商号・目的の変更登記:定款変更の決議と申請の組み立て
商号・目的の変更登記を、株主総会の特別決議から申請書の骨格まで整理。添付書面は議事録と株主リスト、登録免許税はツ区分で1件3万円。同一商号・同一本店の禁止や持分会社との違いも条文で確認したい受験生向け。

商号と目的の変更登記は、定款変更の登記として考えると迷いません。商号と目的は定款の絶対的記載事項なので、変えるには株主総会の特別決議が要ります。登記の申請書には、その株主総会議事録と株主リストを付けます。登録免許税は「登記事項の変更」の区分で、商号と目的を同時に変えても1件3万円です。審査の場面では、同一商号・同一本店の禁止と、商号に使える文字、目的の明確性が問われます。
この記事は、商業登記法を学習中で、商号変更・目的変更を「簡単な登記」として流してしまっている司法書士試験の受験生向けです。決議から申請書の骨格、組合せ論点まで、条文で確認しながら整理します。
商号・目的の変更は定款変更から始まる
商号と目的は定款の絶対的記載事項
株式会社の定款には、目的・商号・本店の所在地などを必ず記載しなければなりません(会社法27条1号・2号・3号)。これを絶対的記載事項といいます。商号や目的を変えることは、定款のこの部分を書き換えることです。
同時に、商号と目的は登記事項でもあります。株式会社の設立の登記では、目的と商号を登記します(会社法911条3項1号・2号)。定款と登記の両方に同じ内容が載っているので、定款を変えれば登記も変わります。
| 事項 | 定款の根拠 | 登記の根拠 |
|---|---|---|
| 目的 | 会社法27条1号 | 会社法911条3項1号 |
| 商号 | 会社法27条2号 | 会社法911条3項2号 |
| 本店 | 会社法27条3号(所在地) | 会社法911条3項3号(所在場所) |
本店は定款と登記で書く粒度が違いました。商号と目的には、その違いがありません。定款で定めた商号と目的が、そのまま登記されます。本店の粒度の違いは本店移転登記で扱っています。

決議は株主総会の特別決議
株式会社は、成立後、株主総会の決議によって定款を変更できます(会社法466条)。この決議は特別決議です。会社法309条2項11号が「第六章から第八章までの規定により株主総会の決議を要する場合」を挙げており、定款変更を定める466条は第6章に置かれているからです。
特別決議の要件は次のとおりです(会社法309条2項)。
- 定足数:議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主の出席。定款で3分の1まで下げられる
- 決議要件:出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成。定款でこれを上回る割合にできる
取締役会や取締役の決定だけでは、商号も目的も変えられません。本店移転では「所在場所と移転時期は取締役会で決める」という2段目がありましたが、商号変更と目的変更は株主総会の決議だけで完結します。普通決議・特別決議・特殊決議の全体像は株主総会の決議要件で整理しています。
効力発生日と登記期間
登記事項に変更が生じたときは、2週間以内に、本店の所在地で変更の登記をしなければなりません(会社法915条1項)。起算点は、変更の効力が生じた日です。
定款変更の決議は、特に定めがなければ決議の時に効力を生じます。決議で効力発生日を別に定めていれば、その日に商号や目的が変わります。記述式で「令和8年7月1日をもって商号を変更する」といった定めがあれば、登記すべき事項の年月日は決議の日ではなくその日です。
| 日付 | 何の日か | 答案での使い道 |
|---|---|---|
| 株主総会の日 | 定款変更を決議した日 | 決議の有効性の検討 |
| 効力発生日 | 商号・目的が変わった日 | 登記すべき事項の年月日、登記期間の起算点 |
両者が同じ日なら1行で済みます。別の日が書かれていたら、時系列表に分けて拾ってください。
商号変更で審査されること
同一商号・同一本店の禁止
商号の登記は、他人の既に登記した商号と同一であり、かつ、本店の所在場所が同一であるときはできません(商業登記法27条)。この条文に反する商号の登記の申請は却下されます(商業登記法24条12号)。
ポイントは、商号と本店の所在場所の両方が同一であることが要件だという点です。
| 商号 | 本店の所在場所 | 登記の可否 |
|---|---|---|
| 同一 | 同一 | できない |
| 同一 | 別の場所 | できる |
| 類似 | 同一 | できる |
