解散と清算結了の登記:清算人の登記と添付書面
株式会社の解散から清算結了までを、解散事由と休眠会社のみなし解散、清算人と代表清算人の決まり方、解散・清算人・清算結了・継続の各登記の添付書面と登録免許税の順に整理。商業登記の択一と記述式に備える受験生向けです。
株式会社の解散と清算は、会社法の条文を「誰が清算人になるか」と「いつ何を登記するか」に分けて読むと整理できます。択一では清算人の決まり方と休眠会社のみなし解散が、記述式では解散と清算人の登記を1通の申請書で書く判断が問われます。
結論を先に言うと、株主総会の決議で解散した会社は、解散の登記と清算人の登記を2週間以内に申請します。清算人には、定款や株主総会で別に定めなければ取締役がそのままなり、代表取締役は代表清算人になります。債権者に2か月以上の申出期間を置いたうえで清算事務を終え、株主総会で決算報告の承認を受けたら、清算結了の登記をして登記記録が閉じられます。
この記事は、解散・清算の条文を一度通し、登記の添付書面まで結びつけたい受験生向けです。科目全体の中での位置づけは会社法・商業登記法の勉強法で扱っています。
解散事由と解散の登記
6つの解散事由
株式会社は、次の事由によって解散します(会社法471条)。
| 号 | 解散事由 | 登記の方法 |
|---|---|---|
| 1号 | 定款で定めた存続期間の満了 | 会社が申請(926条) |
| 2号 | 定款で定めた解散の事由の発生 | 会社が申請(926条) |
| 3号 | 株主総会の決議 | 会社が申請(926条) |
| 4号 | 合併により消滅する場合 | 合併の登記と同時に申請(921条) |
| 5号 | 破産手続開始の決定 | 裁判所書記官の嘱託 |
| 6号 | 解散を命ずる裁判 | 裁判所書記官の嘱託 |
このほか、休眠会社は一定の手続を経て解散したものとみなされます(472条)。
株主総会の解散決議は特別決議です(309条2項11号)。存続期間や解散の事由を定款で定めたときは、その定めも登記事項になります(911条3項4号)。
解散すれば清算をするのが原則ですが、合併で消滅する場合と、破産手続開始の決定で解散して破産手続が終了していない場合は、清算をしません(475条1号)。合併では権利義務が存続会社に包括承継され、破産では破産管財人が財産を管理処分するからです。
解散の登記の中身
解散の登記で登記すべき事項は、解散の旨と、その事由・年月日です(商業登記法71条1項)。
| 添付書面 | 必要になる場面 | 根拠 |
|---|---|---|
| 株主総会議事録と株主リスト | 株主総会の決議で解散したとき | 46条2項、商業登記規則61条3項 |
| 解散の事由の発生を証する書面 | 定款で定めた解散の事由が発生したとき | 71条2項 |
| 代表清算人の資格を証する書面 | 代表清算人が申請するとき。取締役が法定清算人となり、代表取締役が代表清算人となった場合などは不要 | 71条3項 |
| 委任状 | 代理人が申請するとき | 18条 |
存続期間の満了による解散では、存続期間は登記されているので、事由の発生を証する書面は求められていません。71条2項が対象にしているのは「定款で定めた解散の事由」だけです。
登録免許税は申請1件につき3万円です(登録免許税法別表第一第24号(1)レ)。
登記官が抹消する登記
株主総会の決議などで解散の登記をすると、登記官は、取締役会設置会社である旨、取締役・代表取締役・社外取締役、会計参与、会計監査人などの登記を抹消する記号を記録します(商業登記規則72条1項)。清算株式会社には取締役の設置などを定めた機関の設置の規定が適用されず(477条7項)、清算人が職務を行うからです。
監査役の登記は、この抹消の対象に入っていません。清算株式会社も定款で監査役を置くことができ(477条2項)、解散の時に公開会社または大会社であった清算株式会社は監査役を置かなければならないからです(同条4項)。
休眠会社のみなし解散
12年と2か月
