株式会社と合同会社の違い:機関・社員の責任・登記事項を比較
株式会社と合同会社の違いを、社員の責任・機関・定款変更・持分の譲渡・登記事項・登録免許税の順に条文で比較します。合同会社は業務執行社員と代表社員が登記され、役員の任期がない。持分会社を差分で押さえたい受験生向け。
株式会社と合同会社は、どちらも出資者が有限責任しか負わない会社です。違いは、会社を動かす仕組みにあります。株式会社は株主総会と取締役という機関を通じて、持株数に応じた多数決で動きます。合同会社は、出資者である社員自身が業務を執行し、定款変更は原則として総社員の同意で決めます。この差が、登記事項・添付書面・登録免許税の違いにそのまま表れます。
この記事は、会社法の学習が株式会社に偏っていて、合同会社の条文を「差分」で押さえたい司法書士試験の受験生向けです。択一で問われる比較の軸と、商業登記法の添付書面への接続まで整理します。
全体像:合同会社は持分会社の一種
会社は4種類、持分会社は3種類
会社法で「会社」とは、株式会社・合名会社・合資会社・合同会社の4つです(会社法2条1号)。このうち合名会社・合資会社・合同会社をまとめて「持分会社」と呼びます(会社法575条1項)。
持分会社の3つは、社員の責任の組み合わせで区別されます。合同会社を設立するときは、定款に社員の全部を有限責任社員とする旨を記載します(会社法576条4項)。
| 会社の種類 | 社員の責任 | 根拠 |
|---|---|---|
| 合名会社 | 全員が無限責任 | 会社法576条2項 |
| 合資会社 | 無限責任社員と有限責任社員 | 会社法576条3項 |
| 合同会社 | 全員が有限責任 | 会社法576条4項 |
合同会社の規律は、持分会社の共通規定の上に、合同会社だけの特則を重ねた形になっています。条文を読むときは「持分会社の原則」と「合同会社の特則」を分けてください。
比較の軸を先に決める
株式会社と合同会社の違いは多岐にわたりますが、試験で問われる軸はおおむね次の6つです。
| 軸 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 出資者の名称と責任 | 株主。引受価額が限度 | 社員。全員が有限責任 |
| 業務執行 | 取締役。取締役会設置会社では取締役会が決定 | 原則として各社員。定款で業務執行社員を定められる |
| 代表 | 代表取締役など | 業務執行社員。代表社員を定められる |
| 定款変更 | 株主総会の特別決議 | 原則として総社員の同意 |
| 出資者の地位の譲渡 | 株式の譲渡は原則自由 | 持分の譲渡は原則として他の社員全員の承諾 |
| 設立時の定款認証 | 必要 | 規定なし |
以下、この6つの軸を条文で確認し、最後に登記の違いにつなげます。
社員の責任と出資の履行
全員が有限責任、しかも出資は先に払う
株主の責任は、その有する株式の引受価額を限度とします(会社法104条)。合同会社の社員も有限責任社員で、出資の価額を限度として会社の債務を弁済する責任を負います。その額からは、すでに会社に履行した出資の価額が除かれます(会社法580条2項)。
合同会社には、この責任を実質的に「出資額まで」で終わらせる規定があります。社員になろうとする者は、定款の作成後、設立の登記をする時までに、出資に係る金銭の全額を払い込み、または金銭以外の財産の全部を給付しなければなりません(会社法578条)。設立後に社員を加入させる場合も、払込みや給付を完了した時に社員となります(会社法604条3項)。
出資を先に全部履行しているので、合同会社の社員が会社債権者に直接弁済を求められる場面は、原則として残りません。株主と同じく、出資した額を失うリスクにとどまるわけです。
出資の目的は金銭等に限られる
持分会社の定款には、社員の出資の目的とその価額または評価の標準を記載します。有限責任社員の出資の目的は金銭等に限られます(会社法576条1項6号)。合同会社の社員は全員が有限責任社員なので、労務や信用を出資の目的にすることはできません。
合名会社の無限責任社員は労務や信用での出資もできる、という対比で押さえます。「持分会社の社員は労務を出資できる」という肢は、合同会社については誤りです。
社員の人数と会社の存続
株式会社は株主が1人でも存続します。合同会社も社員1人で設立でき、存続できます。ただし持分会社は、社員が欠けたことが解散事由になっています(会社法641条4号)。最後の社員が退社や死亡でいなくなれば、合同会社は解散します。
