司法書士 民法の勉強法:学習順序・頻出論点・過去問の回し方
司法書士試験の民法20問を得点源にしたい受験生向け。総則・物権・担保物権に厚く配分し、条文と判例の結論を肢別演習で固めるのが結論です。分野別の頻出論点、学習順序、改正の注意点、過去問の回し方を解説します。
司法書士試験の民法は、総則・物権・担保物権に学習時間の6割を投じ、条文と判例の結論を肢別過去問で「肢単位」に固めるのが最短ルートです。民法は午前の部35問のうち20問を占める最大科目で、不動産登記法・供託法・民事執行法の土台でもあります。ここが固まると午後の登記法の学習速度まで上がります。この記事は、これから民法を始める初学者と、一通り回したのに7割前後で伸び悩んでいる受験生に向けて、出題構造・学習順序・分野別の頻出論点・判例の覚え方・改正の注意点・過去問の回し方を1本にまとめました。
民法20問の出題構造と目標点
学習の設計は、何点をどこで取るかを決めるところから始まります。
午前の部における民法の位置づけ
午前の部は2時間で択一式35問(105点)を解きます。内訳は次のとおりです。
| 科目 | 問題数 | 配点 |
|---|---|---|
| 憲法 | 3問 | 9点 |
| 民法 | 20問 | 60点 |
| 刑法 | 3問 | 9点 |
| 商法・会社法 | 9問 | 27点 |
| 合計 | 35問 | 105点 |
民法だけで午前の部の6割弱を占めます。午前の部には基準点があり、これを下回ると午後の答案は採点されません。つまり民法の出来が、そのまま午前の基準点を越えられるかを決めます。
何問取ればよいか
目標は「20問中15〜16問」です。午前の基準点は年度ごとに法務省が公表し、具体的な点数は毎年動きます。ただ、民法で14問を下回ると、憲法・刑法・会社法で取り返す負担が一気に重くなります。基準点と合格点の決まり方は基準点と上乗せ点の仕組みで整理しているので、目標点を決める前に一度確認してください。
| 学習段階 | 民法20問の目標 | 優先すること |
|---|---|---|
| 1周目の途中 | 数えない | 全体構造の把握。細部は捨てる |
| 1周終了直後 | 10〜12問 | 肢別で知識を確認しながら2周目 |
| 中級 | 13〜14問 | 間違えた論点の原因分析と比較表 |
| 本試験 | 15〜16問 | 個数問題への耐性と手薄な分野の底上げ |
20問全問正解を目標にする必要はありません。毎年1〜2問は、細かい判例や事例の読み込みで差がつく問題が混ざります。そこで粘るより、取るべき15問を確実に取るほうが得点は安定します。
分野別の出題の重み
出題数は年度で動きますが、おおむね次の重みで出ます。数字を暗記する必要はなく、どこが厚いかだけをつかんでください。
| 分野 | おおよその出題数 | 中心テーマ |
|---|---|---|
| 総則 | 3〜5問 | 制限行為能力、意思表示、代理、時効 |
| 物権(担保物権を除く) | 3〜4問 | 物権変動、共有、占有、相隣関係 |
| 担保物権 | 3〜4問 | 抵当権・根抵当権、法定地上権 |
| 債権総論 | 2〜3問 | 債権者代位、詐害行為取消、保証、債権譲渡 |
| 債権各論 | 2〜3問 | 売買、賃貸借、不法行為 |
| 親族・相続 | 3〜4問 | 相続人と相続分、遺言、遺留分、婚姻・親子 |
総則・物権・担保物権の3分野で全体の半分以上を占めます。この3分野は不動産登記法の土台でもあるので、ここに時間を厚く配分するのが合理的です。
出題形式と「条文・判例の正確さ」
民法の択一は、正しい肢の組合せを選ぶ組合せ問題が中心で、ほかに正しい肢の数を答える個数問題、当事者が複数登場する事例問題があります。組合せ問題は確実に判断できる肢が2つあれば絞り込めることが多い一方、個数問題は5肢すべてを判断しなければならず、知識の穴がそのまま失点になります。肢の切り方と個数問題の処理は、択一全体の解き方として別に練習しておきます。
司法書士試験の民法は、論述で法的思考を展開させる試験ではありません。条文と判例の内容を正確に知っているかを、5つの肢の中で識別させる試験です。
- 「善意」で足りるか「善意無過失」が必要か、登記が必要かといった要件の細部が正誤を分けます
