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種類株式:9つの内容と定款変更・登記

会社法・商法 読了 約10分

種類株式を、107条の全部の株式の内容との違い、108条1項の9類型と公開会社の制限、定款変更に必要な種類株主総会と株主全員の同意、911条3項7号・9号の登記事項と添付書面の順に整理。会社法と商業登記法をつなげたい受験生向けです。

種類株式は、会社法の株式分野で最も条文が込み入った論点です。9つの類型を覚えるだけでは足りず、「その定めを後から設けるには誰の同意が要るか」「何が登記されるか」まで問われます。

結論を先に言うと、整理の軸は3本です。1本目は、全部の株式に同じ内容を定める107条と、内容の違う株式を並べる108条の区別。2本目は、108条1項の9類型のうち、公開会社が発行できないのは9号の役員選任権付株式だけだということ。3本目は、定款変更の手続が、原則の特別決議に加えて、譲渡制限と全部取得条項では種類株主総会、取得条項では株主全員の同意と、類型ごとに重くなることです。

この記事は、種類株式の条文を一度読み、商業登記の登記事項と添付書面まで結びつけたい受験生向けです。学習の順序は会社法・商業登記法の勉強法で、種類株主総会の決議要件の一般論は株主総会の決議要件で扱っています。

107条と108条の違い

全部の株式の内容として定める3つ

株式会社は、発行する全部の株式の内容として、次の3つを定めることができます(会社法107条1項)。

  1. 譲渡による取得について会社の承認を要すること
  2. 株主が会社に対して取得を請求できること
  3. 会社が一定の事由が生じたことを条件として取得できること

これは全部の株式に同じ内容を与えるもので、内容の異なる株式が並ぶわけではありません。全部の株式に譲渡制限を付けた会社は、それだけでは種類株式発行会社ではありません。

種類株式発行会社とは

種類株式発行会社は、剰余金の配当その他の108条1項各号の事項について内容の異なる2以上の種類の株式を発行する株式会社です(2条13号)。108条は、同じ会社の中に内容の違う株式を並べる制度です。

107条と108条で同じ言葉が出てくるのは、譲渡制限・取得請求権・取得条項の3つです。「全部の株式」に付けるのが107条、「ある種類の株式」に付けるのが108条1項4号・5号・6号です。

属人的定めとの違い

公開会社でない株式会社は、剰余金の配当、残余財産の分配、株主総会の議決権について、株主ごとに異なる取扱いを行う旨を定款で定めることができます(109条2項)。これは株式の内容ではなく株主という人に着目した定めで、108条の種類株式ではありません。

ただし、この定めがあるときは、その株主の株式を内容の異なる種類の株式とみなして、会社法第2編と第5編の規定を適用します(109条3項)。種類株主総会の規定などはこのみなし規定を通じて及びます。属人的定めは911条3項の登記事項に挙がっていないので、登記はされません。この定めを設ける定款変更は、総株主の半数以上で総株主の議決権の4分の3以上の特殊決議です(309条4項)。

108条1項の9つの類型

類型と定款で定める事項

108条1項は、次の9つの事項について内容の異なる種類の株式の発行を認めています。種類株式を発行するときは、各号の事項に対応して108条2項が定める内容と、発行可能種類株式総数を定款で定めます。

号 種類株式 定款で定める主な事項(108条2項)
1号 剰余金の配当 配当財産の価額の決定の方法、配当の条件など
2号 残余財産の分配 残余財産の価額の決定の方法、財産の種類など
3号 議決権制限 議決権を行使できる事項、行使の条件
4号 譲渡制限 107条2項1号の事項
5号 取得請求権 107条2項2号の事項。対価を他の株式とするときはその種類・数
6号 取得条項 107条2項3号の事項。対価を他の株式とするときはその種類・数
7号 全部取得条項 取得対価の価額の決定の方法、決議の条件
8号 拒否権 種類株主総会の決議を要する事項、その条件
9号 役員選任権 種類株主総会で選任する取締役・監査役とその数など

