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株主総会の決議要件:普通・特別・特殊決議の整理

会社法・商法 読了 約10分

司法書士試験の受験生向けに、株主総会の決議要件を会社法309条・341条で整理。普通決議・役員選解任・特別決議・2種類の特殊決議の定足数と可決要件、定款による変更の限界、対象事項の一覧と登記の添付書面まで解説します。

株主総会の決議要件は、会社法の択一で毎年のように問われ、商業登記の記述式では議事録を読む前提知識になります。結論から言うと、覚えることは「定足数」と「可決要件」の2つの軸だけです。そのうえで、定款で緩められるのか厳しくできるのか、分母が「出席した株主」なのか「議決権を行使できる株主」なのか「総株主」なのかを、決議の種類ごとに区別します。

この記事は司法書士試験の受験生向けに、会社法309条と341条を中心に、決議要件を条文の文言どおりに整理したものです。会社法・商業登記法全体の学習設計は会社法・商業登記法の勉強法で扱っているので、この記事は決議要件の精度を上げることに絞ります。

決議要件の全体像:定足数と可決要件

5つの決議を一枚の表にする

株主総会の決議は、会社法上、次の5つに分けて覚えるのが実戦的です。

決議の種類 条文 定足数 可決要件
普通決議 309条1項 議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主の出席 出席した株主の議決権の過半数
役員の選任・解任 341条 同上。ただし定款で下げられるのは3分の1まで 出席した株主の議決権の過半数
特別決議 309条2項 同上。定款で下げられるのは3分の1まで 出席した株主の議決権の3分の2以上
特殊決議 309条3項 なし 議決権を行使できる株主の半数以上で、その議決権の3分の2以上
特殊決議 309条4項 なし 総株主の半数以上で、総株主の議決権の4分の3以上

定足数と可決要件は別の要件です。定足数は「その総会で決議ができるだけの株主が出席しているか」、可決要件は「出席した中でどれだけ賛成したか」を見ます。特殊決議には定足数がなく、頭数と議決権の二重の要件で判断します。

分母の言葉を読み分ける

決議要件の肢は、分母の言葉を入れ替えて作られます。条文の表現を正確に区別してください。

  • 議決権を行使することができる株主の議決権:定足数の分母。議決権制限株式などで議決権のない株主は数えない
  • 出席した当該株主の議決権:普通決議・特別決議の可決要件の分母
  • 議決権を行使することができる株主の半数以上:309条3項の頭数要件。株主の人数で数える
  • 総株主の半数以上・総株主の議決権:309条4項。議決権の有無を問わず全株主が分母

309条3項と4項の違いは、前者が「議決権を行使できる株主」、後者が「総株主」を分母にしている点です。4項のほうが分母が広く、割合も4分の3と高いので、より重い要件になります。

普通決議と役員の選任・解任

普通決議は定款で定足数を外せる

309条1項は「定款に別段の定めがある場合を除き」と定めています。したがって普通決議は、定款で定足数を軽くすることも、なくすこともできます。計算書類の承認や剰余金の配当の決定など、法律が特別決議や特殊決議を求めていない事項は普通決議です。

役員の選任・解任は341条の特則

役員、すなわち取締役・会計参与・監査役を選任し、または解任する決議は、341条の特則に従います。

  • 定足数は議決権の過半数。定款で引き下げられるのは3分の1以上の割合まで
  • 可決要件は出席株主の議決権の過半数。定款でこれを上回る割合を定めることはできる

普通決議は定足数を完全に排除できるのに対し、役員の選解任は3分の1が下限になる点が肢になります。会社の経営陣を決める決議なので、少数の出席で決められないようにしています。会計監査人は341条の「役員」に含まれないので、その選任・解任は309条1項の普通決議です。役員の範囲は329条1項で取締役・会計参与・監査役と定められており、会計監査人はそこに入っていません。

監査役の解任は特別決議

役員の解任は原則として341条の決議でできますが、例外があります。監査役の解任は341条が適用されず(343条4項)、309条2項7号により特別決議が必要です。累積投票によって選任された取締役の解任(342条6項)と、監査等委員である取締役の解任も同じく特別決議です。

解任の対象 決議 根拠
取締役(通常) 341条の決議 339条1項・341条
累積投票で選任された取締役 特別決議 342条6項・309条2項7号
監査等委員である取締役 特別決議 309条2項7号
監査役 特別決議 343条4項・309条2項7号
会計監査人 普通決議 339条1項・309条1項

監査役の独立性を守るため、選ぶのは過半数でも、辞めさせるには3分の2が要るという非対称の設計です。取締役の任期と権利義務の関係は取締役の任期で整理しています。

特別決議:会社法309条2項

要件と定款による変更の限界

特別決議は、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の多数で行います。定款では、定足数を3分の1以上の割合まで下げることと、可決要件を3分の2より上げることができます。さらに309条2項後段は、決議要件に加えて一定の数以上の株主の賛成を要するなどの要件を定款で定めることを妨げないとしています。つまり頭数要件の上乗せも可能です。