社員の死亡は法定退社事由です(会社法607条1項3号)。相続人が当然に社員の地位を承継するわけではありません。持分会社は、社員が死亡した場合に相続人が持分を承継する旨を定款で定めることができます(会社法608条1項)。この定めを置いていないと、1人社員の合同会社は社員の死亡で解散することになります。
機関:取締役と業務執行社員
株式会社は機関の組み合わせで設計する
株式会社には1人以上の取締役を置かなければなりません(会社法326条1項)。そのうえで、定款の定めによって取締役会・監査役・会計参与などを置くことができます(同条2項)。株主総会は株主で構成され、取締役会を置かない会社では会社に関する一切の事項を決議できます(会社法295条1項)。
所有と経営を分ける設計なので、出資者である株主と、業務を執行する取締役は別の地位です。取締役の選任・任期・員数といった規律が細かく置かれているのはこのためです。株式会社の機関設計の組み合わせは取締役会設置会社の機関設計で整理しています。
合同会社は社員が業務を執行する
合同会社では、社員が、定款に別段の定めがある場合を除き、会社の業務を執行します(会社法590条1項)。社員が2人以上あるときは、業務は社員の過半数で決定します(同条2項)。日常的な業務である常務は、各社員が単独で行えます(同条3項)。
定款で業務を執行する社員を定めることもできます。その場合、業務執行社員が2人以上あるときは、業務は業務執行社員の過半数で決定します(会社法591条1項)。業務執行社員を定めても、支配人の選任・解任は原則として社員の過半数で決めます(同条2項)。
| 場面 | 決める者 | 根拠 |
|---|---|---|
| 業務執行社員の定めがない | 社員の過半数 | 会社法590条2項 |
| 業務執行社員の定めがある | 業務執行社員の過半数 | 会社法591条1項 |
| 常務 | 各社員が単独で。完了前に異議があれば別 | 会社法590条3項 |
| 支配人の選任・解任 | 社員の過半数。定款で別段の定め可 | 会社法591条2項 |
株主総会・取締役会に当たる機関はありません。記述式の別紙が議事録ではなく「総社員の同意書」「業務執行社員の過半数の一致を証する書面」になるのはこのためです。
代表社員と法人の業務執行社員
業務を執行する社員は、各自、合同会社を代表します(会社法599条1項・2項)。定款または定款の定めに基づく社員の互選によって、業務執行社員の中から代表社員を定めることもできます(同条3項)。代表社員は会社の業務に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を有し、その権限に加えた制限は善意の第三者に対抗できません(同条4項・5項)。
株式会社との大きな違いは、法人が業務執行社員になれることです。取締役は法人がなれません(会社法331条1項1号)。合同会社では、法人が業務執行社員になった場合、その法人が職務を行うべき者を選任し、その氏名と住所を他の社員に通知します(会社法598条1項)。
任期がない
取締役には任期があります。原則として選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までです(会社法332条1項)。これに対し、合同会社の業務執行社員や代表社員には、任期の規定がありません。
任期がないので、合同会社には改選のたびに生じる役員変更の登記がありません。業務執行社員を定款で定めた場合、その社員は正当な事由がなければ辞任できず、解任も正当な事由がある場合に限り他の社員の一致でします(会社法591条4項・5項)。取締役の任期の数え方は取締役の任期で扱っています。
定款変更と持分の譲渡
定款変更は総社員の同意
株式会社は株主総会の決議で定款を変更します(会社法466条)。原則として特別決議です(会社法309条2項11号)。合同会社は、定款に別段の定めがある場合を除き、総社員の同意によって定款を変更します(会社法637条)。
持分会社では、社員の氏名や出資の目的が定款の記載事項です(会社法576条1項4号・6号)。社員の加入も定款の変更をした時に効力を生じます(会社法604条2項)。つまり、社員の顔ぶれが変わるたびに定款変更が絡みます。株式会社で株主が入れ替わっても定款変更が要らないのとは対照的です。
持分の譲渡は他の社員全員の承諾
株主は、その有する株式を譲渡できます(会社法127条)。定款で譲渡制限を設けない限り、会社の承認は要りません。
合同会社の社員は、他の社員の全員の承諾がなければ、持分の全部または一部を他人に譲渡できません(会社法585条1項)。例外として、業務を執行しない有限責任社員は、業務を執行する社員の全員の承諾があれば持分を譲渡できます(同条2項)。この場合の定款変更は、業務を執行する社員の全員の同意でできます(同条3項)。いずれも定款で別段の定めができます(同条4項)。
