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取締役会設置会社と非設置会社の違い:機関設計と登記

会社法・商法 読了 約10分

司法書士試験の受験生向けに、取締役会設置会社と非設置会社の違いを会社法295条・326条・327条・331条・348条・349条・362条で整理。株主総会の権限・招集、業務執行と代表、取締役会の運営、設置・廃止の登記まで比較表で解説します。

取締役会を置くかどうかは、株式会社の機関設計で最初に決まる分岐です。この分岐ひとつで、株主総会の権限、招集通知の期限と方法、取締役の員数、代表取締役の選び方、利益相反取引の承認機関までがまとめて変わります。会社法の択一は、この「どちらの会社か」で結論が逆になる肢を好んで出します。

この記事は司法書士試験の受験生向けに、取締役会設置会社と非設置会社の違いを条文ごとに並べ、最後に取締役会の設置・廃止に伴う商業登記まで整理したものです。機関設計の4象限や全体の学習順序は会社法・商業登記法の勉強法で扱っているので、この記事では取締役会の有無による違いに絞ります。

取締役会設置会社とは:定義と設置義務

定款で置くか、法律で置かされるか

会社法2条7号は、取締役会設置会社を「取締役会を置く株式会社又はこの法律の規定により取締役会を置かなければならない株式会社」と定義しています。株式会社は定款の定めによって取締役会を置くことができ(326条2項)、次の会社は取締役会を置かなければなりません(327条1項)。

  • 公開会社
  • 監査役会設置会社
  • 監査等委員会設置会社
  • 指名委員会等設置会社

裏を返すと、取締役会を置かないことを選べるのは、公開会社でない株式会社で、監査役会も委員会も置かない会社に限られます。全部の株式に譲渡制限がある中小規模の会社が典型です。

取締役会を置くと監査役が必要になる

取締役会設置会社は、監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社を除き、監査役を置かなければなりません(327条2項本文)。ただし、公開会社でない会計参与設置会社は例外で、監査役を置かなくてもかまいません(同項ただし書)。

取締役会を置くと、業務執行の決定が取締役会に集まり、株主総会の権限が絞られます。株主の目が届きにくくなる分、監査役か会計参与による監督を求める、という設計です。反対に、取締役会を置かない会社では監査役は任意です。

取締役の員数

項目 取締役会設置会社 取締役会非設置会社
取締役の員数 3人以上(331条5項) 1人以上(326条1項)
代表取締役 必ず選定する(362条3項) 任意。定めなければ各取締役が代表(349条1項・2項)
監査役 原則必要(327条2項) 任意

取締役が1人または2人の会社は、取締役会を置けません。記述式で取締役の辞任が出てきたら、取締役会設置会社の員数3人を割らないかを必ず確認してください。

株主総会の権限と招集手続の違い

株主総会の権限

取締役会非設置会社の株主総会は、会社法に規定する事項と、株式会社の組織・運営・管理その他株式会社に関する一切の事項について決議できます(295条1項)。取締役会設置会社の株主総会は、会社法に規定する事項と定款で定めた事項に限り決議できます(同条2項)。

さらに取締役会設置会社では、招集の際に定めた株主総会の目的である事項以外は決議できません(309条5項)。非設置会社にはこの制約がありません。決議要件そのものは株主総会の決議要件で整理しています。

招集手続の比較

項目 取締役会設置会社 取締役会非設置会社
招集の決定 取締役会の決議(298条4項) 取締役が決定。取締役が2人以上なら過半数(348条2項)
通知の期限 公開会社は2週間前、非公開会社は1週間前(299条1項) 1週間前。定款で短縮できる(同項)
通知の方法 書面または株主の承諾を得た電磁的方法(299条2項・3項) 書面投票・電子投票を定めない限り方法の定めなし。口頭でもよい
目的事項以外の決議 できない(309条5項) できる

招集通知の期限は、書面投票・電子投票を定めた場合には非公開会社でも2週間前になります(299条1項かっこ書)。「非公開会社なら常に1週間前」という肢は誤りです。

株主提案権

取締役会非設置会社では、議決権を行使できる株主であれば、持株数や保有期間にかかわらず、一定の事項を株主総会の目的とするよう請求できます(303条1項)。取締役会設置会社では、総株主の議決権の100分の1以上または300個以上の議決権を6か月前から引き続き有する株主に限られ、請求は総会の日の8週間前までにしなければなりません(同条2項)。公開会社でない取締役会設置会社では6か月の保有期間の要件が外れます(同条3項)。

業務執行と代表の違い

非設置会社:取締役が業務を執行し、各自が代表する

取締役会非設置会社では、取締役は、定款に別段の定めがある場合を除き、会社の業務を執行します(348条1項)。取締役が2人以上いるときは、業務は定款に別段の定めがある場合を除き取締役の過半数で決定します(同条2項)。支配人の選任・解任や支店の設置などは、各取締役に委任できません(同条3項)。

代表については、取締役が会社を代表し、2人以上いるときは各自が代表します(349条1項・2項)。代表取締役を定めることもでき、その方法は定款、定款の定めに基づく取締役の互選、株主総会の決議のいずれかです(同条3項)。