- 原則だけでなく、例外と例外の例外まで問われます
- 家庭裁判所の許可の要否、期間制限、方式といった手続的な規律も出ます
- 学説の対立は原則として問われません。判例の立場を知っていれば足ります
学習方針は「理解に時間をかけすぎず、正確な知識の量を早く増やす」ことです。理解のない暗記は崩れますが、テキストを読み返して分かった気になる時間は、肢別演習で知識を確認する時間に振り替えたほうが得点につながります。
学習順序と時間配分
条文順に進め、担保物権を厚くする
学習順序は、条文の並びに沿って総則、物権、担保物権、債権、親族・相続の順に進めるのが基本です。民法は各編に共通する規律を前に置く構造になっており、意思表示・代理・時効を知らないまま契約の話を読んでも定着しません。テキストがあえて順序を崩している場合を除き、素直に前から進めるのが結局は速いです。
ただし、時間配分は均等にしません。初学者が1周する際の目安は次のとおりです。
| 分野 | 配分の目安 | 理由 |
|---|---|---|
| 総則 | 20% | すべての土台。代理・時効は毎年のように問われる |
| 物権総論・所有権・占有 | 15% | 物権変動は不動産登記法の前提 |
| 担保物権 | 25% | 抵当権・根抵当権は択一・記述の両方の中核 |
| 債権総論 | 15% | 保証・債権譲渡は改正の影響が大きい |
| 債権各論 | 15% | 売買・賃貸借・不法行為 |
| 親族・相続 | 10% | 相続は相続登記に直結する |
担保物権に最も厚く配分するのは、抵当権と根抵当権が民法の択一で頻出であるうえ、不動産登記法の択一と記述式の中核テーマでもあるからです。ここへの投資は午後の部の得点にも跳ね返ります。
1周目は2か月で「地図」を作る
1周目は細部を完璧にしようとせず、全体の構造をつかむことを優先します。3か月以上かけると最初の総則を忘れるので、2か月程度で通すのが目安です。1周目からテキストの章を読んだ直後にその範囲の肢別過去問を解き、「こう問われるのか」を知っておくと、2周目の読み方が変わります。
試験全体で民法にどれだけ時間を割くかは、司法書士試験に必要な勉強時間で科目別の内訳を示しています。
使う教材は3点に絞る
教材は、基本テキスト1冊、肢別形式の過去問集1冊、六法の3点で足ります。予備校の講義を使う場合も、手元で回す教材はこの3点に集約してください。
- 基本テキスト — 条文・判例の結論が表で整理されているもの。全部を覚える本ではなく、肢別で間違えたときに戻る「辞書」として使います
- 肢別過去問集 — 本試験の過去問を1肢ずつに分解したもの。改正対応の版を選びます
- 六法 — 判例付きでなくてよいので、条文を引く習慣を作ります。改正で判例ルールの多くが条文化されたため、条文を読めば解ける範囲が広がっています
教材を増やすほど1冊あたりの周回数が減ります。迷ったら増やさず、今の教材の周回を優先してください。
分野別の頻出論点と押さえ方
ここからは分野ごとに、毎年のように問われる論点と整理の軸を示します。個別論点をさらに深掘りした記事へのリンクも置いているので、弱い論点から読んでください。
総則:比較表で覚える4テーマ
総則は制限行為能力者、意思表示、代理、時効の4テーマが柱です。どれも「似た制度を横に並べて違いを問う」出題が多いので、比較表で覚えます。
- 制限行為能力者 — 未成年者(民法5条)、成年被後見人(9条)、被保佐人(13条)、被補助人(17条)について、同意を要する行為の範囲、同意なくした行為の効果、取消権者、追認、催告権を1枚の表にします。整理の仕方は制限行為能力者の比較で詳しく扱っています
- 意思表示 — 心裡留保(93条)、虚偽表示(94条)、錯誤(95条)、詐欺・強迫(96条)の要件と第三者保護を横断的に比べます。軸は「第三者が保護されるには善意で足りるか、無過失も要るか」です。改正後の錯誤の要件を含めて意思表示の整理にまとめています
- 代理 — 無権代理と表見代理(109条・110条・112条)の関係と、無権代理と相続の判例群が頻出です。本人が死亡した場合と無権代理人が死亡した場合で結論が変わる点は必ず押さえます。詳しくは無権代理と表見代理を参照してください