かつては、同一の市町村内で同一の営業のために他人が登記した商号と類似する商号の登記も禁止されていました。この類似商号の規制は、会社法の施行で廃止されています。法務省も、商号と本店の所在地がともに同一でなければ、既存の会社と同一または類似の商号でも登記できると説明しています。古い教材で「類似商号の調査」という記述を見たら、現行法では同一商号・同一本店の確認に読み替えてください。
なお、登記できることと使ってよいことは別です。何人も、不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある名称や商号を使用してはなりません(会社法8条1項)。これは登記官の審査の問題ではなく、使用の差止めの問題です。

商号に使える文字
商号には、漢字・ひらがな・カタカナのほか、ローマ字その他の符号で法務大臣の指定するものを用いることができます(商業登記規則50条1項)。指定は告示でされます(同条2項)。法務省の告示で指定されているのは、次のものです。
- ローマ字(大文字・小文字)
- アラビア数字
- 「&」「'」「,」「‐」「.」「・」の6つの符号
6つの符号は、字句を区切る際の符号として使う場合に限られます。商号の先頭や末尾には使えません。ただし、ピリオドは省略を表すものとして末尾に使えます。空白は、ローマ字で複数の単語を表記する場合に、単語の間を区切るためだけに使えます。
会社の種類を示す文字
会社は、その種類に従い、商号中に株式会社・合名会社・合資会社・合同会社の文字を用いなければなりません(会社法6条2項)。他の種類の会社であると誤認されるおそれのある文字を用いることもできません(同条3項)。
商号変更の決議で「株式会社」の文字を落とした商号にしたり、株式会社なのに「合同会社」を含めたりすれば、その商号は登記できません。法令の規定により使用を禁止された商号の登記を目的とする申請は、却下事由です(商業登記法24条13号)。択一では、商業登記規則50条の符号と、会社法6条の種類の文字を組み合わせた肢がよく作られます。
目的変更で審査されること
具体性は審査しない
会社の目的について、かつては登記官が適法性・営利性・明確性に加えて、具体性も審査していました。具体性とは、会社の事業の範囲を客観的に判断できる程度に目的が具体的に書かれているか、という基準です。
この具体性の審査は、会社法の施行とともにやめられています。法務省は、会社の目的が具体的かどうかについては、従来と異なり登記申請に際して審査しないと説明しています。
それでも登記できない目的
具体性を審査しなくなっても、どんな目的でも登記できるわけではありません。法務省は、公序良俗に反するものや、記載内容が不明確なものは登記できないとしています。
| 審査の観点 | 現行の扱い |
|---|---|
| 適法性 | 審査する。法令や公序良俗に反する目的は登記できない |
| 明確性 | 審査する。意味が分からない目的は登記できない |
| 具体性 | 審査しない |
目的を広く抽象的に書いても登記はできます。ただ、許認可の申請や金融機関との取引で、目的の書き方が問題になることはあります。試験では、具体性を審査するかどうかが正誤の分かれ目になります。

目的は全部を書き直す
目的変更の登記では、変更後の目的を全部書くのが通常です。目的は「1. ○○ 2. ○○ 3. 前各号に附帯する一切の事業」のように号を立てて定めます。1つの号を追加しただけでも、登記すべき事項には変更後の目的全体を書きます。
記述式では、議事録に「定款第2条を次のとおり変更する」とあり、変更後の条文全体が示されるのが典型です。議事録の新しい条文を、そのまま登記すべき事項に写します。号番号のずれや「附帯する一切の事業」の写し漏れが失点になりやすいところです。
申請書の組み立て
登記の事由と登記すべき事項
申請書には、登記の事由と登記すべき事項を書きます(商業登記法17条2項3号・4号)。商号と目的を同時に変える場合の骨格は次のとおりです。
| 欄 | 書く内容の例 |
|---|---|
| 登記の事由 | 商号変更、目的変更 |
| 登記すべき事項 | 令和8年7月1日変更 商号 株式会社ブートラボ商事 |
| 同 | 令和8年7月1日変更 目的 1. ○○ 2. ○○ 3. 前各号に附帯する一切の事業 |
| 登録免許税 | 金3万円 |
| 添付書面 | 株主総会議事録、株主リスト、委任状 |
登記の事由には、何の登記かを書きます。登記すべき事項には、変更後の内容と変更の年月日を書きます。商号変更なら新しい商号、目的変更なら新しい目的の全体です。
添付書面は議事録・株主リスト・委任状
登記すべき事項につき株主総会の決議を要するときは、その議事録を添付します(商業登記法46条2項)。株主総会の決議を要する場合には、株主リストも添付します(商業登記規則61条3項)。株主リストは、議決権の割合が高い上位の株主について、次のいずれか少ない人数分を記載します。
