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監査役の設置と廃止:登記と定款変更

商業登記法 読了 約10分

監査役を置く・廃止する定款変更と登記を、置かなければならない会社の判定、会計限定の定めと登記、336条4項の任期満了、登記すべき事項・添付書面・登録免許税の順に整理。商業登記の択一と記述式に備える受験生向けです。

監査役の設置と廃止は、定款変更の登記と役員変更の登記が同時に動く論点です。記述式では「監査役設置会社の定めの廃止」だけを書いて監査役の退任を落とす、会計限定の定めの登記を落とす、という失点が典型です。

結論を先に言うと、判断は3段階です。1つ目は、その会社が監査役を置かなければならないか、置いてはならないか。2つ目は、監査の範囲を会計に限定する定めがあるか。3つ目は、その定款変更で在任中の監査役の任期が満了するか。この3つを順に確かめれば、登記すべき事項と登録免許税が決まります。

この記事は、監査役の設置・廃止を登記の申請書まで落とし込みたい受験生向けです。取締役会の有無による違いは取締役会設置会社と非設置会社の違いで、取締役の任期の数え方は取締役の任期で扱っているので、ここでは監査役に絞ります。

監査役を置く会社・置けない会社

定款で置くのが原則

株式会社は、定款の定めによって監査役を置くことができます(会社法326条2項)。取締役と違い、監査役は必置の機関ではありません。置くかどうかは原則として会社が選びます。

ただし、会社法は機関設計の組み合わせによって、監査役を置くことを強制したり、禁止したりしています。定款変更の議案を見たら、まず「その会社は監査役を外せるのか」「そもそも置けるのか」を確認します。

置かなければならない会社

次の会社は、監査役を置かなければなりません。

会社 根拠 例外
取締役会設置会社 327条2項 監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社、公開会社でない会計参与設置会社
会計監査人設置会社 327条3項 監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社
監査役会設置会社 監査役は3人以上で、半数以上は社外監査役(335条3項) なし

公開会社は取締役会が必須なので(327条1項1号)、監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社でない限り、監査役も必須です。反対に、取締役会を置かない非公開会社で会計監査人もいなければ、監査役は任意です。

置いてはならない会社

監査等委員会設置会社と指名委員会等設置会社は、監査役を置いてはなりません(327条4項)。監査は監査等委員会や監査委員会が担うので、監査役と併存させない設計です。これらの委員会を置く定款変更をすると、監査役の任期はその効力発生時に満了します(336条4項2号)。

監査の範囲を会計に限定する定め

定められる会社は限られる

公開会社でない株式会社は、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めることができます。ただし、監査役会設置会社と会計監査人設置会社は除かれます(389条1項)。

つまり会計限定の定めを置けるのは、非公開会社で、監査役会も会計監査人も置かない会社です。公開会社になる定款変更をするときや、会計監査人を置くときは、会計限定の定めを廃止しなければなりません。

会計限定の監査役は「監査役設置会社」に数えない

会社法2条9号は、監査役設置会社を「監査役を置く株式会社」と定義したうえで、監査の範囲を会計に限定する定款の定めがあるものを除いています。会計限定の監査役しかいない会社は、会社法上の監査役設置会社ではありません。

この定義の違いが、条文の適用を分けます。

規定 監査役設置会社 会計限定の会社
取締役が会社に著しい損害を及ぼすおそれを発見したときの報告先 監査役(357条1項) 株主
株主による取締役の行為の差止めの要件 回復することができない損害(360条3項) 著しい損害(360条1項)
業務監査の権限(381条から386条) ある 適用しない(389条7項)
取締役等の責任の一部免除を取締役会等で行う定款の定め 取締役が2人以上なら置ける(426条1項) 置けない

一方、327条2項は「監査役を置かなければならない」と定めているので、取締役会設置会社である非公開会社は、会計限定の監査役を置くことでこの要請を満たします。「取締役会設置会社は監査役設置会社でなければならない」と覚えると誤るので、条文の言葉どおり押さえてください。

会計限定の定めも登記事項

会計限定の定めは登記事項です。911条3項17号は、監査役設置会社(会計限定の定款の定めがある会社を含む)であるときは、その旨に加えて、会計限定の定款の定めがある会社であるときはその旨と、監査役の氏名を登記すると定めています。

この登記は、2014年の会社法改正(平成26年法律第90号)で設けられ、2015年5月1日に施行されました。改正附則22条1項により、施行の際に会計限定の定めがあった会社は、施行後最初に監査役が就任し、または退任するまでは、この登記をしなくてよいとされています。法務局の案内でも、施行後最初の監査役の就任・重任・退任の登記を申請する際に、あわせて会計限定の定めの登記を申請するものとされています。

登録免許税は、監査役に関する事項の変更として、申請1件につき1万円、資本金の額が1億円を超える会社は3万円です(登録免許税法別表第一第24号(1)カ)。監査役の変更登記と同時に申請すれば、その分の税額に含まれ、追加の負担はありません。

