保証と連帯保証:2020年改正後の要件
保証と連帯保証を2020年4月施行の債権法改正後の条文で整理。書面要件、催告・検索の抗弁、連帯保証人に生じた事由の効力、個人根保証の極度額、事業債務の保証意思宣明公正証書、3つの情報提供義務、求償まで受験生向けに解説します。
保証は、民法の債権総論で出題が続くテーマです。2020年4月1日施行の債権法改正で、個人根保証契約の極度額、事業のための貸金等債務についての公正証書、債権者と主たる債務者の情報提供義務が新設されました。連帯保証人について生じた事由の効力も変わり、改正前の知識では誤る肢が多い分野です。
結論を先に言うと、保証の条文は「保証債務は主たる債務に従う」という付従性を土台に、「個人の保証人をどう守るか」という改正の視点を重ねて読むと整理できます。連帯保証は、補充性がない点と、連帯保証人について生じた事由の効力の点で普通の保証と違います。
本記事は、保証の条文を一通り読んだものの、改正で入った規律の適用範囲が混ざる受験生に向けて書いています。民法446条から465条の10までを、成立・効力・連帯保証・個人保証の保護・求償の順に整理します。民法全体の学習順序は民法の勉強法を参照してください。
保証契約の成立と性質
保証契約は書面でしなければ効力を生じない
保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負います(民法446条1項)。保証契約は債権者と保証人の間の契約で、主たる債務者は当事者ではありません。主たる債務者から頼まれていなくても、さらには主たる債務者の意思に反しても、保証契約は成立します。
保証契約は書面でしなければ効力を生じません(446条2項)。電磁的記録でされたときは書面によってされたものとみなされます(同条3項)。保証人が軽率に保証することを防ぐ趣旨の規定で、2020年改正より前から置かれています。
付従性・随伴性・補充性
保証債務の性質は3つの言葉で整理します。
| 性質 | 内容 | 条文・効果 |
|---|---|---|
| 付従性 | 主たる債務がなければ成立せず、主たる債務が消滅すれば消滅する。保証人の負担は主たる債務より重くならない | 448条1項。契約後に主たる債務が加重されても保証人の負担は加重されない(448条2項) |
| 随伴性 | 主たる債務の債権が移転すれば、保証債務も移転する | 債権譲渡に伴って保証債権も移る |
| 補充性 | 主たる債務者が履行しないときに初めて履行する | 催告の抗弁(452条)・検索の抗弁(453条)。連帯保証にはない |
448条2項は2020年改正で明文化された規定です。主たる債務者と債権者が後から利率を引き上げても、保証人の負担は増えません。
保証債務の範囲は、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを含みます(447条1項)。保証人は、その保証債務についてのみ違約金または損害賠償の額を約定することもできます(同条2項)。
保証人の要件
債務者が保証人を立てる義務を負う場合には、保証人は行為能力者であり、かつ弁済をする資力を有する者でなければなりません(450条1項)。ただし、債権者が保証人を指名した場合には、この要件は適用されません(同条3項)。この要件は「保証人を立てる義務」がある場合の話で、保証契約一般の有効要件ではない点に注意してください。
保証債務の効力
催告の抗弁と検索の抗弁
債権者が保証人に履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告すべき旨を請求できます(452条本文)。主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、またはその行方が知れないときは、この抗弁は使えません(同条ただし書)。
催告の後であっても、保証人が、主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ執行が容易であることを証明したときは、債権者はまず主たる債務者の財産について執行しなければなりません(453条)。これが検索の抗弁です。債権者がこれらを怠ったために主たる債務者から全部の弁済を得られなかったときは、保証人は、直ちに催告または執行をすれば弁済を得ることができた限度で義務を免れます(455条)。
