株式会社は持株数で動く」の一言に集約できます。登記では、合資会社の有限責任社員が全員退社した場合に合名会社となる定款変更をしたとみなされる規律(639条)が、択一・記述の両方で問われます。
商法総則・商行為の1問
商人と商行為、商号と名板貸し、支配人と表見支配人、代理商、商行為の特則(顕名がなくても本人に効力が生じる商行為の代理、商事留置権、商人間の売買における検査・通知義務)が頻出です。民法との差分で整理すれば、20〜30時間で仕上がります。外国会社は日本における代表者の要件と、登記前は継続取引ができないことの2点で十分です。
つまずきやすいポイントと越え方
条文の言い回しが読めない
会社法の条文は括弧書きの中にさらに括弧書きがあり、初見では主語すら追えません。1回目は括弧書きを飛ばして主語・要件・効果だけを読み、2回目に括弧書きで除外されている会社を確認する、という2段階で読んでください。「監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く」のような除外は、機関設計の表と結びつけると意味が分かります。
組織再編を後回しにしたまま本試験を迎える
組織再編は範囲が広く条文が入り組んでいるため、手つかずのまま本試験を迎える受験生が少なくありません。対策は、上で示した共通の流れを1枚の表にし、合併・会社分割・株式交換・株式移転・株式交付の5列で「必要・不要」「決議の種類」を埋めることです。まず吸収合併を1本通し、ほかは合併との違いだけを書き込むと、1〜2週間で択一の水準に届きます。
印鑑証明書の要否で毎回迷う
商業登記の印鑑証明書は、誰の、どの書面についての証明書かを分けないと混乱します。「就任承諾書についてのもの」「代表取締役を選定した議事録についてのもの」「辞任届についてのもの」の3系統に分け、それぞれ取締役会設置会社か否か、変更前の代表者が登記所届出印を押しているかで要否が決まる、と整理してください。
記述式との接続と演習の回し方
記述式で問われる4つのこと
商業登記の記述式は、議事録・定款・登記記録などの別紙を読んで申請書を作る問題です。求められるのは、登記すべき事項を漏れなく拾うこと、登記できない事項を見抜くこと、添付書面を過不足なく書くこと、登録免許税を正しく計算することです。前の2つは会社法の実体判断そのもので、記述式は択一の知識を「使う」形で問うているにすぎません。
差がつくのは登記できない事項の判断です。定足数の不足、特別決議事項を普通決議で可決している、特別利害関係人が議決に加わっている、権利義務役員がいるため退任登記ができない、といった罠が必ず仕込まれます。択一を解くときも「これが議事録に紛れ込んでいたら気づけるか」という視点を持ってください。記述式の具体的な手順は記述式(商業登記)の対策にまとめています。
学習サイクル
- インプット期 — 機関から順にテキストを1周し、単元が終わるごとに対応する商業登記の論点と添付書面を確認します
- 演習期 — 午前の会社法と午後の商業登記法の過去問を、論点ごとにまとめて解きます。「役員変更」の週には、会社法の役員の過去問と役員変更登記の過去問を両方解きます
- 直前期 — 記述式の演習を週2回以上入れながら、択一は数字の表と添付書面の表を高速で回します
商業登記法の択一8問は午後の択一の最後に並んでいます。前半で粘りすぎると時間切れで8問すべてが崩れるので、1問1分を目標に、迷ったら飛ばす処理を演習から徹底してください。午後全体の配分は午後の部の時間配分で扱っています。
まとめ
- 会社法・商業登記法は午前9問・午後8問・記述式1問の3か所で同じ知識が問われる
- 学習順序は機関、株式、設立、計算、組織再編の順。設立は後回しにする
- 機関設計は公開会社・大会社の2軸と327条・328条のルールで整理する
- 会社法の要件を1つずつ添付書面に置き換えれば、商業登記法の添付書面は導ける
- 数字要件は一覧にして、白紙に再現する想起で覚える
- 持分会社・外国会社・商法総則は差分と要点だけに割り切る
- 2021年施行の改正(株式交付、電子提供措置、支店所在地の登記の廃止)に対応した教材を使う
よくある質問
会社法と商業登記法はどちらを先に勉強すべきですか
会社法の機関から始め、単元ごとに対応する商業登記法の論点を続けて確認するのが効率的です。会社法を全部終えてから商業登記法に入ると、会社法の知識を思い出し直す手間が増えます。
会社法の条文は全部読む必要がありますか
不要です。機関・株式・組織再編の中核規定を繰り返し読み、設立・計算・解散清算は論点ごとに条文を引き、罰則や外国会社の大半は過去問に出たもの以外読まない、という3層で扱ってください。
午前の会社法は何問取ればよいですか
9問中7問が目安です。9問すべてを狙うと学習時間が破綻します。取りこぼしを減らすなら、機関と株式の頻出論点を確実にし、商法総則・商行為の1問を落とさないことを優先してください。
記述式の商業登記はいつから始めればよいですか
機関と役員変更の登記を学び終えた段階から始めてください。役員変更は記述式でほぼ毎年問われるので、この段階で1問を通して解くと、会社法の知識がどう使われるかが見え、以降の学習の精度が上がります。
会社法・商法の肢別演習を一覧で一気に○×。解説と関連先例がその場で開きます。