特別決議が必要な事項

309条2項は1号から12号で対象を列挙しています。条文の号の順で覚えるより、分野ごとにまとめると頭に入ります。

分野 主な事項 号
株式 譲渡等承認請求に応じた会社による買取り・指定買取人の指定 1号
株式 特定の株主からの自己株式の取得 2号
株式 全部取得条項付種類株式の取得、相続人等に対する売渡しの請求 3号
株式 株式の併合 4号
募集株式・新株予約権 株主総会で募集事項を決定する場合など 5号・6号
役員 累積投票で選任された取締役・監査等委員である取締役・監査役の解任 7号
役員 役員等の責任の一部免除 8号
計算 資本金の額の減少。一定の欠損填補の場合を除く 9号
計算 金銭分配請求権を与えない現物配当 10号
基本事項 定款変更・事業譲渡等・解散。第6章から第8章 11号
組織再編 組織変更・合併・会社分割・株式交換・株式移転・株式交付。第5編 12号

定款変更、事業譲渡、解散、組織再編という会社の根本に関わる事項がまとめて11号と12号に入っていることを押さえれば、残りは株式と計算の細目です。

普通決議で足りる例外

9号の資本金の額の減少には例外があります。定時株主総会で減少額などを定め、かつ減少する資本金の額がその総会の日における欠損の額として法務省令で定める方法により算定される額を超えない場合は、特別決議ではなく普通決議で足ります。欠損の填補に充てるだけの減資は株主の不利益が小さいからです。

10号の現物配当も、株主に金銭分配請求権を与えない場合に限って特別決議です。金銭分配請求権を与えるなら普通決議で足ります。「資本金の減少は常に特別決議」「現物配当は常に特別決議」という肢は誤りです。

特殊決議と株主全員の同意

309条3項:議決権を行使できる株主の半数以上

309条3項の特殊決議は、議決権を行使できる株主の半数以上であって、その議決権の3分の2以上の多数で行います。定款でこれを上回る割合を定めることはできますが、下げることはできません。対象は次の3つです。

  1. 発行する全部の株式に譲渡制限の定めを設ける定款変更
  2. 消滅株式会社または株式交換完全子会社が公開会社で、株主に譲渡制限株式等を交付する場合の吸収合併・株式交換の承認
  3. 新設合併・株式移転をする会社が公開会社で、株主に譲渡制限株式等を交付する場合の承認

いずれも、自由に譲渡できた株式が譲渡制限株式に変わる場面です。株主にとって投下資本の回収手段が狭まるので、議決権だけでなく人数でも多数の賛成を求めています。なお3項は種類株式発行会社の株主総会を除いています。種類株式発行会社では、種類株主総会の特殊決議で対応する仕組みです(324条3項)。

309条4項:総株主の半数以上

309条4項の特殊決議は、総株主の半数以上であって、総株主の議決権の4分の3以上の多数で行います。対象は、公開会社でない株式会社が剰余金の配当・残余財産の分配・株主総会の議決権について株主ごとに異なる取扱いを定める定款の定め、いわゆる属人的定めを設けまたは変更する定款変更です(109条2項)。属人的定めを廃止する定款変更は除かれています。廃止は株主平等に戻る方向なので、通常の特別決議で足ります。

種類株主総会の決議要件

種類株式発行会社では、株主総会とは別に、ある種類の株主だけで構成する種類株主総会の決議が必要になる場面があります。324条は株主総会と同じ構造で決議要件を定めています。1項が普通決議、2項が特別決議、3項が特殊決議です。ただし分母は「その種類の株式の総株主の議決権」など、その種類の株主に限られます。株主総会の3分類を正確に覚えていれば、種類株主総会は分母を読み替えるだけで対応できます。

株主全員の同意が必要な場面

特殊決議よりさらに重いのが株主全員の同意です。試験では次の2つが典型です。

  • 種類株式発行会社でない会社が、発行する全部の株式を取得条項付株式とする定款の定めを設け、またはその内容を変更する場合(110条)
  • 株式会社が持分会社に組織変更をする場合の組織変更計画の承認(776条1項)

「全部の株式を譲渡制限株式にする」は309条3項の特殊決議、「全部の株式を取得条項付株式にする」は株主全員の同意です。株主の意思に反して株式を取り上げられる取得条項のほうが、影響が大きいからです。

決議の省略・瑕疵と取締役会設置会社の制約

株主総会の決議の省略

319条1項は、取締役または株主が株主総会の目的である事項について提案し、議決権を行使できる株主の全員が書面または電磁的記録で同意の意思表示をしたときは、その提案を可決する決議があったものとみなすと定めています。決議要件の種類を問いません。特別決議や特殊決議の事項でも、全員が同意すれば決議があったものとみなされます。

取締役会設置会社では目的事項に縛られる

取締役会設置会社の株主総会は、会社法と定款で定めた事項に限り決議でき(295条2項)、さらに招集の際に定めた目的事項以外は決議できません(309条5項)。取締役会を置かない会社の株主総会は一切の事項について決議でき(295条1項)、目的事項以外の決議を禁じる309条5項の制約もありません。この違いは取締役会設置会社と非設置会社の違いでも整理しています。