5号・6号は、対価として会社の他の種類の株式を交付できる点が、107条の取得請求権・取得条項にない特徴です。

公開会社が発行できないのは9号だけ

108条1項ただし書は、指名委員会等設置会社と公開会社は、9号の役員選任権付株式を発行できないと定めています。制限はこの1つだけです。

8号の拒否権付株式は、公開会社でも発行できます。役員選任権付株式と拒否権付株式はどちらも少数の株主に強い影響力を与えるので混同しやすいのですが、条文のただし書が名指ししているのは9号だけです。

公開会社には別の規律があります。公開会社である種類株式発行会社で、議決権制限株式の数が発行済株式の総数の2分の1を超えたときは、直ちに2分の1以下にするための必要な措置をとらなければなりません(115条)。超えたら発行が無効になるのではなく、是正の義務が生じる、という規定です。

要綱の定めと役員選任権のみなし廃止

108条2項の事項のうち、剰余金の配当を受けられる額など法務省令で定める事項は、定款には内容の要綱だけを定め、その種類の株式を初めて発行する時までに株主総会の決議で定める旨を定款で定めることができます。取締役会設置会社では株主総会または取締役会、清算人会設置会社では株主総会または清算人会の決議です(108条3項)。発行時点の市場環境に合わせて優先配当の額などを決めるための規定です。

9号の定めのうち取締役に関するものは、法律または定款で定めた取締役の員数を欠いた場合に、そのために員数に足りる取締役を選任できないときは、廃止されたものとみなされます(112条1項)。監査役に関する定めも同じです(同条2項)。選任権を持つ種類株主がいなくなって役員を選べなくなる事態を避けるための規定です。

種類株式を設ける定款変更の手続

原則は株主総会の特別決議

種類株式を設けるのは定款変更なので、株主総会の特別決議が必要です(466条、309条2項11号)。すでに種類株式発行会社である会社が、株式の種類の追加、株式の内容の変更、発行可能株式総数または発行可能種類株式総数の増加をする定款変更で、ある種類の株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、その種類の種類株主総会の決議も必要です(322条1項1号)。この種類株主総会は特別決議です(324条2項4号)。

ある種類の株式の内容として、322条1項の種類株主総会を要しない旨を定款で定めることもできます(322条2項)。ただし、定款変更については、単元株式数についてのものを除き、この定めがあっても種類株主総会の決議が必要です(同条3項ただし書)。

類型によって手続が重くなる

一部の類型は、既存の株主の地位を大きく変えるので、手続が加重されています。

定款変更 追加で必要な手続 根拠
ある種類の株式を譲渡制限株式にする その種類の株主などの種類株主総会の特殊決議 111条2項、324条3項1号
ある種類の株式を全部取得条項付種類株式にする その種類の株主などの種類株主総会の特別決議 111条2項、324条2項1号
ある種類の株式の発行後に、その種類を取得条項付株式にする その種類の株主全員の同意 111条1項
種類株式発行会社でない会社が、全部の株式を取得条項付株式にする 株主全員の同意 110条

111条2項では、その種類の株主のほか、取得請求権付株式や取得条項付株式の対価としてその種類の株式を受け取ることになっている株主の種類株主総会の決議も必要です(同項2号・3号)。取得条項付株式は、株主の意思にかかわらず会社が株式を取り上げる内容なので、多数決ではなく全員の同意が求められています。

種類株主総会の決議要件

種類株主総会の決議要件は、株主総会と同じ3段構造です(324条)。1項が普通決議、2項が特別決議、3項が特殊決議で、分母が「その種類の株式の株主」に置き換わります。

決議 主な対象
特別決議(324条2項) 全部取得条項を付ける111条2項、損害を及ぼすおそれがある322条1項、募集株式の発行に関する199条4項
特殊決議(324条3項) 譲渡制限を付ける111条2項、消滅会社が譲渡制限株式等を交付する合併の783条3項

