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司法書士 午前の部の時間配分:民法20問を軸にした解く順番

学習法 読了 約10分

司法書士試験の午前の部2時間の使い方を解説します。基準点が高い午前で失点が起きる場所、民法20問を軸にした配分と解く順番の型、憲法・刑法・会社法の処理、見直し20分の使い方まで。

午前の部は、午後の部に比べて時間に余裕がある部だと言われます。その理解自体は間違っていませんが、余った時間を何に使うかを決めていないと、午前は取れるはずの点を落とす部になります。結論を先に言います。午前の部の時間配分は、民法20問に全体の半分近くを充て、見直しに20分を残す形で組みます。浮いた時間は速さではなく精度に使います。この記事は司法書士試験の受験生向けに、午前の部2時間の使い方だけを扱います。午前で起きる失点の分解、民法を軸にした配分と解く順番の型、憲法・刑法・会社法の処理、見直しの手順、演習で型を作る方法までをまとめました。午後の部の3時間の使い方は午後の部の時間配分で扱っています。

午前の部は精度の部

2時間で択一35問

令和8年度の受験案内書では、午前の部の試験時間は9時30分から11時30分までの2時間で、多肢択一式35問、105点満点でした。令和8年度の問題では、科目の並びは次のとおりです。

問題番号 科目 問題数
第1問〜第3問 憲法 3問
第4問〜第23問 民法 20問
第24問〜第26問 刑法 3問
第27問〜第34問 会社法 8問
第35問 商法 1問

科目ごとの問題数は年度によって動くことがあるので、当日の問題冊子で確認する前提にしてください。35問を2時間で解くと、1問あたりの平均は約3分25秒です。見直しに20分を残しても、1問あたり2分50秒程度を使えます。

基準点は午後より高い

午前の部は時間に余裕がある一方で、基準点は午後より高く出ています。法務省の公表では、択一式の基準点は令和7年度が午前78点・午後72点、令和8年度が午前84点・午後75点でした。令和8年度の午前84点は、35問中28問です。

午前は、午後と比べて時間切れが起きにくい部です。時間切れで差がつきにくい分、1問の読み違いや判断ミスがそのまま点差になります。基準点の年度ごとの動きは基準点と上乗せ点の仕組みで扱っています。

浮いた時間は精度に使う

午後の択一は、記述式に時間を回すために「読んで判断する」速度が求められます。午前は違います。1問あたりの時間に余裕があるので、事例問題で当事者の関係を図に描く、問いの向きを確認する、確信のない肢をもう一度読むといった、精度を上げる作業に時間を使えます。

午前の時間配分を考えるときの目標は、速く解き終えることではありません。精度を上げる作業を、どの問題にどれだけ入れるかを決めることです。

午前で起きる失点を分解する

失点の型は4つ

午前の失点は、知識の不足以外に次の4つの型で起きます。

型 起きやすい場所 処方の方向
問いの向きの取り違え 全科目。特に「誤っているもの」を問う問題 問題文の指示に印をつける手順を固定する
事例の読み違え 民法の事例問題、刑法 当事者の関係を図に描く時間を配分に入れる
1問への深入り 民法の長文問題、刑法 1問の上限時間を決める
マークずれ 飛ばした問題の前後 見直しの最初にマーク欄を確認する

問いの向きの取り違えは、知識がある受験生ほど起こします。肢の判断は合っているのに、最後に選ぶ段階で向きを間違える失点です。手順の固め方は択一の解き方の手順にまとめています。

午後と違って時間切れは起きにくい

午後の部では、時間切れが失点の大きな原因になります。午前の部では、配分を大きく外さない限り時間切れはまず起きません。そのかわり、「時間はあったのに落とした」失点が残ります。

この種の失点は、演習の後に正答数だけを見ていると見えません。間違えた問題ごとに、知識で落としたのか、上の4つの型で落としたのかを分けて記録してください。型による失点は、知識を増やしても減りません。