監査役を置く定款変更と登記

定款変更と選任の決議

監査役を置く旨の定款の定めを設けるのは定款変更なので、株主総会の特別決議が必要です(466条、309条2項11号)。定款変更だけでは監査役はいないので、同じ株主総会で監査役を選任します。選任は役員の選任の決議で、定足数を定款で3分の1未満に下げることはできません(341条)。

すでに監査役がいる会社で取締役が監査役の選任議案を株主総会に提出するときは、監査役の同意が必要です(343条1項)。新たに監査役を置く場面ではまだ監査役がいないので、この同意は問題になりません。

取締役会を新たに置く場合は、監査役の設置がセットになるのが通常です。取締役会の設置と同時の処理は取締役会設置会社と非設置会社の違いで整理しています。

登記すべき事項と添付書面

監査役を置いたときの登記すべき事項は次のとおりです。

  • 監査役設置会社である旨と、その変更年月日
  • 監査役の氏名と就任年月日
  • 会計限定の定めを置いたときは、その旨

添付書面は次のとおりです。

添付書面 証明すること 根拠
株主総会議事録 定款変更と監査役の選任の決議 商業登記法46条2項
株主リスト 株主総会の決議があったこと 商業登記規則61条3項
就任承諾書 監査役が就任を承諾したこと 商業登記法54条1項
本人確認証明書 就任承諾書に記載した氏名・住所の実在 商業登記規則61条7項
委任状 代理人が申請するとき 商業登記法18条

監査役は、取締役と違って就任承諾書の印鑑証明書を求められません。商業登記規則61条4項は取締役の就任承諾書、同条6項は代表取締役の選定についての規定だからです。一方、本人確認証明書は同条7項が監査役を明示しているので、再任の場合を除いて必要です。役員の就任登記の添付書面全体は役員変更登記の添付書面にまとめています。

登録免許税の区分

登録免許税は、別表第一第24号(1)のどの区分に当たるかで数えます。

登記 区分 税額
監査役設置会社の定めの設定 ツ 3万円
監査役の就任、会計限定の定めの登記 カ 1万円。資本金の額が1億円を超える会社は3万円
監査役会設置会社の定めの設定 ワ 3万円

監査役設置会社の定めは、ワの「取締役会、監査役会、監査等委員会若しくは指名委員会等に関する事項」には入りません。ワに監査役会は挙がっていても監査役は挙がっていないので、監査役設置会社の定めはツの「登記事項の変更」で数えます。資本金の額が1億円以下の非公開会社で、監査役を置いて1人を選任すれば、ツの3万円とカの1万円で合計4万円です。

監査役を廃止する定款変更と登記

廃止できるかを先に確認する

監査役を置く旨の定款の定めを廃止する定款変更も、株主総会の特別決議です。ただし、327条2項・3項で監査役が必須の会社は、そのままでは廃止できません。

  • 取締役会設置会社なら、取締役会もあわせて廃止するか、非公開会社として会計参与を置く
  • 会計監査人設置会社なら、会計監査人もあわせて廃止する

記述式でこの確認を飛ばすと、登記できない定款変更をそのまま申請書に書いてしまいます。議事録の議案の並びを見て、取締役会の廃止や会計参与の設置が一緒に決議されているかを必ず確認してください。

任期はその時に満了する

監査役を置く旨の定款の定めを廃止する定款変更をした場合、監査役の任期は、その定款変更の効力が生じた時に満了します(336条4項1号)。辞任や解任の手続を踏まなくても、定款変更の効力発生で監査役は退任します。

任期満了による退任なので、346条1項の権利義務の規定も問題になりません。監査役という機関そのものがなくなるので、員数を欠くという状態が生じないからです。

登記すべき事項と登録免許税

廃止のときの登記すべき事項は、監査役設置会社の定めを廃止した旨と年月日、監査役が退任した旨と年月日です。会計限定の定めが登記されている会社では、その定めの廃止も登記します。

添付書面は株主総会議事録と株主リストが中心です。議事録が定款変更の決議を証明し、同時に任期満了による退任を証する書面にもなります(商業登記法54条4項)。

法務局が公開している申請書の記載例では、取締役会設置会社の定めの廃止、監査役設置会社の定めの廃止、会計限定の定めの廃止、監査役の退任、株式の譲渡制限の定めの変更をまとめて申請する場合の登録免許税を次のように数えています。

登記 区分 税額
取締役会設置会社の定めの廃止 ワ 3万円
監査役設置会社の定めの廃止、譲渡制限の定めの変更 ツ 3万円
監査役の退任、会計限定の定めの廃止 カ 1万円。資本金の額が1億円を超える会社は3万円

ツに当たる登記が複数あっても、同じ申請書で申請すれば1件3万円です。区分ごとに1件と数える感覚をここで身につけてください。

任期が満了する定款変更・満了しない定款変更

336条4項の4つの事由

監査役の任期が定款変更の効力発生時に満了するのは、次の4つです(336条4項)。

  1. 監査役を置く旨の定款の定めを廃止する定款変更
  2. 監査等委員会または指名委員会等を置く旨の定款変更
  3. 監査の範囲を会計に限定する旨の定款の定めを廃止する定款変更
  4. 全部の株式についての譲渡制限の定めを廃止する定款変更