休眠会社とは、その会社に関する登記が最後にあった日から12年を経過した株式会社です。法務大臣が、2か月以内に事業を廃止していない旨の届出をするよう官報で公告し、その届出をしないときは、2か月の期間の満了の時に解散したものとみなされます(472条1項)。登記所は、公告があったことを休眠会社に通知します(同条2項)。
期間内にその会社に関する登記がされたときは、届出がなくても解散したものとはみなされません(同条1項ただし書)。取締役の任期は伸長しても最長10年なので、活動している会社なら12年の間に少なくとも1回は役員変更の登記がされるはずです。12年間登記がないことが、事業の実体がないことの目安になっています。
解散の登記は職権でされる
みなし解散による解散の登記は、登記官が職権でします(商業登記法72条)。会社の申請は不要です。ただし、清算人の登記は職権ではされないので、清算を進めるなら会社が清算人の登記を申請します。
3年以内なら継続できる
みなし解散をした会社は、解散したものとみなされた後3年以内に限り、株主総会の決議で会社を継続できます(473条)。3年を過ぎると継続はできず、清算を結了させるしかありません。
清算人と清算人の登記
清算人・代表清算人の決まり方
清算株式会社には、1人以上の清算人を置きます(477条1項)。清算人になるのは次の者です(478条1項)。
- 定款で定める者
- 株主総会の決議で選任された者
- 上の2つがいなければ、取締役
条文の号の順は取締役・定款・株主総会ですが、取締役は「次号または第3号に掲げる者がある場合を除く」とされているので、定款と株主総会の選任が優先します。取締役がそのまま清算人になる場合を、法定清算人と呼びます。これらの者がいないときは、利害関係人の申立てにより裁判所が選任します(同条2項)。解散命令による解散の場合は、裁判所が選任します(同条3項)。
清算人は清算株式会社を代表し、2人以上いれば各自が代表します(483条1項・2項)。清算人会を置かない会社は、定款、定款の定めに基づく清算人の互選、または株主総会の決議で、代表清算人を定めることができます(同条3項)。
取締役が法定清算人となる場合に、代表取締役を定めていたときは、その代表取締役が代表清算人となります(483条4項)。清算人会を置くかどうかは定款で定め、清算人会設置会社は清算人会で代表清算人を選定します(477条2項・489条3項)。取締役会設置会社であっても、解散すれば当然に清算人会設置会社になるわけではありません。
清算人の登記
登記すべき事項は、清算人の氏名、代表清算人の氏名と住所、清算人会設置会社であるときはその旨です(928条1項)。法定清算人は解散の日から2週間以内、選任された清算人は選任から2週間以内に登記します(同条1項・3項)。
| 添付書面 | 必要になる場面 | 根拠 |
|---|---|---|
| 定款 | 常に | 商業登記法73条1項 |
| 就任承諾書 | 定款で定める者、株主総会で選任された者が清算人となったとき | 73条2項 |
| 株主総会議事録と株主リスト | 株主総会で清算人や代表清算人を選任したとき | 46条2項、規則61条3項 |
| 裁判所の選任を証する書面 | 裁判所が選任したとき | 73条3項 |
定款が常に必要なのは、法定清算人の場合でも、定款に清算人の定めがないことを登記官が確認するためです。法定清算人は取締役がそのまま清算人になるので、就任承諾書は要りません。登録免許税は申請1件につき9,000円です(別表第一第24号(3)イ)。
解散と清算人を1通で申請する型
解散の登記と清算人の登記は、同じ申請書でまとめて申請できます。オリジナルの例で骨格を確認します。取締役会設置会社のX株式会社が、株主総会の特別決議で解散し、定款に清算人の定めがなく、株主総会でも清算人を選任しなかったとします。代表取締役はAです。
| 欄 | 記載の型 |
|---|---|
| 登記の事由 | 解散、清算人及び代表清算人の登記 |
| 登記すべき事項 | 年月日株主総会の決議により解散。清算人A、B、C。代表清算人Aとその住所 |