- 時効 — 取得時効(162条)と消滅時効(166条)の要件、完成猶予と更新の事由を区別します。改正で「中断・停止」から用語と体系が変わった分野なので、時効の整理で新しい体系に置き換えてください
物権:177条の第三者と「登記と対抗」
物権は物権変動と対抗要件が最重要です。
- 民法177条の「第三者」の範囲は判例の集積が厚い論点です。背信的悪意者、無権利者、不法占拠者などが「第三者」に当たるかを事案の型で整理します。177条の第三者で類型ごとにまとめています
- 取消し・解除・時効取得と登記の関係は、必ず図を描いて理解します。取消前の第三者と取消後の第三者、解除前と解除後、時効完成前と完成後で処理が変わります
- 共有は2023年4月1日施行の改正が入った分野です。変更・管理・保存の区分、所在等不明共有者の持分の取得・譲渡、裁判による共有物分割の規律が問われます
- 占有では即時取得(192条)の要件、占有訴権、占有の承継が定番です
担保物権:抵当権と根抵当権に最も時間を使う
- 抵当権の効力の及ぶ範囲(370条)、物上代位(372条・304条)、法定地上権(388条)、抵当権と賃借権の関係が中心です
- 法定地上権は、抵当権設定当時に土地上に建物があること、土地と建物が同一所有者に属すること、土地または建物に抵当権が設定されたこと、競売により所有者が異なるに至ったこと、の4要件を軸に判例のバリエーションを潰します
- 根抵当権は、元本確定前と確定後で法律関係が大きく変わります。「確定前か確定後か」を判断の第一分岐に置いてください。被担保債権の範囲・債務者・極度額の変更、全部譲渡・分割譲渡・一部譲渡、元本確定事由は、すべて不動産登記法の記述式に波及します。両者の違いは抵当権と根抵当権の違いで比較表にしています
- 留置権(295条)、先取特権(303条以下)、質権(342条以下)は、要件と効力の基本を確実に押さえれば足ります
債権総論・債権各論:2020年改正の条文で覚える
債権分野は2020年4月1日施行の債権法改正で大きく変わりました。古い知識のまま解くと誤る論点が集中しています。
- 債権者代位権(423条以下)と詐害行為取消権(424条以下)は条文が大幅に整備されました。要件・行使方法・効果を条文で確認します
- 連帯債務では絶対効の範囲が縮小されました。保証では、個人根保証契約の極度額の定め、事業に係る債務についての保証意思宣明公正証書(465条の6)など新しい規律が問われます
- 債権譲渡は、譲渡制限の意思表示に反する譲渡も原則として有効になりました(466条2項)
- 解除に債務者の帰責事由が不要になった点、売買の契約不適合責任(562条以下)の4つの救済手段は必出級です
- 賃貸借では、賃借権の対抗力、賃貸人たる地位の移転、敷金、転貸借が頻出です。不法行為は使用者責任(715条)、工作物責任(717条)、共同不法行為(719条)が中心です
親族・相続:得点しやすく、登記に直結する
- 法定相続分(900条)、代襲相続、相続放棄・限定承認、遺産分割の効力、相続による権利の承継の対抗要件(899条の2)を確実に押さえます。熟慮期間や効果の違いは相続放棄と限定承認で整理しています
- 遺言は方式(自筆証書遺言の方式緩和と法務局での保管制度を含む)、撤回、遺贈の性質を整理します
- 遺留分は、遺留分侵害額請求権(1046条)として金銭債権化されました。旧制度の「減殺請求」の理解のままだと誤ります
- 配偶者居住権・配偶者短期居住権も出題対象です
親族・相続は条文がそのまま問われる比率が高く、相続分の計算のようにパターン化しやすい論点もあります。学習順序の都合で最後に回されがちなので、計画の段階で2〜3週間の枠を先に確保してください。
判例学習はどこまで踏み込むか
「判例をどこまで覚えればいいか分からない」は、民法学習で最も多い悩みです。深さの目安を示します。
3段階の深さ
| 段階 | 覚える内容 | 対象となる判例 |
|---|---|---|
| レベル1 | 結論のみ | 過去問で問われた判例すべて |
| レベル2 | 結論と要件・射程 | 頻出論点の中心判例 |
| レベル3 | 結論と理由づけ、反対説との対比 | ほぼ不要 |