主たる債務者について生じた事由
主たる債務者について生じた事由は、付従性から原則として保証人にも及びます。
- 主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の完成猶予および更新は、保証人に対しても効力を生じる(457条1項)
- 保証人は、主たる債務者が主張できる抗弁をもって債権者に対抗できる(同条2項)
- 主たる債務者が相殺権・取消権・解除権を有するときは、その行使によって主たる債務者が債務を免れるべき限度で、保証人は履行を拒むことができる(同条3項)
457条3項は、保証人が主たる債務者の相殺権などを自ら行使できるのではなく、履行を拒める、という形で定められています。「保証人は主たる債務者の債権で相殺できる」という肢は誤りです。
時効については、保証人は主たる債務の消滅時効を援用できる者に含まれます(民法145条括弧書)。時効の完成猶予と更新の全体像は時効の記事で整理しています。
保証人について生じた事由と分別の利益
逆に、保証人について生じた事由は、弁済などの債務を消滅させる事由を除き、主たる債務者には及びません。保証人に履行を請求しても、主たる債務の時効は完成猶予されません。
数人の保証人がいる場合、各保証人は、各別の行為で保証したときであっても、主たる債務の額を保証人の数で割った額についてだけ責任を負います(456条による427条の適用)。これを分別の利益と呼びます。連帯保証人には分別の利益がありません。
連帯保証の特則
補充性がない
保証人が主たる債務者と連帯して債務を負担したときは、催告の抗弁と検索の抗弁を有しません(454条)。債権者は、主たる債務者に請求せずに、いきなり連帯保証人に全額を請求できます。数人の連帯保証人がいても、各自が全額について責任を負います。
| 比較 | 普通の保証 | 連帯保証 |
|---|---|---|
| 催告の抗弁・検索の抗弁 | あり | なし(454条) |
| 分別の利益 | あり(456条) | なし |
| 付従性 | あり | あり |
| 保証人に生じた事由の主たる債務者への効力 | 弁済など債務を消滅させる事由を除き及ばない | 更改・相殺・混同は及ぶ(458条) |
連帯保証人について生じた事由の効力
458条は、連帯債務の438条・439条1項・440条・441条を、連帯保証人について生じた事由に準用します。つまり、連帯保証人との間の更改、連帯保証人による相殺、連帯保証人と債権者との混同は、主たる債務者にも効力が及びます。それ以外の事由は、441条により相対的効力にとどまります。
ここが改正で変わった点です。改正前は、連帯保証人に対する履行の請求が主たる債務者にも効力を生じるとされていました。現行法では、履行の請求は438条から440条に含まれていないので、連帯保証人に請求しても、主たる債務の時効の完成猶予や更新は生じません。ただし441条ただし書により、債権者と主たる債務者が別段の意思を表示したときは、その意思に従います。
したがって、連帯保証人への請求の効力を主たる債務者に及ぼしたい債権者は、441条ただし書の別段の意思表示を、主たる債務者との間であらかじめ定めておく必要があります。
個人保証人の保護
個人根保証契約と極度額
一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約を根保証契約といい、保証人が法人でないものを個人根保証契約といいます(465条の2第1項)。個人根保証契約の保証人は、元本・利息・違約金・損害賠償などの全部について、極度額を限度として責任を負います。
個人根保証契約は、極度額を定めなければ効力を生じません(465条の2第2項)。極度額の定めも書面または電磁的記録でする必要があります(同条3項)。改正前は、極度額の定めが必要なのは貸金等債務を含む根保証に限られていました。現行法は、建物賃貸借の賃借人の債務を保証する個人の根保証のように、貸金以外の債務の根保証にも極度額を求めています。
元本確定期日と元本確定事由
元本確定期日の規律は、主たる債務の範囲に貸金等債務が含まれる個人貸金等根保証契約に限られます(465条の3)。
- 元本確定期日を契約締結の日から5年を経過する日より後の日と定めても、その定めは効力を生じない(465条の3第1項)
- 定めがないときは、締結の日から3年を経過する日が元本確定期日になる(同条2項)