| 添付書面 | 株主総会議事録、株主リスト、定款、委任状 |
| 登録免許税 | 3万9,000円 |
取締役A・B・Cがそのまま清算人になり、代表取締役Aが代表清算人になる場面です。法定清算人なので就任承諾書は付けず、代表清算人Aは代表取締役から移った者なので資格を証する書面も要りません(商業登記法71条3項ただし書)。定款は、清算人の定めがないことを示すために付けます。登録免許税は、解散の3万円と清算人の9,000円の合計です。取締役会設置会社である旨は職権で抹消されるので、清算人会を置く定款の定めがない限り、清算人会設置会社である旨は登記しません。
清算の手続
清算株式会社ができること・できないこと
清算株式会社は、清算の目的の範囲内で、清算が結了するまでなお存続するものとみなされます(476条)。清算人の職務は、現務の結了、債権の取立てと債務の弁済、残余財産の分配です(481条)。
解散した会社は、存続会社となる合併や、吸収分割で他の会社の権利義務を承継することができません(474条)。消滅会社となる合併は禁止されていない点が、択一の入れ替えの定番です。株式交換・株式移転・株式交付の手続の規定も清算株式会社には適用されません(509条1項3号)。
財産の調査と債権者への公告
清算人は、就任後遅滞なく財産の現況を調査し、解散の日における財産目録と貸借対照表を作成して、株主総会の承認を受けます(492条1項・3項)。清算が長引く場合は、解散の日の翌日から始まる1年ごとの清算事務年度について貸借対照表と事務報告を作成し(494条1項)、定時株主総会に提出して貸借対照表の承認を受けます(497条)。事業年度ではなく清算事務年度で区切る点が、解散前との違いです。
清算株式会社は、遅滞なく、債権者に一定の期間内に債権を申し出るよう官報に公告し、知れている債権者には各別に催告します。この期間は2か月を下ることができません(499条1項)。公告には、期間内に申出をしないと清算から除斥される旨を付記します(同条2項)。
弁済の制限と残余財産の分配
申出の期間内は、原則として債務の弁済ができません。少額の債権や担保権で担保された債権などは、裁判所の許可を得て弁済できます(500条)。期間内に申出をしなかった債権者は、知れている債権者を除き、清算から除斥され、分配されていない残余財産に対してのみ弁済を請求できます(503条1項・2項)。
債務を弁済した後でなければ、株主に財産を分配できません(502条)。財産が債務を完済するのに足りないことが明らかになったときは、清算人は直ちに破産手続開始の申立てをします(484条1項)。
清算結了の登記と会社の継続
決算報告の承認と登記期間
清算事務が終わったら、清算人は決算報告を作成し、株主総会の承認を受けます(507条1項・3項)。清算人会設置会社では、先に清算人会の承認を受けます(同条2項)。承認があったときは、清算人の任務懈怠による損害賠償責任は、不正の行為がない限り免除されたものとみなされます(同条4項)。
清算結了の登記は、決算報告の承認の日から2週間以内に、本店の所在地で申請します(929条1号)。
添付書面と登録免許税
清算結了の登記の申請書には、決算報告の承認があったことを証する書面を添付します(商業登記法75条)。具体的には、決算報告を承認した株主総会議事録です。株主総会の決議なので株主リストも添付します(規則61条3項)。
登録免許税は申請1件につき2,000円です(別表第一第24号(3)ハ)。清算結了の登記をすると、その登記記録は閉鎖されます(規則80条1項4号・2項)。
債権申出の期間は2か月を下ることができないので、解散から2か月が経たないうちに清算事務が終わることはありません。解散の日から2か月を経過していない日を清算結了の日とする登記の申請は受理されない、という先例があります。
会社の継続
存続期間の満了、定款で定めた解散の事由の発生、株主総会の決議で解散した会社は、清算が結了するまで、株主総会の決議で会社を継続できます(473条)。みなし解散の会社は、前に述べたとおり3年以内に限られます。合併・破産・解散命令による解散では継続できません。