必要なのは、大半がレベル1、重要論点についてレベル2です。ただし、事案が少し変わると結論が変わる論点、たとえば法定地上権、無権代理と相続、177条の第三者、背信的悪意者については、レベル2まで踏み込みます。理由づけを知らないと事案のバリエーションに対応できないからです。
覚える単位は「事案の型と結論」
判例を日付や事件名で覚えても、司法書士試験では役に立ちません。覚える単位は「事案の型と結論」の一文です。
たとえば「土地と建物が同一所有者に属する状態で土地に抵当権が設定され、その後建物が建て替えられた場合でも、法定地上権は成立する。範囲は旧建物を基準とする」という形です。テキストを読んで理解した気になるのではなく、自分の言葉で一文にする作業が判例学習の本体です。
条文が先、判例が後
判例集を読み込むのに条文を読まない、という順序は逆です。まず条文を確認し、条文で解決できない部分に判例があることを理解し、その結論を覚えます。改正で従来の判例ルールの多くが条文化されたので、条文を読めば解ける範囲は以前より広くなっています。
改正民法の注意点
主な改正と影響
| 改正 | 施行 | 影響 |
|---|---|---|
| 債権関係の改正 | 2020年4月1日 | 債権総論・各論の広い範囲が変更 |
| 相続関係の改正 | 2019年7月1日を中心に順次 | 遺留分・相続の対抗要件・配偶者居住権など |
| 成年年齢の引下げ | 2022年4月1日 | 成年は18歳。制限行為能力・親族に影響 |
| 物権・共有・相隣関係などの改正 | 2023年4月1日 | 物権分野に大きく影響。不動産登記法とも連動 |
教材がどの時点の法令に対応しているかは、必ず奥付や「はしがき」で確認してください。
旧制度の知識が残ると危険な論点
- 消滅時効 — 権利を行使できることを知った時から5年、行使できる時から10年の二重の期間(166条1項)
- 時効の完成猶予・更新 — 旧法の「中断・停止」から用語と体系が変わった
- 契約不適合責任 — 瑕疵担保責任の議論は原則として不要になった
- 解除 — 債務者の帰責事由が不要になり、催告解除・無催告解除に整理された
- 危険負担 — 債権者主義の規定が削除され、履行拒絶権の構成になった
- 法定利率 — 年3%を出発点とする変動制になった
- 債権譲渡 — 譲渡制限の意思表示に反する譲渡も原則として有効
- 遺留分 — 物権的な減殺請求から、金銭債権としての侵害額請求へ
- 共有 — 変更・管理の要件、所在等不明共有者への対応が整備された
改正点は出題者にとって差がつく問題を作りやすい論点です。旧制度と新制度を対比して覚えると定着します。
古い過去問の扱い
改正前の過去問をそのまま解くと、誤った知識を刷り込むおそれがあります。改正対応済みの肢別問題集を使い、解説に改正の注記があるかを確認してください。債権法改正の影響が大きい分野の古い問題は飛ばして構いません。一方で、代理、物権変動、担保物権の多くは古い過去問も十分に使えます。何年分をどう扱うかは過去問は何年分やるかで科目別に示しています。
過去問・肢別演習の回し方
民法の知識を得点力に変える最も効率的な手段が、肢別過去問の演習です。
なぜ肢別なのか
5肢択一の問題集は答え合わせが問題単位になるため、たまたま正解した問題に潜む「判断できなかった肢」が見過ごされます。肢別演習は知識の穴を肢単位で見えるようにする方法です。1肢15〜30秒で回せるので、同じ時間で触れられる知識の量も多くなります。
周回は回数ではなく「間隔」で設計する
「5周した」という数字にはあまり意味がありません。大切なのは、忘れかけたタイミングで再会しているかです。
- 1周目 — テキストの該当章を読んだ直後に、その範囲の肢を解く。各肢に「自信あり正解・迷った・不正解」の3段階で印をつける
- 2周目(1周目の2〜4週間後) — 迷った肢と不正解の肢だけを解く。正解になった肢は次回の対象から外す
- 3周目以降 — 間隔を空けながら、残っている肢を中心に回す。全肢の総ざらいは月1回程度。直前期には全体を高速で流す
民法の肢別は2,000〜3,000肢程度が標準的な分量です。周回が進むにつれて速くなるのが正常で、3周目でも1周目と同じ速度なら定着していないサインです。詳しい設計は肢別過去問の勉強法で扱っています。
誤りの肢は「根拠・あてはめ・結論」で一言にする