- 10名
- 議決権の割合の多い順に加算し、3分の2に達するまでの人数
代理人が申請するなら委任状を付けます(商業登記法18条)。
株主全員の書面による同意で決議を省略した場合は、株主総会の決議があったものとみなされます(会社法319条1項)。この場合は議事録に代えて、決議があったものとみなされる場合に該当することを証する書面を添付します(商業登記法46条3項)。株主リストは、この場合も必要です。商業登記規則61条3項は、決議があったものとみなされる場合を含めて定めているからです。
| 事案 | 添付書面 |
|---|---|
| 株主総会で決議した | 株主総会議事録、株主リスト、委任状 |
| 会社法319条1項で決議を省略した | 決議があったものとみなされる場合に該当することを証する書面、株主リスト、委任状 |
取締役会議事録は要りません。商号変更・目的変更には、取締役会で決めるべき事項がないからです。
登録免許税はツの区分で1件3万円
商号の変更も目的の変更も、登録免許税法別表第一第24号(1)の個別の区分には挙がっていません。そこで、同号(1)ツ「登記事項の変更、消滅又は廃止の登記(これらの登記のうちイからソまでに掲げるものを除く。)」に当たり、申請件数1件につき3万円です。
課税の単位は申請件数です。商号変更と目的変更を1つの申請書で同時に申請しても、どちらも同じツの区分なので3万円で済みます。6万円にはなりません。区分が違う登記を同時に申請したときに、区分ごとの税額を合算します。税額の数え方の全体は登録免許税の計算で確認できます。

組合せ論点と持分会社
本店移転と同時の場合
記述式では、商号変更と本店移転が同じ株主総会で決議されることがあります。管轄内の本店移転なら、1つの申請書で商号変更・本店移転を申請できます。登録免許税は区分ごとに数えます。
| 同時に申請する登記 | 区分 | 税額 |
|---|---|---|
| 商号変更・目的変更 | 別表第一第24号(1)ツ | 3万円 |
| 本店移転 | 同号(1)ヲ | 1箇所3万円 |
| 合計 | 6万円 |
管轄外の本店移転と同時の場合は、旧所在地宛と新所在地宛の2通を旧所在地の登記所に同時に出す仕組みが前提になります(商業登記法51条)。新所在地では会社法911条3項各号の事項が登記されるので(会社法916条1号)、新しい登記記録には変更後の商号と目的が載ります。2通の書き分けは本店移転登記の手順で考えてください。
商号と本店を同時に変える事案では、同一商号・同一本店の禁止を、変更後の商号と変更後の本店の組合せで考えます。移転先に同じ商号の会社がすでに登記されていれば、その組合せでは登記できません。

役員変更など他の登記と同時の場合
定時株主総会で役員の選任と定款変更を一緒に決議する事案は、記述式の典型です。この場合も、1つの申請書に複数の登記の事由を並べ、税額は区分ごとに合算します。
- 商号変更・目的変更:ツ区分 3万円
- 役員変更:カ区分 3万円。資本金の額が1億円以下の会社は1万円
株主総会議事録と株主リストは、両方の登記に共通の添付書面として1通ずつ付ければ足ります。就任承諾書や印鑑証明書など、役員変更に固有の添付書面の考え方は役員変更登記で整理しています。
商号変更と印鑑
登記所に印鑑を提出するかどうかは任意です。印鑑の証明書は、印鑑を登記所に提出した者が請求できる仕組みになっています(商業登記法12条1項)。会社の代表者が印鑑を提出するときの印鑑届書には、商号・本店・資格・氏名・出生の年月日を記載します(商業登記規則9条1項4号)。
印鑑の印影に旧商号が彫られていても、商号変更の登記の添付書面に印鑑の関係の書面が加わるわけではありません。印鑑を作り直して提出し直すかどうかは、印鑑届書による別の手続の問題です。試験で商号変更の申請書を組み立てるときは、添付書面欄に印鑑関係の書面を書き込まないよう注意してください。
持分会社の場合の違い
持分会社でも、目的と商号は定款の絶対的記載事項です(会社法576条1項1号・2号)。目的と商号は登記事項でもあります(会社法912条1号・2号、913条1号・2号、914条1号・2号)。違いは、定款変更の決め方と添付書面にあります。
| 項目 | 株式会社 | 持分会社 |
|---|---|---|
| 定款変更の決議 | 株主総会の特別決議。会社法466条・309条2項11号 | 定款に別段の定めがなければ総社員の同意。会社法637条 |
| 決議を証する書面 | 株主総会議事録。商業登記法46条2項 | 総社員の同意があったことを証する書面。商業登記法93条 |