区間タイムで深入りを見つける

午前でも、科目のまとまりを解き終えた時刻を問題冊子の余白に書いておくと、深入りした場所が分かります。民法で予定より10分遅れていれば、民法のどこかで1問に長く止まっていた可能性が高いと判断できます。

区間タイムの記録は午後の部と同じ方法で構いません。午前は区間が少ないので、記録の手間はさらに小さくなります。

解く順番の型

型は3つ。民法をどこに置くかで決まる

午前の解く順番は、民法20問をどこに置くかで3つの型に分かれます。

型 順番 向いている人
型1 問題番号順。憲法、民法、刑法、会社法・商法 各科目の処理時間が安定して読める人
型2 民法から。民法、会社法・商法、憲法・刑法 民法が得点源で、頭の冴えた時間を民法に当てたい人
型3 短い科目から。憲法・刑法、会社法・商法、民法 最初に確実な問題で調子をつかみたい人

型1は最も素直で、マークずれの危険が最も小さい型です。型2は、配点の半分以上を占める民法に最初の集中力を当てられます。型3は、短い科目で手を慣らしてから民法に入れますが、憲法や刑法で深入りすると民法の時間が削られます。

どの型が優れているかではなく、演習で試して自分の点が安定する型を選んでください。型を途中で変えないことのほうが大切です。

番号順以外の型はマークずれに注意する

型2と型3は、問題番号と解く順番がずれます。マークを1問ごとに行うか、科目のまとまりごとに行うかを決め、どちらの場合も科目の最初と最後の問題番号を答案用紙の番号と照らしてください。民法の最初は第4問、最後は第23問というように、区切りの番号を覚えておくと照合が速くなります。ただし番号は年度によって動くことがあるので、当日の問題冊子で確認します。

通過時刻を書き出す

配分は経過時間ではなく、時刻で管理します。試験開始直後に、科目のまとまりを抜ける時刻を問題冊子の余白に書き出してください。型1で、次の節の配分を使う場合の例です。

  • 憲法を抜ける:9時36分
  • 民法を抜ける:10時31分
  • 刑法を抜ける:10時40分
  • 会社法・商法を抜けて見直しに入る:11時10分

以降は時計を見て、書いた時刻と比べるだけです。引き算をしなくて済むので、焦っていても判断を誤りません。

民法20問を軸にした配分

配分の目安

午前の配分は、民法を中心に組みます。民法は20問で60点、午前105点の半分以上を占めるからです。配分の一例です。

科目 問題数 配分の目安 考え方
憲法 3問 6分前後 判例の結論と条文で即断する
民法 20問 55分前後 事例問題に図を描く時間を含める
刑法 3問 9分前後 事例の当てはめで深入りしない
会社法・商法 9問 30分前後 数字や要件の知識で処理する問題を落とさない
見直し 全問 20分前後 マーク・問いの向き・保留した問題

これは目安で、得意・不得意に応じて動かして構いません。ただし見直しの20分は削らないでください。午前の見直しは、知識を増やさずに点を拾える唯一の時間です。

民法の中で時間をかける問題と流す問題

民法20問の中でも、1問にかかる時間は大きく違います。令和8年度の問題でいえば、第5問や第6問のように当事者と日付が出てくる事例型の問題は、関係を整理する時間がかかります。一方、制度ごとの知識を問う問題は、肢別で処理した論点であれば短時間で判断できます。

55分を20問で均等に割る必要はありません。知識型の問題を2分前後で抜け、浮いた時間を事例型の問題に回します。事例型に入ったら、当事者の関係と時系列を問題冊子の余白に図で描いてから肢を読んでください。図を描く1分が、読み違えの失点を防ぎます。民法の分野ごとの学び方は民法の勉強法で扱っています。

1問の上限を決めておく

民法の長い事例問題で、1問に7分、8分とかけてしまうことがあります。午前は時間に余裕がある分、止まっていることに気づきにくいのです。

上限は1問5分程度を目安にしてください。超えたら、その時点で最も確信のある選択肢をマークし、問題番号に印をつけて次へ進みます。見直しの時間に戻れば、もう一度考えられます。1問に深入りして後ろの問題の読みが雑になるほうが、失点は大きくなります。