たとえば「Aが土地をBに売却し、その後Cにも売却した場合、先に契約したBが所有権を主張できる」という肢は誤りです。ただし「誤り」と覚えるだけでは不十分です。
「不動産物権変動の対抗要件は登記であり(民法177条)、契約の先後ではなく登記の先後で優劣が決まる。Bが登記を備えていなければCに対抗できない」
このように根拠・あてはめ・結論の形で一言にできれば、事案が変形しても対応できます。誤答した肢の余白に、根拠条文と間違えた理由を一言書き足すだけで、間違いノートと同じ機能を追加コストほぼゼロで果たせます。ノートを別に作るなら、1論点1〜2行、見返す時間を先に確保できる分量に限ってください。
分野を混ぜる時期と五肢択一の併用
3周目以降は、分野をシャッフルして解く時期を作ります。分野ごとに解いていると「今は担保物権の章だ」という文脈がヒントになってしまうからです。混ぜて解くと、留置権と同時履行の抗弁権のような似た制度の混同がその場で発覚します。
肢別だけでは、肢を比較して絞り込む技術が身につきません。平日は肢別で知識を固め、週末や答練では五肢択一を時間を計って解く二本立てにしてください。午前の部は1問あたり3分強使えるので、難問で粘る練習も五肢択一の演習で積んでおきます。
1週間の回し方の型
学習時間が限られる社会人でも回せる型を示します。時間は目安で、合計を自分の可処分時間に合わせて縮めてください。
| 曜日 | 内容 | 目安 |
|---|---|---|
| 平日(月〜金) | テキストで新しい範囲を読み、同じ範囲の肢別を解く。前週に間違えた肢を解き直す | 1日60〜100肢 |
| 土曜 | 五肢択一を時間を計って10問。間違えた問題の肢をテキストで確認 | 60〜90分 |
| 日曜 | その週に不正解だった肢だけを通しで解き直す。比較表を1枚作る | 60分 |
ポイントは、新しい範囲を進める作業と、間違えた肢に戻る作業を毎日両方入れることです。新しい範囲だけを進めると、2か月後に総則がほぼ白紙になっています。逆に復習だけを続けると、親族・相続まで届かないまま本試験を迎えます。
1日の最低ラインは極端に低く設定してください。「肢別20肢だけは必ず解く」のように、調子の悪い日でも達成できる量にしておくと連続が途切れません。同じ論点で3回間違えたら、読み方を変える、図にする、比較表を作る、と方法を変えます。
直前期の民法の仕上げ
本試験の3か月前からは、新しい教材に手を出さず、次の3つに絞ります。
- 不正解が残っている肢の一掃 — 印が残っている肢だけを週1回通しで解く。直前1か月は全肢を高速で流す
- 比較表の再現 — 自作した比較表を白紙に再現する。制限行為能力者、意思表示と第三者、根抵当権の確定前後は最低限
- 改正論点の最終確認 — 旧制度と取り違えやすい論点を1枚にまとめ、試験前日にも見返す
民法は分量が多いぶん、直前期に何を捨てて何を回すかの判断が得点に直結します。債権各論の細かい契約類型や親族の細部で新しい知識を増やすより、頻出論点の取りこぼしをなくすほうが確実に点になります。
民法から不動産登記法・記述式への波及
不動産登記法は民法の物権法を手続から見た科目
午後の部の択一35問のうち不動産登記法は16問、記述式2問のうち1問が不動産登記法です。この科目は民法の物権法を手続の側から見たものにほかなりません。
| 民法の論点 | 不動産登記法での現れ方 |
|---|---|
| 物権変動(177条) | 登記原因、中間省略登記の可否 |
| 所有権の取得原因 | 所有権移転登記の登記原因と日付 |
| 抵当権(369条以下) | 抵当権の設定・移転・変更・抹消 |
| 根抵当権(398条の2以下) | 元本確定前後の登記、極度額の変更、譲渡 |
| 相続(896条以下、899条の2) | 相続登記、遺産分割による登記、遺贈の登記 |
| 共有(249条以下) | 持分移転、共有物分割による登記 |
民法の理解が曖昧なまま記述式に取り組むと、「登記原因が何になるか」「日付をいつにするか」が判断できません。午後の登記法の学び方は不動産登記法の勉強法で扱っています。
根抵当権は民法の段階で完成させる
不動産登記法の記述式で差がつく根抵当権は、登記手続の複雑さよりも実体法の理解が難所です。元本確定前は随伴性がないこと、被担保債権の範囲・債務者・極度額の変更がそれぞれ要件を異にすること、全部譲渡・分割譲渡・一部譲渡の効果の違いを、民法の段階で完全に理解しておけば、不動産登記法は手続を上乗せするだけで済みます。