拒否権付株式の種類株主総会(323条)は、定款に別段の定めがなければ普通決議です。拒否権の対象となる株主総会の決議のほかに、この種類株主総会の決議がなければ効力を生じません。

取得型の3類型を比べる

取得の主体と時期

5号・6号・7号は、いずれも会社が自己の株式を取得する類型ですが、誰が引き金を引くか、いつ取得の効力が生じるかが違います。

類型 取得のきっかけ 取得の効力発生 根拠
取得請求権付株式 株主の請求 請求の日 166条1項、167条1項
取得条項付株式 定款で定めた一定の事由の発生 事由が生じた日。一部取得の定めがあれば、通知・公告から2週間経過日と比べて遅い日 170条1項
全部取得条項付種類株式 株主総会の特別決議 決議で定めた取得日 171条1項、173条1項

取得条項付株式で「会社が別に定める日の到来」を取得事由にしたときは、その日を株主総会、取締役会設置会社では取締役会の決議で定め、2週間前までに株主に通知または公告します(168条)。全部取得条項付種類株式では、取締役は株主総会で全部を取得する必要がある理由を説明しなければなりません(171条3項)。

財源規制の違い

株式以外の財産を対価として交付する場合、取得請求権付株式と取得条項付株式では、その帳簿価額が分配可能額を超えていると、請求や取得の効力が生じません(166条1項ただし書、170条5項)。全部取得条項付種類株式の取得は461条1項4号の財源規制の対象です。

対価が会社の他の株式であれば、会社の財産は流出しないので、これらの財源規制はかかりません。461条1項も、規制の対象となる金銭等から会社の株式を除いています。登記との関係では、対価が金銭だけなら、会社が自己株式を取得しても発行済株式の総数は変わらないので、登記すべき事項は生じません。対価として他の種類の株式を交付したときに、発行済株式の種類ごとの数が変わり、変更の登記が必要になります。

種類株式の登記

登記事項は7号と9号

種類株式に関する登記事項は、911条3項の2つの号にあります。

  • 7号:発行する株式の内容。種類株式発行会社では、発行可能種類株式総数と発行する各種類の株式の内容
  • 9号:発行済株式の総数と、その種類および種類ごとの数

種類株式を設ける定款変更をすれば7号の事項が変わり、既存の株式の一部を別の種類に変えれば9号の事項も変わります。変更が生じたときは2週間以内に本店の所在地で変更の登記をします(915条1項)。

定款変更による変更登記の添付書面

種類株式を設ける定款変更の登記では、次の書面を添付します。

添付書面 必要になる場面 根拠
株主総会議事録と株主リスト 常に 商業登記法46条2項、商業登記規則61条3項
種類株主総会議事録と、その種類の株主についての株主リスト 322条1項や111条2項の種類株主総会を要するとき 46条2項、規則61条3項
株主全員または種類株主全員の同意を証する書面と、全員についての株主リスト 110条・111条1項の同意を要するとき 46条1項、規則61条2項
委任状 代理人が申請するとき 18条

登録免許税は、登記事項の変更として申請1件につき3万円です(登録免許税法別表第一第24号(1)ツ)。

取得と引換えに株式を交付したときの登記

取得請求権付株式、取得条項付株式、全部取得条項付種類株式を取得して、対価として他の種類の株式を交付すると、発行済株式の種類ごとの数が変わります。それぞれの変更登記には、次の書面が加わります。

場面 特有の添付書面 根拠
取得請求権付株式の取得と引換えに株式を交付 取得の請求があったことを証する書面 商業登記法58条
取得条項付株式の取得と引換えに株式を交付 取得事由の発生を証する書面、株券発行会社なら株券提供公告をしたことを証する書面 59条1項
全部取得条項付種類株式の取得と引換えに株式を交付 株券発行会社なら株券提供公告に関する書面 60条