| 譲渡する者 | 必要な承諾 | 根拠 |
|---|---|---|
| 原則 | 他の社員の全員 | 会社法585条1項 |
| 業務を執行しない有限責任社員 | 業務を執行する社員の全員 | 会社法585条2項 |
退社という出口がある
株主には、原則として会社から出資を払い戻させて抜ける道がありません。株式を譲渡して投下資本を回収します。合同会社の社員には退社の制度があります。存続期間を定款で定めていないときなどは、事業年度の終了の時に、6か月前までの予告をして退社できます(会社法606条1項)。やむを得ない事由があれば、いつでも退社できます(同条3項)。
法定退社事由として、定款で定めた事由の発生、総社員の同意、死亡、破産手続開始の決定、後見開始の審判、除名などが並んでいます(会社法607条1項)。
設立と登記の違い
定款認証と設立の添付書面
株式会社の定款は、公証人の認証を受けなければ効力を生じません(会社法30条1項)。持分会社の定款については、この認証を求める規定がありません。社員になろうとする者が定款を作成し、全員が署名または記名押印すれば足ります(会社法575条1項)。
設立の登記の添付書面も違います。株式会社の設立では、定款のほか、払込みがあったことを証する書面、設立時取締役の就任承諾書などを付けます(商業登記法47条2項)。合同会社の設立では、定款と、出資に係る払込みおよび給付があったことを証する書面が基本です(商業登記法118条・94条1号・117条)。法人が代表社員や社員になる場合などは、その法人の登記事項証明書などが加わります(商業登記法118条・94条2号・3号)。株式会社の設立登記の全体像は株式会社の設立登記で扱っています。
登記事項の違い
株式会社の登記事項は会社法911条3項に、合同会社の登記事項は会社法914条に列挙されています。
| 登記事項 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 目的・商号・本店及び支店の所在場所 | 登記する | 登記する |
| 資本金の額 | 登記する | 登記する。914条5号 |
| 発行可能株式総数・発行済株式の総数 | 登記する | 株式がないので該当なし |
| 業務を執行する者 | 取締役の氏名。911条3項13号 | 業務執行社員の氏名または名称。914条6号 |
| 代表者 | 代表取締役の氏名及び住所。911条3項14号 | 代表社員の氏名または名称及び住所。914条7号 |
| 法人が代表者の場合 | 該当なし | 職務を行うべき者の氏名及び住所。914条8号 |
注意したいのは、合同会社で登記されるのは業務執行社員だけだという点です。業務を執行しない社員は登記されません。合名会社では社員全員の氏名または名称及び住所が登記事項であるのと区別してください(会社法912条5号)。
登録免許税の最低額
設立の登記の登録免許税は、どちらも資本金の額の1000分の7ですが、最低額が違います(登録免許税法別表第一第24号(1))。
| 登記 | 税率 | 最低額 | 区分 |
|---|---|---|---|
| 株式会社の設立 | 資本金の額の1000分の7 | 15万円 | イ |
| 合同会社の設立 | 資本金の額の1000分の7 | 6万円 | ハ |
| 資本金の額の増加 | 増加額の1000分の7 | 3万円 | ニ。株式会社と合同会社に共通 |
| 役員または社員に関する事項の変更 | 定額 | 3万円。資本金1億円以下は1万円 | カ |
資本金が小さい会社では最低額が適用されるので、設立の登録免許税は株式会社15万円、合同会社6万円になることが多くなります。業務執行社員や代表社員の変更は、区分カの「社員に関する事項の変更」に当たります。
株式会社と合同会社の行き来
組織変更には全員の同意が要る
株式会社が合同会社になり、合同会社が株式会社になる手続が組織変更です。株式会社の組織変更計画には総株主の同意が要り(会社法776条1項)、合同会社の組織変更計画には、定款に別段の定めがなければ総社員の同意が要ります(会社法781条1項)。特別決議ではなく全員の同意である点を押さえてください。
組織変更をしたときは、効力が生じた日から2週間以内に、本店の所在地で、組織変更前の会社は解散の登記を、組織変更後の会社は設立の登記をします(会社法920条)。2つの申請は同時にしなければならず、一方に却下事由があれば共に却下されます(商業登記法78条1項・3項)。合同会社が組織変更をする場合も、商業登記法123条が準用する107条2項により同じ規律が及びます。