供託法・民事執行法にも回収される
供託法の弁済供託は民法の弁済の規定(494条以下)が基礎です。民事執行法・民事保全法も、抵当権の優先関係や被保全権利として民法上の権利を前提にします。民法に投じた時間は、これらの科目の学習時間を短縮する形で回収されます。
つまずいたときの処方箋
事例問題が解けない
原因の大半は図が描けていないことです。過去問の事例問題を、答えを見ずに図だけ描く練習を10問続けてください。当事者を丸で囲み、権利の移転を線で示し、日付と登記の有無を書き添えます。図が正確なら、あとは条文と判例のあてはめだけです。
似た制度が混ざる
比較表を自作します。混ざりやすい典型は、制限行為能力者の4類型、意思表示の瑕疵と第三者保護、表見代理の3類型、留置権と同時履行の抗弁権、連帯債務と保証、相続放棄と遺産分割、遺贈と死因贈与です。作る過程の比較作業そのものが学習になります。
1周したのに何も覚えていない
これは正常です。民法は分量が膨大で、1周で定着することはありません。問題は1周目の作り方にあります。1周目に細部まで完璧にしようとして3か月以上かけていないか、テキストを読むだけで肢別を並行させていないかを確認してください。2周目は間違えた肢を起点にテキストへ戻る読み方に変えると、覚えている量が目に見えて増えます。
親族・相続が最後まで手つかずになる
学習順序の都合で最後に回される結果、手薄なまま本試験を迎える受験生が少なくありません。この分野は条文がそのまま問われる比率が高く、判例の集積を追う負担が相対的に軽いため、出題数に対して得点しやすい分野です。相続分の計算は、代襲相続、半血の兄弟姉妹、相続放棄があった場合、配偶者と直系尊属・兄弟姉妹が相続人になる場合を、一通り手を動かして計算しておけば本試験で確実に取れます。
得点が伸びない時期が続く
間違えた肢の原因を「知識不足・読み違い・思い込み」に分類してください。知識不足ならテキストに戻り、思い込みなら比較表で整理します。とりわけ多いのが読み違いです。「常に」「必ず」「〜することができない」といった限定表現と、「AはBに対して」の主語に印をつけてから判断する習慣を、演習の段階から機械的に作ってください。
まとめ
- 民法は午前20問(60点)を占める最大科目で、午前の基準点を越えられるかを左右する。目標は15〜16問
- 学習順序は条文順。総則・物権・担保物権に厚く配分し、1周目は2か月で地図を作る
- 教材は基本テキスト・肢別過去問集・六法の3点に絞る
- 判例は「事案の型と結論」の一文で覚え、重要論点だけ要件・射程まで踏み込む
- 改正論点は旧制度と対比して覚え、古い過去問は改正対応の版で解く
- 肢別演習は回数でなく間隔で設計し、誤りの肢は根拠・あてはめ・結論で一言にする
- 民法の理解は不動産登記法・記述式・供託法に波及し、投じた時間は必ず回収される
よくある質問
司法書士試験の民法は何問取れば合格圏ですか
20問中15〜16問を目標にしてください。午前の基準点と合格点は年度ごとに法務省が公表する値で、具体的な点数は毎年変わります。民法で14問を下回ると、ほかの午前科目で取り返す負担が重くなります。
民法はどこから勉強を始めればよいですか
総則から条文順に始めるのが基本です。ただし初学者が総則で止まらないよう、1周目は細部を捨てて2か月程度で親族・相続まで通してください。そのうえで、2周目から担保物権に時間を厚く配分します。
改正前の過去問は使っても大丈夫ですか
改正対応済みの問題集で解くなら使えます。債権法改正の影響が大きい分野(消滅時効・解除・危険負担・契約不適合責任・保証・債権譲渡など)の古い問題を、解説を確認せずに解くのは避けてください。代理、物権変動、担保物権の多くは古い過去問も有効です。
判例集は別に買う必要がありますか
原則として不要です。司法書士試験で問われる判例は、肢別過去問集と基本テキストに載っている範囲で足ります。必要なのは判例の結論と、重要論点についての要件・射程です。判例集を読み込む時間は、肢別演習の周回に回してください。
民法の肢別演習を一覧で一気に○×。解説と関連先例がその場で開きます。