憲法・刑法・会社法の処理

憲法:判例の結論で即断し、穴埋めは形式を見る

憲法は3問です。人権は判例の趣旨を問う形が多く、判例の結論を知っていれば短時間で判断できます。令和8年度の第3問は、憲法改正の手続の条文を空欄に補う形式でした。この種の問題は、語句群と選択肢の組み合わせを先に見ると、確実な空欄1つか2つで答えが決まることがあります。

憲法で迷ったときは、深入りせずに次へ進んでください。3問で6分前後の配分を大きく超えると、民法の時間が削られます。

刑法:事例の当てはめで深入りしない

刑法も3問です。令和8年度の3問は、いずれも判例の趣旨に照らして正しいものの組合せを選ぶ形式でした。事例の中の行為が判例の結論とどう対応するかを判断する問題は、当てはめに迷い始めると時間が伸びます。

刑法は、確信のある肢から組み合わせを絞り込む処理が特に効きます。全肢の当てはめを確定させようとせず、確実な肢で候補が絞れたら、残りの比較だけに集中してください。憲法と刑法の学習範囲の絞り方はマイナー科目の戦略で扱っています。

会社法・商法:冒頭の注意書きを読んでから解く

会社法の問題には、前提条件の注意書きが付くことがあります。令和8年度では、第27問から第34問について、問題文に明記がある場合を除き、定款に法令の規定と異なる別段の定めがないものとして解答するよう指示されていました。こうした前提を読み落とすと、定款の定めを想定して迷う原因になります。

会社法は、決議要件、期間、員数といった数字の知識で処理できる問題があります。ここは知識があれば短時間で抜けられる部分です。逆に、機関設計の組み合わせや組織再編の手続は、条文の構造を思い出す時間がかかります。数字の問題で浮いた時間を、手続の問題に回してください。会社法の数字要件の覚え方は会社法・商業登記法の勉強法で扱っています。

見直し・昼休みと、演習での型づくり

見直し20分の優先順位

見直しは、全問を読み直す時間ではありません。優先順位を決めて使います。

  1. マーク欄のずれの確認。番号順以外の型で解いた場合は、科目の区切りの番号を重点的に見る
  2. 保留の印をつけた問題に戻る
  3. 「誤っているもの」を問う問題で、選んだ記号と問いの向きが合っているかを確認する

3番目は、肢を読み直さず、選んだ答えと問題文の指示が整合しているかだけを見ます。短時間で済み、失点を直接防げます。一度出した答えを変えるのは、変える根拠が新たに見つかったときに限ってください。

昼休みは午後に切り替える時間にする

午前の部が終わると、午後の部までの間に休憩があります。令和8年度の受験案内書では、午後の部の着席時刻は12時30分でした。この時間に午前の答え合わせをしても、午前の点は変わりません。できなかった問題が気になると、午後の最初の数問に影響が出ます。

昼休みは、食事と、午後の時間配分の型の確認に使ってください。午後に書き出す通過時刻を確認しておくと、午後の試験開始直後の作業が速くなります。当日の過ごし方は直前期の基準点戦略でも扱っています。

年度別過去問の午前を2時間で解き、実測で直す

型は、年度別過去問の午前の部を本番と同じ2時間で解きながら作ります。記録するのは、科目のまとまりごとの通過時刻、見直しに入った時刻、見直しで拾えた点数です。見直しで答えを直して正解になった問題があれば、それは見直しの20分が生んだ点です。

できれば午後の部と続けて、本番と同じ1日の流れで解く日を作ってください。午前で集中力を使い切ると、午後の最初の科目で処理が遅くなることがあります。これは午前だけを解いていると分かりません。模試を使う場合の設計は模試の活用法を参照してください。