持分会社の中での種類の変更
合同会社は、定款変更によって合名会社や合資会社になることもできます。社員の全部を無限責任社員とする定款の変更をすれば合名会社に、無限責任社員を加入させる定款変更をすれば合資会社になります(会社法638条3項)。これは組織変更ではなく、持分会社の中での種類の変更です。
逆方向として、合資会社の無限責任社員が退社して有限責任社員だけになれば、合同会社となる定款の変更をしたものとみなされます(会社法639条2項)。持分会社全体の学び方は会社法・商業登記法の勉強法で、差分に割り切る方針として示しています。
試験での出題ポイント
択一式ではこう問われる
持分会社の肢は、株式会社の規律と入れ替えて作られるのが典型です。
- 合同会社の社員は、労務を出資の目的とすることができる。誤りです。有限責任社員の出資は金銭等に限られます(会社法576条1項6号)
- 合同会社の定款は、公証人の認証を受けなければ効力を生じない。誤りです。認証を求める規定は株式会社の定款についてのものです(会社法30条1項)
- 合同会社の社員は、他の社員の過半数の承諾があれば持分を譲渡できる。誤りです。原則は他の社員全員の承諾です(会社法585条1項)
- 法人は合同会社の業務執行社員になることができる。正しいです(会社法598条1項)
- 合同会社の業務を執行しない社員の氏名は登記事項である。誤りです。登記されるのは業務執行社員です(会社法914条6号)
「過半数」と「全員」、「株式会社の規定」と「持分会社の規定」の入れ替えが、誤りの肢の作り方です。
商業登記法との接続
商業登記法の択一では、合同会社の登記の添付書面が問われます。株式会社なら議事録を付ける場面で、合同会社では総社員の同意書や、ある社員の一致を証する書面を付けます(商業登記法118条・93条)。社員の加入による変更の登記では、出資に係る払込みまたは給付があったことを証する書面が要ります(商業登記法119条)。
記述式の中心は株式会社ですが、本店移転のように株式会社と共通の仕組みで処理する登記もあります。管轄外の本店移転を合同会社でも同じ条文で処理できる点は、本店移転登記で確認してください。
まとめ
- 合同会社は持分会社の一種で、社員の全部が有限責任社員。出資は設立の登記までに全額を履行する。
- 株式会社は株主総会と取締役が動かし、合同会社は社員自身が業務を執行する。業務執行社員と代表社員は定款で定められる。
- 取締役は法人がなれないが、合同会社の業務執行社員には法人もなれる。業務執行社員に任期はない。
- 定款変更は、株式会社が株主総会の特別決議、合同会社が原則として総社員の同意。
- 持分の譲渡は原則として他の社員全員の承諾。株式の譲渡は原則自由。
- 合同会社で登記されるのは業務執行社員の氏名と代表社員の氏名及び住所。設立の登録免許税の最低額は株式会社15万円、合同会社6万円。
よくある質問
合同会社の社員と業務執行社員は、何が違うのですか
社員は出資者の地位で、業務執行社員は業務を執行する権限を持つ社員です。定款に別段の定めがなければ、社員全員が業務を執行するので、社員と業務執行社員は一致します。定款で一部の社員だけを業務執行社員と定めると、残りの社員は業務を執行しない社員になります。登記されるのは業務執行社員だけです。
合同会社にも決算公告の義務がありますか
貸借対照表の公告を義務づける会社法440条1項は、株式会社についての規定です。持分会社には同じ規定が置かれていません。その代わり、合同会社の債権者は、営業時間内はいつでも、作成した日から5年以内の計算書類の閲覧などを請求できます(会社法625条)。社員が有限責任しか負わない合同会社では、債権者が会社の財産状況を確かめる手段がこの形で用意されています。
株式会社から合同会社になると、取締役はどうなりますか
組織変更の効力発生日に、株式会社は合同会社となり、株主は組織変更計画の定めに従って社員になります(会社法745条1項・3項)。合同会社には取締役という機関がないので、組織変更後は社員が業務を執行します。業務執行社員や代表社員を置くなら、組織変更後の定款で定める事項として組織変更計画に定めます(会社法744条1項4号)。逆に合同会社が株式会社になるときは、組織変更計画に組織変更後の取締役の氏名を定めなければなりません(会社法746条1項3号)。登記の面では、株式会社の解散の登記と合同会社の設立の登記を同時に申請し、新しい登記記録で合同会社の業務執行社員と代表社員が登記されます。
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