設置会社:取締役会が決定し、代表取締役が執行する

取締役会設置会社では、取締役会はすべての取締役で組織され、業務執行の決定、取締役の職務の執行の監督、代表取締役の選定・解職を行います(362条1項・2項)。取締役会は取締役の中から代表取締役を選定しなければなりません(同条3項)。重要な財産の処分・譲受け、多額の借財、支配人その他の重要な使用人の選任・解任、支店その他の重要な組織の設置・変更・廃止などは、取締役に委任できません(同条4項)。

業務を執行するのは代表取締役と、取締役会の決議で業務執行取締役に選定された取締役です(363条1項)。これらの取締役は、3か月に1回以上、職務の執行の状況を取締役会に報告しなければなりません(同条2項)。つまり設置会社では、代表取締役でも業務執行取締役でもない取締役は、取締役会の一員として決定と監督に加わるだけで、当然には業務を執行しません。非設置会社では取締役全員が原則として業務執行者であることと対照的です。

承認機関が入れ替わる場面

取締役会の有無で、承認をする機関が株主総会から取締役会に入れ替わる規定があります。

事項 取締役会設置会社 取締役会非設置会社
競業取引・利益相反取引の承認 取締役会(365条1項) 株主総会(356条1項)
譲渡制限株式の譲渡の承認 取締役会。定款で別段の定め可(139条1項) 株主総会。定款で別段の定め可(同項)
株主総会の招集の決定 取締役会(298条4項) 取締役

取締役会設置会社では、競業取引や利益相反取引をした取締役は、取引の後、遅滞なく重要な事実を取締役会に報告しなければなりません(365条2項)。承認の前後で二度取締役会が関わる点も、非設置会社との違いです。

監査役がいない会社での株主の監督

監査役を置かない会社では、株主が直接の監督役を担う規定が置かれています。取締役は、会社に著しい損害を及ぼすおそれのある事実を発見したときは、直ちに株主に報告しなければなりません。監査役設置会社では、報告先が監査役になります(357条1項)。

また、取締役会設置会社であっても、監査役設置会社・監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社でなければ、株主は、取締役が目的の範囲外の行為その他法令・定款に違反する行為をし、またはそのおそれがあると認めるときに、取締役会の招集を請求できます(367条1項)。公開会社でない会計参与設置会社が監査役を置かずに取締役会を設けた場合が典型です。請求をした株主は、その取締役会に出席して意見を述べることができます(同条4項)。

取締役会の運営

招集と決議

取締役会は各取締役が招集します。定款または取締役会で招集権者を定めることもできます(366条1項)。招集通知は取締役会の日の1週間前までに各取締役、監査役設置会社では各監査役にも発します。この期間は定款で短縮できます(368条1項)。取締役と監査役の全員の同意があれば、招集手続を経ずに開催できます(同条2項)。

決議は、議決に加わることのできる取締役の過半数が出席し、その過半数で行います。定款で割合を引き上げることはできますが、引き下げることはできません(369条1項)。決議について特別の利害関係を有する取締役は議決に加われません(同条2項)。

議事録への署名と異議の推定

取締役会の議事は議事録に残し、書面で作成したときは出席した取締役と監査役が署名または記名押印します(369条3項)。決議に参加した取締役で議事録に異議をとどめない者は、その決議に賛成したものと推定されます(同条5項)。反対したのに議事録に残さなければ、賛成者として責任を問われるおそれがあるということです。

商業登記では、代表取締役を選定した取締役会議事録に押された印鑑について、出席した取締役と監査役の印鑑証明書が必要になる場面があります(商業登記規則61条6項3号)。ただし、変更前の代表取締役が登記所に提出している印鑑を議事録に押していれば不要です(同項ただし書)。

書面決議は定款の定めが要る

取締役会の決議の省略は、370条により、取締役全員が書面または電磁的記録で同意の意思表示をしたときに可決の決議があったものとみなす旨を定款で定めることができるという形をとっています。監査役設置会社では、監査役が異議を述べたときは除かれます。

株主総会の決議の省略(319条1項)は定款の定めなしにできるのに対し、取締役会の決議の省略は定款の定めが前提です。「取締役全員の同意があれば定款の定めがなくても取締役会の決議を省略できる」という肢は誤りです。報告の省略(372条1項)は定款の定めを要しませんが、363条2項の3か月に1回の職務執行状況の報告は省略できません(同条2項)。

機関設計の変更と登記

取締役会に関する登記事項

株式会社の登記事項には、取締役の氏名(911条3項13号)、代表取締役の氏名および住所(同項14号)、取締役会設置会社であるときはその旨(同項15号)が含まれます。監査役設置会社であるときは、その旨と監査役の氏名も登記事項です(同項17号)。取締役会を置いたり廃止したりすれば、これらの事項に変更が生じるので、2週間以内に本店所在地で変更の登記をしなければなりません(915条1項)。

取締役会を設置するとき

取締役会を置く定款変更は株主総会の特別決議で行います(466条・309条2項11号)。そのうえで次の点を同時に確認します。

  • 取締役が3人以上いるか。足りなければ選任する
  • 監査役を置いているか。公開会社でない会計参与設置会社でなければ監査役の設置と選任が必要
  • 取締役会で代表取締役を選定する