継続の決議は特別決議です(309条2項11号)。継続したときは2週間以内に継続の登記をします(927条)。登録免許税は申請1件につき3万円です(別表第一第24号(1)ソ)。継続した会社には取締役がいないので、取締役を選任し、機関設計を決め直して、役員の就任の登記もあわせて申請します。役員の就任登記の添付書面は役員変更登記の添付書面で確認してください。
試験での出題ポイント
択一式ではこう問われる
- 解散事由:471条の6つと472条のみなし解散。株主総会の解散決議は特別決議
- みなし解散:最後の登記から12年、届出期間2か月、登記は職権、継続は3年以内
- 清算人:定款で定める者、株主総会で選任された者、いなければ取締役。代表取締役は代表清算人になる
- 職権抹消:解散の登記で取締役・代表取締役・会計監査人などの登記は抹消されるが、監査役は残る
- できない行為:存続会社となる合併と、吸収分割による承継。消滅会社となる合併はできる
- 債権申出:官報公告と各別の催告、期間は2か月以上。期間内の弁済は原則禁止
- 添付書面:清算人の登記は常に定款。清算結了は決算報告の承認を証する書面
- 登録免許税:解散3万円、清算人9,000円、清算結了2,000円、継続3万円
商業登記法の科目ページから、解散・清算の肢を論点別に演習できます。
記述式との接続
記述式で解散が出たら、次の順で判断します。
- 解散の事由と日付を確定する。株主総会の決議なら特別決議の要件を満たしているか
- 清算人は誰か。定款の定め、株主総会の選任の有無を確認し、なければ取締役
- 代表清算人は誰か。代表取締役がいれば代表清算人になるが、別に定めていればその者
- 清算人会を置く定款変更があるか
- 解散と清算人の登記を1通にまとめ、登録免許税を3万円と9,000円で合計する
解散の決議と同時に、定款変更で清算人会や監査役の定めを置く問題もあります。監査役の設置・廃止の考え方は監査役の設置と廃止で、別紙の読み方は記述式(商業登記)対策で扱っています。
まとめ
- 解散事由は471条の6つとみなし解散。株主総会の決議・定款所定の事由・存続期間満了は会社が2週間以内に登記する
- 解散の登記で取締役・代表取締役などの登記は職権で抹消されるが、監査役は残る
- 休眠会社は最後の登記から12年、2か月の届出期間の満了で解散とみなされ、3年以内なら継続できる
- 清算人は定款・株主総会の選任が優先し、なければ取締役。代表取締役は代表清算人になる
- 清算人の登記には常に定款を添付する。登録免許税は9,000円
- 債権申出の期間は2か月以上。債務を弁済した後でなければ残余財産を分配できない
- 清算結了の登記は決算報告の承認から2週間以内。登録免許税は2,000円
よくある質問
取締役会設置会社が解散すると、清算人会設置会社になりますか
当然にはなりません。清算人会は定款の定めによって置く機関です(477条2項)。解散により取締役会設置会社である旨の登記は抹消されるので、清算人会を置くなら定款で定め、清算人会設置会社である旨を登記します。監査役会を置く旨の定款の定めがある清算株式会社は、清算人会を置かなければなりません(同条3項)。
法定清算人の場合でも、清算人の登記に定款を付けるのはなぜですか
478条1項は、定款で定める者や株主総会で選任された者がいない場合に限って取締役を清算人としています。登記官は、定款に清算人の定めがないことを確認しなければ、取締役が清算人になったと判断できません。そのため商業登記法73条1項は、清算人の登記に定款の添付を例外なく求めています。
休眠会社としてみなし解散の登記がされた後、すぐに継続できますか
みなし解散の後3年以内であれば、株主総会の特別決議で継続できます(473条)。継続するときは、継続の登記に加えて、取締役の選任など役員の就任の登記も申請します。解散の登記で取締役の登記が抹消されているので、継続後の役員をあらためて登記しなければならないからです。
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