元本確定事由は、個人根保証契約全般に共通するものと、個人貸金等根保証契約だけに加わるものに分かれます(465条の4)。
| 元本確定事由 | 個人根保証契約全般 | 個人貸金等根保証契約のみ |
|---|---|---|
| 保証人の財産への強制執行・担保権の実行の申立て | ○(手続の開始があったときに限る) | |
| 保証人の破産手続開始の決定 | ○ | |
| 主たる債務者または保証人の死亡 | ○ | |
| 主たる債務者の財産への強制執行・担保権の実行の申立て | ○(手続の開始があったときに限る) | |
| 主たる債務者の破産手続開始の決定 | ○ |
主たる債務者の財産への執行や破産が、建物賃貸借の根保証のような貸金等債務を含まない根保証では確定事由にならない点は、択一で問われます。根抵当権の元本確定との比較は抵当権と根抵当権の違いが役立ちます。
事業のための貸金等債務と保証意思宣明公正証書
事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約、または主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約は、契約締結の日前1か月以内に作成された公正証書で、保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ効力を生じません(465条の6第1項)。保証人になろうとする者が法人である場合には適用されません(同条3項)。
公正証書の作成には、保証人になろうとする者が主たる債務の内容などを公証人に口授するなどの方式が定められています(465条の6第2項)。連帯保証の場合は、催告の有無、主たる債務者の資力、他の保証人の有無にかかわらず全額を履行する意思を口授する必要があります。
この規律には適用除外があります(465条の9)。
- 主たる債務者が法人である場合の、その理事・取締役・執行役またはこれらに準ずる者
- 主たる債務者が法人である場合の、総株主の議決権の過半数を有する者など
- 主たる債務者が個人である場合の、主たる債務者と共同して事業を行う者、または主たる債務者が行う事業に現に従事している主たる債務者の配偶者
いわゆる経営者保証が除外されているので、会社の代表取締役が会社の借入れを保証する場合、公正証書は不要です。
3つの情報提供義務
誰が誰に何を提供するか
改正で新設された情報提供義務は3つあります。義務者・相手方・対象となる保証人の範囲がそれぞれ違うので、表で区別してください。
| 条文 | 義務者 | 場面 | 保証人の範囲 | 違反の効果 |
|---|---|---|---|---|
| 465条の10 | 主たる債務者 | 事業のために負担する債務の保証を委託するとき | 個人に限る | 債権者が悪意または有過失なら保証人は保証契約を取り消せる |
| 458条の2 | 債権者 | 委託を受けた保証人から請求があったとき | 法人も含む | 特別の規定なし |
| 458条の3 | 債権者 | 主たる債務者が期限の利益を喪失したとき | 個人に限る | 通知までに生じた遅延損害金を請求できない |
契約締結時の情報提供
465条の10は、主たる債務者が、事業のために負担する債務の保証を委託するときに、委託を受ける者に対して、財産および収支の状況、主たる債務以外の債務の有無・額・履行状況、他の担保の内容に関する情報を提供しなければならないとする規定です。対象は貸金等債務に限られず、事業のために負担する債務全般です。
主たる債務者が情報を提供せず、または事実と異なる情報を提供したために保証人が誤認して保証契約をした場合、債権者がそのことを知り、または知ることができたときは、保証人は保証契約を取り消せます(465条の10第2項)。債権者の主観が要件になっている点が肢になります。
履行状況と期限の利益喪失の情報提供
458条の2は、委託を受けた保証人の請求があったときに、債権者が主たる債務の元本・利息などの不履行の有無、残額、弁済期が到来している額の情報を提供しなければならないとする規定です。委託を受けない保証人には請求権がありません。
458条の3は、主たる債務者が期限の利益を喪失したときに、債権者がそれを知った時から2か月以内に保証人に通知しなければならないとする規定です。通知しなかったときは、期限の利益を喪失した時から通知を現にするまでに生じた遅延損害金(期限の利益を喪失しなかったとしても生ずべきものを除く)について、保証債務の履行を請求できません。保証人が法人の場合には適用されません(同条3項)。
