株式無償割当てかぶしきむしょうわりあて
株主に新たな払込みをさせずに会社の株式を割り当てる手続で、株式の分割と似ていますが、異なる種類の株式や自己株式を交付できる点が違います。通知の書面を添付させる肢と、分割との違いが肢で突かれます。
株式無償割当ては、株主に対して新たに払込みをさせないで、会社の株式を割り当てることです。会社法185条から187条が定め、株主の持株数に応じて割り当てる点は株式の分割と同じです。持っている株式と異なる種類の株式を割り当てることができ、新株の発行に代えて自己株式を交付することもできます。株主に負担を求めずに株式数を増やす手段で、会社自身が持つ自己株式には割り当てられません。登記では、新たに発行した分だけ発行済株式の総数が増える変更として現れ、資本金の額は変わりません。
会社法 第185条(株式無償割当て)
株式会社は、株主(種類株式発行会社にあっては、ある種類の種類株主)に対して新たに払込みをさせないで当該株式会社の株式の割当て(以下この款において「株式無償割当て」という。)をすることができる。

決定は株主総会か取締役会で、定款で別の機関にもできます
株式無償割当てをするときは、株主に割り当てる株式の数またはその算定方法、効力発生日を、その都度定めるのが出発点です。種類株式発行会社では割り当てる株式の種類と種類ごとの数、割当てを受ける株主の株式の種類も定めます。決定は株主総会の普通決議、取締役会設置会社では取締役会の決議によりますが、定款に別段の定めがあればそれに従い、その場合は定款も添付します。株主総会で決めたときは議事録と株主リスト、取締役会で決めたときは取締役会議事録を申請書に添付します。割当ての内容は、会社以外の株主の持株数に応じたものでなければなりません。
株式の分割と違い、異なる種類の株式や自己株式を交付できます
株式の分割は同じ種類の株式を細分化するだけですが、株式無償割当てでは、普通株式の株主に別の種類の株式を割り当てることができます。分割では自己株式も分割されるのに対し、無償割当てでは自己株式には割り当てず、逆に会社が持つ自己株式を割当ての対象として交付できます。種類株式発行会社が普通株式の株主に優先株式を交付したいときは、分割では同じ種類しか増えないので無償割当てを使います。自己株式だけを交付したときは新たな株式の発行がないので発行済株式の総数は変わらず、登記は要りません。新株予約権の無償割当てで自己新株予約権のみを交付した場合に変更の登記を申請しなければならないとする肢は誤りで、株式の場合も同じ理屈です。
株主への通知は効力発生の後で、添付書面にはなりません
株式無償割当ての効力が生じると、株主は効力発生日に割り当てられた株式の株主になります。会社は効力発生日の後遅滞なく、株主と登録株式質権者に割当てを受けた株式の数を通知しますが、効力発生の後の手続なので登記の申請書には添付しません。通知は株主が自分の持株数を知るためのもので、割当ての効力要件ではありません。株主総会や取締役会で定めた効力発生日に割当てが効力を生じ、登記期間もその日から2週間です。「株式無償割当てにより新たに株式を発行した場合における発行済株式の総数が増加したことによる変更の登記の申請書には,株主及び登録株式質権者に対して当該株主が割当てを受けた株式の数を通知したことを証する書面を添付しなければならない」という肢は誤りです。
発行可能株式総数を超える割当てはできず、資本金の額は増えません
新たに株式を発行して割り当てるときは、割当て後の発行済株式の総数が発行可能株式総数を超えてはならず、超えるなら先に定款を変更して発行可能株式総数を増やします。株式の分割のように株主総会の決議を省いて発行可能株式総数を増やす特則は、無償割当てにはありません。払込みがないので資本金の額も資本準備金の額も増えず、登記すべき事項は発行済株式の総数、種類株式発行会社なら種類ごとの数の変更だけです。剰余金を原資にする必要もなく、分配可能額の枠もかからないので、業績に関係なく実施できる手続です。登録免許税は資本金の額が増えない変更なので3万円です。定款で株主総会の決議事項と定めた場合でも、特別決議ではなく普通決議で足ります。
会社法 第186条(株式無償割当てに関する事項の決定)
株式会社は、株式無償割当てをしようとするときは、その都度、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 株主に割り当てる株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)又はその数の算定方法
二 当該株式無償割当てがその効力を生ずる日
三 株式会社が種類株式発行会社である場合には、当該株式無償割当てを受ける株主の有する株式の種類
前項第一号に掲げる事項についての定めは、当該株式会社以外の株主(種類株式発行会社にあっては、同項第三号の種類の種類株主)の有する株式(種類株式発行会社にあっては、同項第三号の種類の株式)の数に応じて同項第一号の株式を割り当てることを内容とするものでなければならない。
第一項各号に掲げる事項の決定は、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。
試験ではこう問われる
- 株式無償割当ての決定機関はどこか(株主総会または取締役会。定款で別段の定め可)
- 株式の分割と違う点は何か(異なる種類を割り当てられ、自己株式を交付できる。自己株式には割り当てない)
- 株主への割当て数の通知書は添付が要るか(要らない)
- 自己株式だけを交付したとき登記は要るか(要らない)
この用語が問われた肢
株式会社が新株予約権の無償割当てをした場合において、当該株式会社が自己新株予約権のみを交付したときは、新株予約権の無償割当てによる変更の登記の申請をしなければならない。
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