登録免許税は、取締役会に関する事項の変更の登記として1件3万円です(登録免許税法別表第一第24号(1)ワ)。役員の変更を伴えば、役員変更分として1件3万円、資本金の額が1億円以下の会社は1万円が加わります(同カ)。監査役設置会社の定めを新たに置くときは、登記事項の変更としてさらに1件3万円です(同ツ)。

取締役会を廃止するとき

取締役会を廃止すると、349条がそのまま適用されます。定款・互選・株主総会の決議で代表取締役を定めなければ、各取締役が代表権を持つので、従前の代表取締役以外の取締役についても代表取締役として登記することになります。特定の取締役だけを代表取締役にしたいなら、廃止と同時に定款などで定めます。

取締役会を廃止しても、取締役の任期は満了しません。332条7項が任期満了事由として挙げているのは委員会の設置・廃止と、全部の株式の譲渡制限の定めの廃止だけです。監査役も、取締役会の廃止だけでは任期は満了しませんが、あわせて監査役を置く旨の定款の定めを廃止すれば、その効力発生時に任期が満了します(336条4項1号)。任期の論点は取締役の任期で詳しく扱っています。

試験での出題ポイント

択一式ではこう問われる

取締役会の有無で結論が逆になる規定を、入れ替えて出題するのが定番です。

  • 設置義務:公開会社・監査役会設置会社・委員会設置会社は取締役会が必須。
  • 監査役:取締役会設置会社は原則必要。非公開の会計参与設置会社は例外。
  • 員数:設置会社は3人以上、非設置会社は1人以上。
  • 総会の権限:設置会社は法律と定款の事項に限り、目的事項以外は決議できない。
  • 招集通知:非設置会社は1週間前で定款により短縮可。口頭でもよい。書面投票を定めれば2週間前・書面。
  • 代表:設置会社は代表取締役の選定が必須。非設置会社は各自代表が原則。
  • 承認機関:利益相反・競業は設置会社なら取締役会、非設置会社なら株主総会。
  • 決議の省略:株主総会は定款不要、取締役会は定款の定めが必要。

肢別の過去問は、取締役会の有無で分岐する肢を横に並べて解くと効率が上がります。会社法の科目ページから論点別に演習できます。

記述式との接続

商業登記の記述式では、取締役会の設置・廃止は「定款変更の登記だけ書いて役員の登記を落とす」典型の論点です。

  • 取締役会を置くなら、取締役の員数・監査役の有無・代表取締役の選定をセットで確認する。
  • 取締役会を廃止するなら、代表取締役の定め方を確認し、代表取締役として登記される者が変わらないかを見る。
  • 取締役会の廃止で取締役・監査役の任期は満了しない。監査役設置の定めを廃止した場合だけ監査役が任期満了で退任する。
  • 代表取締役の選定を証する書面は、取締役会設置会社なら取締役会議事録、非設置会社なら定款・互選書・株主総会議事録と変わる。

添付書面の詳細は役員変更登記の添付書面、別紙の読み方は記述式(商業登記)対策を参照してください。

まとめ

  • 取締役会は定款で置くほか、公開会社・監査役会設置会社・委員会設置会社では必須(327条1項)。
  • 取締役会設置会社は原則として監査役が必要。取締役は3人以上。
  • 設置会社の株主総会は法律と定款の事項に限り決議でき、目的事項以外は決議できない。
  • 非設置会社は取締役が業務を執行し、各自が代表する。代表取締役は定款・互選・株主総会で定められる。
  • 設置会社は取締役会が業務執行を決定し、代表取締役の選定が必須。利益相反取引の承認も取締役会。
  • 取締役会の決議の省略は定款の定めが必要。株主総会の決議の省略は不要。
  • 取締役会の設置・廃止は登記事項の変更。任期への影響と代表取締役の扱いをあわせて確認する。

よくある質問

非公開会社なら取締役会を置かなくてもよいのですか

原則として置かなくてかまいません。ただし監査役会や監査等委員会・指名委員会等を置く会社は、非公開会社でも取締役会が必要です(327条1項2号から4号)。取締役会を置かないことを選べるのは、公開会社でなく、これらの機関も置かない会社です。

取締役会を廃止すると代表取締役はどうなりますか

廃止後は349条が適用されます。定款・定款の定めに基づく取締役の互選・株主総会の決議で代表取締役を定めていれば、その者が代表取締役です。定めていなければ各取締役が会社を代表するので、従前の代表取締役以外の取締役も代表取締役として登記されることになります。記述式では、廃止の議案と同時に代表取締役の定めがあるかを必ず確認してください。

取締役会設置会社で取締役が2人になったらどうなりますか

取締役会設置会社の取締役は3人以上でなければならないので(331条5項)、員数を欠く状態になります。任期満了または辞任で退任した取締役は、新たに選任された取締役が就任するまで取締役としての権利義務を有します(346条1項)。この場合、その取締役の退任の登記は後任者の就任まですることができません。

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