取得請求権の行使は株主が任意の時期にするので、請求のたびに登記するのは会社の負担が大きくなります。そこで、他の株式や新株予約権などを対価とする取得請求による変更の登記は、毎月末日現在で、その末日から2週間以内にすれば足りるとされています(915条3項2号)。全部取得条項付種類株式の取得は株主総会の特別決議で行い(171条1項、309条2項3号)、その議事録も添付します。

試験での出題ポイント

択一式ではこう問われる

  • 107条と108条:全部の株式に付けられるのは譲渡制限・取得請求権・取得条項の3つ。これだけでは種類株式発行会社にならない
  • 公開会社の制限:発行できないのは9号の役員選任権付株式だけ。拒否権付株式は発行できる。指名委員会等設置会社も9号は発行できない
  • 議決権制限株式:公開会社で発行済株式の2分の1を超えたら是正措置の義務
  • 定款変更:譲渡制限の追加は種類株主総会の特殊決議、全部取得条項の追加は特別決議、取得条項の追加は種類株主全員の同意
  • 属人的定め:非公開会社だけ。種類株式とみなして規定を適用するが、登記はされない
  • 登記事項:発行可能種類株式総数、各種類の株式の内容、発行済株式の種類ごとの数
  • 登記期間の特則:他の株式などを対価とする取得請求による変更は毎月末日現在で登記できる

会社法の科目ページから、株式分野の肢を論点別に演習できます。

記述式との接続

商業登記の記述式では、種類株式を設ける定款変更と、募集株式の発行や取得条項付株式の取得が組み合わされることがあります。別紙を読むときは次の順で確認します。

  1. 定款変更の前から種類株式発行会社か。そうなら322条1項の種類株主総会が必要か
  2. 付ける内容が譲渡制限・全部取得条項・取得条項のどれか。種類株主総会か全員の同意か
  3. 種類株主総会の決議が、特別決議と特殊決議の要件を満たしているか
  4. 登記すべき事項として、発行可能種類株式総数と各種類の内容、発行済株式の種類ごとの数を書く

種類株式を発行する会社の募集株式の発行では、種類株主総会の決議が要る場面があります。決定機関の整理は募集株式の発行と変更登記で、別紙の読み方は記述式(商業登記)対策で扱っています。

まとめ

  • 107条は全部の株式に同じ内容を付ける制度、108条は内容の違う株式を並べる制度
  • 108条1項は9類型。公開会社と指名委員会等設置会社が発行できないのは9号の役員選任権付株式だけ
  • 種類株式を設ける定款変更は株主総会の特別決議。損害を及ぼすおそれがあれば種類株主総会も必要
  • 譲渡制限の追加は種類株主総会の特殊決議、全部取得条項は特別決議、取得条項は種類株主全員の同意
  • 属人的定めは種類株式とみなして規定を適用するが、登記事項ではない
  • 登記事項は911条3項7号と9号。定款変更による変更登記の登録免許税は3万円

よくある質問

拒否権付株式は公開会社でも発行できますか

発行できます。108条1項ただし書が公開会社と指名委員会等設置会社に禁じているのは、9号の役員選任権付株式だけです。拒否権付株式を発行した会社では、定款で定めた事項について、株主総会や取締役会の決議のほかに、その種類の種類株主総会の決議がなければ効力が生じません(323条)。

全部の株式に譲渡制限を付けた会社は種類株式発行会社ですか

それだけでは種類株式発行会社ではありません。全部の株式の内容として譲渡制限を定めるのは107条1項1号の制度で、内容の異なる2以上の種類の株式を発行するわけではないからです。一部の種類の株式だけに譲渡制限を付ける場合が、108条1項4号の種類株式です。

属人的定めを置いたら、登記は必要ですか

不要です。属人的定めは911条3項の登記事項に挙がっていません。109条3項はその株主の株式を種類株式とみなして会社法の規定を適用するとしていますが、登記事項まで種類株式と同じにするわけではありません。定款変更の決議要件が309条4項の特殊決議である点とあわせて押さえてください。

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