3号は取締役にはない事由です。監査の範囲が会計から業務全般に広がるので、その権限にふさわしい人を改めて選び直させる趣旨です。4号で公開会社になると、会計限定の定めも置けなくなるので、会計限定の会社では3号と4号が同時に問題になります。

満了しない変更との区別

逆向きの変更では任期は満了しません。

  • 会計限定の定めを新たに設ける定款変更
  • 取締役会を置く、または廃止するだけの定款変更
  • 監査役の任期を伸長する定款変更

会計限定の定めを「廃止」すると満了し、「設定」しても満了しない。この非対称は択一で繰り返し狙われます。監査の範囲が狭まるだけなら、在任中の監査役にそのまま続けさせても不都合がないからです。任期の伸長・短縮についての比較表は取締役の任期で確認してください。

満了後に同じ人を選ぶと重任になる

会計限定の定めを廃止する株主総会で、同じ監査役を改めて選任し、本人がその場で就任を承諾すれば、任期満了による退任と就任が同じ日に重なります。この場合の登記は重任です。

登記すべき事項は、監査役の重任と、会計限定の定めを廃止した旨です。重任では再任に当たるので、本人確認証明書は要りません(商業登記規則61条7項)。定款変更の効力発生日を総会の日と別の日にしていると、退任日と就任日がずれることがあるので、議事録の効力発生日の定め方を確認してください。

試験での出題ポイント

択一式ではこう問われる

  • 必置と禁止:取締役会設置会社と会計監査人設置会社は原則必置。監査等委員会設置会社と指名委員会等設置会社は置いてはならない
  • 例外:公開会社でない会計参与設置会社は、取締役会を置いても監査役を置かなくてよい
  • 会計限定の要件:非公開会社で、監査役会設置会社・会計監査人設置会社でないこと
  • 定義:会計限定の監査役だけの会社は、2条9号の監査役設置会社に当たらない。報告先・差止め要件・責任免除の定めで結論が変わる
  • 任期満了:監査役の定めの廃止、委員会型の機関の設置、会計限定の定めの廃止、譲渡制限の全部廃止の4つ。会計限定の設定では満了しない
  • 登記事項:会計限定の定めがある旨も登記する。監査役会設置会社は社外監査役である旨も登記する(911条3項18号)
  • 登録免許税:監査役設置会社の定めはツ、監査役会はワ、監査役の就任・退任と会計限定の定めはカ

商業登記法の科目ページから、機関設計の変更の肢を論点別に演習できます。

記述式との接続

記述式の別紙で監査役の設置・廃止が出たら、次の順で確認します。

  1. 定款変更の後の機関設計で、監査役が必須か、禁止か、任意か
  2. 会計限定の定めが、設定されたか、廃止されたか、そのままか
  3. 336条4項の事由に当たるか。当たれば在任中の監査役は退任する
  4. 同じ総会で監査役が選任されていれば、就任か重任か
  5. 登録免許税の区分を、ワ・カ・ツに振り分けて合計する

特に、機関設計の変更の議案と役員の選任の議案が別の番号で並んでいる問題では、定款変更による退任を書き落とします。別紙の読み方の全体は記述式(商業登記)対策で、科目全体の学習順序は会社法・商業登記法の勉強法で扱っています。

まとめ

  • 監査役は定款で置くのが原則。取締役会設置会社と会計監査人設置会社は原則必置、委員会型の会社は設置禁止
  • 会計限定の定めは非公開会社で、監査役会・会計監査人を置かない会社だけが置ける
  • 会計限定の監査役だけの会社は、会社法上の監査役設置会社に当たらない
  • 会計限定の定めがある旨は登記事項。登録免許税はカ区分で、監査役の変更と同時なら追加負担はない
  • 監査役の定めの廃止、会計限定の定めの廃止などの定款変更で、監査役の任期はその時に満了する
  • 登録免許税は、監査役設置会社の定めがツ、監査役の就任・退任がカ、監査役会がワ

よくある質問

取締役会設置会社でも監査役を置かないことはできますか

公開会社でない会計参与設置会社であれば置かなくてかまいません(327条2項ただし書)。監査等委員会設置会社と指名委員会等設置会社はそもそも監査役を置けません。それ以外の取締役会設置会社は監査役が必要なので、監査役を廃止するなら、取締役会も廃止するか、会計参与を置くかを同時に決める必要があります。

会計限定の定めを新たに置いたら、今の監査役は退任しますか

退任しません。336条4項3号が任期満了の事由としているのは、会計限定の定めを「廃止」する定款変更です。定めを設ける変更では監査役の任期は続きます。ただし、会計限定の定めがある旨は登記事項なので、定めを設けたときはその登記を申請します。

監査役を廃止したとき、退任を証する書面は何を付けますか

定款変更を決議した株主総会議事録です。監査役の任期は定款変更の効力発生時に当然に満了するので、辞任届などは要りません。議事録が定款変更と退任の両方を証明するので、株主リストとあわせて添付すれば足ります。

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