要件を欠いた決議は取消しの対象になる

定足数や可決要件を満たさないまま可決とされた決議は、決議の方法が法令に違反する場合にあたり、株主等は決議の日から3か月以内に訴えをもって取消しを請求できます(831条1項1号)。取消しの訴えは形成訴訟なので、判決で取り消されるまでは決議は有効なものとして扱われます。招集の手続や決議の方法の法令・定款違反であっても、違反する事実が重大でなく、かつ決議に影響を及ぼさないと認められるときは、裁判所は請求を棄却できます(同条2項)。

試験では「決議要件を欠く決議は当然に無効である」という肢が作られます。決議の方法の瑕疵は取消事由であり、無効確認の訴えの対象になるのは決議の内容が法令に違反する場合です。瑕疵の種類と訴えの種類をセットで覚えてください。

試験での出題ポイント

択一式ではこう問われる

決議要件は、数字と分母と定款による変更の方向を入れ替える形で出題されます。

  • 定足数の排除:普通決議は定款で排除できる。役員の選解任と特別決議は3分の1が下限。
  • 可決要件の変更:役員の選解任・特別決議・特殊決議はいずれも引き上げのみ。
  • 監査役の解任:特別決議。取締役の解任と混同させる肢に注意。
  • 会計監査人:341条の役員ではないので、選任・解任は普通決議。
  • 資本金の額の減少:原則特別決議。定時総会での欠損填補の範囲内なら普通決議。
  • 特殊決議の分母:3項は議決権を行使できる株主、4項は総株主。
  • 4項の対象:属人的定めの新設・変更。廃止は除く。
  • 全員同意:全部の株式の取得条項付株式化、持分会社への組織変更。

肢別の過去問で、決議の種類を問う肢を一か所に集めて連続で解くと、数字の入れ替えに反応できるようになります。会社法の科目ページから論点別に演習できます。

記述式との接続

商業登記の記述式では、株主総会議事録の決議が有効に成立しているかを判断し、その決議に基づく登記を申請します。

  • 議事録の出席株主の議決権数と賛成数を、決議要件に当てはめて確認する。要件を満たさない決議に基づく登記は申請しない。
  • 議決権数を数えるときは、会社が保有する自己株式には議決権がないことに注意する(308条2項)。発行済株式の総数をそのまま分母にしない。
  • 登記すべき事項に株主総会の決議を要するときは、議事録を添付する(商業登記法46条2項)。319条1項で決議があったものとみなされる場合は、その場合に該当することを証する書面を添付する(同条3項)。
  • 株主総会の決議を要する登記では、議決権数の上位10名と、議決権割合を多い順に加えて3分の2に達するまでの人数のうち、少ないほうの人数分の株主を記載した株主リストを添付する(商業登記規則61条3項)。

役員変更の登記の添付書面は役員変更登記の添付書面、記述式での議事録の読み方は記述式(商業登記)対策で詳しく扱っています。

まとめ

  • 決議要件は定足数と可決要件の2軸で整理する。特殊決議には定足数がない。
  • 普通決議は定款で定足数を排除できる。役員の選解任は3分の1が下限で、可決要件は引き上げのみ。
  • 監査役・累積投票で選任された取締役・監査等委員である取締役の解任は特別決議。会計監査人の選解任は普通決議。
  • 特別決議は過半数の出席と出席議決権の3分の2以上。定款変更・事業譲渡・解散・組織再編が中心。
  • 309条3項は全部の株式の譲渡制限など。議決権を行使できる株主の半数以上かつ3分の2以上。
  • 309条4項は属人的定めの新設・変更。総株主の半数以上かつ総株主の議決権の4分の3以上。
  • 全部の株式の取得条項付株式化と持分会社への組織変更は株主全員の同意。

よくある質問

普通決議の定足数を定款で排除しても、取締役の選任には使えますか

使えません。役員の選任・解任は341条の特則に従い、定足数は定款で定めても3分の1以上の割合までしか下げられません。定款で「普通決議の定足数を排除する」と定めていても、役員の選解任には3分の1の下限が残ります。記述式の定款を読むときは、役員の選任に関する別の定めがあるかも確認してください。

特殊決議の309条3項と4項はどう覚え分ければよいですか

分母と割合で区別します。3項は「議決権を行使することができる株主の半数以上」かつ「その議決権の3分の2以上」、4項は「総株主の半数以上」かつ「総株主の議決権の4分の3以上」です。対象も、3項は株式が譲渡制限株式に変わる場面、4項は非公開会社の属人的定めと、場面がはっきり分かれています。

株主が1人しかいない会社でも総会の決議は必要ですか

必要です。ただし319条1項により、議決権を行使できる株主の全員が書面または電磁的記録で同意すれば、決議があったものとみなされます。株主が1人なら、その株主の同意書面で決議を省略できます。この場合の登記では、議事録に代えて決議があったものとみなされる場合に該当することを証する書面を添付します(商業登記法46条3項)。

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