実測が配分と合わないときは、配分のほうを直します。民法に毎回60分かかるなら、55分を守れと念じるより、会社法から数分を回すか、見直しを数分削るかを決めます。ただし見直しを削るのは最後の手段です。見直しで毎回点を拾えているなら、その時間は削らないほうが総得点は安定します。

直前期に入ったら、型の変更を止めて、決めた型どおりに解く練習に切り替えます。

試験での出題ポイント

午前の部の科目構成と出題形式

令和8年度の午前の部は、35問すべてが、アからオまでの記述や語句の組合せを1から5の中から選ぶ形式でした。民法の問題の前には、ウィーン売買条約の適用を考慮しないこと、第4問から第23問までは商法の適用を考慮しないことが注意書きとして示されていました。

組合せを選ぶ形式では、全肢の正誤が確定しなくても正解できます。確実な肢から判断して候補を絞る処理が身についていれば、1問あたりの時間は短くなり、浮いた時間を事例問題と見直しに回せます。出題形式は年度によって変わる可能性があるので、年度別過去問で複数年分の形式に触れておいてください。

時間配分が得点に効く場面

  • 民法の事例問題:図を描く時間を配分に入れていれば、当事者の取り違えによる失点を防げます。
  • 問いの向き:見直しで向きを確認する時間があれば、判断は合っていたのに落とす失点を拾えます。
  • 保留した問題:上限時間で飛ばした問題に戻る時間があれば、落ち着いた状態で考え直せます。

時間配分で知識が増えるわけではありません。午前の時間配分は、持っている知識を読み違いや深入りで目減りさせないための仕組みです。

記述式との接続

午前の民法と会社法は、午後の記述式の土台です。不動産登記の記述式では、事実関係から権利変動が生じたか、いつ生じたかを判断する場面で民法の知識を使います。商業登記の記述式では、決議要件や任期の計算で会社法の知識を使います。午前の民法の事例問題で図を描いて当事者を整理する習慣は、記述式で事実関係を読む作業にもそのまま役立ちます。

まとめ

  • 午前の部は2時間で択一35問。令和8年度は憲法3問・民法20問・刑法3問・会社法8問・商法1問の並びだった。
  • 基準点は午後より高く出ている。時間切れでは差がつかない分、読み違いと深入りで点を落とさない精度の部と考える。
  • 失点の型は、問いの向きの取り違え・事例の読み違え・1問への深入り・マークずれの4つ。
  • 解く順番の型は、民法をどこに置くかで3つ。演習で試して1つに固定する。
  • 配分は民法55分前後を軸にし、見直しの20分は削らない。1問の上限は5分程度。
  • 見直しは、マーク欄・保留した問題・問いの向きの順に行う。昼休みに午前の答え合わせはしない。

よくある質問

午前の部は1問何分で解けばよいですか

35問を2時間で解くと平均は約3分25秒、見直しに20分を残すと約2分50秒です。ただし全問を同じ速度で解く必要はありません。憲法や会社法の知識で即断できる問題を短く抜け、民法の事例問題に時間を回すのが現実的です。大切なのは平均の数字ではなく、科目のまとまりを抜ける通過時刻と、見直しに入る時刻を守ることです。

民法から解くべきですか

民法から解く型は、配点の大きい民法に最初の集中力を当てられる点が利点です。一方で、問題番号と解く順番がずれるので、マークずれの危険は上がります。問題番号順で解いて民法の時間が安定しているなら、無理に変える必要はありません。年度別過去問や模試で両方を試し、点が安定したほうに固定してください。

午前の部で時間が余ってしまいます。どう使えばよいですか

時間が余るのは、判断が速い証拠です。余った時間は、保留した問題と問いの向きの確認に使ってください。それでも余るなら、民法の事例問題に戻って、当事者の関係を図で確かめ直すのが効果的です。ただし、確信を持って選んだ答えを、根拠なく変えるのは避けてください。見直しで答えを変えるのは、読み違いや新しい根拠が見つかったときに限ります。

読んだあとに、今日の1問を

過去問ベースの肢別演習で、読んだ内容をそのまま演習に移せます。

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