| 株主リスト | 必要。商業登記規則61条3項 | 株主がいないので不要 |
| 登録免許税 | ツ区分で1件3万円 | 同じ |
商業登記法93条は合名会社の規定で、合資会社には111条、合同会社には118条で準用されています。定款の別段の定めにより総社員の同意以外の方法で定款を変更したときは、定款の定めがなければ無効となる申請として定款も添付します(商業登記規則82条、合同会社は92条で準用)。会社の種類ごとの機関の違いは株式会社と合同会社の違いで確認できます。
試験での出題ポイント
択一式ではこう問われる
商号変更・目的変更は、商業登記法の択一で条文の細部がそのまま肢になります。
- 同一の商号の会社が同一市町村内に本店を有する場合、商号変更の登記はできない。誤りです。禁止されるのは商号と本店の所在場所がともに同一の場合です(商業登記法27条)
- 商号の末尾にピリオドを用いることはできない。誤りです。省略を表すピリオドは末尾に使えます
- 会社の目的に具体性がないことを理由に、目的変更の登記の申請は却下される。誤りです。具体性は審査されません
- 商号変更と目的変更を1つの申請書で申請するときの登録免許税は6万円である。誤りです。いずれもツ区分なので1件3万円です
- 株主総会の決議を省略して商号を変更した場合、株主リストの添付は要しない。誤りです(商業登記規則61条3項)
- 合同会社の目的変更の登記の申請書には、定款に別段の定めがなければ総社員の同意があったことを証する書面を添付する。正しいです(会社法637条、商業登記法118条・93条)
会社法の定款変更の決議要件は午前の部でも問われます。両科目をつなげて学ぶ方法は会社法・商業登記法の勉強法を参照してください。
記述式との接続
記述式では、商号変更や目的変更が単独で出ることはほとんどありません。役員変更・本店移転・募集株式の発行などと一緒に、1枚の申請書の一部として出ます。処理の順序は次のとおりです。
- 株主総会議事録から、定款変更の決議があるかを拾う
- 特別決議の定足数と賛成の割合を満たしているかを確かめる
- 効力発生日の定めがあるかを確認し、登記すべき事項の年月日を決める
- 新しい商号が、符号の使い方と会社の種類の文字の点で登記できるかを確かめる
- 目的は変更後の全体を写す
- 他の登記と区分ごとに登録免許税を合算する
小さな登記ほど、決議要件の検討と税額の合算で落とします。定款変更の決議が普通決議の要件しか満たしていなければ、その変更の登記は申請できません。問題文に申請しない登記の理由を書かせる欄があれば、そこで決議要件の不足を書くことになります。答案全体の組み立ては記述式(商業登記法)の対策で扱っています。
まとめ
- 商号と目的は定款の絶対的記載事項。変更は株主総会の特別決議による定款変更で、取締役会の決議は要らない。
- 登記期間は効力が生じた日から2週間。効力発生日の定めがあればその日が起算点になる。
- 禁止されるのは同一商号かつ同一本店の登記だけ。類似商号の規制は会社法の施行で廃止された。
- 商号の符号は法務大臣の告示で指定された6つ。先頭・末尾は不可、ピリオドだけ末尾に使える。
- 目的の具体性は審査されない。適法性と明確性はなお審査される。
- 添付書面は株主総会議事録・株主リスト・委任状。登録免許税はツ区分で1件3万円。
- 持分会社は定款に別段の定めがなければ総社員の同意。株主リストは付けない。
よくある質問
商号変更と目的変更を別々の申請書で出すと、税額は変わりますか
変わります。登録免許税は申請件数1件ごとに3万円です。1つの申請書で商号変更と目的変更を申請すれば、どちらも別表第一第24号(1)ツの区分なので3万円で済みます。別々の申請書にすれば申請が2件になり、合計6万円です。試験では、特に指示がなければ同時に申請する前提で税額を計算します。
同じ商号の会社が同じビルに本店を置いています。登記できますか
本店の所在場所が完全に同一なら、同じ商号は登記できません(商業登記法27条)。同じビルでも、所在場所の記載が同一かどうかで判断されます。商号が少しでも違えば、同一ではないので27条には当たりません。ただし、不正の目的で他の会社と誤認されるおそれのある商号を使うことは、会社法8条で禁止されています。
取締役会設置会社なら、取締役会議事録も添付しますか
商号変更・目的変更だけなら添付しません。商業登記法46条2項は、登記すべき事項につき決議を要する機関の議事録を求めています。商号と目的の変更は株主総会の決議だけで効力を生じ、取締役会で決める事項がありません。添付するのは株主総会議事録と株主リスト、代理人が申請するなら委任状です。同じ申請書で本店移転や代表取締役の選定もするなら、その部分について取締役会議事録が加わります。