保証人の求償
委託を受けた保証人と受けない保証人
保証人が弁済などで主たる債務を消滅させたときは、主たる債務者に対して求償できます。求償の範囲は委託の有無で変わります。
| 保証人 | 求償の範囲 | 条文 |
|---|---|---|
| 委託を受けた保証人 | 支出した財産の額。消滅した主たる債務の額を超えるときはその額。法定利息・費用・損害も含む | 459条・442条2項準用 |
| 委託を受けない保証人 | 債務の消滅行為の当時、主たる債務者が利益を受けた限度 | 462条1項・459条の2第1項準用 |
| 主たる債務者の意思に反する保証人 | 求償の時に主たる債務者が現に利益を受けている限度 | 462条2項 |
委託を受けた保証人は、主たる債務者が破産手続開始の決定を受け債権者が配当に加入しないとき、債務が弁済期にあるときなどに、事前の求償権を行使することもできます(460条)。
弁済による代位と担保権の登記
保証人は、債務者のために弁済をすると債権者に代位します(民法499条)。代位した保証人は、求償できる範囲内で、債権者が有していた債権の効力と担保を行使できます(501条1項・2項)。
主たる債務に抵当権が付いていた場合、保証人が弁済しても抵当権は消滅せず、保証人に移転します。登記は抵当権の抹消ではなく、「代位弁済」を原因とする抵当権移転の登記になります。抹消と移転の区別は抵当権抹消登記で扱っています。また、保証会社が保証委託契約による求償債権を担保するために抵当権を設定する場面は、抵当権設定登記の登記原因の型と結びつきます。
試験での出題ポイント
択一式ではこう問われる
- 書面要件:保証契約は書面または電磁的記録でしなければ効力を生じない
- 付従性:契約後に主たる債務が加重されても保証人の負担は加重されない
- 457条3項:主たる債務者の相殺権などは、保証人が行使するのではなく履行拒絶の根拠になる
- 連帯保証人に生じた事由:更改・相殺・混同だけが主たる債務者に及ぶ。履行の請求は及ばない
- 極度額:個人根保証契約全般で必要。貸金等債務に限らない
- 元本確定:主たる債務者の破産は、個人貸金等根保証契約だけの確定事由
- 公正証書:事業のための貸金等債務の保証で、締結前1か月以内。経営者などは除外
- 情報提供義務:465条の10と458条の3は個人保証人のみ。458条の2は法人保証人も含むが委託が必要
改正前の過去問は、連帯保証人への請求の効力や極度額の対象で結論が逆になるものがあります。古い問題の扱いは民法の勉強法の改正の節を参照してください。
まとめ
- 保証契約は債権者と保証人の書面による契約で、主たる債務者は当事者ではない
- 保証債務には付従性・随伴性・補充性がある。連帯保証には補充性と分別の利益がない
- 連帯保証人について生じた事由のうち、主たる債務者に及ぶのは更改・相殺・混同
- 個人根保証契約は極度額を定めなければ効力を生じない
- 事業のための貸金等債務の個人保証は、原則として保証意思宣明公正証書が必要
- 情報提供義務は3つあり、義務者・保証人の範囲・効果がそれぞれ違う
- 保証人が弁済すると債権者に代位し、抵当権は保証人に移転する
よくある質問
主たる債務者に頼まれずに保証人になることはできますか
できます。保証契約は債権者と保証人の間の契約なので、主たる債務者の委託は成立要件ではありません。主たる債務者の意思に反して保証することもできます。ただし、委託の有無と主たる債務者の意思に反するかどうかで、求償の範囲が変わります。
賃貸住宅の個人の連帯保証人にも極度額が必要ですか
必要です。建物賃貸借の賃借人が負う不特定の債務を個人が保証する契約は、個人根保証契約にあたります。465条の2第2項により、極度額を書面などで定めなければ効力を生じません。
取締役が自分の会社の借入れを保証する場合も公正証書が必要ですか
不要です。465条の9第1号により、主たる債務者が法人である場合のその取締役は、465条の6から465条の8までの適用から除外されています。ただし、書面要件や極度額の規律は別の規定なので、根保証であれば極度額の定めは必要です。
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